東方黒狼譚   作:黒狗

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久しぶりね

 僕は旅の途中で面白いうわさを聞いた。輝夜という美しいお姫様がいて五人のお偉いさんがその人に求婚するという話だ。天皇も輝夜が好きらしい。僕は面白そうなので輝夜のいる場所へと向かう。

 

 輝夜の家にはたくさんの人が集まっていた。今日五人の求婚者に対してお題を出すらしい。僕は人ごみを抜けて一番前の場所についた。奥の襖に隠れているのが輝夜って人なのかな。

「これから輝夜姫の難題を伝える。まず石造皇子(いしづくりのみこ)殿」

「はい」

「石造皇子殿には天竺にある釈迦が使っていたという『仏の御石の鉢』。次に、阿倍御主人(あべのみうし)殿」

「はい」

「阿倍御主人殿には、火では燃えない衣『火鼠の(かわごろも)』。次に、大伴御行(おおとものみゆき)殿」

「はい」

「大伴御行殿には、龍が持つといわれる『龍の首の珠』。次に石上麻呂(いそのかみのまろ)殿」

「はい」

「石上麻呂殿には、燕が子を生む時に出すといわれる『燕の子安貝』。最後に車持皇子(くらもちのみこ)殿」

「はい」

「車持皇子殿には、ここから東に行った海にある島に生えているという木の枝『蓬莱の玉の枝』。以上これらのものを一番最初に持ってきたものが輝夜姫の婿とする」

どうやら発表が終わったようだ。多分全部この世にないものだろう。燕が体内に子安貝を持っているわけないし、燃えない衣はこの時代では作れないだろう。蓬莱の玉の枝は永琳たちが持って行ったらしいし、龍はいるけど人間が倒せるものでもない。こんな意地悪な問題を出す輝夜ってどんな奴だろう。今日覗いてみるか。

 

 夜、僕は境界をいじって周りに見えないようにした。気配はできる限り消したつもりだ。僕は弊を飛び越えて屋敷に侵入する。多分寝室に輝夜はいるのかな。僕は屋敷で空いているところを探した。

 一か所だけ障子があいているところがあった。でも人がいる。見たところ女の子が屋敷の中に入ろうとしている。泥棒かな?僕は女の子に近づいて声をかけてみる。

「君泥棒でもするの?」

何もないところから声がするように見えているので女の子は驚いていた。僕は境界をいじって姿を現す。

「…なんだ。犬か」

「僕は犬じゃないよ。まだ小さいけど狼だ」

「犬が喋った」

「大声あげないでね。ばれると後々が厄介だから」

「わかったわよ。で、お前は何者なのよ」

「僕はしがない妖怪さ。僕はただ輝夜って人が見たくて入ってきたんだ。君は何の用なの?」

「私も同じよ。輝夜って人を見に来たの。そういえば声かけたとき見えなかったてことは何か術を使っていたのよね。それ私にも使ってくれない」

「いいよ。でも足音にはきをつけてね。見えないだけで音は聞こえるから」

「ありがとうね」

僕は女の子の可視と不可視の境界をいじって見えなくした。僕も境界をいじって見えなくする。自分自身が見えなくなるのも困るから互いにだけ見えるように境界をいじった。僕たちはさっき開けた障子からはいることにする。

 奥の部屋に一人の女の子がいた。この子が輝夜なのだろう。噂通りの美人だった。僕は今隙間を操る程度能力を使っているからあらゆるものの境界線が見えるようになっていた。でも輝夜には人間ならあるはずの生と死の境界線がない。なんでだろう。確か永琳の研究していた薬に蓬莱の薬というものがあったはず。だけどあれは完成しないといっていたはずだ。もしかして何らかのことがあって完成したのかもしれない。輝夜は永琳のことを知っているかもしれない。でも憶測に過ぎない。今聞くとしても話し声でばれる。今は帰ることしかできないかもしれない。僕は女の子に帰るよと小声で言った。女の子はうなずき僕たちは屋敷を出た。

