ゴンが殴る!   作:リーマン

2 / 6
2話

「ここが帝都!すごい人だ!」

 

帝都の港についてのゴンの第一声がこれである。

時間はちょうど、昼の手前。人が外に出るもっともいい時間だろう。

ゴンはその小さな胸いっぱいに帝都の空気を吸った。あまり、くじら島に比べればおいしくない空気。それでも、この冒険の味のする空気は悪くない味だった。

ゴンはまずあちこちを見て回ることにした。というわけで、人ごみの中に混じっていった。

そこで見るものはすべてが新しく見えた。例えば、高級呉服屋、馬車屋、大道芸などなどは見たことも聞いたこともなく。大道芸は思わず立ち止まってしばらく眺めてしまった程だ。あとでお捻りを求められて焦ったのは御愛嬌だ。

逆に見たことも聞いたこともあるものでも、デザインが凝っていたり、小型化されていたりとゴンを飽きさせるものは一つもなかった。

あとは、食べ物だろうか。ちらほら出ている屋台には必ず行き、美味しそうであれば買って食べた。特に名物と言うアイスクリームが美味しかった。

そのアイスクリームを店先のベンチで食べている時にやけに明るい声をかけられた。

 

「やっほ、少年。帝都は初めてかい?」

 

ゴンが夢中になっていたアイスクリームから顔を上げるとそこには、金髪金目の巨乳かつエロい格好をした笑顔の女性が立っていた。

 

「うん!そうだよ」

 

人を疑うことを知らないゴンは元気に返事をする。

 

「へぇ〜そっかぁ。少年は何しにきたの?おっと、私はレオーネ。よろしくな!」

 

そう言ってレオーネはゴンの隣に腰掛けた。

 

「よろしく、レオーネさん!オレはゴン!軍人になりに来たんだ!」

「へぇ〜軍人ねぇ……」

 

レオーネは含みを持たせたような顔と声だった。それを若干気にしたゴンだったが、であってまだ数十秒なのでこういう喋り方なのかな、と勝手に納得してしまった。

レオーネはすぐに一転。

 

「じゃあさ!おねぇさんが手っ取り早く軍に入ってのし上がる方法を教えてあげようか?」

 

ニヤリと悪そうな笑顔で言った。何か不正の臭いがした。

ゴンはそれにやや面食らう。

 

「う〜ん、いいや!オレちゃんと親父の跡を追いたいんだ!」

「ゴンの親父さんも軍人なのか?」

「うん、尊敬してる。だからちゃんと追いたいんだ」

「そこまで言うからにはすごい人なんだろうね。名前は?」

「ジンていうんだ」

「……ジン」

 

レオーネは聞いたことがなかった。そもそも、レオーネの思惑としてはゴンがここまで豪語するならそれなりの地位にいる人間だと思い、探りを入れビンゴだったら誘拐して父親をゆする。そんな算段でいたのだ。しかし、ゴンの口から出てきたのは、聞いたこともない、ジンと言う名前。ご破産である。

レオーネは一応あとで上司に聞いてみよー、と思いながら立ち上がった。

 

「う〜ん、聞いたことないなぁ!ま!いいさ!少年、邪魔して悪かったね!!お詫びと言っちゃなんだけど何かして欲しいことあるかい?おねぇさんがなんでもしてあげよう!!」

 

そう言ってレオーネは大きな胸を更に張った。

ゴンは少し迷ったあと、

 

「じゃあ、ここら辺でいい宿ないかな?」

「そんなのはお安いご用だ。この道を一本外れたところにバンダイって宿があるよ。そこはオススメだ!」

「ありがとうレオーネさん!」

ゴンが礼を言うとレオーネは照れくさそうにした。

 

「どうってことないよ。じゃあな、少年!!」

そう言ってレオーネは人ごみの中に消えていった。

ゴンはレオーネの消えていった所をしばらく見続けた。

 

「なんか、不思議な人だったな」

 

 

 

その後も帝都観光を続け、いろいろと手荷物が増えてしまったゴンは時間もいい頃だし、とレオーネに教えてもらった宿に向かった。

宿の外観はこじんまりとしているものの、窓のすき間からもれる優しい暖色の光、煙突からくゆる乳白色の煙。それが夕暮れの赤に映えて、何とも言えない郷愁を醸し出していた。

中からは、男たちの笑い声、女たちの注文をとる声などが聞こえてくる。

ゴンは、ウエスタンドアになっているそれを押して入った。

中では、声の通り多くの男達がトランプ片手に酒を飲んでいた。勝ったり負けたり、表情ですぐにわかる。そして、そんな男達がこぼした酒やらをふいたり、注文をとるために走り回る女たち。くじら島にある酒場とは活気が違った。

