やはり最初は自分たちを語るべき。というわけでオリ主と遥の話です。
書きたかった話が完成して良かったです。
ですがまさか遥の誕生日にあげられるとは......なにか運命的なものを感じます。
遥、誕生日おめでとう!
それでは、お楽しみください。
エンディング曲 : イフ/MORE MORE JUMP!
桐谷遥√「あなたはあなたのままで」(響遥)
『幼馴染は恋人に発展しない』
ドラマやアニメ、漫画の題材にも使われる妄言。
正直、俺は同じように思っていた。
家が近く、幼い頃から家族のように過ごす。そんな相手に恋愛感情を抱くだろうか。
昔の俺だったら、はっきりと否定するだろう。だが今はそうではない。
「ん......響......大好き......」
こんなにも俺を想ってくれている幼馴染が、近くに居てくれていたんだから。
━━━━━━another side
彼と私が初めて出会ったのは、妹の杏に連れられて家に来た時だと言っていた。
でも本当はもっと前に会ってたんだ。本人は覚えてないみたいだけどね。
数年前、私は週末に両親とショッピングモールに来てた。
休日で、店内で色んなイベントしていたからすごい賑わっていた。
その所為で、お母さん達とはぐれてしまったんだ。
当時の私は感情を表に出すことが難しく、無表情だった。
嬉しくても周りにはそう見えなくて、まるで気を使っているように思われた。
だから、楽しそうに笑顔ではしゃいでいる周りの子達が羨ましかった。
そんな子供だったから、周りからは迷子とは思われなかった。
2人を探してフードコートに向かったけど、人が多く見つからない。
「おーい! どうしたんだ、そんなところで」
このままずっと会えなかったどうしよう、そう不安にしていた私に声をかけたてくれたのが、響だった。
「........誰?」
「おれは響! お前は?」
「........遥」
よろしくな! と笑顔の響。その笑顔は当時の私にとって眩しくて、彼と一緒にいるのが辛かった。
両親が見つかるまで、響と2人で過ごしていた。
最初は彼の勢いに戸惑いながら着いていくだけだった。
でも彼の笑顔を見て、私も楽しくなっていた。
そしてあの......お姉さんのステージにたどり着いたんだ。
「ほら、行ってこいよ!」
お姉さんが差し伸べる手を前に戸惑う私に、響がそう言う。
「.......でも、私は.....お姉さんみたいに笑えないから」
不安そうに言う私に、響は目を丸くした。
でもその表情はすぐに笑顔への変わり、私を包み込んでくれた。
「なにいってんだ、遥は遥だろ? お姉さんみたいじゃなくていいんだ! “遥らしく”笑えばいいんだ!」
そうニカッ、と笑う彼に私は救われたんだ。
お姉さんの手を取りステージに立った私は、当時出来なかった満面の笑みを浮かべることができた。
ステージ上から見た景色と、私を見守る響の笑顔。
私はその時から、ステージを好きになった。
そして、響を......好きになったんだ。
俺が遥を好きになったのは、いつだっただろうか。
出会った時からだろうか。アイドルとなってからだろうか。
自覚したのは、再会した時だった。
ずっと1人にしてしまった罪悪感から、会うのを躊躇っていた俺を、目から涙が溢れるぐらい嬉しそうにしてくれた。
桃井さんたちの前で抱きついてきた時は、相当恥ずかしかった。
でもそれが、心地よく思えたんだ。
「......ちゃんと伝えないとな。俺の気持ちも」
遥の頬を撫でながらそう呟く。グッスリ眠っていて起きることはない。
国民的アイドルと言われ、多くのファンを魅了した彼女。
テレビで見ていた彼女から想像もできない愛らしいこの寝顔を、俺は今独り占めしている。
なんて贅沢なのだろうか。
俺の撫でていた手に、遥の柔らかい手が重なった。
気持ちよさそうに頬擦りするその仕草に、心臓が跳ねた。
彼女の一つ一つの仕草に、心を揺さぶられる。
本当に自分は.....彼女が好きなんだなと自覚させられる。
「もう少し待っていてくれ.......遥」
━━━━━━another side
響『週末、予定は入っているか?』
天気は晴れ。レッスン日和だね。
響と再会してから、1ヶ月。
ずっとアプローチをしているのに、全く反応を示さないことに頭を抱えていた。
そんな悩みに思考を巡らせていた時、突然彼からチャットが1件来た。
気を抜いていた所為で、勢いよく立ち上がってしまった。
近くにいたみのりが驚いて後ろに倒れそうになったのを支えながら、スマホの画面を再度確認した。
私の幻覚ではなく、間違いなく彼からのチャットだ。
これって......もしかして.......
