気が付いた時には太陽が真上に昇る頃だった。傷はあらかた治っているけど体中が痛い。ルーミアはまだ眠ってい
た。まあ妖怪だから今の時間は眠るの普通なんだけど。封印はうまくいったみたいなので縛っていた縄を外して寝や
すそうな場所に置いてきた。それじゃあ帰りますか。
「あ、楓やっと見つけた。ごめんなさい、都にいられないくなった」
「妹紅一体何したの?弟子の人を殴ったとか」
「そんなことしないわ。妖怪退治しているところを見られちゃってね。妖術を使っていた時だったから言い訳もでき
ないし。で、晴明さんにもういられなそうだから都から出たほうがいいって言われたからここに来たの」
「知らせてくれてありがとう。でも、妹紅僕たちも別行動しよう?二人でいたら目立って退治されるかもしれないし
」
「まぁそれもそうね。またいつか会えたらいいね」
「うん。それまで元気でね」
妹紅は歩き出した。僕はどこに行こうかな。棒でも倒してきめようかな。と思ったらスキマに飲み込まれてしまった
。紫だけしかいないけど何かあったのだろうか。
連れてこられた所は大きな屋敷だった。そこに季節外れだけど見事な桜が一本咲いていた。
「楓。あなた陰陽術が使えましたわね。その中に封印の類はありました?」
「あるけど。それを何に使うの?」
「あの桜を封印してほしいの。あれは危険なものよ。まあとりあえず屋敷の中に入りますわ」
僕たちは屋敷の中に入ろうとしたとき、ここの警備の人なのか僕たちを呼び止めてきた。
「紫様、こやつは誰ですか。幽々子様に害をなすお方なら即刻お引き取り願いたい」
「この子は私の友人ですわ。
「わかりました。では案内します」
「妖忌だっけ。その浮いているのって何?」
「これは私の半身でございます。私は半身半霊という種族なのです」
「そんな種族があるんだ。あ、僕の名前は楓。黒楼楓」
「私は魂魄妖忌と申します。ここ西行寺家の庭師をやっているものです」
へえ、ここの庭師か。見たところ妖忌以外人はいなさそうだから全部一人で管理しているのかな。
「着きました。お嬢様入ります」
「どうぞ」
着いた部屋には一人の女の子がいた。
「紫~どうしてたの?最近来なかったし」
「優秀な陰陽師を探していたのよ。この子は妖怪だけど陰陽術も使えるわよ」
「へえ~。私は
「僕は黒楼楓。妖怪だけど少し前までは都で陰陽術の修行をしていたよ」
「都って安倍晴明のお弟子さん?」
「うん。一応弟子ってことになっていたけど妖怪ってのがばれたからいられなくなった」
「お気の毒に」
「で、紫なんで僕をここに呼んだの詳しく説明して」
「さっきも言いましたわ。あそこに咲いている桜を封印してほしいのよ。あれは
言って人を呼び寄せ死に至らしめる桜よ」
「じゃあなんでこの二人は無事なの?」
「それは私が説明するわ紫。私の能力は『死に誘う程度の能力』を持ってるの。以前は『死霊を操る程度の能力』で
したがあの桜の前で人が死にはじめたころから能力が変わったの。私は能力のおかげなのか死なないのよ。妖忌はも
う半分死んでいるような存在だから論外よ」
「私と楓は生と死の境界を弄ってあるから大丈夫なのよ。西行妖はこれまで大勢の人を殺しているわ。それにより今
も咲き続いている。楓はこれを封印できる?」
「一応できるかな。とりあえず大がかりな封印だから時間はかかると思うよ」
「よかったわ。いつぐらいには封印できそうなの?」
「半年以内にはできるかな」
「じゃあ任せたわ」
「了解。とりあえず桜の様子を見てくるよ」
紫は隙間でどこかへ行ってしまった。僕は西行妖のところへ行ってみる。綺麗なのだがどこか禍々しい。よく見ると
周りには霊魂が漂っていた。しかも妖力がでかい封印する前に弱らせる必要があるかもしれない。急激に成長したた
めなのか力も暴走している。西行妖に触れてみることにする。僕は何かに引き込まれる感覚がした。そして今までこ
の桜で死んで来た人たちの怨念もなだれ込んできた。危険だと思い僕は西行妖から手を放した。半年で封印できるか
