腹減り少女はSEED世界で爆発少女にレベルアップする 作:松魚
地球での激戦が終結したその頃。静寂に包まれた宇宙を往くエターナルのブリッジには、全周囲モニターから冷たい星々の光が差し込んでいた。コンソールに表示されたヘブンズベース戦の最終結果を見届け、バルトフェルドが静かに振り返る。
「ラクス」
「はい」
「ヘブンズベースが落ちたぞ」
「では次はオーブですわね」
ラクスの迷いのない、確信に満ちた声がブリッジの静寂を切り裂いた。バルトフェルドは苦いコーヒーを一口すすり、眉をひそめる。
「思ったより早かったな」
「…………」
ラクスは静かに目を伏せ、地球の裏側で傷ついているであろうキラやアマキ、そして人々へと想いを馳せるように沈黙した。
「だがどうして次がオーブなんだ?デュランダルが討つとぶち挙げているのはロゴスだろ?」
「オーブは強い国ですから。その力、理念」
「ん?」
「でもそれはデュランダル議長のやろうとしていることの前には、ただの障害でしかないだろうと思うのです」
ラクスはゆっくりと顔を上げ、どこまでも真っ直ぐにバルトフェルドを見つめた。その瞳に宿るただならぬ覇気に、ブリッジに漂う空気が一気に張り詰める。
「……例のデスティニープランってやつか」
「はい。もし、その世界が出来上がってしまったら……」
傍らで腕を組み、静かに二人の対話に耳を傾けていたアイシャが、その底知れない未来の行く末を案じるように低く言葉を繋げた。
「世界から争いが消える―――。かしら?」
「争い、憎しみ、奪い合いが無くなり、秩序の元全てが決められるそんな世界をあの人は望みなのです」
ラクスの紡ぐ静かな真実が、エターナルのブリッジに重く響き渡る。
◇◇◇
「ゴーズ隊は東側へ回れ」
「医療班はどこだ。衛生兵!」
「建物内のトラップチェックは全て終了。安全を確認」
「よーし、負傷者の搬送開始する」
「まだ油断するなよ!」
白旗が上がったヘブンズベースの要塞内部。激しい大雨が降り続くなか、ザフト兵たちの怒号と搬送車の駆動音が響き渡り、制圧作戦と戦後処理が慌ただしく進められていた。その喧騒のなか、着陸したミネルバの格納庫近くで、隊服のままのシンたちは冷酷な事実を突きつけられていた。
「ええっ!? ジブリールがいない!?」
「いないって…そんな!」
「こりゃ、バックレたな」
ハイネはセイバーから降りて髪をかき上げ、呆れたようにため息をついた。その傍らで、レイが全周囲モニターの通信ログを確認しながら、表情ひとつ変えずに言葉を繋げる。
「ああ。基地が降伏する前に一人だけこっそりと逃げたらしい」
「ぇぇ?」
「他のロゴスのメンバーは全て見捨ててな」
その身勝手極まる逃亡劇に、シンは驚愕し、信じられないといった面持ちで拳を強く握りしめた。
一方、ジブラルタルの司令部。デスクの前で腕を組んでいたデュランダル議長は、モニターに映し出されるロゴス幹部たちの連行映像を眺めながら、困惑したように肩をすくめてみせた。
「しかし本当に困ったお人だ。これ以上何をしようというのかね」
「はあ…」
「兎も角、彼を捕まえないことには話にならない。パナマかビクトリアか、また面倒なところへ逃げ込まれていないといいがね」
芝居がかったトーンで嘆いてみせる議長。だがその瞳の奥には、ジブリールの逃亡先すらも自らの計画の一部に組み込もうとする、冷徹な計算が光っていた。
再び、ヘブンズベースの格納庫。
「ぁぁ…」
「やはりそう簡単には終わらないな」
「そんなことないさ! 今度見つけたら絶対俺が踏み潰してやる!」
シンは激しい怒りを爆発させ、足元の床を強く踏み鳴らした。この戦いを終わらせるために、自分は大切な仲間であったはずのアスランやメイリンまでこの手で討ったのだ。それなのに、元凶であるジブリールを逃がして、戦いが終わらないなどと認められるはずがない。その執念に燃えるシンの横顔を、ハイネとレイはそれぞれの想いを胸に静かに見つめる。
「ああ」
「あ…」
「…」
シンの痛々しいほどの決意の叫びが、雨の音に掻き消されていく。
◇◇◇
慌ただしくスパークの光が飛び散るアークエンジェルの格納庫。
「そちらを優先させて欲しいの」
「分かりました。じゃあそれでやりまさあ」
「悪いけどお願いね」
マリューは機体の修復プランについてマードックに指示を出した。マードックは力強く頷き、再び作業へと戻っていく。
「マリューさん」
「あら。キラ君とアマキさん」
