魔王が勇者に倒されたくないのは間違っているだろうか   作:黄巻紙

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皆がすなる小説といふものを、読み専もしてみむとてするなり。
初執筆・初投稿なので、行間とか設定の読み落としなどがあればご指摘お願いいたします。


ハイラル編
プロローグ


薄暗い部屋の中、燭台に灯る火だけが闇を照らし二人の老婆の姿を浮かび上がらせている…

 

「おや、おや…あの憎きハイラル王国が滅んでしまったようですよ、コウメさん…」

 

「たかが小国とはいえ我らゲルドをこの砂漠へ追いやった恨み…晴らしてやろうと思っていたのですがね、コタケさん…」

 

 

「…はあ、これでは何のために我らは力を蓄えてきたのやら…」

 

「まさかあのポセイドンファミリアがハイラルにまで攻め込んでくるとはねえ」

 

「ハイラルの姫、ゼルダの美貌に釣られてきたと言っていましたが、果たして本当なのか…」

 

「…まあ、あのハイラルは既に落ち目を迎えていたのは事実。一人でも英雄がいたのであれば姫を逃がすことだけはできたのかもしれませんが…()()()()()()()()()()()()

 

「あとは次の女王さえ決まれば…」

 

先代女王(ナボリス)の娘はどうなんだい?母親が死んでから塞ぎこんでたって話だったけど…」

 

「ああ、戦士長が付きっきりで見ていたからかは知らないけど、すっかり元気を取り戻して跳ねっ返りの強い性格のじゃじゃ馬娘になってるよ。あの戦士長(ビューラ)が珍しく愚痴を言っていたからねえ」

 

「なら、次の女王はナボ──」

 

 突如、部屋の扉が勢いよく開け放たれる。

 

「大変大変大変だよー!大オババ様!」

 

「──って何だい急に、驚かすんじゃないよ!あとあたしゃまだ()()だよ!大もオババもいらないよ!」

 

 部屋に入ってきた褐色肌に赤髪のアマゾネスの少女が二人の老婆に駆け寄り騒ぎ立てる。

 その声量の大きさに眉をしかめつつ老婆の片方、青い宝石をあしらった額飾り(サークレット)を付けた老婆のコタケが少女の半分も行かない身長の腕をバタバタと振りながら怒鳴り返す。

 

「あ、ごっごめんなさ──ってそんなことどうでもいいの!大変なんだよ、コタケ様ー!」

 

「どうでもいいって何だい!コウメさんと違ってあたしゃ、まだ380歳──「ちょっと待ちなよ!双子なのに20年もサバ読むんじゃないよ!今年で400歳でしょうが!だいたいアンタ──「いいから話聞いて!!」──わ、わかったよ…」」

 

 アマゾネスの少女の話をそっちのけでコタケとコウメ──コタケと同じ背丈に赤い宝石の額飾り(サークレット)を身に着けた老婆──の醜い言い合いが勃発しかけたがアマゾネスの少女が二人を一喝する。

 

 

「話の腰を折って悪かったね、で?何が大変なんだい、コスメ?」

 

 アマゾネスの少女、コスメが大事な用事を思い出したかのように再び慌てながら言葉を紡ぐ。

 

「赤ちゃんが生まれたの!」

 

「ああ、そういえばヴォーイハントの季節だったかねえ、コウメさん…」

「年が過ぎるのも早いもんだねえ、コタケさん…」

 

「二人ともしみじみとしてる場合じゃないよー!」

 

 季節の節目を感じながら、遠い目で年月を実感する縁側にいる老婆そのものになっている二人。そんな二人を現実に引き戻すように少女は本題を伝えようと叫ぶ。

 

「──男の子の赤ちゃんが生まれたの!アマゾネスのお母さんから!」

 

 瞬間、部屋の中の空気が重く変化する。アマゾネスの老婆二人の顔つきがゲルド族の神官にふさわしく鋭いものとなって、氷のような眼差しが重い空気に委縮してしまった少女を貫く。

 

「それは、本当なのかい?…本当にアマゾネスの胎から男が…()()()()()()()が生まれたのかい…?

 

 こくり、と少女が何とか気力を振り絞ってうなずく。すると二人の老婆はまるで間欠泉のような熱気が噴き出してきたと錯覚するほどの気炎を上げ、狂ったように歓喜の声を叫びだす。

 

「こうしちゃおられないよ!コタケさん!今すぐその赤子を取り上げに行くよ!」

 

「そうですねコウメさん!今すぐ()()()()を保護しなくては!」

 

「よ、預言の子って…?」

 

「我らゲルドの民が信仰する女神、()()()()が天界より授けてくださった神託じゃ…『黒き厄災が目覚めんとするとき、ゲルドの砂漠にアマゾネスの男が生まれる。その男こそ100年に1度の王の器にしてゲルド族を救う救世主とならん…』

 

「その赤子の名も神託にて決まっておる。古代ゲルド語で猛獣を意味する言葉…ガノン

 

G

 

 どうやら俺はゲームの世界に転生したらしいな…

 自身の喉から意志とは関係なく奏でられる産声をBGMに俺は現実逃避をする。

 なぜなら──

 

「おーよしよし、いい子ですねえ。しっかりと産声を上げましたよ、コタケさん…」

 

「おーよしよし、元気な子ですねえ。母親の指を握り返していますよ、コウメさん…」

 

 ゼルダの伝説に出てくる悪役が目の前で俺をあやそうとしているからだ。

 えっ…なんでツインローバがいるの…?俺、前世で何か悪いことした…?

 

「やはりガノン様は天賦の才を宿している…まだ生まれたばかりなのに、己の魂を知覚して魔力を操りこちらを見ておられる

 

「やはりガノン様はゲルドの王になるにふさわしきお方…こちらの言葉に耳を傾けて理解しようとされておられる

 

 二人の老婆(ツインローバ)が酒に酔ったかのようにうわごとをつぶやいていると、赤子(おれ)を抱えていた母親から悲鳴が上がる。

 

「ええっ…そんな、ほんの少し前に生まれたばかりなんですよ?ありえません!」

 

預言の子(ガノンさま)であればありうることじゃ…このお方は女神様より遣わされた救世主なのじゃ」

 

「何かの…何かの間違いです…たとえ男に生まれようと、この子は私の子供ですよ…?ほら、こんなにもかわいい──ひいっ」

 

 俺をフォローしてくれていた母親が、俺を抱えて覗き込んだ瞬間に悲鳴で喉を引きつらせている。ママのために頑張って笑っただけなんですけど…!?

 そんな俺の努力もむなしく、母親はすっかり俺を不気味な存在として認識しているようだ。

 

「安心おし…今日からガノン様はお前の子ではなく…」

 

「ゲルドの王にふさわしい男に育て上げるんだからねえ…このコタケ・コウメ姉妹でね」

 

「ホッホッホ…」「ヒッヒッヒ…」

 

 【悲報】俺の味方がボスキャラしかいない件。というかさっきから俺のことを()()()()って呼んでないか…?

 そうして疑問ばかりが増えつつも数年が経過し…そして7歳に成長した俺の姿を鏡で見たとき、ようやく現実を受け入れたんだ…。

 

「俺、ちっちゃいガノンドロフになってるーーー!!?」

 

 ──どうやら俺は、ラスボスに転生してしまったらしい。




いきなりハイラル王国が滅んでいますが仕様です。
コタケ・コウメの年齢も仕様です。
本編には関わらないので許してください…喧嘩シーンやりたかっただけなんです…
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