【SS】善子「簡単なことだよ、ずら丸くん」   作:OrengeST

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第三話:そして事件は解決に至る

~~~翌日:屋上にて~~~

 

曜(善子ちゃんが、犯人を見つけたらしい)

 

曜(犯人を説得するから協力して欲しいと言われて……部活の前に屋上に行くことになった)

 

曜(なんだか……ドキドキしちゃうな)

 

曜(こっそり、こっそり……)チラッ

 

曜「善子ちゃん……に、梨子ちゃん!?」

 

善子「あぁ。待ってたわ、曜」

 

梨子「……」

 

曜「そ、そんな……梨子ちゃんが」

 

善子「こっちへ来て」

 

曜「どうして……」

 

 

ポツポツ……

サーー

 

 

曜「雨……」

 

善子「すぐ止むでしょ。気にしないで」

 

善子「最初から説明してあげる。糸を使っても駄目、鍵も持ち出された形跡がない。どうにもならないから、私は鍵が元々かかっていなかったんじゃないかと思ったの」

 

曜「鍵が? でも、ダイヤちゃんは部室を出る前に鍵をかけたって言ってるし、花丸ちゃんもそれを見てた」

 

曜「部室に帰ってきたときも、ダイヤちゃんが鍵を開けてた気がするけど……」

 

善子「そうよ。でも、部室の出入り口は扉だけじゃない」

 

曜「そっか、窓、だね?」

 

善子「……」コクン

 

善子「窓が、実は最初から開いていたとしたら……。それを、最後に閉めた人が犯人、私はそう思った」

 

善子「そう思ってた」

 

善子「――でもそれは、違ったの」

 

 

~~~前日:部室にて(善子・梨子)~~~

 

 

善子「どうして、ずら丸のパンを盗んだの? どうして、ルビィを助けてあげなかったの? どうして、どうしてよリリィ……!」

 

梨子「あはは……。ふふっ。……善子ちゃん、もういいわ」スクッ

 

善子「!? 何を……」

 

梨子「この窓……ね」

 

梨子「善子ちゃん。こっちへ来て」ニコッ

 

善子「……」

 

梨子「怯えないで。別に何か意地悪しようってわけじゃないから」

 

善子「……なに?」

 

梨子「ほら、この窓のクレセント錠。よく見て」

 

善子「……これを、リリィが」

 

梨子「綺麗でしょう。傷一つないわ。これをもし……」グググッ

 

梨子「えいっ!」グイッ

 

梨子「ううっ、指が痛い……。でも案外いけるわね」

 

善子「私の言った通り……」

 

梨子「鍵をしないように、クレセント錠の取っ手を上にあげてみたわ。でもこの状態でも、かなり窓は強く固定されてしまうし……」ガタッガタッ

 

梨子「もしこの状態の窓を無理に開けようとすれば……」グググッ

 

梨子「んっーーーていっ!!」バキン‼ ガラガラ

 

梨子「ふぅ……とまあ、かなりの力が必要ね」

 

梨子「それにクレセント錠の錠側に鍵側が押し付けられているから、元に戻すと大きな音が鳴るわ。それに、ここを見て」

 

善子「……錠に傷が」

 

梨子「そう。さっき善子ちゃんは傷が無い事を確認したわよね。もしこんなことをすれば傷が出来るし、なにより、音が鳴るから皆に気付かれなかったはずはないの」

 

善子「じゃあ、リリィは……?」

 

梨子「もう酷い、善子ちゃん。私がそんなこと、するわけないじゃない!」

 

善子「な、なんだぁ……。よかったあ……。私てっきり、リリィかと」

 

梨子「信用ないなあ、もう」

 

善子「でも良くないっ! 結局フリダシよ!」

 

善子「窓にも、扉にも、鍵にも、机にもエアコンにも、傷も無ければ汚れも異常もない。一体どうやって――」

 

善子「傷も……汚れも……ないのに……」

 

善子「あっ!! あっー!! もしかして――」

 

梨子「な、なに!?」

 

善子「私、職員室に行ってくる! リリィも付いてきて!」

 

梨子「え、えぇ!?」

 

善子「ほら、早く早く!」ギュッ

 

梨子「いったい何~?!」

 

善子「あの部室はね、綺麗すぎるのよ!」

 

