ゆめかなえし ヤバチャ   作:クロサナ

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ゴゴゴゴゴ、とビブラーバの爆音波を浴びた時よりも大きな音が耳朶を打つ。

急に音が鳴ったことにも驚いたけれど、その音の出所がわからなかったことの方が不気味だった。

驚いたポケモンたちが一斉に草むらを飛び出す。

何匹かのヤバチャはこちらめがけて飛んできた。

ヤバチャたちは多分さんざに鳴いているだろうけれど、謎の音が大きすぎて聞き取れない。

「よしよし、大丈夫大丈夫」

こちらの声も多分聞こえてないだろう。

寄ってくるヤバチャを優しく抱き寄せる。

それにしても全く音が鳴り止む気配がない。

のみならず、心なしか音が大きくなっているように聞こえる。

響く轟音に草木も地面も激しく揺れていた。

一体何が起こっているんだろう。

空を見上げてみても森の中だから見えるのは木の葉ばかり。

不安に戸惑うヤバチャたちを引き連れて草むらの影にじっと潜むしかなかった。

ついにまともに立っていられないくらいの音が森を襲い始めた。

頭を抱え込むようにして耳を塞ぐ。

すると地面に地面から青い光が湧き出ていることに気づいた。

前の森でもマシェードが放っていた怪しい光のような、謎の青い光球が次々と地面から立ち上っている。

その数はどんどんどんどん増えていって——


——眼前に溢れた真っ青な光が少しずつ引いていく。

光の最後の一片が虚空に溶けると、風が一陣吹いた。

肌を刺してえぐるような、冷たい風だった。

もうさっきみたいな轟音はない。

代わりに森は生命エネルギーを感じない冷気に包まれていた。

寒さが少しずつ体に侵入してくる。

急激な冷え込みに周りのポケモンたちは倒れ始めた。

周りにいるヤバチャたちも震えでお互いの体がぶつかってカチカチと音を出している。

「集まって。みんなであったまろう」

寒さに縮こまって掠れる声を絞ってヤバチャたちを呼ぶ。

下から冷たいヤバチャの体を自分の体に引き寄せると、冷たさに声が漏れそうになった。

「大丈夫、大丈夫。きっとすぐ暖かくなるよ」

怯えるヤバチャたちをなだめ、縮こまる。

ヤバチャたちを撫でる腕は、寒さでそのうちに動かなくなってきた。

心配したヤバチャが口々に覗き込んでくる。

「だい、じょうぶ、だいじょ——

口が言うことを聞かなくなる。

ふわりと体が浮遊感に包み込まれた。

ヤバチャたちが右往左往して慌てている。

そんなに心配しなくても、大丈夫だよ。

こごえふるえる ヤバチャ


こごえふるえる ヤバチャ/かみなりにさわぐ ヤバチャ

ヤバチャはどこだろう。

 

ざくざくと、粗い雪を踏みしめて歩く。

 

辺りを見回しながらひたすら歩く。

 

「……あ」

 

ヤバチャを見つけた。

 

自然と笑みが漏れる。

 

体の色は水色。当然あのコじゃないけれど。

 

おいでおいで、と手招きするとふよふよと近づいてきた。

 

優しく撫でてやると、ヤバチャの相好が崩れる。

 

「ね、お友達はどこにいるの?」

 

「ちゃっちゃ? ばちゃやちゃちゃ」

 

「うん、そうだよ。探してる子がいるんだ」

 

「ちゃーちゃやばやば」

 

「ふふ、ずっと昔の友達なんだ」

 

「ばっちゃっちゃ」

 

「ほんと? ありがとう。じゃあ連れてってくれる?」

 

前を進み始めたヤバチャの後ろをピッタリついていく。

 

すると、ヤバチャが何匹かいた。

 

「やちゃちゃ?」

 

「えっと、探してる子がいるんだ。ピンクの体で、カップの下の……ここに変な模様を付けてる子でさ」

 

ヤバチャたちに聴いてみると、ヤバチャたちはしばらく自分たちの高台を見合ったりして話していた。

 

しかし知らなかったようで、申し訳なさそうな目でこちらに向き直った。

 

「やばば……」

 

「ううん、全然大丈夫! ありがとね。またがんばって探してみる」

 

ヤバチャたちに手を振って、また別の場所へと歩き出す。

 

ざくりざくりと雪が音を立てる。

 

急な坂も小走りに降って、ゆっくり登って、進み続ける。

 

辺りがぱぁっと明るくなったり、くらりと暗くなったりしている。

 

どうしてか、前の森よりもヤバチャが見つかりやすい気がした。

 

来て正解だった。

 

でも、肝心のあのコはいない。

 

ヤバチャのいる方へいる方へと進んでいると、大きな石が並び立っているところに着いた。

 

ヤバチャたちが石の上で円を作ってクルクルと回っている。

 

この大きな石の列はなにだろう。

 

石には……なにか、書かれてる?

