正直者な草原狼   作:正直者

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CHAPTER1-3 小鳥遊ホシノ失踪

 さして味気のない栄養バーをガジガジとかじりながら、趣味の機械いじりに没頭する日々を過ごす狗原モミにとって、外部からの来客とは基本的に良い風を齎す幸せである。

 

 だが、時にそれは災いを呼ぶ颶風となっていくこともあるのだと、最近彼女は学んだばかりだ。近日の出会いなどはその筆頭で、過激な友人たちは家を荒らして帰っていってしまった。

 

 無事な機材を後々アビドスの生徒たちに依頼して搬出させたが、無事な機材の方が少なかったあたり、相当に楽しまれた様子だった。

 

 まあしかし、仕事用具まで叩き壊していくとは実にいい教育成果だなと思う程度の心はモミにもあり、故に少しばかり気分が優れないのが彼女の今である。

 

 そんな彼女へ舞い込んだ一報は、彼女をステージに立たせるには十二分すぎた……『小鳥遊ホシノが失踪した』。あまり会話をしに来ない、メガネをかけたアビドスの少女が、いつになく憔悴して現れその報を告げた時、あまりの衝撃に手元で作っていた兵器のパーツを取り落としたのは記憶に新しい。

 

 そして、訪れた彼女……改めての名乗りで奥空アヤネと名乗った彼女は、率直に頭を下げてこう頼み込んできたのである。

 

「お礼の話も、具体的な内容も、何一つわからないし、できません。でも、それでも……ホシノ先輩を見つけて助けるのに、貴方が必要です。どうか、力を貸してください……モミさん!」

 

 モミの答えは、最初から1つ。

 

「恩義は返さねばなりませんからね。ご友人、どうか頭を上げて。あなたの先輩、私の友を必ずや救い、また共に歩めるように……この狗原モミ、総力を以てお手伝い致しましょう」

 

 二つ返事で引き受けたモミは、極めて合理的に作戦を立案する準備のために、協力者の情報を漁るべくアビドス旧校舎へと発った。

 

 そして、『彼』……シャーレの先生と出会うのである。

 

 第一声は、先生の歓迎であった。

 

「やあ! 話は聞いているよ。よく来てくれたね……私がシャーレの先生だ。まずは、力を貸してくれてありがとう!」

「いえ、私も彼女たちに他に力を貸せる大人の方が居たとは存じませんでした。感激だ……どうかこの身をっと、名乗り遅れました。狗原モミと申します。私もお使いください、ご先達」

「分かった。よろしくね、モミ」

 

 作戦会議は極めて有意義な時間となった。モミの作戦具申と、シャーレの先生の一部修正。それから、アビドスの皆による細やかな部分の詰め。

 

 大枠を組み、それを訂正し、現場単位でさらにやりやすく纏める。それは、極めて理想的な最小単位の組織のプランニングの形だった。

 

 いくつかの情報を先んじて手に入れていたモミは、それらを勘案した配置を行っていくが、勿論その情報をその場においてモミ以外は誰も知らないので、逐一説明が入っていく。

 

 例えば、トリニティをアビドス方面に出立した謎の高射砲主軸の部隊があるだとか。

 

 例えば、ゲヘナの最強が最近暴れ回って問題児を片っ端から檻にブチ込んだっきり、丸1日姿を見かけないのだとか。

 

 そういった、他校の情報に精通しているモミは、それらが全て『こちらの援護のために充てられる』ことを予測していた。

 

「トリニティの高射砲部隊……なぜでしょう? モミさん、分かりますか?」

「ふふ、愚問ですよアヤネさん。あくまでも、『演習』の体でやる必要があるためです。事実、書類上の名目は『高射砲射撃演習及び遠征演習』ですね」

「……それが協力してくれると思う理由はなんなの?」

「セリカ、書類における管轄者の部分を見て欲しい。ヒフミが管轄者補佐に着いている。たぶん、ヒフミの声にトリニティが応えたんだろうね」

 

 疑問には当然回答するが、答えを述べるよりも先に先生が答えている時があることにモミは軽く驚いていた。よく頭の回ることだ、と内心感服しながらも、おくびにも出さず続ける。

 

「ゲヘナの方は風紀委員会というより『空崎ヒナ』が出張ってくるのでしょうね。風紀委員会全軍では少しゲヘナの治安の方に不安が残ります」

 