振り返ったマリューの視線の先には、ひどく困り果てたような、ちょっぴりお疲れ気味のキラの姿があった。
「ぷしゅー」
アマキは縛られながら不服そうにキラに連れられてきた。キラはしっかりと手綱を握りしめている。
お菓子を求めて暴走しないよう、ロープでぐるぐる巻きに拘束されたまま、まるで芋虫のようにトボトボと歩かされているアマキ。頬をこれでもかとぷっくり膨らませ、言葉にならない不満の蒸気を口から吐き出している。キラは可愛いと思っているがその他大勢は怪獣だと思っている。
「どうですか?修理の方は」
「だいぶ酷くやられたから流石に時間掛かりそうだけど。でもみんな頑張ってくれているわ」
マリューはクレーンで吊り上げられていくアークエンジェルの装甲を見上げ、息を吐いた。シンたちのデスティニーやインパルスに徹底的に追い詰められた傷跡は、想像以上に深い。
「そうですか。……アマキ、ちょっとは走り込みしよう?」
「拒否!」
キラが手綱を少し引いて優しく促すが、アマキは即座に、全力の拒絶を突きつけた。
「ふふ。落ち着かないものね」
「でも少しでも体重減らしておかないと僕も連帯責任で怒られるよ」
いずれ宇宙から戻ってくるであろうラクスの、あのきりっとしたお仕置きの表情を思い浮かべ、キラは切実に訴えかける。
「キラ君。そう焦らないで。アマキさんもストレスで食べていたのよ。キラ君が四六時中一緒にいたらキラ君も疲れてしまうわよ。今度は雪彦さんにでも預けてみたらどうかしら?」
「え…いえ、でも」
「げっ! いやだ絶対いやだ!!」
アマキは青い顔でぶんぶんと首を振る。
あの副作用で本物の豚に変身しちゃうダイエット薬への恐怖、そして雪彦の容赦ない管理を思い出し、縛られた身体のまま、激しく首を横に振って抵抗した。そのあまりの怯えっぷりに、マリューはクスリと微笑みながら、優しく二人の肩へ手を置いた。
「ヘブンズベースのニュースからこっちは特に、皆気を張ってるし」
「………僕、アマキを痩せさせなきゃって、気張ってたのかな」
マリューの言葉に、キラはハッと我に返ったように呟いた。愛する恋人を守らなければという責任感が、知らず知らずのうちに空回りしていたことに気づかされる。そういえばキラが構えば構うほど食べる量は増えていたような?いや、でも気のせいかもしれない。
「大丈夫、皆がいるわ。もうすぐラクスさんも戻るし。そうすればきっとキラ君の分まで叱ってくれるもの。ね?」
「はい」
マリューの温かい言葉に、キラはすっと肩の力を抜き、穏やかな笑顔を取り戻した。代わりにアマキは、心底嫌そうな顔をした。
「うげぇ」
◇◇◇
『陥落したヘブンズベースからは多数のロゴス幹部が連行された模様です』
「はぁ…」
『現在、連合とプラントは共同で国際法廷を開設し、身柄を拘束したこれら幹部の…』
アークエンジェルの静かな一室。備え付けのモニターから流れるヘブンズベース陥落のニュースを眺めながら、アスランはベッドの背にもたれかかり、深く重いため息をついた。
「アスラン? どうした。まだ吐き気があるか?」
傍らで心配そうに見守っていたカガリが、アスランの顔を覗き込む。あの強烈にマズい薬の副作用を心配するカガリに、アスランは力なく首を振った。
「いや、精神的ダメージはまだあるが…大丈夫みたいだ」
「そうか。あんまり気にするな。…その、あの薬に関しては失敗作らしいらしいから、もう悪夢を見ることもないと思う」
全脱毛の悪夢に怯えていたアスランの言葉に、カガリはやんわりと慰めた。
「………失敗作……」
アスランは失敗作を飲まされたことにショックを受けた。
「あー、うん。ちなみに製作者は、アマキの親戚だから」
「ファっ!?」
「そうだよな。そうなるよな。反応が、あはは……」
から笑いするカガリに対してアスランはもうこれ以上ショックを受けたくないと脳が叫ぶので、その話を拒絶することにした。無理やり話題をすり替える。
「メイリンは今は?」
「今ちょっと熱出してる。でも大丈夫だよ、ミリアリアが少し話聞いたって」
「そうか」
「ミネルバに乗ってた子だよな。管制の」
「ああ。助けてくれたんだ。殺されるくらいなら行けって。ほとんど話したこともないのに。俺甘えて、巻き込んで…」
自分の不甲斐なさが一人の少女を命の危険に晒してしまった。その罪悪感にアスランが拳を握りしめると、カガリは優しく、しかし確かな強さを持った声で彼の言葉を遮った。
「お前のこと好きなんだろう。きっと。大丈夫だよ。彼女のことは心配するな。ちゃんと私が面倒見るから。それで、あの…」