「お泊りですね」

 

関心しきりのゴンに女性店員が声をかけた。

最初から泊まりと決めつけているのはゴンがまだ年端もいかない少年だからだろう。

ゴンが頷くと、こちらにどうぞ、と二階の個室に案内された。

そこで簡単な利用説明を受けたあと、どうぞごゆっくり、と残し店員は出ていった。

部屋にはベッドと机、それに簡単な洗面台しかない。お風呂は共用のが三階にあるそうだ。

ゴンは帝都観光で疲れた体を癒すために、さっそくお風呂に向かった。

お風呂は大きな木造りで、何故か真ん中に岩が鎮座していた。

ゴンは洗い場で頭、体を洗い、湯に浸かった。少し熱かったが、時間が経てばなれるだろう。真ん中の岩に行き、そこに背を預け、大きく息を吐く。何か現実感がなかった。自分は本当に帝都にいるのか、そんな疑問が出てきたがすぐに打ち払った。もう、ホームシックになっているのかもと思いながら熱さになれてきた頃、風呂の入口が音を立てて開いた。

見ると、二人の頬の赤い男が入ってきていた。

二人は体も洗わず、ザブンと湯に入った。そして、こんな話を始めた。

 

「ふぃ〜えぇ湯だぜ〜」

「はぁ、まったく。最近は風呂ぐらいしか息をつけねぇ」

「ああ、イェーガーズだろ。エスデス将軍が隊長の」

「たくっあれができてからビビっちまってオチオチ盗みも働けねぇ」

「せちがれぇよな」

 

どうやら二人は泥棒でもしているようだ。

ゴンのことは岩が影になり気づいていないようだ。

二人の話は続く。

 

「そういやよ今度、エスデス将軍主催の武芸大会が開かれるんだってよ。んで賞金も出るんだと」

「いくら?」

「知らねぇ。けど将軍主催だぜ。たんまり出んだろ。しかも、だ」

「あ?」

「エスデス将軍も見に来るんだとよ。そこで活躍すりゃァ」

「取り立ててもらえるチャンスが〜?」

 

そこで二人は息を合わせて

 

『ねぇよ!!』

 

そして二人はゲラゲラと笑っていた。

その後二人は、結局体も洗わず出ていった。何しに来たんだと言う感じである。

 

部屋に戻ったゴンはベッドに寝転びながら、さっき聞いた話を反復していた。

 

「今度エスデス将軍主催の武芸大会が開かれるんだってよ」

「そこで活躍すりゃァ」

 

あの時、二人がねぇよ、と言ったのはたぶん自分たちにはその実力がないとわかっていたからだろう。

ゴンも自分をそこまで過大評価はしていないが、森の中でたくさんの動物と格闘したことのあるゴンは少しだけ自信があった。

そして、優勝ないし、活躍できれば。父親への道がぐっと近くなる気がした。この方法はレオーネのように不正の臭いはしないし、最善の策に思えた。

ゴンは出ることを心に決め、今日の疲れに誘われて眠りの世界に入った。

 

 

「ただいま〜!ボスいる〜?」

 

レオーネは、ナイトレイドのアジトに帰って、第一声、上司の所在を聞いた。

「ボスならさっき作戦室に入って行ったわよ」

 

その問にピンクの髪をツインテールにしたレオーネと対照的な胸を持つ少女が答えた。

 

「ありがと、マイン!」

 

レオーネは作戦室にとんでいった。そして、作戦室の扉をノックする。

 

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど〜」

 

聞きたいことというのはもちろん、ゴンのことである。

中から女性の声で入れの声が聞こえた。

レオーネが中に入ると右手に大きな義手を着けたショートボブの銀髪の女性が大きな地図を机に広げて睨んでいた。この女性こそが帝都を騒がせている暗殺組織ナイトレイドのボス、ナジェンダその人だった。

 

「何だ?」

 

言葉短めだ。手早く済ませて欲しいのだろう。それを感じたレオーネも遊びを入れずに単刀直入に聞く。

 

「ボス、ジンって知ってる?」

 

すると、ナジェンダはバッと顔を上げ、信じられないと言った表情をした。しかし、いつもの無表情に戻し、やや鋭目の声で、

 

「それをどこで聞いた?」

 

レオーネはナジェンダの様子の変化に驚きつつも答える。

 

「今日、帝都であった男の子が父親だって言ってた。しかも、軍人だって」

「……」

 