「ちょっと遥。突然どうしたのよ?」
愛莉と雫が心配そうに近寄ってきた。
2人とも仲のいい男の子がいるらしいし、年上。
相談してみるのもありかな?
そう思って口を開こうとした時、スマホが震える。
また響からのチャットだ。確認しないと。
見た瞬間、思わず固まった。
動かなくなった私を不思議に思い、みのりも混ざって私のスマホの画面を見てしまった。
響『空いていたら、デートに行こう』
「.......そういうことね。理解したわ」
顔の体温が上がるのがわかる。
もう少し落ち着いてから言うつもりだったのに!
なんであのタイミングで送るの、響のばか!
「遥.....わたしが言いたいこと、わかるわよね?」
「......アイドルとしての自覚はどうなってるか、でしょ?」
愛莉はアイドルに対しての熱量を、私たちの仲で一番強く持ってる。
実力は私の方が上だと思うけど、そこは先輩として認めている部分の1つ。
国民的アイドルと言われた私が恋愛にうつつを抜かしてたら、そりゃ怒るよね。
愛莉の顔を見るのが怖くなって、俯いたまま次の言葉を待った。
「違うわ。よく聞きなさい」
ごめんね響........私はもう貴方と会うことは.....って
「週末のデートで、白石君を落としなさい」
「......え? 愛莉?」
愛莉の予想外すぎる発言に、私は呆然となった。
それはみのりも雫も同じで、信じられないと言わんばかりの表情だった。
その私たちの反応が不満だったのか、愛莉はムッとして続けた。
「何よ。わたし、変なこと言った?」
「う、ううん! 変なことは言ってないけど.....ねえ? 雫ちゃん」
「ええ、そうよね........私も怒られるんだと思ってたわ」
それは当然の反応。愛莉のことだから「アイドルが恋愛なんて有り得ないわ!」、って言うのかと思ってた。
愛莉はため息を吐きながら私に向き直る。
「『アイドルが恋愛なんて考えられない』。そのイメージは確かにあると思うけど、わたしは別にいいと思うわ。アイドルだって人なんだし、女の子は恋愛したいでしょ?」
もうそれは古い考えなのよ、と鬱陶しそうに言う愛莉。
そうだよね。私たちアイドルだって女子だもん。恋愛したっていいもんね。
別れろ、なんて言われたらどうしてたか。
一番の不安が無くなってよかった。
「でもね。わたしたちがそうでも、もしその関係が知られたとき、ファンの人たちはどうかしら? 簡単に納得しないと思うわ」
「......そうだね。でも、納得して貰えるように、手は打つよ」
ようやく見ることができた愛莉に目を向ける。
私は本気だよ? ファンのみんなに認めてもらえるように、全力で挑むよ。
愛莉は私の目から感じ取ったのか、安心したように笑みを浮かべる。
「そう.....ならあんたは、白石君を絶対捕まえなさい。後のことは、わたしたちも協力するから。ねえ? みのり、雫」
愛莉はそう言って、後ろにいた2人に目線を向ける。
2人はお互い向き合って、頷く。
「もちろん! 遥ちゃんにも、響さんにも。幸せになって欲しいから!」
「そうね! お似合いの2人のために、頑張るわ!」
少し不安はあるけど、そう言ってくれた3人の様子に、口元が緩む。
こんな友達といられて、私は幸せものだ。
「ありがとう。みんな......!」
夜8時、俺は杏とリビングでテレビを見ていた。
昼頃に遥から返信が来て、デートの予定が決まった。
あえてそう表したのは、俺の本気さを遥に示すため。
普段2人で過ごすとき、あまり自分から気持ちを出さない俺だから、さぞかし驚いたと思う。
それを想像して、笑みが零れる。
「なあ、杏」
テレビの音楽番組に夢中になっている杏に声をかける。
相手は遥だし、ちゃんと言わないとな。
「ん? どうしたの、兄さん」
俺のことや遥のことを間近で見て、背中を押してくれていた、大事な妹。
いい加減、何かしらの形で返したいと思っていた。
それのまず、第1段階だ。
「週末に、遥と出かける。そんときにあいつに告白するよ」
「.................え!? 本当に!?」
一瞬だけ呆気に取られた杏だったが、すぐに凄まじい速度で目の前に来る。
可愛い顔が近いんだが!?
目を輝かせて顔を近づけきたため、つい後ずさりとした。
「そっか〜........やっと遥と......」
「.......色々苦労かけて、ごめんな」
ソファに座る俺の膝の上に乗り、足をブラブラする杏。
家に2人だけの時、いつもこういう風に過ごしている。
「全っ然! 兄さんはこういうことになるとヘタレるってわかってたしね」
グサッ!