「ぁ?」
急に歯切れの悪くなったカガリに、アスランが視線を戻す。カガリはアスランの胸元をじっと見つめ、意を決したように唇を震わせた。
「私のことは許してくれるか?」
「それは俺の方だろ。謝るのは。クレタでキラとアマキに言われたこと、俺は…」
「私は!結婚しようとした。お前に何も言わずに…」
ユウナとの望まない結婚に踏み切ろうとしていたあの時の決断。オーブのためとはいえ、アスランを深く傷つけた事実にカガリの声が震える。だが、アスランはその言葉を静かに受け止めた。
「守りたかったんだろ、オーブを」
「ぁ…」
「結局、アマキの言う通りになったな」
「え?」
「戻ってくればいいって、アマキ、言ってただろ? あの時、ついカッとなって言い返したけど、図星だった。嫌だったんだ。何もできない自分が。カガリは国という重い責任を負って毎日死にものぐるいなのに。俺は何もできないどころか、ユニウス7があんな…ことで、何かしたかった。止めたかったんだ本当は、戦争になるのを」
「アスラン…」
カガリはベッドのシーツを強く握りしめ、アスランの痛切な告白に胸を打たれていた。アスランは少し照れくさそうに頭を掻き、ふっと遠い目をしながら呟いた。
「……アマキの奴。笑ってるだろ。こんな俺を見てさ」
それに対してカガリは清々しいほど笑って言った。日頃のストレスが積もりに積もって溜まっていたが、アマキがさんざん馬鹿やってるところを見ると後でラクスに叱られるところが想像できるので気持ちが良いらしい。
「大丈夫だ。アイツは今それどころじゃないから」
「え?」
「リバウンドしてさ。キラに縄でぐるぐる巻きにされて連れまわされてるよ。運動だって」
「………。アマキらしい」
あまりにも想定外なアマキの現在の危機を知らされ、アスランの張り詰めていた肩の力が、一気に抜けていく。世界の戦火が激化していくなか、かつてのように呆れ交じりの笑みを浮かべるアスランの表情には、確かな平穏の光が戻り始めていた。
◇◇◇
エターナルのブリッジでは廃墟と化したL4コロニー・メンデルの調査から戻ったダコスタは肩をすくめ、疲れた様子で息を吐き出した。
「いやもう、参りましたよ。コロニーは空気も抜けちゃってて荒れ放題だってのに、遺伝子研究所の方は何故かデータから何から綺麗に処分されちゃってまして」
「「…」」
「こんなものしか」
そう言ってダコスタがデスクの上に置いたのは、古びたノートとパソコンだった。その中に残された微かな痕跡に、ラクスは静かに手を伸ばす。
「……いいえ、これだけでも十分ですわ。ありがとうございます」
「でもここにですね、多分当時の同僚か何かのものだと思うんですが」
「ん?」
「ぁ!」
ダコスタが端末を操作して暗号を解除すると、モニターに古い手記のような文章が浮かび上がった。ラクスが息を呑むなか、バルトフェルドはサングラスの奥の目を鋭く尖らせ、そのテキストを重々しい声で読み上げ始めた。
「『デュランダルの言うデスティニープランは一見今の時代有益に思える。だが我々は忘れてはならない。人は世界のために生きるのではない。人が生きる場所、それが世界だということを。だが奴はそれを否定したうえで、更なる秩序が必要だと叫ぶ。コーディネーターよりも遥かに優れた能力を持つものが先頭に立ち、皆を先導していくと。……新たな種、アコードが世界を導くのだ』」
「これは…」
「…なるほど、これがラクスの言う、アコードってことか」
バルトフェルドは読み終えると、信じられないといった面持ちで深く椅子に背を預けた。ナチュラル、コーディネイター、そしてその先にあるという、人為的に生み出された上位種アコード。
「新たな種、ねぇ。まだ表立って出ていないけど、いずれは動き出すってことよね」
腕を組んで窓の外の暗黒の宇宙を見つめていたアイシャが、低く冷ややかな声で呟いた。彼女の言う通り、もしその「アコード」たちが歴史の表舞台に現れれば、この世界はさらなる混沌へと突き落とされるに違いない。
「おそらく」
ラクスはきゅっと唇を噛み締め、モニターに映るその不穏な言葉を見つめ続けた。
デュランダル議長が掲げる正義の裏に隠された、さらに巨大な『運命』の影。アコードの存在に一同が慄然としたその瞬間、エターナルの作戦会議室のコンソールが、突如としてけたたましい電子アラートを鳴り響かせた。メインモニターに不気味な光点が現れる。
「何だ!」
「偵察型ジン?」
