【SS】善子「簡単なことだよ、ずら丸くん」 作:OrengeST
~~~部室~~~
梨子「どう? うまくいく?」
善子「うーん……。だめだあ……!」
梨子「やっぱり無理よ。エアコンのドレンホースから、糸を外に出そうなんて」
梨子「エアコンの部品は曲がってもいないし、ひっかき傷も、汚れだってないし」
善子「……そう……だよね」
梨子「善子ちゃん?」
善子「あはは、エアコン切ってたら暑くなっちゃったわ。やめやめ。リリィ、部室の中でちょっと休憩しましょ」
梨子「……やれやれね」フゥー
~~~~~
梨子「あー、涼しい」
善子「……」
梨子「もうお手伝いは終わり? そろそろ善子ちゃんも、帰りの終バスじゃない?」
善子「……最後に、一つだけ」
梨子「もう、小出しにしてばっかりね」
善子「これは、相談……かな」
梨子「……相談?」
善子「糸も使っていない。鍵も使っていない。だとすればどうやってパンは密室から消えたのか。……どう思う?」
梨子「ふふっ、それが分かれば、私たちはこんなに困ってないわ」
善子「……リリィ。私は二つのことを考えたの」
善子「まず一つ。ダイヤが最初に鍵を閉めたときに、既に部屋の中には人が隠れていたの。そして、パンを取って逃げた」
梨子「……でもそうだとすると、部室を出るときにもう一度鍵を閉める事はできないわよね」
善子「その通りよ。だから二つ目の選択肢に移る。鍵は最初から最後まで、閉められていなかった――」
梨子「……それは、どういうこと?」
善子「最初に部室を出るとき、ダイヤが、鍵を閉めたふりをしていた」
善子「こうすれば、休憩時間には鍵を持ちださずに部室に入れるわ。でも、ダイヤが鍵を閉めるのは、しっかりと花丸は目撃してる」
梨子「……」
善子「ただね、この部室の出入り口は扉だけじゃない」
梨子「……善子ちゃん」
善子「――窓だってあるのよ。そして、窓が閉まっていると、皆の目の前で確認して見せたのは」
善子「リリィ、あなただったわよね」
善子「この窓のクレセント錠。持ち手の部分が上にある時は、ロックが掛かっていると誰でも思う」
善子「でも実際は、窓には遊びがあるから、クレセント錠を上に持ち上げた状態でも、鍵を掛けないまま持ち手の部分を上にできる」
善子「この状態で、窓を揺らして鍵がかかっている振りをすれば……。これで、偽りの密室の完成よ」
梨子「……それで?」
善子「最後にあなたは、窓に異常が無い事を確認するために、皆の前で窓を開放してみせた」
善子「後はもう、窓の鍵をいつも通りに閉めるだけね。これで終わりよ」
梨子「……ふふっ」
善子「リリィは、教室になんて行ってないんでしょう。ここには私しかいない。お願いだから、本当のことを話して」
梨子「あはっ!あははっ! とんだ、名探偵ね……ふふふっ!」
善子「どうして、ずら丸のパンを盗んだの? どうして、ルビィを助けてあげなかったの? どうして、どうしてよリリィ……!」
梨子「あはは……。ふふっ。……善子ちゃん、もういいわ」スクッ
善子「!? 何を……」