 

~~~屋上にて(善子・梨子・曜)~~~

 

 

ポツポツ

サーー

 

 

曜「部室が、綺麗すぎる……?」

 

善子「屋上でも、端の方に立つと色々なものがよく見えるわね。中庭の様子も、教室の様子も……私たちの部室の様子も」

 

曜「……善子ちゃん?」

 

善子「二回目の休憩の時。きっとルビィはここから部室を見ていたんでしょうね」

 

善子「部室に居る、曜――あなたのことを」

 

曜「……え?」

 

善子「惚けたって駄目よ。色々聞きまわって、職員室にも行って確認したの」

 

善子「昨日、外から人が学校に入ってきていないかって」

 

曜「……? 外から来た人と、私に何の関係があるのかな」

 

善子「予想通り、来ていたわ。マリーの言葉と、リリィと私の試行錯誤がなかったら、辿り着けなかった」

 

善子「あの古い部室に古いエアコン。だけど、あのエアコンは綺麗すぎた」

 

善子「あの日、私たちが部活をしている時間に――エアコンの清掃業者が学外から来ていたのよ」

 

曜「……」

 

善子「それもね、私たちが二回目の休憩をとっている間、まさにその時に、清掃業者は部室に入っていた」

 

善子「生徒ではなく、事務の先生がマスターキーを使って、部室に付き添ってね。通りで、生徒用貸出名簿に記載がないわけだわ」

 

曜「……はは。凄い、偶然だね」

 

善子「先生から聞いたわ。エアコンの清掃中に、部室に忘れ物を取りに来た子が居たってね」

 

善子「――肩くらいの髪の、活発そうな女の子。そう言っていたわ」

 

曜「……」

 

善子「私と花丸ではありえないわね。千歌じゃないの? とは言わないのね」

 

善子「まあ、分かってはいたけど。あなたは、自分が犯人だと分かっていて、千歌を陥れることは決して出来ないでしょうから」

 

曜「……なに、それ」

 

善子「言ったでしょ? 私は、よく聞きまわったの。家庭科部にだって行ったわ」

 

善子「あそこからは、部室がよく見える」

 

善子「曜、屋上のその位置からでは、部室は見えないでしょう? 私たちがいつも練習しているその位置からでは、屋上の縁が邪魔で部室は見えない」

 

善子「だから、休憩時間なの。休憩時間に屋上を降り、かつ部室にいるエアコン業者を見ることが出来たのは……やっぱりあなただけなのよ、曜」

 

曜「……」

 

善子「おしゃべりな家庭科部の子は、教えてくれたわよ。あなたに、二着分以上の布を渡していたってね」

 

善子「千歌へのプレゼントにしては多すぎる」

 

善子「それにAqoursに加入してから、あなたの手捌きを見ているけれど、失敗するとも思えないから、予備じゃない」

 

善子「なら、布のもう一着分はどこへ行ったのかしら」

 

曜「……ってよ」

 

善子「これは想像だけど、あなたは千歌へのプレゼントの練習着を二着作ったんじゃないかしら」

 

善子「一着は千歌へ。もう一着は――あなた」

 

善子「あの練習着は、元々ペアルックなのよね」

 

善子「さしずめ、千歌のTシャツの文字が千なら、あなたのTシャツの文字は『歌』かしら。それともカタカナの『カ』なのかしら」

 

曜「分かったから!もう黙ってよ!!」

 

善子「いやよ、黙らない! あなたはルビィを傷つけた。皆を傷つけた。私の居場所を傷つけたの! あなたが謝るまで、私は喋り続けるわ!」

 

善子「……これは計画的犯行だったはずはないの」

 

善子「マリーのもとにエアコン業者が入る連絡があったのは、急遽だと言っていた」

 

善子「他の生徒は、業者が来るまで知らなかったはずなのよ。無論、あなたも」

 

善子「あなたは、家庭科部の部屋で偶然、部室を見た。施錠されているはずの部室に、先生とエアコン業者が居る。そこで初めて、あなたに魔が差したの」

 

曜「知ったようなこと、言わないでったら!!」

 

善子「先生も居る。業者も居る。怪しまれないように、かつ目立つものをあなたは持っていきたかった。それが、机の上のパンだった」

 

曜「……もう、黙ってよ……」

 

善子「……何故こんなことをしたのか。話してくれるわね?」

 

曜「……」

 

梨子「曜ちゃん……本当なの? 善子ちゃんの話を聞いたときは、半信半疑だったけど、まさか、曜ちゃんが」

 

曜「梨子ちゃんのせいだよ」

 

梨子「……え?」

 

曜「……私ね。梨子ちゃんのこと」

 

曜「だーーーーーーーい嫌いだから」

 

曜「梨子ちゃんだけじゃない。皆、皆嫌い。皆が、私と千歌ちゃんの時間を奪っていくんだ!」

 

曜「私は水泳まで辞めたんだよ? 千歌ちゃんの夢を、二人で一緒に追いかけたいと思ったから。それなのに、何?!」

 

曜「千歌ちゃんの隣に居るのは、私じゃない!」

 