 その言葉にゲヘナの世紀末さを思い出した先生が遠い目をするのを、座に残された四人が若干引いた目で見ていた。治安が悪いとは聞いていたが、先生が『ああ』なるという時点で察しがついたのだろうか。

 

「ところでその書類とかはどこから……」

「ご先達。聞いてはならないことはあると思いませんか? あるものはある。使えるんだから使う。それで良いではありませんか。あぁ……もちろん、違法な手段は取っていないことを誓いますよ」

「……それなら、いい、のか……?」

 

 かなりグレーゾーンな位置を通過してはいたが、黒では無いのでセーフという話ではあるのだが、余計なことを言わないのが長生きのコツである。普段はそれを無視して久しいモミであるが、その気になれば腹芸もできないわけではないのである。

 

「それじゃあ……この案で良いですか? 皆さん」

 

 アヤネの言葉に、一同が頷く。立案者のモミ、指揮者の先生が最後にこれで良しとすると、アビドス一同は実行に向けた準備を整え始める。その機を伺って、そっとアヤネの肩を叩いたモミは、アヤネを屋上へと連れ出して行った。

 

「それで……何のご用ですか? モミさん」

「ふふ……今回の作戦限りですが、こんなものをご用意したのです」

「……これは、ヘリ? それも……大型武装ヘリですか!?」

「えぇ、えぇ。ご明察、この間私から卸したヘリ……銘は確か『雨雲号』でしたか? アレとはまた別でツテから引き受けまして」

 

 つらつらと語り、ヘリに驚くアヤネを促して扉を開き、中に案内する。計器類や、火器搭載の内容を驚きながらも確認するアヤネの背後から、モミは楽しそうに続けた。

 

「両翼に取り付けられたのは小型のミサイル。ガトリングガンを機銃として搭載、機体下部に懸架する形で四連装のグレネードキャノンを搭載しています。緊急時はフレア射出も可能で、そもそも耐弾、耐爆いずれも高い水準です。……ふふ、お気に召したでしょうか。もし、気に入っていただけたのなら……素敵だ」

 

 アヤネはそれらの説明を唖然とした顔で受けて、そして鋭い目つきで内装などを確認した上で、モミに問う。

 

「これを……貸与してくださる、と?」

「えぇ。これも私が出来ることですからね。遠慮なく、使い潰すつもりで使ってください。壊れても何ら責任を求めることはありません。一筆、ここに書いてありますから」

「……ありがとう、ございますっ! これなら私も前線に出やすいです!」

 

 花咲くような笑顔を同じく満面の笑みで返したモミは、彼女に告げることは無い。

 

 この機体の元の出処がカイザーから奪ってきたものであることも。

 

 武装だけ換装して、出処の分からないように装甲をミレニアムの新素材研究部が作った素材で張り替えたことも。

 

 ぶっちゃけ、使う機会がないから死蔵していたので1回暴れさせてもらってから出来れば迎撃か何かで爆散して欲しいことも。

 

 それすらできないくらいに硬く固く堅く作ってしまったことも。

 

 モミは何も言うことはなかった。

 

だから強いて考えを表すのであれば。

 

「(操縦、ミスってくれないでしょうか……無理でしょうねぇ……ま、最悪アビドスにこのままぶん投げてしまいましょう。そうしましょう)」

 

 正しくカスみたいなことを考えて、善意を押し付けたモミは満面の笑顔を作り続けたのである。

 

 




・大型武装ヘリ『プラネットクローザー』(命名者:モミ)

惑星を封鎖する者という銘を冠するカイザー社製大型武装ヘリの改造品。

ミレニアムの新素材による堅牢な装甲と、モミ謹製の諸兵装により対地対空両対応の空飛ぶ要塞ヘリが完成した。



感想、どうすればいいかいざ来られると迷うものですが、返すことにしました。モチベーションに繋がりますし、是非お願いいたします。

説明通り、両翼内側にガトリングガン二門、外側に多連装小型ミサイル、機体下部に懸架式四連装グレネードキャノンを有する火力機体でありながら、弾、爆発のいずれにも強く、また求められる以上の水準の機動力さえ有する。

そのスペックが故に、見るものが見なくとも腕の立つ技術者が携わったことがすぐに分かる代物で、自分で使う気にならなかったモミはこれをアビドスに押し付けることにした。
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