双頭のスプーン   作:クロサナ

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新月




ジュー、と平坦な音が小さなキッチンに響いている。

小さなフライパンを右手に、買い換えたばかりで新品の菜箸を左手に持って、女はじっとフライパンの中身を見つめていた。

フライパンの中の一様に黄色い液体を、菜箸がくるくるとかき混ぜる。

「卵、絵の具みたい……黄色、カドミウムイエロー、だったっけ」

誰が聞くでもない女の独り言を壁が波として跳ね返す。

「もう美味しそう……さすがヨシノコーチャモ」

女は上機嫌な様子で絆創膏のついた右手を振るう。

その背後では、つきっぱなしのテレビが勝手気ままにしゃべっていた。

『政府が研究用ポケモンを一部に限定しなければ科学はもっと発展していたはずなんです!』

『しかしその制限を解禁して仕舞えば多くのポケモンが研究と称した虐待行為にあってしまうでしょう?』

『現状科学者は既に自分のポケモンとして研究対象を入手して、研究用でないポケモンたちの研究も行なっています。研究用ポケモンの制限とポケモンたちの扱いは別問題として対処するべきでしょう』

スクランブルエッグから卵と砂糖の混じり合った甘い香りを感じて女は複数回小さく頷いた。


ピキッ。


何かが割れる音。

「……ん?」

女が顔をあげる。

しかし、音はしなかった。

「……聞き間違いか」

女はまた俯いて調理を再開した。


ピキピキッ。


女は再度振り向いた。

長い黒髪が勢いよく跳ねる。

今度は鳴り止まなかった。

何度目かの音で女はその音の正体を察する。

「ちょっ、まってまってっ……!」

慌てた様子で女はキッチンを離れる。

女はタオルの上に置かれた大きな卵に駆け寄った。

卵にヒビがまた増える。

女は形を崩しつつある卵に優しく手を触れた。

「頑張れ~……」

女の口から柔らかな声が漏れ出る。

そうして幾度か卵を撫でているうちに、卵が光り輝き始めた。

きゃっ、と女の声が揺れる。

一瞬だけ部屋は光の海になって、すぐに光の波は引いていった。

「……しぃ!」

目を開けるよりも先に、女は可愛らしくも力強い鳴き声を聞いた。

恐る恐るまぶたをあげた女の瞳に、タオルにちょこんと座る、生まれたばかりのポケモンが映った。

女の口元から笑みが零れ落ちる。

女はその最上級の笑顔のまま、生まれたばかりのポケモンとそっと目線を合わせた。

「これから、よろしくね。ケーシィ!」


新月 / 立待月

立待月

 

 

 

日が傾くのもだいぶ早くなってきたな。

 

西の青空が少しずつ朱に染まってきている。

 

しばらく虚ろに天井を眺めてから、ゆっくりと体を起こす。

 

住みかとしている洞穴から出てみる。

 

「っ……」

 

あとは真っ逆さまに地平線へ墜落するだけの太陽が最後の抵抗とばかり輝いていた。

 

右腕から伸びる二股に分かれたスプーンの一方がその光を反射して私の目を炙る。

 

2つの頭を持つスプーンに、指の分かれていない手。

 

もう見飽きるほど見た。

 

光を目に照射する醜いスプーンから目を逸らして太陽の反対側へと目をやった。

 

……珍しい。

 

子供が4匹、まっすぐこちらへと歩いてきていた。

 

リオルにフォッコにモノズにオタチ。

 

強い太陽の光の中で4匹も輝いていた。

 

よくまあ、こんな辺境に。

 

体ごと向きを反転させて洞穴のすぐ傍に目をやる。

 

眼下に広がるのは青というよりも黒々とした深い海。

 

ここは森の最北端。

 

対して多くのポケモンが暮らしているのはここよりもずっと南の、森の中心部。

 

中心部からここまでは確かに来られないことはないが、こんなところまで来たのはまた何故なのか。

 

