「むぅ、もう朝か」
日が昇り始めたころぐらいだから六時近くなのだろう。さとりとこいしはもう起きていてここにはいない。とりあえず人里捜して京にでも行こうかな。晴明がいないから陰陽師の眼は簡単にごまかせそうだし。それじゃあさとりにでも声かけて出かけるとしますか。
「おはようございます」
「あ、さとりおはよう。なんかよう?もうそろそろここでようと思っていたんだけど」
「用事というわけではありませんよ。楓さんは人里に行くんですよね。なので案内を用意しました。ここの近くに住む動物ですけど快く了承してくれました」
そいつはありがたいな。
「外に待たせているので一緒に向かってください。その子はイノシシの子供なのですぐわかりますよ。あとこれ朝ごはんの代わりに食べてください」
「ありがとう。もう行くね」
そういえば返事しなくてもさとりたちは考えていることわかるんだからなんも言わなくても伝わるんだった。確か外にいるイノシシの子供が案内してくれるんだっけな。あれかな?こいしもなぜかいるけど
「おはよー。この子が楓を案内してくれるんだって。楓も元気でね」
「うん。じゃあねこいし」
こいしがイノシシに何か言うとイノシシはこっちについてこいという眼差しを送ってきた。訓練されているのかなここの動物って。暫くの間は歩きだから行儀悪いけどさとりからもらった朝ごはん食べながらついてくか。イノシシの子供に頼んでる時点でここからそう遠くないところに人里がありそうだし。
日が真上を通り過ぎたころに人里が見えてきた。道中妖怪やら狩人やらに合わなかったし。イノシシには礼を言って帰らした。これ以上近づいて人間に見つかったらどうなるかわからないし、子供だから帰りに遊んでいくこともあるし。さて、近くの茂みにでも隠れて人間に化けてはいるか。旅して歩いているように棒と笠をかぶって僕は堂々と人里に入った。
「旅の人かい?こんな辺鄙な村にようこそ。うちは宿屋なんだが泊まってくかい?」
入ってすぐに村人であろう三十を過ぎたくらいの女性に呼び止められた。お金をあまり持ってないし時代があってないかもしれないからあまり使いたくないんだよな。
「すみません、遠慮させてもらいます。一つ聞きたいんですけどここから都へはどのくらいかかるのでしょうか?」
「都へ行くのかい?それならここから巳(南東よりも少し南より)の方角に四日くらい歩いたところさね」
「ありがとうございます。お金がないので代わりになんですけど、この酒をどうぞ」
ここを出る前に幽々子からもらったけどスキマにいれていたから痛んでないはずだから渡しても大丈夫なはずだ。
「それはどうも。そっちも頑張りなよ」
さて、ここから南東に四日か。スキマワープを使ってもいいけど時間もまだまだあるし狼の姿で走って休憩込みで一日とちょっとで着くかな。欲しい情報も手に入ったことだし村を一回りした後に都に向かうか。
そこまで大きな村ではなかったから小一時間ほどでほとんど見れたけど刀を差している人が多いな。これも時代が変わりつつあるってことなんだろうけどちょっと怖いかな。早くここを出て都へ行かなくちゃ。晴明の墓参りも一回はやっておきたいし、情報も一番集まりやすいし。村を出て人目のつかないところで元に戻って方角確認良し、天候良し、体調良し。都へ全力疾走、休憩は日が暮れてから。なんも考えないで走るのって何年振りなんだろうな。日が暮れるのが大体五時間くらいだから明日もこのペースでいけば日暮れには都につくのかな。
日も暮れて月が昇り真上を通り越して僕は寝ることした。いやー調子に乗りすぎたこれなら明日の朝には京につくかもしれない。今回は近くにあった山に穴を掘って眠ることにした。これなら正面からだから対処できるし小さい穴だから大型の動物も入れないから一晩だけ過ごすのには十分かな。