魔王が勇者に倒されたくないのは間違っているだろうか   作:黄巻紙

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オラリオどころか神の恩恵すらまだ…これはダンまち2次創作でいいのだろうか…
10/4追記.単語の整理 ゲルドの里→ゲルドの国
     ゲルド族に当たる表記をゲルドの民などに変更


第3話・ガノンの冒険

 ゲルドの国から抜け出した俺とナボールは、外壁から離れた場所にある岩陰にいた。なんでも移動手段の伝手はここにあるのだとか。ナボールの異様に多かった荷物を俺が背負ってここまで来たせいでやや疲れ気味ではあるが、一体何を見せてくれるのかワクワクした気持ちで待っていると…ナボールが『何か』を紐のようなもので連れてきていた。もしかしてラクダとか──

 

 「ガノン!伝手を連れてきたよ!アタイの友達さ、可愛いだろ?名前はゴンザレスだよ」

 

 ナボールが連れてきたのは2匹のアザラシのような見た目をした生物だった。

 あうあうと鳴き声を上げるそれに言葉を失っていると、ナボールはお構いなしに俺に紐…アザラシ?の手綱を渡してくる。

 

「この生き物は一体…?」

 

「知らなかったかい?まあ、基本壁の外の方で飼ってるし砂嵐のせいで表に出すことも少なかったからね。中央の屋敷からあまり出なかったアンタじゃ見てなくてもおかしくはないか…この子たちは‘‘スナザラシ‘‘だよ。この砂漠をラクに移動したかったら乗り方を覚えるのは必須だよ」

 

 

 戦闘訓練に夢中になりすぎて乗馬訓練はあまりやってなかったが…こんな生き物がいたとは。あるいは砂嵐のせいでスナザラシ関係の訓練は後に回されていたのかもしれないが。少し厳つい顔をしているが、ナボールに大人しく撫でられている様子を見ると確かに可愛く見えてくる。

 

 

「スナザラシの乗り方は簡単だよ。手綱を持って、砂を滑るための足台に乗って、あとは合図するだけ。後はこの子たちがアタイ達を引いてくれるよ」

 

「なるほど…バランスさえ取れればサーフィンと同じ要領か…」

 

「さーふぃん?よくわからないけど、まあ一回やればすぐに出来るさ。アンタ運動は出来るだろうし」

 

「この大きい荷物を載せても大丈夫か。思ったより力強いな……待て、なんで裏返した盾に乗ろうとしてる?」

 

「何って…スナザラシに乗るためさ。ゲルドの盾は砂漠の砂をよく滑る作りになってるからね」

 

「公式なのか?公式なのか盾に乗るのは…!?確かに持ち手に足を引っかけられそうだが…これでいいのか!?」

 

「慣れれば速くて気持ちいいよ?今回は荷物のせいで速さは出ないだろうから(コレ)にしたんだけど」

 

 ナボールが荷物を自分のスナザラシに括り付けているのを見ると、中身が気になってくる。

 

荷物(それ)の中身は何だ?やけに大きいが」

 

「これかい?これは砂漠の魔物(モンスター)用に持ってきた秘密兵器さ!」

 

 そう言って荷物の中身を少し開けて見せてくれる。

 荷物の中身には見える範囲にもぎっちりとバクダンが大量に入っていた。

 

「俺はこんな危険物を運んでいたのか…!」

 

「まったく揺らさずに走ってたから言わなくても大丈夫かなって」

 

「一言くらい言ってくれても良くないか?」

 

「細かいこと気にするんじゃないよ!これだけのバクダンと矢があればモルドラジークでもモルドゲイラでもドーンと来いさ!」

 

 モルドラジークは()()()()()()()が、モルドゲイラはよく知っている。『風のタクト』のダンジョンボスである、砂を移動する巨大ムカデのような魔物だ。

 モルドラジークはナボールから聞いた限りでは砂を泳ぐクジラのような見た目の魔物のようだ。どちらも一人で戦うには危険だが、複数人で戦うことやバクダンを使用すれば倒しやすくなるそうだ。

 最も、バクダンは材料がとても貴重なため数は作れないとの事だが。…これはバレたら説教どころではないな。

 

「バレたらヤバイのは承知の上さ。これは本当に危険な相手にだけ使うつもりだよ。もしお母さまが勝てなかった相手がいたならこれ位は用意しないと勝負にならないだろうからね」

 

 覚悟の決まった表情のナボールを見る。

 そうだ。相手は過去の女王(さいきょう)を超えうる相手、出し惜しみは出来ない。

 準備を終えた俺たちはスナザラシを駆り砂漠の上を滑走していく。

 風を切るように進むこれは、確かに心地のいいものだった。

 

 

「なかなか上手いじゃないか!砂嵐が解決したらスナザラシ競争(レース)に出なよ!きっとトップに立てるさ!アタイがいなかったらの話だけど!」

 

「そんなレースがあるのか…」

 

