ゴンが殴る! 作:リーマン
宇宙恐竜さんの感想を見て書きたくなったので思わず書いてしまいました。
なので、私は悪くない!!
……………悪くない、よね?
王直属護衛軍が一人、ピトーとの自らの骨肉を断つ戦いのあと、ゴン=フリークスは行方不明になっていた。
ピトーを倒した際の最後のジャジャン拳でできた森を大きく削りさったクレーター。そこにゴンさんはいなかったのだ。
では、どこに消えたのか……
最後のジャジャン拳発動の際、自分もろとも消してしまったのか……
はたまた自らの足でどこかに消えたのか……
それは永遠にわからないままだろう。
それは、H×Hの世界の中では、の話だが。
世界の中では、とはどういう意味か。
それは、ゴンさんが異世界トリップしてしまった、という意味だ。
◆
まず、初めに感じたのは強い草と土の匂いだった。次に火照った体に心地よさそうなそよ風を感じる。音は、そよ風が揺らす草の擦れ合う音。それらが地に倒れふしているゴンさんの覚醒を促す。
「……う、ここは?」
ゴンさんは軋み痛む身体を我慢して『右手』で身体を支えながら起き上がった。
目の前には果てまで続く草原が広がっていた。時間は夜で、見上げれば、満天の星々と月の柔らかいあかりが草原に優しくそそいでいた。それにより、光を遮るものがないここは昼と大差のない明度であたりを見渡すことができた。
ゴンさんはここで異変に気づく。
『右手』で身体を支える?
自分の右手を見る。次に月明かりに照らしながら裏返したりしながら見る。それは確かにピトーに奪われたはずの自分の右手だった。しかし、嬉しさは欠片もわかなかった。逆に見れば見るほど、虚しさが心を侵してくる。
それは、自分の罪を忘れてしまったような気分だった。ゴンさんはあげていた右手を下げ、下に見る形にした。
「……………カイト」
ポツリともらしたそれは、草の囁きに風と流されていった。
ゴンさんの頬につうっと涙が伝う。そして、涙の粒が右の手の平に落ちた。ゴンさんはそれを強く握り締めた。
「…うっ……うっ……うぁ………うぁぁぁぁぁ!!」
初めは嗚咽だったそれはすぐに慟哭に変わった。
ゴンさんは右手を地面に幾度となく思い切り叩きつけながら、泣きわめいた。
ゴンさんは右腕の根元あたりを指が食い込むほど掴むと引きちぎろうとした。
「うっー!!うっーー!!!!うわぁーーーー!!!!」
果たして、引きちぎることは出来なかった。自らを傷つけるのが怖かったのだ。それは、罪がますます深くなっていく、そんな錯覚をゴンさんに覚えさせた。
ゴンさんは右腕を抱えるようにしてうずくまった。
「っ……」
◆
次にゴンさんの覚醒を促したのは眩しさだった。薄らと目を開くとそれが強くなり、ますます覚醒を促してきた。
ゴンさんは昨日のことを思い出す。どうやら、泣きつかれて寝てしまったようだ。
ゴンさんは左手で身体を起こす。変わらず、見渡す限りの草原が広がっていた。変わったのは頭上で燦々と輝く太陽ぐらいだろう。
そう言えば昨日は、右手のことで頭が一杯で気にしなかったが、ここはどこなのだろうか。ピトーとの決戦をした森だろうか。最後のジャジャン拳の際の爆発で飛ばされてきたのだろうか。
いや、それよりも気にしなければならないことがあった。
ピトーとの戦い。
あの時、自分は全てを投げ捨て、途方も無い力を手に入れた。それは、後先考えず、これで終わってもいいという覚悟で発動した、まさに決死の技のはずだった。それがなぜか、死んでいないばかりか、ピトーに奪われたはずの右手も元に戻る始末。さらに、身体のサイズが元に戻っていない。オーラの内包量も依然増えたままだった。自分の体はどうなってしまったのか……まったく分からなかった。
ゴンさんはその後もしばらく考え続けたが結局、答えは出なかった。仕方ないので、考えることをやめ、とりあえずここから移動することにした。キルアたちを探さなくては。キルアたちに合流すれば、ハンター協会会長のネテロもいたことだし、自分の今について何かわかるかもしれない。
現在地がわからないので、とりあえず太陽が昇っている方、東に進路を取ることにした。
ゴンさんは立ち上がり、その全身に昇りゆく太陽の光を受けた。
「東……か」
◆
ゴンさんはしばらく太陽を頼りに東の方向へと歩を進めた。たまに立ち止まり、風に乗っている匂いを嗅ぎとる。様々な匂いがかぎとれるが、ついぞ自分の知っている匂いはなかった。
その後も歩き続けたが森を抜けられず、夜になってしまった。別に疲れてはいなかったが、休みたい気分だった。というよりは夢の世界に入ってしまいたかったのかもしれない。
仲間たちと会えない。
それが、ゴンさんの心にはかなりの負担になっていた。
ゴンさんは適当な木のうろに身を縮こませて入り、そこで寝た。
次の日は、雨だった。