「……あ! ほんとにいたよ!!」

 

そんな声が聞こえて、私はゆっくりとサイコパワーで移動して、また体ごと振り向いた。

 

他に「いる」と言われるようなポケモンもいないし、恐らくは私のことだろう。

 

子供たちはまだ明るい太陽を背に、こちらに走り寄ってきている。

 

「あのっ!」

 

先頭きって走ってきているリオルが叫んだ。

 

「どうしたんだ、こんなところまで来て」

 

思っているよりも私の声はかすれていた。

 

しばらく声を出さないうちに、喉はさらに弱っていたようだ。

 

「フーディンさんですか!?」

 

リオルは走ったせいで荒ぶる息を整えもしないで、私に聞いてきた。

 

「あぁ。そうだよ」

 

頷こうとしたが、首が前後に震えただけでうまく頷くことはできなかった。

 

サイコパワーを使って頷く動作にはまだ慣れていなかった。

 

首から上も、最近はサイコパワー無しでは動きづらくなってきたから、練習が必要だ。

 

「キミたっ——」

 

不意に真下から突き上げるような衝撃が私を襲った。

 

子供たちにかけようとした声は中断を余儀なくされる。

 

吹き飛びそうになるのをサイコパワーの出力を上げてなんとか留まる。

 

どうやら走ってきたモノズがそのままぶつかってきたようだ。

 

「いってー……」

 

それはこちらのセリフだ、と言いたいところではある。

 

だが、モノズという種族は目が見えていないからこうやってぶつかって物を探すのだということは、私は本で見て知っていた。

 

モノズも悪意があるわけではないし、仕方がないだろう。

 

「モノズ!! ……だ、大丈夫ですか!?」

 

リオルが私を見上げた。

 

「あぁ……大丈夫だ」

 

「お前フーディンか!?」

 

ぶつかったことなど気にも留めず、モノズは子供っぽいわんぱくな口調で問う。

 

「オレ、ニンゲンの話聞きたいんだよ! 聞かせろよ!」

 

――ニンゲン。

 

その言葉を聞いて、私は身震いした。

 

嫌いで嫌いで仕方ない、のではない。

 

むしろ、逆。嫌いになんてなれるわけがない。

 

「どうしたんですか?」

 

リオルに呼びかけられてハッと目を覚ました。

 

いつの間にか私の目は見開いていた。

 

「あぁ……いや。なんでもないよ。それより、なんで……そんな話を?」

 

「わたし、ニンゲンを見たことないからどんな生き物なのか知りたいんです! でもニンゲンのところに行くのはダメってママが……」

 

「それで、フーディンさんってポケモンがニンゲンのことを知ってるって聞いたから来ました!」

 

フォッコとオタチも追いついて、後ろから付け足した。

 

「オレはニンゲンのポケモンだったんだってよ。もともとは。覚えてないけどな」

 

「……ほう」

 

わざわざここに来るほどニンゲンに興味があるわけか。

 

ここで生まれてここしか知らないポケモンも、ニンゲンの元で生まれて自我のないうちに捨てられたポケモンも関係なく。

 

……これはチャンスなのかもしれない。

 

ならば話すとしようか。

 

できればこの子達が野生のポケモンとニンゲンの架け橋となるように。

 

「お願いです! ニンゲンのこと教えてください!」

 

リオルがぺこりと頭を下げる。

 

他の3匹も同じようにお辞儀をした。

 

「……よかろう。こちらへ来なさい」

 

私は4匹を先導して洞穴の中へ入った。

 

 

 

 

 

 

私は洞穴の奥側にある岩の台の上に少し浮かんで静止していた。

 

目の前には緊張した面持ちの4匹の子供。

 

洞穴と言っても、そんなに奥行きがあるわけじゃない。

 

私1人でちょうどいいくらいのスペースに、こんなに狭苦しく4匹も並んでいるなんて初めてだろうか。

 

まぁなんでもいい。……何から話したものかな。

 

