腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:サボテンダーイオウ
避難民たちは賑やかさを取り戻し、フレイは父親との再会を前に、身だしなみに気を配っていた。
クルーたちも久々に一息つける空気が流れ、艦内はどこか穏やかだった。
そのなかで、キラはストライクの整備に没頭していた。
そこへマードック軍曹が声をかける。
「よう、頑張ってるな」
「あ、はい。やれることはやっておこうと。でも、もういいのか……」
「いーや。合流するまではお前さんの機体だ。志願して、正式にお前のもんにしちまうってのもアリだぜ?」
茶化すように言い残して去っていくマードック。
キラは、その言葉に険しい表情を浮かべた。
「……冗談じゃないや」
この機体に乗ったのは、アマキと友人たちを守るためだった。
選んで乗ったわけじゃない。命を賭けるなんて、二度とごめんだ。
そのとき――ストライクのコクピットを覗く声が響く。
「キラ!」
「アマキさん!ラクスさんはいいの?」
顔を覗かせたアマキは、珍しく髪をポニーテールにしていた。
隊服がピンク寄りで、本人は似合わないと言っていたが、可愛らしく見える。
「さっき様子見てきたとこ。調整してるの?」
「うん。できることは、やっておきたいから」
アマキと話せるのが嬉しくて、キラはコクピットを降りる。
すると、アマキが「はい」と手渡してくれたのは――チョコレート。
「ありがとう」
口に放り込むと、甘さが身体に染み渡る。
疲れが、少しだけ吹き飛ぶような気がした。
二人並んで、ストライクとエリスを見つめる。
「……合流できたら、この艦を降りることになるな」
「うん。父さんも母さんも地球に降りてるはずだし。たぶんオーブに移ると思う。アマキさんも一緒に、行けると……」
言いかけたキラをよそに、アマキはじっとエリスを見つめていた。
「……」
「アマキさん?」
声をかけると、ふと目を戻して、静かに微笑んだ。
「いや、なんでもない。無事に帰ろうな」
「……うん」
けれど、その笑みは――少し寂しげに見えた。
第8艦隊との合流に沸くアークエンジェル。
だが、その隙を逃さぬ者がいた。ラウ・ル・クルーゼ――蛇のごとく忍び寄るその策謀により、護衛艦モント・ゴメリ、バーナード、ロウが奇襲を受けた。
「アークエンジェルへの補給など許さん」と言わんばかりに、クルーゼは容赦なく牙を剥く。
モント・ゴメリからの通信が響く。
《合流は中止せよ。即刻、領域から離脱せよ》
だが艦長マリュー・ラミアスは迷いなく指示を出す。
「このまま救援に向かう!」
次の瞬間、艦内にけたたましい第一戦闘配備のアラームが鳴り響いた。
ラクスの部屋から飛び出すアマキ。
廊下でキラとばったり合流する。
「くそっ、やっぱり来るよな!」
「アマキさん!」
「アマキ様」
ラクスも顔を覗かせるが、部屋の鍵を閉め忘れたことに気づいたアマキは慌てて戻ろうとする。そこへ、感情を押さえきれないフレイが突進してくる。
「アマキさん! キラっ! 戦闘配備ってどういうこと!? パパの船……やられたりしないわよね!?」
再会目前で突きつけられた現実。フレイは不安をぶつける。
アマキはその肩をそっと抱き寄せ、柔らかく語りかける。
「なんとか、間に合わせるよ。フレイは安全なところへ……いや、ラクスと一緒にいてくれると嬉しい。ラクス、頼めるか?」
ラクスは小さく頷いた。
「はい。わたくしは構いませんわ。フレイさん、どうぞこちらへ」
「う……うん。お願い、パパを助けて」
「うん。なんとかしてみせるよ」
フレイとラクスは部屋へと戻っていく。
「行こう、アマキさん」
「うん」
二人は互いを見て、無言で頷き合う。
アラーム音が響き続けるなか、パイロットスーツに袖を通すアマキ。
金具を締めるその手は小さく震えていたが、深く息を吸い込んで落ち着きを取り戻す。
ヘルメットを手にしたキラが横目でアマキを見る。
その視線に、アマキは口元だけで「任せろ」と返す。
無言の信頼。
それぞれが自機に乗り込む。
彼らの戦いが、今始まろうとしていた。
敵はナスカ級一隻、ジン三機、そしてイージス。
対するはこちら――フラガ大尉のメビウスゼロ、ストライク、エリス。
戦力差は歴然。だが、アマキには秘策があった。
「キラ、君にはジンを任せる。イージスは私が相手する」
『わかった。気を付けて』
「キラも、な」
キラは頷き、ストライクを駆って敵編隊へ突入していく。
アマキは息を整え、エリスを操作してイージスへ一直線。
武器を構えたまま、通信チャネルを開いた。
「イージスのパイロット!こちらエリス、アマキ・カンザキだ!」
応答――イージスのモニターに映るのは、キラと同年代の少年。
苛立った声が返る。
『戦闘中に敵と会話とは、頭がおかしいのか?』
アマキは確かめるように声を投げる。
「お前、アスラン・ザラだな?」