ダコスタが素早くキーを叩き、映し出された敵の識別コードに顔を強張らせる。バルトフェルドはサングラスの奥の目をカッと見開いた。
「てぇーい、付けられたかダコスタ!」
「ええ!?」
「ぁ…」
「すぐに追う! 俺のガイアを!」
「わかったわ」
バルトフェルドは立ち上がり、アイシャはすぐ指示を出す。
メンデルの闇に潜む敵偵察機を撃破すべく、自身の専用機であるバルトフェルド専用ガイアガンダムのドックへ向かおうとする。しかし、ラクスはその背中に向かって、鋭くも冷静な声を掛けた。
「待って! 待ってください!」
「?」
「もう間に合いません。追尾してきたというのなら母艦ももうそう遠くはないはずです」
「ええい!」
「メンデルを見張られていたのかもしれません」
「ええ?」
「わたくしが迂闊でした」
「いえ! そんな!」
「ああ、迂闊なのはこいつだ!」
「ぅ…」
バルトフェルドは悔しげにダコスタの頭を小突き、すぐに険しい表情で戦術マップを睨み据えた。
「だがどうする? ここのファクトリーの機体だって、まだ最終調整は終わっていない。攻め込まれたら守りきれん」
この秘密工場の奥には、未完成のストライクフリーダム、そしてもう一機ついの存在がある。今見つかるわけにはいかなかった。
「艦を出しましょう。バルトフェルド隊長。今すぐに」
「今から?」
「そんな!それこそ発見されます」
「もう同じことです」
「ぅ…」
「ならば攻め込まれる前に出て少しでも有利な状況を」
「だが今のこいつにはナスカ級一隻とだってやれる戦力はないぞ。どう足掻いたって勝ち目は…」
「勝ちたいわけではありません。守りたいのです」
「?」
ラクスの瞳に宿る、気高き絶対の決意。その少女の覇気に、百戦錬磨のバルトフェルドたちも思わず息を呑んだ。
「あれと力を貸してくださったこのファクトリーの方々、そしてこれを。わたくし達が出ればザフトはそれを追うでしょう。ファクトリーはその間に対応の時間を稼げます。我々は最悪の場合、降下軌道へ逃げてあの二機と資料をアークエンジェルへ向けて射出します」
その潔さ、歴戦の猛者を思わせる見事なものだった。
「ふ。よーし分かった」
「ぅ…」
「エターナル発進準備! ターミナルに通達! ファクトリーには俺が話す。回線を回せ!」
バルトフェルドの豪快な号令がブリッジに響き渡り、エターナルのメインエンジンが凄まじい重低音をあげて火を噴いた。ファクトリーを、アコードの資料を、そしてストフリとスノーホワイトを守るための、命がけの囮作戦。
「エターナル発進後、ファクトリーはサイレントモードに移行する」
秘密工場のドック内に、退避を促す警告灯の点滅とともに無機質なアナウンスが低く響き渡る。エターナルが出港した瞬間から、このファクトリーはすべての出力を落とし、ザフトの眼を逃れるための完全な静寂へと身を沈めるのだ。
「マイドーマイドー!」
ブリッジのコンソールの上で、ピンク色のハロが耳をパタパタと小気味よく羽ばたかせながら元気よく跳ね回る。その愛らしい声が、張り詰めていたオペレーターたちの指先を力強く鼓舞した。
「パワーフロー正常。FCSオンライン」
「推力上昇。発進臨界!」
メインコンソールのメーターが一気に限界値へと跳ね上がり、ピンク色の船体を誇るエターナルのエンジンが、宇宙を震わせるほどの凄まじい重低音を響かせ始める。バルトフェルドは操縦席のレバーを強く引き絞り、鋭い眼差しで前方のスクリーンを見据えた。
「偽装排除!」
次の瞬間、ファクトリーを宇宙の塵に見せかけていた岩塊や偽装隔壁が、爆破ボルトの解放とともに四方へと激しく吹き飛んだ。目の前へ一気に広がった広大な暗黒の宇宙へ向け、ラクスは凛とした美しい声を響かせる。
「エターナル、発進します!」
エターナルの艦尾スラスターから強烈な光の尾が解き放たれ、巨体は矢のような速度でドックを飛び出していった。アコードの重大な資料、そして新たな力となる機体を守るための命がけの航海が、今ここに始まった。
◇◇◇
「キラ君、エターナルが発進するとターミナルから連絡よ」
「え!?」
アークエンジェルのブリッジへ飛び込んできた情報がマリューから告げられるとアマキとキラは弾かれたように声を上げた。
「ザフトに発見されたと」
「ぁ…」
「ラクスが!」
「そんな、ラクス!」
「ラクス!」
一瞬にして、ブリッジ内の温度が下がる。アスランとカガリもその瞳に驚愕の光を宿らせる。
「エターナル…まさか…」