目を瞑って思案を巡らせていると、「あの」と控えめな声が耳を打った。

 

「ん、なんだい」

 

「フーディンさんはなんでニンゲンについて知ってるんですか?」

 

「私はニンゲンの元で生まれて、しばらくニンゲンの元で暮らしたんだ。もう数え切れないほど前のことだが、今でもあの日々は鮮明に覚えているよ」

 

「へぇ~……!」

 

フォッコは興味津々と顔に書いてあるくらいに目を輝かせていた。

 

「そうだ、私と暮らしていたニンゲンの名前を教えよう」

 

私は4匹へ向けてテレパシーを送った。

 

ニンゲンの言葉は私の口で発することはできない。

 

――アビス。

 

いつぶりだろうか、この名を呼ぶのは。

 

テレパシーでニンゲンの言葉を話せるようになって以来、一番口にした言葉だろう。

 

「ん……んん??」

 

「なんて言ってるの……?」

 

子供たちは困惑していた。

 

初めての言語を聞かされれば誰だってそうなるだろう。

 

もしかしたらテレパシーが初めてのポケモンもいたかもしれない。

 

「アビス。さっきのはニンゲンの言葉で言ってみたんだ」

 

「それが、ニンゲン?」

 

「いや。ポケモン1匹1匹の名前が違うように、ニンゲンも一人一人名前が違うんだ。――アビスは、私と共に暮らしたニンゲンの名前だよ」

 

「ふぅん……」

 

よくわからない、と言いたげな表情でリオルはこちらを見つめた。

 

「じゃあさ」「なぁ」

 

リオルとモノズの声がかぶった。

 

リオルとモノズの視線がバチリとぶつかる。

 

「オレが先に聞いたじゃん!」

 

「ぼくだよ!」

 

一触即発な雰囲気で2匹は睨み合う。

 

子供らしい必死さが逆に微笑ましく思えた。

 

「そう急がんでもいい。逃げたりはせんよ。順番に聞きなさい」

 

2匹の間に散る火花を遮るようにリフレクターを作る。

 

「じゃあ先に聞いていいよ」

 

「よっしゃ! オレから!」

 

うまく鎮火できたようだ。

 

さて、モノズからの話を聞こうか……ん?

 

何故かモノズはこちらに向かってきていた。

 

そのまま歩いてきて、こつんと私の脚に頭をぶつけた。

 

私を探していたのだろう。

 

しかし、私を探して何を——

 

「おりゃ!」

 

モノズは大きく口を開けて私に嚙みつこうとした。

 

テレポートを反射的に発動して回避すると、空を噛んだモノズの歯がカチリと鳴った。

 

あんな歯を受けていたらまず破れてしまうだろう。

 

モノズが何を気にしているのかはわかっていた。

 

だから私はテレポートで再びモノズに近づいた。

 

そして、着ている服の裾をモノズの頭に優しくかけてやった。

 

「これが気になるのか?」

 

「そうそう! ぶつかった時に思ったけど、それお前じゃねーだろ!」

 

「わたしも気になってた! それなんですか?」

 

オタチもぴょんぴょんと飛び跳ねながらこちらに近づいてくる。

 

「触ってごらん」

 

「わ、柔らかいけど葉っぱでもないし……なんだろう!」

 

「これは、『白衣』と言うんだ。ニンゲンは色々なものを身に纏って生活しているんだ」

 

「みに、まとって……?」

 

「君たちも夜寝るときに葉っぱを被って寝るんじゃないかい? 体が冷えないように。ニンゲンは寝るときじゃなくでもああいったことをするんだ」

 

「……へぇ〜!」

 

4匹は目を丸くしたり、口を開けていたり、驚きが見て取れた。

 

「あとは……そうだな。フォッコ、君が今尻尾に差している木の枝みたいな感じに色々なものを体につけるんだ」

 

「あ、これお姉ちゃんの真似してるんだ! ……え、あれ?」

 

「ん、どうしたんだい?」

 

さっきまでの楽しそうな顔とは打って変わって、フォッコは怪訝な瞳を私に向けた。

 

何かしてしまっただろうか?