『……なぜ俺の名を!?』
一瞬、彼の動きが止まる。
その隙に、アマキは畳みかける。
「キラとラクスから聞いた。キラにトリィを作っただろ。ラクスにはハロ。それに、君たち婚約中――キスは頬どまり」
『……信じる』
アスランは即座に応じた。
「ラクスは今、アークエンジェルで保護している。キラが救命ポッドで彼女を助けた。
それに――『ラクスを人質にするなんて卑劣だ!』って、まず人の話を最後まで聞け、バカ」
『……ば、バカ?』
思わず叱られ、目を丸くするアスラン。
「このまま戦闘を続ければ、ラクスが危険に晒される。お前だって彼女を守りたいんだろ?」
『――当たり前だ!』
「なら、協力しろ。そっちの上官に交渉しろ。癖のありそうな奴だろうが、説得してみせろ。“ラクスが盾にされてる”でも何でも言ってな」
『それは……無茶だ』
クルーゼの顔を思い浮かべたのだろう。アスランは露骨に渋い顔をする。
だがアマキは、声を低くし、重く告げる。
「無茶でもやれ。死に物狂いで説得しろ。ラクスのためだ。いいな?――返事は?」
『……了解』
アスランはつい、勢いに負けて敬礼してしまった。
「じゃあ、頼んだぞ」
そう言い残して、アマキはイージスに背を向け、戦闘停止へ向かいアークエンジェルへ戻っていった。
アスランはモニター越しにその背を見つめながら、
(……俺……なんで出会って数秒の奴に命令されてるんだ)
と心の中で静かに呟いた。
――心労で禿げそうだと、本気で思った。
アスランの説得は届かず――ラウ・ル・クルーゼが、ナスカ級から出撃する。
だが、その直前――声が響いた。
『わたくしはラクス・クラインです。アークエンジェルに保護されております。
今この場に、追悼慰霊団代表として立っています。この場を血で汚されるおつもりですか?
ラウ・ル・クルーゼ隊長、戦闘を停止してください。今すぐに』
その凛とした声に、空気が凍る。
クルーゼは舌打ちを一つ。
政治的建前により、それ以上の追撃は不可能と判断したのか――
『……ッチ、了解』
撤退命令が下された。
アマキはすぐさまアークエンジェルへ通信をつなぐ。
「ミリィ、ラクスに“助かった”って伝えてくれ」
するとミリアリアの隣から、ラクスが顔を出す。
『アマキ様のお役に立てたようで、嬉しいですわ。フレイさんも、隣におりますよ』
「ありがとう、ラクス。フレイも、出てくれてありがとう」
「ラクスに引っ張られた感じだけど……アマキさん!キラもありがとうっ!」
『……なんだかよく分かんないけど、よかった』
キラはすべてを受け入れることにした。
どう考えても常識では測れないアマキの行動力――
彼には“器の大きな男”になる覚悟があった。
これは――序章でしかない。後々もっととんでもないことが起きるだろう。
「ラクス、アンタもありがとう」
「いいえ。フレイさんの御父様がご無事で何よりです」
ブリッジにいる女子二人は、呆然としながらも嬉しそうに笑っていた。
マリューは気絶しそうな気持ちをこらえていた。
ナタルが送る「私は知らん、どうすんだ」みたいな視線が刺さる。
「とにかく――モント・ゴメリと合流。部外者はブリッジから退席して」
「はーい」
「それでは失礼いたしますわ」
手を繋いだ女子二人は、仲良く去っていく。
その背中を見送ると、ブリッジが再び慌ただしくなる。
「艦長、モント・ゴメリから入電――事態の説明を、とのことです」
「フラガ大尉からも“なにがどうしてこうなった”って」
「……私も説明してほしいわよーーっ!!」
叫ぶマリュー。その言葉に、ブリッジの全員が静かに同意していた。
こうして一時的に戦闘は中止され、
アークエンジェルと護衛艦モント・ゴメリらは、無事に合流することができた。
おまけ
「ラクス、お願いがあるんだけどいい?」
「はい?」
「そのハロってコ、私にも作ってもらえないかな」
「まぁ、ピンクちゃんはアスランが作ってくれましたの。気に入りまして?」
「うん、私も欲しいなぁと思って」
「わたくしとお揃いになりますわね。アスランなら喜んで作ってくださいますわ」
「名前なにしようかなー」
「ラクスとつけていただいてもいいのですよ」
「ちょっとむり」
「まぁなぜですか?」
「重い」
「まぁ」
「別の名前にするよ」
「そうですか。残念ですわ。ピンクちゃんを改名してアマキと名前をつけましょう」
「やめて。重い」
「わたくしいずれはアマキ様と離れてしまいますもの。寂しいですわ」
「じゃあこれあげる。買い物袋。中身四次元だからなんでも入るよ。私もう一つ持ってるから。時代はやっぱりエコだよね」
「まぁ可愛らしい青タヌキの柄。大切にしますわ」
プラントでは歌姫が始終買い物袋を携えていることから買い物袋ブームが到来した。
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