な。晴明は結構簡単に封印とかできるけど僕は妖怪だから霊力も圧倒的に足りないし知識も少ない。ここは永琳の薬
を使ってみようかな。まだ妖力を抑える薬は残っていたはずだし、一応材料と知識さえあれば僕も作れる。隙間空間
に入れていた永琳の薬袋を取り出す。実験のため一粒だけ西行妖に取り込ませる。ほんの少しだけど妖力は少なくな
るみたいだ。とりあえずこれを全部使って妖力を抑えて封印を始めたほうがいいな。半年で終わるかなこの作業。
何とか半年で封印術式を作ることができた。これで必要なのは封印の媒体だけだ。霊力の高い何かを媒体として封
印を行う。妖怪である僕自身霊力が低いため、そして西行妖を確実に封印するためこれが欠かせないのだ。だが、媒
体が決まっていない。悩んでいた時に妖忌がやってきた。
「楓様お食事の時間です」
「わかった。今向かう」
僕と妖忌は食卓へ向かう。
「遅いわよ。楓」
「紫、久しぶり」
「久しぶりって、もう半年たったわよ。封印はできそう?」
「できるけど、あとは媒体が必要なんだよ。それがないとできない封印なんだ」
「そう。媒体にする物の目処はたってるの?」
「それがまだなんだ」
「わかったわ。私も探しておくわ」
「ありがと」
そんなやり取りの後食事は静かに終わった。なぜか幽子が思いつめた顔をしていた。何かあったのだろうか。いった
ん完成した術式の確認を行うとしようかな。
翌日、西行寺幽子は西行妖の前で自害していた。その横には遺書が置いてあった。僕は紫を隙間から引っ張り出し
た。どうやら寝ていたらしくとても眠そうだ。
「こんな朝っぱらから何の用なの?」
「これを見てもわからないの?紫」
「何のギャグよこれ。冗談じゃないわ」
「とりあえずこれ読んで」
幽子の遺書を紫に渡した。僕は一応読んだのでどうするか迷っているのだ。遺書の内容はこうだ。
皆様ごめんなさい。
私、西行寺幽子はこの身を断つことと決めました。こんな私に今まで一緒にいてくれてありがとうございます。
紫、短い間だったけどこんな私の友人でいてくれてありがとう。紫といた時が一番楽しかったです。だから悲しま
ないでね。
妖忌、お父様が好きな庭をいつもきれいに守ってくれてありがとう。私も妖忌が手入れしてくれていた庭が大好き
です。今までありがとう。
楓には私の体を媒体として使ってほしいです。私の体ならちょうどいい媒体になるでしょう。西行妖の封印が上手
くいくことを心から願っています。
西行寺幽子
「楓、封印を。早く!」
「わかった!」
僕は永琳の薬を西行妖に撒く。かなり妖力が抑えられたようだ。次に術式の展開。幽子を中心に巡らせていく。幽子
の死体は十分に媒体としての役割を果たせた。そして霊力を送り込んでいく。このまま順調にいけばいいんだけどそ
うはいかなかった。西行妖が抵抗してきたのだ。西行妖は枝を伸ばしてきて攻撃してくるが妖忌がそれをすべて切っ
ていく。あらかじめ頼んでおいたのだが妖忌はこれをかすり傷追わずに全て捌いている。この人ってただの庭師じゃ
ないよ絶対に。封印は順調に進んでいった。霊力もギリギリ足りた。あとは紫に仕上げを頼む。境界を操ることに関
しては僕はまだまだだからだ。西行妖は妖気のほとんどを失い巨大な桜となった。だが、この花が満開になることは
ない。満開となった時、それは封印が解けたという証拠なのだ。
「紫、これからここはどうなるの?」
「それは私にはわからないことよ。こんなに境界を弄ったのは久しぶりよ。もう疲れたわ。帰っていい?」
「どうぞご自由に」
紫はどこかへ消えた。多分また眠りに行ったのかな。
「妖忌はこれからどうするの?」
「私はしばらく放浪の旅に出ることにします。そしてまたこの場所に戻るつもりです」
「やることがないのか。じゃあほんの少しでもいいから僕に剣術教えて?」
「よろしいのですか。私の修業は厳しいものですぞ」
「いい退屈しのぎになりそうだし別にいいよ」
「ではしばらくここに残ることになりそうですね」
願うならこの花が咲かぬことを。