ゴンさんは雨の中、足場の悪い土道を裸足で歩いていく。匂いを嗅ぐことはもうしない。雨で流されてしまっているだろうから。
この日も森を抜けることはなく、ゴンさんの心には寂しさと焦りが募っていくばかりだった。
また次の日。
ゴンさんは歩いている間中、ずっとカイトのこと、右腕のことを考えていた。カイトのことを考えると罪の意識が無限に湧き、右腕のことを考えると無性に泣きたくなるのと同時に罪の意識が深まるばかりだった。それは、ゴンさんの心をゆっくりと腐らせ、蛆をわかせていた。それでも、自殺しようと思わなかったのは『カイトに助けられた』その事実が大きかった。
この日は夜になっても延々と歩き続けた。
次の日。
ゴンさんはかなり大きい一本道の脇に出た。
ゴンさんが左に行くか右に行くかで迷っていると、一台の『馬車』が左手からやってきた。ゴンさんは初め、それが馬車だとは分からなかった。彼のいた場所では馬車はすでに過去の遺物になっていて、見る機会はなかったからだ。わかったのはひとえに、ミトが受けさせていた通信教育の賜物だろう。
ゴンさんは馬車が通り過ぎるとき、二人の御者が話していた『帝都』という一単語だけを聞き取った。
馬車が向かった方に行けば、帝都というところにつくのかもしれない。そこでハンター協会の支部を見つけることができれば、連絡を取り合えるかもしれない。行ってみることにした。
◆
あれから、半日ほど歩き続けようやくおそらく帝都に着いた。おそらく、と言うのはもちろんゴンさんが帝都を見たことも聞いたこともないからだ。
帝都は人でごった返していた。ゴンさんの出身地、くじら島の住人を全部でもなお足りないほどの人が一目でいた。
ゴンさんはその中に混じってゆこうとした。だが、ゴンさんが近づくと周りの人達は奇異の視線を向けてきた。だいたいの人が上を見上げ、口をあんぐりと開けている。
そんな視線の全てを無視してゴンさんは進む。探しているのは念能力者。ハンター協会の支部はことごとく巧妙に隠されているため、探し出すのは至難であった。なので、念能力者探しだし、それとなく質問してみるつもりであった。
結果、一人として見つからなかった。
大都会なら一人ぐらいはいると思ったが一人もいなかった。そもそも、この帝都という所、文化レベルが低すぎる。途中、あまりに見つからなかったため、ダメ元でめくろうとネットカフェを探したのだが一軒もなかった。なら、携帯を手に入れようとしたのだが、携帯ショップがない。
絶望にくれたゴンさんは一人で夜のベンチに座っていた。
季節的にそんなに寒くないのだが、心が寒かった。
そんな時、自分に近づく気配を感じた。
顔を上げると、金髪の身なりの良い少女が一人とその護衛と思われる二人の男が近づいてきていた。
少女はゴンさんの目の前に立つと、
「もし、止まる宛がないなら私の家に来ない?」
そう尋ねてきた。
ゴンさんはその提案に乗ることにした。少女の身なりの良さ、後ろにある豪華な馬車、護衛を付けるほどの身分。コネと金、もしかしたらハンター協会の場所がわかるかもしれない。
「わかった」
そして、ゴンさんは、少女の馬車に乗り込んだ。
◆
タツミは、今非常に萎えていた。
というのも、意気揚揚と故郷の村から帝都に来たのはいいのだが、その道すがら仲間二人とはぐれてしまい、一人で着いたところを見ず知らずのおっぱいに騙され、有り金全部取られてしまったのだ。
仕方なく、野宿を決め込むことし、橋の袂に寄りかかり寝ていた。
そこに一人の少女が近づく。気配を感じ取り、タツミは顔を上げる。そこには身なりのいい金髪の少女とがいた。
「もし、止まる宛がないんだったら私の家に来ない?」
少女の提案に騙されることを知ったタツミは疑いの目を向ける。
「俺、金持ってないぞ」
タツミがそう言うと少女は軽く笑って、
「持ってたらこんなところで寝ないわね」
後ろから来た護衛二人も、
「アリアお嬢様はお前みたいな奴が放っておておけないんだ」
「お言葉に甘えておけよ」
後押しをしてくる。
「どうする?」
少女の問にタツミは若干、顔を赤くして、頭をかきながら答える。
「ま、まぁ、野宿するよりはマシだけどよ……」
「決まりね!こっちに来て」
タツミの返事にアリアは満面の笑顔になり、タツミの手を取り馬車の方にグイグイと引っ張る。
タツミは立ち上がり、アリアに促されるまま、着いていく。
アリアが馬車の扉を開け、先に乗り込む。タツミもそれに続き乗り込もうとし、固まる。馬車には先客がいた。
先客は全身を分厚い筋肉で覆い、それをパッツンパッツンの服でさらにおおっていた。さらに特筆すべきはその逆だった髪だろう。長すぎるそれは馬車の中を何周かしていた。
「タツミ、こちらはゴンさん。あなたの前に拾ったの」
アリアは笑顔で紹介してくる。タツミは苦い笑いしか出てこない。
「タ、タツミです。……よろしく」