 

「わたし、名前言うの忘れてたと思うんだけど……」

 

あぁ、名前を教えてもないのに私に名前を呼ばれたのが不思議だったわけか。

 

「ニンゲンの世界ではこの世にいる全てのポケモンの情報を集めたモノがあるんだ。だから私は君たちのことも知っているんだよ」

 

「なんだぁ、びっくりしたぁ」

 

フォッコはほっと安心したように息を吐いた。

 

「じゃあさ」

 

しばらくモノズを待っていたリオルが口を開く。

 

「待ってたんだったね、リオルはどうしたんだい」

 

「その、手についてるのも『ふく』なんですか?」

 

そう言われて、私は自分の左手の甲を4匹に掲げて見せた。

 

左手首にしっかり巻きついている、今はもう動かないそれを。

 

「これは、『時計』だよ。1日が始まってからどれくらい経ったのか、教えてくれるんだ」

 

テレポートで4匹に近づく。

 

「集まって、見てごらん」

 

ぞろぞろと4匹は私を囲った。

 

「この一番上が、1日の始まりと1日の半分を表すんだ。1日でこの短い針が2周するんだよ」

 

「じゃあ、今はどのくらいなの? もう終わりくらいだと思うけど。夕方だし」

 

腕時計は2時43分を差して、ぴくりとも動かない。

 

動かなくなってしまったのは、もうだいぶ前の話だ。

 

「いや、もうこれは動かないんだ。だから、分からないのさ。ニンゲンの元へ行けば直してはくれるだろうがね」

 

「じゃあ、なんでフーディンさんはニンゲンのところに行かないんですか?」

 

リオルの無垢な瞳が私を射抜いた。

 

一瞬背筋がこわばる。

 

失敗してしまった。

 

これではまるでニンゲンが危ないように見えてしまう。

 

「…………アビスとの、私と住んでいたニンゲンとの約束なんだ。ここに来たらもう戻ってくるな、ってね。理由は今でもわからない」

 

本当は知っている。

 

アビスは「逃げろ」と、そう言ったんだ。

 

その理由も、身をもって知っているとも。

 

「そっかぁ。じゃあもう直せないんだね」

 

オタチは自分のことでもないのに残念そうに呟いた。

 

「おい、なんの話だよ! オレにも教えろよ!」

 

モノズが私に吠えた。

 

そういえば時計を見せてもモノズには通じないんだった。話に取り残してしまったな。

 

「あぁ、すまないね。時計の見方は流石に教えてやれないが……代わりにいいものを触らせてやろう」

 

私は腕時計の巻きついている部分をモノズの頭に乗せた。

 

「オレ知ってるぞ! これは葉っぱだろ!?」

 

「あぁ、そうだ。葉っぱだよ」

 

そう、巻いている部分はプラスチックでも革でもない、草だ。

 

視覚がない分感覚が鋭いモノズにはすぐに分かったようだった。

 

「ニンゲンも葉っぱが好きなんだね!」

 

「いいや、元は違ったんだ。ニンゲンが作ったものを巻きつけていた。でも、ある日切れてしまったんだ。仕方なく私が草を編んでこれを作ったんだよ」

 

「そっかぁ、じゃあこれはフーディンさんの手作りなんだ」

 

「まぁ、そう言ってもいいのかな」

 

私が持っているニンゲンのものは、この白衣と腕時計だけ。

 

どちらも森に来てから一回とて手放したことはない。

 

さて、私の紹介も終わったし、なんの話をしようか。

 

なるべく興味を持ってくれること……。

 

左手を顎に当てて私が思案する。

 

「もっとニンゲンのモノないのか!?」

 

モノズが私の周りをぐるぐると回り始めた。

 

白衣と腕時計という未知のものに遭遇して気持ちが昂ったのだろう。

 