かつて自分がザフトを脱走する際、共に行動したあの高速戦闘艦。それが、宇宙のナスカ級艦隊の包囲網に引っかかったのだ。
◇◇◇
ザフト追撃艦隊の旗艦ブリッジ。
「くー早い! しかしエターナルとはどこまで巫山戯た奴等なんですかね」
「戦後のどさくさで行方不明になっていた艦(ふね)にこんなところでお目に掛かるとはな。カーナボンとホルストの位置は?」
ク
「は!現在グリーン22チャーリー、インディゴ8アルファです」
「よーし追いつめる! 逃がさんぞうテロリスト。ようやく見つけたのだ」
グラスゴー艦長は不敵な笑みを浮かべ、メインスクリーンのエターナルの影へ向けて、残忍に全軍の進路を固定させた。
「グリーン及びインディゴ、更にナスカ級2」
「ザク、グフ来ます!」
「くっそー! 振り切れ! 下げ舵15!」
大宇宙を疾走するエターナルの艦橋では、けたたましいアラートが鳴り響き、バルトフェルドが激しい振動に耐えながら怒号をあげる。その悲痛な地球周回軌道上の情報は、アークエンジェルにもリアルタイムで伝わっていた。
「どのくらいの部隊に追われているのかは分からないけど、突破が無理ならポッドだけでもこちらに降ろすということよ」
「ええ?」
「ポッド?」
最悪の事態を想定したマリューの言葉。その瞬間、お菓子禁止令で縄をぐるぐる巻きにされていたはずのアマキが、愛するラクスの危機にその凄まじい力を爆発させ、ブツブツとロープを引きちぎって立ち上がった。
「行く!ラクスの所へ!スノーホワイト出撃準備急いでっ!」
そう言って指示を出しながら駆け出したアマキの背にキラが呼び止めた。
「アマキ!」
するとアマキは振り返り、キラに向かって手を差し出した。
「大切な人を守りにいかなくちゃっ!キラ!」
「…うん! カガリ! ルージュ貸して! それからブースターを!」
「わかったっ!」
二人は手を取りあい駆け足でブリッジを出ていくがキラは去り際にカガリに礼を言っていった。
「ありがとうカガリ!」
「おう!」
カガリは手を挙げてキラの礼に答えた。
「全員で二人のサポートを!」
マリューの力強い号令がアークエンジェル艦内に響き渡る。
納庫ではマードックたちが大急ぎでスノーホワイトのシステムを立ち上げ、カガリの『ストライクルージュ』に大気圏離脱用の大型ブースターを装着する超特急の作業が始まった。
恋人を、そして大切な戦友を救うため、キラとアマキはそれぞれのコックピットへと真っ直ぐに駆け抜けていく。
「ミサイル来ます!」
メインモニターの闇を割り、ザフトのナスカ級から放たれた無数のミサイルが、白く禍々しい光の尾を引いて急速に接近してくる。ダコスタの悲鳴のような報告と同時に、ブリッジ全体がけたたましい接近警告音(アラート)に包まれた。
「迎撃! 面舵10、下げ舵20!」
「モビルスーツを取り付かせるな! 対空かかれ!」
バルトフェルドはサングラスの奥の目を鋭く尖らせ、怒号と共にコンソールの舵輪を鮮やかに捌いた。
大出力エンジンが悲鳴のような駆動音をあげ、ピンク色の船体を持つエターナルが激しく身をよじるようにして三次元的な回避運動を起こす。
直後、艦体各所に配された対空機関砲や近接防御火器(CIWS)が一斉に火を噴き、暗黒の宇宙へ向けてまばゆい光の弾幕を形成した。
接近するミサイル群が対空砲火に捕らえられ、エターナルの至近で次々と大爆発を起こす。凄まじい衝撃波と光の塊がブリッジのガラスを激しく叩き、ラクスは手すりをきつく握りしめてその振動に耐えていた。
爆炎を割って、さらにザクやグフの機動影がエターナルを完全に圧殺せんと迫り来る。
「電圧や他のスペックはどうすんだ!?」
「全てストライクと同じに」
「分かった!」
アークエンジェルの格納庫ではブースターユニットを急ピッチで装着するマードックが、スパークの散るコンソールの前で怒号を上げる。キラはコックピットの全周囲モニターを見据え、かつて愛用した機体と全く同じ感覚で操縦できるよう、神速のタイピングでパラメータを固定した。
――その頃、はるか上空の宇宙空間では、エターナルが絶体絶命の重圧に晒されていた。
「うぅぅ!」
艦体を貫く凄まじい衝撃。至近でのミサイル爆発の圧力に、ラクスやオペレーターたちが手すりを掴んで激しく身をすくませる。
「マードックさん!」
「全員退避っ!」
地球のアークエンジェル格納庫では、射出シークエンスの最終段階に入り、マードックの号令とともに整備兵たちが一斉にカタパルト周辺から退避していく。