「ゲルドには娯楽が少ないからね、鍛錬に参加しない日はよく練習してるよ。最近はみーんな誰かさんに夢中だったけどね」

 

「もしかして俺は貞操の危機だったのか?」

 

「帰ったらオババ様とビューラに感謝するんだね!つまみ食い禁止令が出てなかったら今頃どうなってたか…」

 

「王候補なのにか?」

 

「だからこそだよ!アマゾネスは強い男の種を欲しがるものさ、種の本能といっても過言じゃないね」

 

 訓練後の戦士たちからよく見られると思っていたが…まさか性的に見られていたのか?少しショック…。

 知らなかったアマゾネスの生態を知り、今まで打ち解けてきたと思っていた皆とのやり取りが実は男だからだったのではと落ち込む。

 そんな俺を見かねてかナボールは明るく声を掛ける。

「気にすることはないよ。少なくとも嫌われてはないし…むしろ普通の男は男狩り(ヴォ―イハント)の対象でしかないからね。時期とはいえ王としての支持を集められるってのは相当認められてないと無理だね。アマゾネスは自分より弱い奴が上に立つことを認めないからサ」

 

 ナボールの励ましで気分を持ち直した後は会話も少なくなり、目的地である旧ゲルド神殿・巨大女神像のある地域に近づいてくる。

 進めば進むほどに砂嵐はひどくなり、方角すらわからなくなる。

 ツインローバの部屋からくすねてきた魔法のコンパスがなければ既に遭難していただろう。

 俺とナボールは砂嵐がひどくなる前にスナザラシを縄で繋いでいるため、逸れることなく進むことが出来ていた。

 

 しかし砂嵐で日光が遮られているためか分からないが、ゲルド神殿に近づいてきた頃から妙に()()()感じる…。

 薄気味の悪い感覚に戸惑っていると、急に視界が開けてくる。

 

 まず目に入ってきたのは巨大な岩の柱。もしかしてあれが巨大女神像のある神殿…?どうやら長年放置されたせいで風化し、ただの柱になっている様だが。

 それにしてはなんだか歪な形をしているような…

 ()()()()()()()()になっている元神殿について思考を巡らせていると、ナボールが声を掛けてくる。

 

「やっと砂嵐を抜けられたね!コンパス様様、オババ様様!…よーし、荷物を降ろそうか。どうやら、ここからなら歩いて行けそうだよ」

 

 砂を踏んで地面の様子を確かめながらナボールが言う。元は人々が行きかっていたためか、流砂などは無いようだ。

 砂嵐を抜けて日光が見えたにも関わらず、相変わらず妙に肌寒く感じることに違和感を覚える。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 俺が腕をさすっていると、それを見たナボールが揶揄うように声を上げる。

 

「もしかしてビビってるのかい?確かに神殿の周りはよくギブド共がうろついているけどさ…案外アンタも可愛げがあるじゃないか」

 

「いや怖がっているわけでは無………ぎ、ギブド!?

 

 急にぶち込まれたゼルダの伝説において有名なトラウマモンスターの名前に動揺する。子供のころは怖くて先に進めなくなることがある程の恐怖を与えてきた魔物(モンスター)が現実に存在することに驚きを隠せない。確かに砂漠の神殿にはよくいたが、こんな序盤から…

 

 いやここラスト手前のダンジョンじゃねーか。

 

 そういえばそうだったと思い出す。何年も砂漠で暮らしていたせいで感覚がマヒしていた。ということはやはりこの神殿は魂の神殿に相当する場所なのだろうか…

 

「持ってきたバクダンはここのギブド対策のためでもあるんだよ。ギブドは死体(アンデッド)魔物(モンスター)だから、火と光に弱いのさ。だから心配しなくても大丈夫だよ、ギブド退治ならお姉さんに任せな!」

 

「いや怖いわけでは…ん?あれは…あれ、が、ギブド…なのか…?」

 

 遠目に発見したその魔物は、想像していた包帯でグルグル巻きのヒトガタとは異なり…中途半端に肉を残した白骨死体を、よりモンスターらしく怪物のように誇張した姿だった。

 ギブド…というよりはリーデットに近く、リーデットと比較してもモンスター感が強く小さい頃に感じた気味悪さとは逸脱していて拍子抜けしてしまった。

 リーデットのような姿のギブドも作品によってはいるが、あれは本当にギブドなんだろうか?

 だんまりしている俺を恐怖に震えていると勘違いしたのか、ナボールは年下の俺に対して更にお姉さんぶっていく。

 

「ならそこで見てなよ、アタイの華麗なギブド退治をね…フッ!」

 

 掛け声とともに放たれた‘‘バクダン矢‘‘は、きれいな放物線を描いてギブドに着弾して爆発する。

 哀れなギブドは全身を白く染めながら吹き飛び絶命した…アンデッドも絶命でいいのか?