 

ひとまずヤバチャに話しかけてみることにした。

 

「ねえねえ、ヤバチャ」

 

「ちゃちゃ?」

 

「ここはなんで石がたくさんあるの?」

 

「ちゃっば」

 

「ヤバチャたちも知らないか。どうして回ってたの?」

 

その時、ピシャッと空が鋭く光った。

 

瞬時、とてつもない轟音が辺に響いた。

 

「ちゃばっ」

 

驚いたヤバチャの中身が少しこぼれる。

 

空は薄暗い雲に覆われて、雷のかけらが光っていた。

 

くるくると回って戸惑っていたヤバチャ達だったが、そのうちの1匹がこちらを睨みつけた。

 

「やばば……」

 

ヤバチャの目の前に黒いオーラが渦巻く。

 

どす黒い影の魂がこちらに飛んでくる。

 

間一髪で避けた。

 

喧々轟々とヤバチャたちがまくし立てる。

 

どうやらさっきのかみなりで攻撃されたと思ったみたいだ。

 

「ちゃーちゃ! ちゃちゃばちゃ!」

 

このままでは、話を聞いてくれそうにない。

 

「おーい、そこの方!」

 

不意に背後から声をかけられる。

 

振り返ると傘を持ったおじいさんが手招きをしていた。

 

一旦ヤバチャから離れておじいさんの元へ走る。

 

「あんた、ヤバチャに襲われて、一体どうしたんだい?」

 

「えっと、雷を攻撃と勘違いしたみたいで……」

 

「ああ、そういう時は一旦落ちつかせてやるしかないやも知れん。バクオング!」

 

「くおーん!」

 

重低音の鳴き声の後に、ぴゅるり、透き通るような音が聞こえた。

 

7本の管が生えた特徴的な頭。がっしりと筋肉質な腕に足。

 

後ろからバクオングが管状の尻尾を振りながらのっしのっしとやってきた。

 

「このコは……?」

 

「私らの集落は遠方と連絡を取る際にバクオングの大声を使うのです。中でもこいつは他のと違って肝っ玉が座っていましてな、この辺に多いゴーストタイプのポケモンも『ちきゅうなげ』で少し攻撃して落ち着けることができるのです」

 

「それはヤバチャにも?」

 

「もちろんです。バクオング、あのヤバチャを落ち着けてあげなさい」

 

バクオングは一声鳴いて、ヤバチャたちに近づいていった。

 

ノーマルタイプだからか、シャドーボールもものともせず、ヤバチャのいっぴきをつかんだ。

 

そのまま飛び上がり、自分の体ごとヤバチャを地面に叩きつける。

 

ヤバチャが倒れてしまうと一瞬心配したが、ちきゅうなげを受けたヤバチャはふらつきながらも他のヤバチャのもとに戻って何やら話していた。

 

ヤバチャの元に近づくとヤバチャがこちらを見たが、もうシャドーボールは放ってこなかった。

 

「ね、体がピンクのヤバチャを探してるんだけど……君たちは知らない?」

 

「やや? ちゃば……」

 

ヤバチャが口々に鳴いて体を揺すった。

 

「ちゃーちゃ、やばば」

 

「そっか、もし見かけたら、教えてくれると嬉しいな」

 

ヤバチャたちはコロコロと鳴いてどこかに飛んでいってしまった。

 

おじいさんもこちらに歩いてきた。

 

「ヤバチャとしゃべれるのですか?」

 

「はい、なんとなく言ってることがわかるんです」

 

「それはすごいですね。それにしても、ピンクのヤバチャなんて見たことがありませんが……」

 

「ピンクのティーカップは数が少ないみたいなんです。探している子は、あのコはピンクのティーカップで、高台の裏に変な模様がついていて、他のことは違うちょっと変な子だったんです」

 

じいさんは少し黙り込んで私をじっと見てきた。

 

なんだろう、と思いながら真剣な目つきのおじさんを見つめ返す。

 

「わかりました。こいつ連れていってやって下さい」

 

「え、バクオングを……いいんですか?」

 

「この地はよくあられや雷が降ります。ヤバチャを探し続けるのであれば、今回のようなことも多いでしょう。きっと役に立ってくれるはずです」

 

「でも連絡が……」

 

「いいんです、この老いぼれの身に連絡を取るような人はいませんから。こいつにもう一度人の役に立ってあげて欲しいんです。さ、バクオング、この人についていってやりなさい」

 

「……ありがとうございます!!」

 

お辞儀をするとおじいさんは満足そうに去っていった。

 

「これからよろしくね、バクオング」

 

「おーーんぐ‼︎」

 

それ以来バクオングとたくさんのヤバチャを探した。

 

あのコこそいなかったけれど、ピンクのヤバチャもマークが付いているヤバチャも雰囲気があのコに似ているヤバチャもたくさん見つけた。

 

でも、みんなすぐに動かなくなった。

 

 

かみなりにさわぐ ヤバチャ

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