再び、大宇宙。猛攻に晒されるエターナルのブリッジで、バルトフェルドは激しい不快感を滲ませて立ち上がった。
「くそ! 駄目だ! 俺が出る!」
「隊長!」
「五月蝿いのを追っ払う! 兎に角距離を稼げ! いいなダコスタ、エンジンを撃たせるな!」
「はい!」
バルトフェルドはノーマルスーツのヘルメットを被りながら、自身の専用機である深紅のガイアガンダムのコックピットへと滑り込んだ。システムが瞬時に立ち上がり、エターナルのハッチが開放される。
四足歩行形態、そしてモビルスーツ形態へと変形自在なガイアが宇宙へと躍り出た。
洋上のアークエンジェルブリッジ。マリューはエターナルの刻一刻と変化する高度を睨み、鋭い声を張り上げた。
「エターナルの軌道予想、いいわね? だいぶ降下してきてるわよ」
「はい! 大丈夫です!」
「針路クリアー、システムオールグリーン。ストライクブースター、発進どうぞ!」
「行きます!」
キラのストライクルージュが大型ブースターの爆音とともにカタパルトを蹴り飛ばし、大雨の空へと眩い火線の尾を引いて射出された。間髪入れずに、その隣のデッキからあの純白の機体がロックを解除される。
「針路クリアー、システムオールグリーン。スノーホワイト、発進どうぞ!」
「アマキ・カンザキ、スノーホワイト行くぞ!」
アマキの咆哮とともに、スノーホワイトの推進器が限界まで同調し、凄まじい輝きを放って大空へと躍り出た。
二機のガンダムが、重力を振り切る凄まじい質量となって暗雲を突き抜け、青い地球の天蓋を破って大宇宙へと突き進んでいく。
その二機を迎え撃つかのように、宇宙の戦場ではバルトフェルドのガイアガンダムが、牙を剥くザフトのザクやグフの大群のなかに果敢に斬り込んでいた。
「ええい!」
「てぇっ!」
ガイアのビームライフルと大型ビームサーベルが宇宙の闇を激しく切り裂き、迫り来る敵機を次々と足止めしていく。
「ガイア…あんなものまで持っているとは。一体どういう組織なんです?」
「んー」
ザフト精鋭艦隊の旗艦ブリッジ。副官はメインモニターに映し出された、俊敏に宇宙を駆ける深紅のガイアガンダムのデータを見つめ、驚愕のあまり冷や汗を流した。グラスゴー艦長は苦虫を噛み潰したような顔で、ただ不快そうに唸る。その頃、集中砲火に晒されるエターナルのブリッジでは、刻一刻と迫る限界の数値がコンソールに点滅していた。
「ポッドの射出ポイントまであとどのくらいですか?」
「あと20、いや25です!」
「どうかそこまで頑張ってください」
「はい!」
ダコスタは激しく揺れるコンソールを叩きながら絶叫する。新型機と資料をポッドで地球へ逃がすポイントまで、あと僅か。しかし、ザフトの波状攻撃は容赦なくエターナルの装甲を抉っていく。
「「「うわぁ!」」」
艦橋を強烈な爆風と火花が襲い、一同が激しく身をすくませた瞬間、前線で敵を引きつけていたバルトフェルドのガイアガンダムにも、決定的な致命傷が迫っていた。
「くっそー!」
「うわぁ!」
グフの放った高エネルギー長射程ビームがガイアの右主翼を直撃し、凄まじい爆炎とともに機体が大きくスピンする。コックピット内のインジケーターが一斉に赤く染まり、アラートが鳴り響いた。
だが、その絶望の宇宙の天蓋を力ずくでこじ開けるように、地球の青い輪郭から二つの猛烈な光の尾が飛び込んできた。
「キラ!先行くぞ!」
「うん! 間に合わせてっ!」
大気圏を突破した瞬間、アマキの純白の愛機スノーホワイトが爆発的な加速を見せ、ストライクブースターを引き離して戦域へと先行する。
「くっ!」
「うっ!」
そこへ割り込むように現れた純白のスノーホワイトのノイエツバークが炸裂する。
宇宙の闇を真昼のように白く染め上げる、凄まじい一斉射撃の光条。バルトフェルドのガイアを文字通り圧殺せんとしていたザフトの包囲網が、その圧倒的な破壊力の前に一瞬で消し飛ばされ、激しい爆炎の火球へと変わっていった。
「ぇぇぃ!何だ!?」
「スノーホワイト、ストライク!?」
「え?」
「アマキ、キラ!」
迫り来るザクの包囲網を切り裂き、バルトフェルドの窮地に割り込んだのは、ピンク色のフェイズシフト装甲を纏ったストライクルージュだった。爆炎のカーテンを割って猛烈な推力で滑り込んできた、かつての伝説の二機。メインモニターに映し出されたその神々しい姿に、ラクスは手すりを握りしめてその名を叫んだ。
「ラクス!」
「ラクス!バルトフェルドさん!」
「アマキ、キラ!」
「お前ら…」
「よく頑張ったね。みんな」