 

「見たかい、今の!アタイが練習してた弓矢の実力を!これならどんなデカブツもあっという間に火達磨に──」

 

「待て、何か様子がヘンだ」

 

「──へ?」

 

 ナボールの後ろに見える元神殿の上部分…キノコの傘のように盛り上がっている部分が微かに発光している。

 自然の物とは考えにくい紫色の光に警戒と緊張感が止まらない。

 ナボールの前に立って身構えながら出方を伺っていると、発光していた岩肌からボトボトと何かが落ちてくる。

 地面に落ちた複数のそれは起き上がり、怪しく光る羽を広げて此方へ飛び立ってきた!歪な形の岩肌だと思っていたものは、何と()()()()だったのだ!

 

「ナボール!構えろ!相手は飛行するギブドだ!囲まれる前に出来るだけ落とすぞ!……ナボール?」

 

 急に静かになった後ろ(ナボール)の方へ向くと…ナボールは頭を抱えて蹲り震えていた。一体どうしたんだ、まさか毒か何かにでもやられたのか…と駆け寄ると、ナボールは頭を抱えたまま叫ぶ。

 

「ア、アタイ…(ムシ)はダメなんだよ~!アンデッドならともかく、虫だけは苦手(ニガテ)なんだよ~!!」

 

「な、何だって…!?普通逆じゃないのか?さっきまでの威勢はどうした!?」

 

「だ、だって…ギブドが虫だったなんて知らなくてェ…動けなくってェ…」

 

「まさか腰が抜けたのか!?ああもう、まったく世話の焼ける!」

 

 『ムジュラの伝説』でも蜂から逃げ出す『ゲルド族』の描写はあったが、まさかナボールが虫嫌いだったとは…!

 状況を打破するために俺は背負っていた弓を片手に、荷物の中から‘‘バクダン矢‘‘を複数取り出す。

 そして足の裏に魔力を集中させ、爆発させることで真上へ跳びあがる。砂の上ということもあって威力は削がれ、ほんの1M(メドル)程しか跳べなかったが、この()()()()()()()…!

 

 頭の中に魔力を集中させ、極限まで集中力を高めると…世界がスローになったように感じる。

 これが戦闘訓練の集団戦で攻撃を捌くために編み出した、名付けて全力集中(Z注目)モード!

 『ゲームと効果違くない?』と言われるかもしれないが、Z注目をどうにか使いたい俺は当時それっぽい技術に片っ端からZ注目の名をつけていたのだ。

 (だってカッコいいじゃん…Z注目…)

 Z注目を使う魔王(ガノン)は間違っているだろうか…いや間違ってない。勇者(リンク)が使えるなら使えたっていいじゃない、魔王だもの。

 

 そして世界がスローに見えるまで集中力を高めた俺は、空中で矢を番えて連続で羽根つきのギブドへ矢を放っていく。先ほど見たバクダン矢の爆破範囲を計算し、最も無駄のない間隔で矢が羽ギブドの群れに当たり…連続爆破ですべての羽ギブドが地に落ちて動かなくなる。

 集中モードを切って着地した俺にナボールが駆け寄り、周りを跳ね回りながらはしゃぐ。

 

「ガノン、アンタすごいじゃないか!空中に跳ねたかと思ったら弓でシュババババーって撃ちまくってドッカーンって吹っ飛ばしちゃうなんて!」

 

「落ち着け、語彙が死んでるぞ。それに…まだだ」

 

「いやいや、さすがに今ので終わっただろ。軽く数十体はいたよ?巣の中は空っぽ…」

 

「巣と群れがいるならもう一ついるだろう」

 

「巣と群れと…?あ…も、もしかして、親玉がいるってのかい!?」

 

 虫が苦手すぎて可能性が頭から抜けていたのか、ナボールは再び慌てだす。

 そんなナボールをさらなる恐怖へ叩き落すかの如く、巨大な羽音があたりに響きだす。

 神殿の裏から()()は姿を現し、俺たちの方へ飛んでくる。近づく前にバクダン矢で撃ち落とそうとすると、それを察知したのか()()は羽ばたく羽の動きをさらに速めて地上の砂を巻き上げて砂嵐を引き起こす。

 

「砂嵐があっという間に…ということは!」

 

「ああ…奴が、砂嵐の原因だ!」

 

 ()()は俺たち二人を覆い隠しても余りあるほどに巨大だった。複数の足、節ばった関節、縦に裂けた口、頭から伸びた触覚、大きな昆虫じみた羽。羽ギブドをより大きく、虫に近くなった姿。

 巨大な(クィン)ギブドが俺たちのすぐそばにドシン!と音を立てて着地し、威嚇するように奇声を上げる。

 

『ギ、ギギ…キイャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!

 

 砂嵐に囲まれ退路を失った俺たちの…回避不能戦闘(ボスバトル)が幕を上げた。

 




    砂塵奇怪虫
  ク ィ ン ギ ブ ド

バクダン矢とかいうチートアイテムはゲルドを出たら使えなくなりますのでご安心ください。
一応、貴重品かつダンジョン素材の物より大きく威力は劣るイメージです。
ギブドをいっぱい落としてたのは弱点だったから…ということで
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