無邪気に飛び跳ねている様子を横目に話の内容を練っていると。

 

「…………がッ……!?」

 

「ん、今のなんだ!?」

 

右腕一帯に鋭い痛みが電流のように突き抜ける。

 

モノズが私の右手のスプーンに当たったのだ。

 

モノズはあまり気付く様子もなくそのまま走り回っている。

 

もう一周してまた右手の元にモノズが来る前に、テレポートで退避した。

 

モノズから離れ、私は右手の手首を押さえた。

 

ズキリ、と痛みが脈動する。

 

またしばらくすれば薄れてくるだろう。

 

右腕の先を押さえる力を強くして、じっと待つより他なかった。

 

「ちょっとモノズ、待って!」

 

「あ、さっきの硬いやつの話か!」

 

「違うよ! フーディンさん、なんか痛そう……」

 

「え、どうしたんだ!?」

 

4匹が離れた私の元へ駆け寄ってきた。

 

リオルが先導してくれたおかげでモノズも私にはぶつからなかった。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「……あ、あぁ。大丈夫だ」

 

私の喉から出たのはかすれた声、到底大丈夫な声ではない。

 

不意に、きゃっ、とフォッコが短い悲鳴をあげた。

 

「その右手、どうしたんですか!?」

 

様子のおかしい私に近づいてきて、まず目に入るものは当然押さえている右手だ。

 

この、二股という異形の形をしたスプーンと一体化した塊のような右手。

 

あまり見られないようにしたかったのだが、致し方ない。

 

「……これはちょっとした事故でな。触られると痛いんだ」

 

濁すしかなかった。

 

私の声の重さに子供ながら何か感じ取るものがあってしまったのだろうか、4匹はしばらく黙りこくっていた。

 

沈黙を破ったのは、オタチ。

 

「それは……ニンゲンが……?」

 

「いや」

 

反射的に否の答えを返す。

 

「……私が進化するときに、ちゃんと進化できなかったみたいなんだ。野生のポケモンでもたまーにそういうポケモンがいるよ」

 

そう、私のこの手は進化上の不具合だ。

 

私の場合先天的というのか後天的というのかわからないが、とにかく私の行動ではどうしようもなかった。

 

「決して、ニンゲンは、悪くないんだ」

 

…………。

 

もっと気をつけるべきだった。

 

ニンゲンは怖いものだと教わっているなら、この右手を見ればニンゲンのせいだと思ってもおかしくない。

 

「そう、なんですね」

 

「やっぱりニンゲンは怖いのかと思ったけど、違うんですね」

 

オタチもリオルも頷いてくれた。

 

ひとまずはセーフだったようだ。

 

このままボロが出ないうちに、帰してしまおう。

 

「みんな、外を見てごらん」

 

左手で指差す方向は、まっすぐ洞穴の外の空。

 

もう既に真っ赤に燃え盛っていた。

 

「もうじき暗くなる。今日はもう帰りなさい」

 

「えぇ〜!? もっとお話聞きたいです!」

 

「そうだぜ! 話してくれよ!」

 

想定内だ。

 

今のところニンゲンの話に興味を持ってくれたこともわかった。

 

「またいつでも話してあげよう。今日は帰って、また暇なときにここに来なさい。待っているよ」

 

「わかりました! また来ます!」

 

リオルがさっと手を上げ、代表して言った。

 

迷惑をかけない優しい子だ。

 

一度そう言われてしまうと反論もしづらいのだろう、他の3匹も洞窟を出て行くリオルの背中に異論はないようだった。

 

洞穴から出たひなたで、4匹はこちらを向いた。

 

「「ありがとうございました!!」」

 

「また来るぜ!」

 

「また聞かせてください!」

 

みずみずしい元気をいっぱいに含んだ声だった。

 

「あぁ、またおいで」

 

私の返答を聞くと4匹は互いに話して笑いながら消えていった。

 

一歩も動かず、日陰から私は4匹を見送った。

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