「すみません。でも心配で!」
息を切らせながらも、無事な二人の姿を確認してほっと声を詰まらせるキラ。しかし、戦闘の真っ只中でそんな余裕はない。
アマキのスノーホワイトが残る敵機を鋭い眼差しで威嚇し、キラのルージュがいつでも引き金を引けるよう背部ブースターの出力を上げる。大切な人を守り抜くために地球の重力を振り切ってきた二人の英雄が、エターナルの盾となって今、大宇宙の戦場に立ち塞がった。バルトフェルドは中破したガイアの操縦桿を握り直し、通信ウィンドウのキラに向かって怒鳴りつけた。
「馬鹿!だったら早くエターナルに入れ!」
「え?」
「お前の機体を取ってこい!」
「…はい!」
その言葉の意味を瞬時に理解したキラの瞳に、最強のパイロットとしての鋭い光が戻る。
「……」
ラクスは胸に湧き上がる愛おしさと安堵に涙を滲ませ、手すりを強く握りしめた。
「緊急着艦システム用意!」
ダコスタの鋭い号令とともに、エターナルの後部ハッチが大きく開放される。
先行したアマキのスノーホワイトが敵の足止めを引き受けるなか、キラの駆るルージュは大型ブースターを切り離し、滑り込むようにしてエターナルの格納庫へと緊急着艦を果たし続いてスノーホワイトも着艦する。
ハッチが閉まり、ラクスは今か今かと待ち望んでいた。そしてスノーホワイトから二人が降りてくるとラクスは嬉しそうに飛び出した。
「アマキ!」
「ラクス!無事でよかったっ!」
自分の胸に飛び込んでくるラクスをアマキは笑顔でラクスを迎えた。
久しぶりに抱きしめ合う二人の温もりに、格納庫の張り詰めた空気が一瞬だけ和らぐ。アマキを包み込むラクスの瞳には、愛おしさと同時に、抱き心地の「ぷにぷに感」の変化を即座に察知した光が宿っていた。
「ラクス、ゴメン」
「いいえ、キラ。言わなくてもわかっておりますわ。アマキ、わたくしの言いたいことはわかりますね?」
ラクスはキラへ優しく微笑んだあと、アマキのほうへと向き直り、ふんわりとした、だけど絶対に逃がさない満面の笑顔を向けた。
「はひっ!?」
お菓子を隠れて完食していたことが完全にバレている。ラクスからの無言の体型チェックに、アマキは背筋を凍らせて直立不動になった。
「今は後にして。ラクス、僕の機体は?」
「こちらです」
キラが苦笑いしながら助け舟を出し、ラクスが格納庫の奥へと二人を誘導しようとしたその時、エターナルの大気圏外モニターが激しい敵襲を告げ、艦体を凄まじい衝撃波が襲った。
『ぐわっ!』
「アンディ!」
「隊長!うわ!」
ブリッジ方向からの悲鳴のような通信とともに、格納庫の天井から激しい火花が飛び散る。ザフト軍の追撃隊による容赦のない猛攻だった。
「きゃあ!」
「ラクス!大丈夫?」
「はい」
よろめいたラクスを、アマキがすかさずその頼もしい腕でしっかりと支え止める。激しい攻撃の中重々しい隔壁が開き、そこに眠る「新たな剣」が姿を現した。
「あれが、僕の機体?―――ありがとう、ラクス。これでまた僕は君たちを守れる」
金色に輝くインナーフレームを持つ、新型MS・ストライクフリーダム。キラはラクスとアマキを見つめ、守るべきもののために再び戦う覚悟をその瞳に宿した。
「キラ」
「じゃ、行こう!」
「うん」
「ラクス、終わったらみんなの所に帰ろうね」
「はい!」
3人は力強く頷き合い、それぞれの想いを胸に、キラとアマキはコックピットへと駆け上がっていった。
愛するラクス、そして隠居生活を送っていたあの穏やかなアークエンジェルの仲間たちのもとへ必ず全員で帰るために。ストライクフリーダムとスノーホワイトのシステムが今、凄まじい輝きを放ちながら大宇宙へと起動する。
「CPC設定完了。ニューラルリンケージ。イオン濃度正常。メタ運動野パラメータ更新。原子炉臨界。パワーフロー正常。全システムオールグリーン。ストライクフリーダム、システム起動」
ストライクフリーダムのコックピット。キラの指先がコンソールの上を凄まじい速度で踊り、OSのコードが全周囲モニターを濁流のように駆け抜けていく。ハイパーデュートリオンエンジンの咆哮とともに、機体の隙間から露出する金色のインナーフレームが、まばゆいばかりの輝きを放って覚醒した。全システムが瞬時に書き換えられ、最強のコーディネイターの機動に完璧に同調する。
「X20A、ストライクフリーダム、発進どうぞ!」
「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」