ナジェンダは黙ってしまう。何かを思い出している、そんな様子だ。いつもの、打てば響くようなナジェンダにしては珍しいことだった。

「誰なんだ?ジンってのは」

 

レオーネの促しにナジェンダはどこか言いづらそうに口を開いた。

 

「奴を一言で言うなら『謎』だ」

 

 

レオーネはナジェンダの話を聞いたあと、自室に戻り、話の内容を思い返していた。

 

ジンはナジェンダと同じ将軍であったこと。しかし、性格はおよそ将軍に合わなかったという。仕事をほっぽりだし辺境に行っては危険種と「戯れていた」そうだ。他にも、面白そうなことが起こるとこれまた仕事をほっぽりだし、真っ先ににそれに突っ込んで行ったという。それ故になぜアイツは軍に居るんだと噂され、厄介者扱いされていたという。それでも、将軍職を解かれなかった所を見ると実力は確かなのだろう。

そんな彼が、バン族の討伐にナジェンダ、エスデスとともに任命された。

それの行軍中、彼は一人煙のように消えた。当初は革命軍に寝返った。エスデス将軍に滅されたなどの噂が軍内部で出たもののどれも証拠がなかったためすぐに消えた。

帝都はすぐに捜索の任務に彼の弟子を任命したが、今だ発見には至っていない。

それがナジェンダから聞いたジンという男の全てだ。

ナジェンダの言う通り『謎』だ。何をしたいのかさっぱりわからない。なぜ消えたのか? 彼にだって、人間関係があったはずだ。それら全てを捨ててどこに行ったのか。うん、『謎』としか言いようがない。

そして、

 

「……ゴン、か」

 

そんな彼の息子、ゴン。ゴンは父親を尊敬していると言っていた。だが、ゴンがどこを尊敬しているのか正直わからない。そもそも、ゴンとジンが過ごした時間は限りなく少ないのではないだろうか。

自由気ままな父親。

親子の時間があったとは思えない。

そんな父親の跡を追い、軍人になることを決意していた少年、ゴン。彼もまた『謎』だった。

 

 

つぎの日、まだ夜のあけきらぬ頃にゴンは目を覚ました。普段はもうちょっと遅いのだが、帝都での初めての夜ということで緊張していたのかもしれない。

ゴンは歯と顔を洗い、手早く着替えて下の酒場に降りていった。

そこは昨日の喧騒が嘘のように無くなり、朝の静謐な静けさが支配していた。

まだ、宿の人も起きていないのだろうか、そう思った時、物音が聞こえた。した方を見ると店の店主と思われる髭ヅラの恰幅のいいオヤジがアクビをしながら店の奥から出てきた所だった。

 

「ん?坊主朝早いな」

「うん、あのさ聞きたいことがあるんだけど」

「何だ?」

 

ゴンは店主に武芸大会のことを話し、それはどうすれば出れるのか聞いた。

店主は丁寧に教えてくれた。

西の方にある闘技場に行けばいいそうだ。

そして、最後に、

 

「気を付けろよ。マジで殺しに来るやつもいるって話だからよ。噂だがな」

 

そして、店主は奥に戻っていった。

ゴンは今の言葉を唾と共に腹に飲み込んだ。

ゴンは店主が作ってくれた朝ごはんを食べ、一度自室に戻り身支度を済ませた。その頃にはもう日が高くなり、酒場にもちらほら客がいた。朝から一杯やるらしい。仕事はどうした。

若干酒臭さが漂いはじめた店をゴンは出て、店主に教えてもらった道順に従い闘技場を目指した。

闘技場には朝早くからにも関わらず多くの人が行列を作っていた。おそらく出場者たちだろう。

ゴンは最後尾に並び、順番を待つ。途中何度も舐めた視線を感じたが無視した。そんなことよりも気がかりなことがあったからだ。

それは自分のような子供が出場できるのかということ。連絡船に乗るのにも保護者の許可を求められたのだ。もしかたら……

そしていよいよ、ゴンの順番になった。手続きは驚くほどあっさり終わった。名前を書き、ナンバーカードを渡される、終わりである。

年齢さえ聞かれなかった。ゴンみたいな子供が出ることに何か規制、最悪、出場出来ない事でもあるかもと身構えていた身としては脱力するしかなかった。

ともあれ、これで大会出場が決定した。

開催日は、三日後!!




エスデス様はゴンを気に入ってくれるかなぁ。でも、ゴンなら出来るって私信じてる!!
大会で誰とゴンを戦わせるか悩みます中。
素直にタツミと戦わせていいのか……
追記
次の更新はどう頑張っても20日以降になります。
追記2
鋭意執筆中です。投稿は今週中にはどうにかしたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。