曜「梨子ちゃんは覚えてる? 東京のライブが終わった後の事。千歌ちゃんはね、あんな、悔しくて泣くような子じゃない」

 

曜「私の知ってる千歌ちゃんは、私に泣き顔なんて見せたことがないんだよ?」

 

梨子「……曜ちゃん」

 

曜「そんな……そんな目で私を見るな!渡辺曜は、高海千歌の一番の親友で……私が一番、千歌ちゃんのことを分かってるんだ!」

 

曜「アンタたちが、千歌ちゃんを変えちゃったんだ! 返してよ! 返せよ! 私の千歌ちゃんを返して!!」

 

善子「……曜」

 

善子「これはあなたの、復讐だったのね」

 

曜「そうだよ! 全部ぶち壊すんだ! 元通りにするんだよ!!」

 

曜「千歌ちゃんが誰も信じられなくなって、独りぼっちになっても、それでも私だけが側にいる」

 

曜「生まれたときからそうで……そして、死ぬまで。ずっと私たちは一緒に居るんだ!!」

 

善子「……だそうよ、千歌」

 

曜「!?」

 

千歌「曜ちゃん……」スタスタ

 

曜「ち……か……?」

 

千歌「ごめんね。私が、曜ちゃんを……こんなに、追い詰めちゃった……」

 

曜「あ……聞い、て……」

 

千歌「うん。善子ちゃんに呼ばれて、まず三人で話した方がいいだろうって。私達、最初の三人で」

 

曜「……」キッ

 

千歌「善子ちゃんを責めないで! 私は、寧ろ感謝してるんだよ」

 

千歌「曜ちゃんがそんなに私の事、大事にしてくれてたんだって、分かったから」

 

曜「……」

 

千歌「ねえ曜ちゃん。皆に、謝ろう? 皆きっと、笑って許してくれる。それから、やり直そうよ」

 

千歌「顔を上げて、前を向いて歩いている限り、私たちは何度だって、何度だって、なーんどだって! やり直せるんだよ!」

 

曜「もうだめだよっ……。私は、千歌ちゃんを裏切った。梨子ちゃんも、善子ちゃんも、皆も裏切った。もう私には、やり直す資格なんて」

 

千歌「……よーちゃん」ギュッ

 

曜「ち……かちゃん……?」

 

千歌「うん、千歌だよ。チカにとっても、曜ちゃんは大事な、一番の親友」ギュッ

 

千歌「だからね、前を向いて?」

 

千歌「私は曜ちゃんとも一緒に……ずっとずっと一緒に歩いていきたいんだ」

 

千歌「私と、曜ちゃんと」

 

千歌「梨子ちゃんと、善子ちゃんと、花丸ちゃんと、ルビィちゃんと、ダイヤちゃんと、果南ちゃんと、鞠莉ちゃんとで――」

 

千歌「皆で歩いていけばさ」

 

千歌「きっと、私と曜ちゃんが見る9倍。ううん、100倍、100万倍凄い景色が見られるんだよ!!」

 

千歌「なんでかな、そんな気がするの。――ほら、今みたいに!!」

 

 

曜「ぁ……」

 

曜「あぁっ……」ポロポロ

 

梨子「……虹……」

 

善子「……綺麗」

 

千歌「ね! 私たちは、すっごいんだから! 一緒に歩いて、一緒に見つけようよ!」

 

千歌「私たちだけの、とっておきの輝きを!!」

 

曜「ちか、ちゃん……」

 

曜「千歌ちゃん……ごめんっ……」ギュッ

 

曜「みんな……ごめんね……」ポロポロ

 

曜「ぅぐ……うぅ……」

 

梨子「……許してあげる」

 

梨子「私はね、曜ちゃんのこと、だーーーーーーい好きだから。嫌いになってなんて、あげないの」ギュッ

 

千歌「あはは、なんか梨子ちゃんに抱き着かれて、私と曜ちゃんが梨子ちゃんの子供みたい」

 

曜「梨子ちゃん……ごめん……」ポロポロ

 

梨子「はいはい、よしよし」ナデナデ

 

善子「……止まない雨は無いように。……解けない謎もまた、無いんだからね」

 

梨子「よい子の善子ちゃんも、こっちにいらっしゃーい」

 

善子「ヨハネっ! もう、せっかく恰好ついたのにい!」

 

千歌「あははっ」

 

 

 

~~~~~

 

~~~

 

~~

 

 

~~~いつかの日~~~

 

 

生徒A「ねえ、聞いた?」

 

生徒B「何の話?」

 

生徒A「なんでも、この学校に名探偵がいるらしいって」

 

生徒B「あ、知ってる。最近噂になってるよね。何でも、失せ物に探し人、たちどころに解決しちゃうんだってね」

 

生徒A「そうそう。全然知らなかったんだけど、それが一年生の子らしいのよね。あっ、ほらあの――」

 

花丸「善子ちゃーん、大変ずらぁ……」

 

善子「な、なに!?」

 

花丸「今度はロッカーに入れておいたはずの、のっぽパンが消えたずら……。鍵はかけておいたのに……」

 

善子「なぁんだ、そんなこと」

 

善子「ふふん」

 

善子「簡単なことだよ、ずら丸くん!」

 

 

 

~Fin~

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