「今日はありがとう」

「どういたしまして。でもこれだけでよかったの」

「うん。今の私にとってこれ以上できないし」

「そうなんだ。じゃあね」

「さようなら」

軽いく会話をして女の子と別れた。

 

 あれから三年の時が流れた。輝夜の難題を解けたものはいなく五人中四人の求婚者が失敗した。最後の求婚者である車持皇子が蓬莱の玉の枝を持ってきたそうだ。だが、車持皇子の皇子の持ってきたものは精巧に作られた偽物でありそれがばれてしまい失敗した。そして、輝夜は次の満月の時月に帰らなければならないらしい。僕は三年ぶりに輝夜のもとに来た。月に帰るってことは永琳が関わっているかもしれないからだ。京がその満月の日だ。僕は境界をいじって屋敷の中に潜入した。今回は天皇が兵を派遣しているため前来た時よりも厳重に警備されていた。僕は屋敷の隅でじっと待っていた。僕が今いじった境界は可視と不可視の境界と干渉と不干渉の境界だ。これでどんな術をかけても僕には効かないはずだ。

 夜、誰もが緊張し始めた。月がちょうど真上に来たころだ。空から乗り物がこちらへ向かってきていた。あれが月の使者か。月の使者は何かをしたらしく天皇が配備した兵たちや輝夜を育てたという人はみんな寝てしまった。これで起きているのは僕と輝夜、月の使者だけだ。そして乗り物が地上につき中から人が出てきた。出てきたのは永琳だった。僕は思わずしゃべりそうになってしまったが何とかこらえた。よかった永琳は生きていたんだ。永琳は輝夜に近づいて行った。そして弓を構え月の使者を射った。永琳が突然反乱を起こしたのだ。月の使者は残り三体でみんな戦闘態勢に入っていた。その中で一番偉そうな人が大きな声で

「八意様、何をするんですか。これ以上妨害行為を行うと反逆罪として八意様を殺します」

「構わないわよ。貴方たちが私を殺せるならね」

永琳はそういいながら弓を射る。今度はいちばん右の人の左肩に当たった。

「八意様。いや、八意×××貴様を反逆罪として処分する」

月の使者とやらは一斉に永琳に攻撃を仕掛けてきた。これじゃあ永琳が危ない。僕は月の使者たちの前に大きな空気の壁を作った。能力を切り替えたので僕の姿がばれてしまった。

「楓!生きていたのね。でも話は後よ。まずこいつらを倒しましょう」

「わかった。永琳援護よろしく」

僕は空気の壁を月の使者を囲むように配置した。そして上から押さえつけるように壁を作る。そして僕は横に飛ぶ。

「永琳矢を撃って」

僕は前の壁だけを解除した。永琳は弓を立て続けに三回射った。二人ほど殺せたがリーダー格の男が生きていた。持っていた剣で矢をはじいたらしい。僕は能力を切り替えて火を操る能力にする。今できる最大限の威力で使者にあてる。だが、使者は避けた。当たったらいいなと思ったけどやはり難しい。だけど永琳はそこに避けるのかを見越していたのか使者が避けた場所に弓を射っていた。矢は使者の頭に当たり戦闘が終わった。

「楓久しぶりね」

「うん、久しぶり永琳。大丈夫なのこんなことやっちゃって」

「ええ。大丈夫よ。姫様が望んでいたことを叶えたもの」

「永琳。そこの犬と知り合いなの?」

「そうです、姫。この子は私たち月の民がまだ地上にいたころに出会いました」

「そうなの。私は蓬莱山輝夜。よろしくね」

「よろしく。僕の名前は黒楼楓」

「それよりも早くここから出ましょう。ここは危ないです」

「それもそうね。行きましょうか」

「永琳、もう行くの?」

「そうよ楓。短い間だけど会えてよかったわ。また生きていたら会いましょう」

「そうだね。またいつか」

僕は永琳たちを見送った。僕は月の使者たちと乗り物を境界に落とし証拠を隠した。これでみんな輝夜が月に帰ったと思ってくれるだろう。

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