煙と弦、そして音   作:烈風一一

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こんにちは、初めまして。烈風一一と申します。
普段はブルーアーカイブの二次創作を週に二回ほど掲載させていただいております。
今回、この概念が頭から降りてきて離れなかったので気付いてたら書いてました。では、どうぞ。


鳴らなかった音

アンプのスイッチを切る。アンプ側からシールドを抜いて、エフェクターを片付ける。

結局、今日も一人でスタジオを使って練習しただけだった。誰もいやしない。

自分は結局、文化祭に出るなんてことは高望みだったんだろうか。

全て片付け、最後にギターをケースに入れる。

「ありがとうございました」

料金を支払って退出する。田舎ということもあってこの街にはこのスタジオしかない。ここから家まで歩いて帰る。

「...」

何とは無しに小高い丘に足が向いていた。まあ、上るのに10分もかからないだろう。

寄り道しても罰は当たるまい。

 

登り切った場所にあった自販機の缶コーヒーを買い、ベンチに腰掛ける。普段はこんなことはしないのだけれどたまにはいいだろう。

「...僕、このままバンド組めなくて出れないのかな」

斜陽を浴びながら物思いにふける。もともとこのギターは去年の初め、文化祭に出るために買ったものだ。ネットで自分で調べて、安い中でも見た目がよく性能もそれなりにあった。だが、友人は誰も楽器をやっていないか、あるいはすでにバンドを組んだ者ばかりだ。

いったい、どうすれば。

...それにしても、何かにおいがする。そう、まるで煙草みたいな...

「やあ、少年。一服どうだい?」

「...どなたですか?」

「そうだね...好きに呼ぶといいよ。絶世の美女でも、見た目麗しいお姉さんでも。」

誰だ、この人は。知り合いにはこんな人はいないし、いきなり声をかけられても怪しいだけだ。

「それはそうと、はい、これ。」

目の前の人は煙草を差し出してくる。

「こういう時は一服するに限る」

「...いや、僕は未成年者なので。吸っちゃだめですよ」

「つれないなあ...まあいいや。」

火を消して煙草を灰皿に放り込む。そしてこちらに...正確には僕のギターに視線を向けてくる。

「見ていいかい?」

「...雑に扱わないと約束していただけるなら」

正直怪しい。めっちゃ怪しい。

でも、何か面白そうだ。そう思ってしまう自分がいる。

だから、僕はギターをベンチにおいて取り出した。

「ノルディカの...012か、悪くない趣味だね。手入れもしっかりされてる。かなり大事にしてたろ?」

「それなりに...ところで絶世の美女さん。貴女、僕と会ったことってありましたっけ?」

「いや、単純に興味でついてきただけだよ。私も同じスタジオにいたんだが、いい音を弾いていたからね。ここまでついてきて声をかけさせてもらったってわけだ」

「それはありがとうございます」

...一気に怪しさが上がった。あんまりうまくない演奏のはずなのに。

「それで、君。バンドを組めない、とさっき言ってたね。詳しく聞いてもいいかな」

「つまらない話ですよ」

「何言ってるのさ少年。青春すぎちゃったお姉さんにとっては君みたいな子の話は貴重なんだよ」

まあ、話してもいいかな。聞かれても毒にはならないはずだ。薬にもならないけれど。

「...僕は、一昨年の4月あたりにこのギターを買ったんです。上達したら文化祭にバンドを組んで出て、演奏するってことを夢見てたんですよ。」

「ですが、いざある程度の腕前になってバンドを組もうとしたら...誰も組める人はおらず。」

いざ吐き出してしまえば、なんとくだらない。

「なるほどね...そしたらお姉さんが君と組んであげよう」

「...文化祭に部外者の方は出られませんよ?」

「何、そこは押し通してしまえばいいのさ。それに...文化祭に出る人が見つかるかもしれないだろう?そういうときはわたしはいいさ。あくまでつなぎ、程度に思えばいいよ」

うん...この人を誘ってみようかな。

「楽器、何ができます?」

「ベース、ドラム、キーボード、ボーカル。ギター以外全部できるよ」

「わかりました...なら。よろしくお願いします」

正直、よくわからない人だけれども...この人とやれば、面白そうだ。

「よしきた。それならいったんスタジオに戻るよ。時間はまだあるね?」

時計を見ると16時前だった。あと一時間くらいは行けるだろう。

「はい、いけます」

こうして、奇妙な僕たちの関係は始まったんだ。

 

「それじゃあ...どんな曲を弾ける?君が弾けるものでいい」

「弾ける曲は...」

できる曲をリストアップして伝えていく。

「わかった、そしたら...I was born to love you行ってみようか」

「下手くそですが大丈夫ですか?」

「最初から卑下すればできるものもできなくなるのさ、さあ。やろう」

お姉さんはドラムの用意を終わらせる。僕もエフェクターの準備はオッケー。

「行くよ、ギターのところから。」

「了解です...1,2,1,2,3,4!」

甲高いギターの音が鳴り響く。最初から飛ばしていくこの感じが心地いいんだ。

「I was born to love you」

ドラムとギター、ボーカルが一体になったような感覚がする。不思議な感覚だ。

「everything day...on my life!」

それにしても、ドラムを叩きながら歌うなんて、すごい技術だ。いったい、何者...?

そんなことを考えているうちに、ギターソロに入る。

「ギターソロ行くよ!」

「はい!」

ここはまだ未完成なんだ。だけれど、不思議と今ならできる気がする。

チョーキングからの速いテンポでの演奏。ここまではまだいいんだ。

タッピングに入る。

「なるほど...ね?」

ここがかなり音が外れたりするんだ。現にかなり音が外れ、そのせいでリズムも崩れかけている。

「And amazing,feeling,coming through...」

そして演奏は終わりを迎える。

「...うん、結構いいんじゃないかな?ギターソロは惜しかったけれど、そこは練習で何とかなるさ」

「ありがとうございます。ドラムと歌、お上手ですね」

「ははは...何、私もまだまだだよ。」

「御冗談を...」

「それにしても...君と組んでよかったよ。これから楽しくやっていこうじゃないか」

「わかりました...そういえば、お名前は?」

「まだお姉さんでいいさ。君もまだ少年でいい。お互いに信頼できる相手になった時に名前を明かそうじゃないか」

...まあ、それもいいだろう。

「さて、PINEはやってるかい?」

「PINE...メッセージのアレですよね?」

一応やってる。だけど、あんまり使わない。

「私の連絡先だ。練習したい時に呼ぶといいさ。」

コードを読み込むと「可愛い絶世のお姉さん」と言う名前のアカウントが出てくる。

「じゃあ、一旦片付けようか。私の時間も危ないからね。」

もうちょっとやりたかったけど、しょうがない。

この感じ、楽しかったな。これが他人と音楽をやるってことか。

 

「じゃあ...今日は、これで解散しようかい。練習怠るんじゃないよ?」

「怠りませんよ...っと。」

道具を背負う。なんだか不思議な一日だったな。

「じゃあまたな、少年」

お姉さんは去って行った。

「...うん、しておこう。」

その日、僕のPINEの友達の数が1つ増えた。




ご閲読いただきありがとうございました!
筆って止まりませんね。
昨日投稿した設定と合わせて、どうぞこの小説シリーズもお楽しみください!
この小説は不定期投稿ですので、何卒よろしくお願いいたします。
評価、感想、お気に入り登録等、活動の励みになりますので何卒よろしくお願いいたします!
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