「ゴンだ」
短めの自己紹介を終え、タツミは空いた席に小さくなって座った。
◆
ゴンさんとタツミが連れいかれたのは、大きな屋敷だった。
そこで案内された部屋は豪華を体現しており、タツミは来てから終始、圧倒された様子でいた。
部屋には柔らかそうな椅子が4つあり、それぞれにアリアの両親、アリア、そしてゴンさん、タツミが座っていた。最後の二人は、一つの椅子に窮屈そうに座っていた。ゴンさんは無表情でタツミは萎縮しているようだ。家族三人は談笑している。二人だけが取り残されていた。
そこで、ゴンさんとタツミは出されたお茶を飲みながら、それぞれの事情を話した。
話し終えると、アリアの父が口を開いた。
「なるほど、二人の事情はわかった。まず、ゴンさんの方だが、すまない、ハンター協会と言うのは聞いたことがない。次にタツミ君、君は軍で出世して故郷の村を救いたいか。だがわかっているかね。この国は三方を異民族に囲まれている。その戦いに駆り出され、命を落とすかもしれないのだよ?」
アリアの父からの忠告にタツミは顔を引き締めた。
「覚悟はしています」
アリアの父は、感心した顔を見せると手をぽんとうち、
「なるほど、見上げた根性だ。若者はそうでなくてはな。よし、わかった。君の二人の仲間のことも含め、軍の知り合いに口をきいておこう。もちろん、ゴンさんのハンター協会のこともね」
その言葉にタツミは立ち上がり、深々とお辞儀をした。
「ありがとうございます!!!!」
ゴンさんも、
「ありがとうございます」
と続けた。
そこにアリアが口を開く。
「アリアのカンってよく当たるんだけどね、タツミは二人にすぐ会えるような気がする」
タツミはその言葉に嬉しそうに頬を赤くした。
◆
その夜、屋敷に静かに近づく複数の影があった。手にはそれぞれ武器を持っていた。全身を鎧で覆った者までいる。随分と物騒な連中だった。
それもその筈、彼らは今巷を騒がせている暗殺集団、ナイトレイドだからだ。
今夜の目標は、旅人を言葉巧みに屋敷に誘っては、食事に睡眠薬を盛り、眠ったところを拘束し、拷問にかける。それを家族ぐるみで行っているサド家族だった。
屋敷はもうすぐ、そこで先頭を行く、獅子のような格好した女、レオーネが足を急に止める。レオーネは、屋敷を凝視したまま動かない。
「どうした?」
後ろの一人が尋ねる。
レオーネはそれに唾を音を立てて飲み込むと答える。
「…………今夜の作戦、止めよう」
「はぁ!? なんで!?」
緑髪の男が素っ頓狂な声を上げる。
「……やばい奴が居る。私がボスに訳を話すからとにかく今夜は止めよう」
レオーネの言葉に全員が押黙る。それは、肯定だった。
こんなにも容易く全員が納得するのには訳がある。そもそも、このレオーネが先頭を行く意味は彼女が一番、五感が優れていたからだ。それは、彼女の帝具、ライオネルに起因する。ライオネルは使い手の身体能力を格段にあげる。それとともに野生の勘とも言える直感力を与える。その直感は往々にして、よく当たる。
それを全員が知っているため、レオーネの言葉に何も言わず納得したのだ。彼女が顔を青くし、ヤバイと言っている、それ以上の理由はいらなかった。
「わかった。ここはレオーネの言葉に従おう」
黒髪の刀を持った少女が言った。そして、影たちは消えていった。
◆
その夜、屋敷の近所に住む住人たちは、凄まじい爆音で目が覚めた。
なんだなんだ、と次々と住人たちは音のした方によっていく。
そこにはいつも見ていた屋敷がまるまる無くなっていた。あるのは大きなクレーターと屋敷の残骸。
住人たちは訳が分からなかった。
そのうち、軍が来て、調査を始めた。
数日感の捜査の中でわかったのは、唯一半壊程度ですんだ離れにあった夥しい数の死体。死体はどれもひどい有様だった。幼馴染みと思われる三人の男女は、身を寄せ合うように死んでいた。手には神を模した木の彫刻が握られていた。最後まで神の救いを信じていたようだ。
それらを踏まえ、軍はこう結論づけた。
屋敷の主人の娘は金のない旅人を招いて離れで養っていたという。そこに賊が入り、全員を虐殺したあと、屋敷に入り、爆発物を仕掛け、結果に至る。
犯人も動機もわからない。後にこの事件は迷宮入りとなった。
余談だが、屋敷が爆発した日に屋敷から出てくる筋骨隆々のパッツンパッツンの服を着た男を見たという話が出たが、噂話の域を出なかったので、今回は思考から除外するものとしたらしい。
いろいろと納得のいかないことはあると思いますが、こんな感じです。
まさかのゴンさんナイトレイドに入らない&タツミ君死亡というね。まぁ、単発だしいっかというノリで。
私の心はガラスなんでキツいのはキツイ感想はない方向で!!
いつの間にか、お気に入りが100件を超えていました!!こんなのにありがとうございます!!これからも頑張っていきます!!