キラが操縦桿を強く引き絞ると同時に、背部のアクティブエアロアロダイナミックウイングが大きく展開し、青白いスラスターの光条が大宇宙を貫いた。カタパルトを爆音と共に蹴り飛ばし、ストライクフリーダムが光の矢となって射出される。その瞬間、隣のデッキのカタパルトが眩い駆動音を立ててオンラインになった。
「スノーホワイト、発進どうぞ!」
「アマキ・カンザキ、行くぞ!」
アマキの気迫に満ちた咆哮が通信回線を震わせる。純白の愛機スノーホワイトの推進器が限界まで同調し、神々しい双翼を大宇宙へと広げながら、ストフリの残光を追うようにしてカタパルトを滑走、一塊の白い閃光となって飛び立っていった。
「ふ」
バルトフェルドは無敵コンビの二人の登場にニヤリと笑った。その先では、襲撃してきたザフトの精鋭たちが、驚愕の声を上げている。
「何だあの機体は!?」
「新型か? 早いぞ!」
「ぅ…フリーダム?」
大宇宙を異変化した機動性で舞う金色の関節を持った機体、そしてそれと並び立つ純白のMS、スノーホワイト。かつてヤキン・ドゥーエでザフトを恐怖に陥れたあの悪魔の姿と、前大戦を終わらせた伝説の白い機体を認め、パイロットたちに戦慄が走る。
「くっ!」
ストライクフリーダムのコックピット。キラの瞳がカッと見開かれ、マルチロックオンシステムが作動する。
それと同時に、スノーホワイトのコックピットでは、アマキが鋭い視線でコンソールを睨み据えていた。前大戦でキラと共に戦火を潜り抜けた、英雄の顔だった。ストフリから放たれたハイマットフルバーストの光条が、25機のザクとグフの四肢を正確に焼き切っていく。しかし、その死角から、撃ち漏らしたザクのビームトマホークがストフリの背後へと肉薄した。
「キラの後ろを取らせるか!」
アマキの絶叫とともに、スノーホワイトの推進器が爆発的な光を放つ。純白の巨体が瞬時にザクの眼前に割り込み、手にした武装でトマホークの柄を鮮やかに弾き飛ばした。驚愕するザフト兵の隙を見逃さず、アマキはスノーホワイトの格闘兵装を一閃。コックピットを完璧に外し、ザクのメインカメラと両腕だけを瞬時に両断した。
「うわぁ!」
「これは!」
キラの神速の射撃と、それを完全に補佐しつつ突撃するアマキの鉄壁の格闘戦。二人の呼吸は寸分の狂いもなく、襲いかかる赤服の精鋭たちを完全に翻弄していく。
「ぅ…」
激しい閃光と振動がエターナルの艦体を揺らし、ラクスはブリッジのコンソールを掴んで小さく息を呑む。
一方、ザフト追撃艦隊の旗艦のブリッジでは、あり得ない戦況報告にグラスゴー艦長が怒号を上げていた。
「2分? わずか2分で25機のザクとグフが全滅だと!?」
「敵モビルスーツ接近!」
「ぇ…全砲門開け! 撃ち落とせーっ!」
モニターを埋め尽くすように急速接近してくるストライクフリーダムとスノーホワイトの影。グラスゴーが狂ったように叫ぶが、キラとアマキの獲物はすでにナスカ級艦隊の急所を捉えていた。
「当たれぇぇーっ!!」
ストフリの両腰のクスィフィアス3レール砲が放たれると同時に、アマキのスノーホワイトも連動して艦隊の推進部へと高出力の光線を叩き込む。二機の圧倒的な集中砲火が、ナスカ級のエンジンへと正確に突き刺さった。
「スラスター大破! 航行不能です!」
「ホルスト、カーナボン共に航行不能!」
「そんな馬鹿な!」
艦橋が激しく揺れ、火花が飛び散る。
一人の死者も出すことなく、わずか数分でザフトの一個艦隊を完全に沈黙させた圧倒的な不殺の力。ストライクフリーダムとスノーホワイトは、大切なラクスを守り抜き、エターナルへ帰投する。
ザフトの一個艦隊を完全に戦闘不能へと追い込み、大宇宙に再びの静寂が戻ってきた。ストライクフリーダムとスノーホワイトがエターナルへ入るのを見届け、バルトフェルドは鋭い声で命じた。
「エターナル、帰投するぞ」
「はい」
ダコスタが即座にコンソールを叩き、巨大な艦体が再びファクトリーへ向かう。無事に危機を脱したブリッジの中、ラクスはふっと表情を緩め、どこか悪戯っぽく、それでいて有無を言わさぬ笑みを浮かべた。
「うふ。さて、しっかりアマキを叱らなくては」
「あらあら」
ラクスの背後に立つアイシャは、やれやれと肩をすくめ、楽しげな苦笑いを浮かべた。嬉しそうな歌姫にアイシャは心からアマキに同情した。
(アマキ、貴方、今回は流石に泣くかもしれないわ)
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