ハッキリ言うところ.......俺は好きだぜ......
杏の発言にダメージを受けていると、頭に温かな感触があった。
顔を上げると、杏が向き合って俺の頭を撫でていた。心の底から嬉しそうに。
「遥のこと........よろしくね.....!」
親友として、ライバルとして。俺が居なかったときも、一緒に居てくれた。
自分のプライドのために離れた俺を、涙を流しながら許してくれた。
唯一無二の、大切な妹。
そんな妹のお願いを、守れない兄じゃないぜ!
「ああ.......! 任せろ!」
これからの日々がどうなるか、まだ誰にも分からない。
でもきっと、幸せな未来が来るはずだ。
俺たち兄妹はそんな未来想像し、笑顔で語り合った。
ついにやって来た、デート当日。
周りの視線を感じながら、自分の服装に変なところがないかどうか、注意深く確認する。
(......変じゃ、ないよな? あんまり着飾らないようなのを、杏が選んでくれたけど.......)
ファッションセンスが壊滅的である俺を知っている杏に、全身コーディネートをお願いした。
紺のシャツに、黒のカジュアルジャケット。下は青のジーンズとシンプルな格好。
ほぼ着せ替え人形と化していた俺だが、嬉しそうにする杏を見れたので、もう全部どうでも良くなった。
杏のセンスは間違いないし、信頼している。
ただ相手は元とは言え、国民的アイドルだ。不安にもなるだろ。
人生で初めて異性の、しかも想いを寄せている女性とのデート。
ソワソワするなと言われたって無理だ。
「響!」
そんな俺に小走りで近づく人影。
「待ち合わせの20分前なのに、もう来てたんだ」
目の前で立ち止まる彼女の姿に、息を飲んだ。
そこに立っているのは女神だった。
「......? どうしたの? じーっと私を見て」
白いシャツに青のカーディガン。下は黒のスカート。
帽子とサングラスで変装しているが、その美貌と滲み出るアイドルオーラは隠しきれていない。
ずっと何も言わない俺に疑問を持った遥は、ズイッと近づいてきて国宝級フェイスが視界いっぱいに広がる。
「大丈夫? 体調悪かったりしない?」
心配そうに眉を下げる彼女に、慌てて返事をする。
「だ、大丈夫だ! 昨日はいつもより寝るのが遅くなったけど、元気だから!」
「そう? じゃあなんで、ずっと私を見つめていたの?」
わかってわざとやっているのか、本当にわかっていないのか。
そんな疑問を向ける遥。こういう時、意図的だとニヤけた顔をしているから、本気で分からないのだろう。
最近俺ばかり恥ずかしい思いをしてるし、ここは一発仕返しをするか。
「そんなの.......遥が綺麗で、見惚れてただけだよ」
「........!?」
オレは普段、ハッキリとこういうことを口にしない。
それもあって、まさか俺にそう言われると思っていなかったのか、遥は顔を赤くして目を背けた。
「......ばか.....急にそんなこと言わないでよ.....!」
多くのファンやみのりちゃんから「可愛い」などの言葉よく掛けられるから、そういう発言にも慣れていると思っていた。
だがその反応を見るに、そんなことはないらしい。
赤くなった顔を見られまいと、手で顔を覆っている。その反応が可愛らしく思った。
「......好きな人に言われたら、こんなに嬉しいんだ」
小声で言ったつもりだと思うが、俺の耳にしっかり入っている。
言った俺も恥ずかしくなってきた。
「.......そ、そろそろ行こうぜ」
「う、うん」
俺の差し出した手を、遥が握りしめる。
そういえばまだ待ち合わせの段階だった。
こんな調子で、告白までいけるだろうか。
そんなグダグダな自分に呆れながら、目的地まで並んで歩きだした。
やってきたのは、多くの人で賑わうシブヤ。
考えてきたデート内容は、カフェでの食事とウィンドショッピング。
とは言っても、遥は友達と行きなれているだろう。
そこで考えたのは......
「どうだ? 遥。似合ってるか?」
遥に俺の服を選んでもらいことにした。
何度も言うが、俺はファッションセンスがない。
そこで元アイドルで現役女子高生の桐谷遥様に、せっかくだから頼んでみたのだ。
提案した途端目の色が変わって、ウキウキしていた。可愛かった。
「やっぱり響はスタイルがいいから、基本はなんでも似合うね」
遥の言うことだから、俺はなんでも似合うのだろ。だが毎回杏には「ダサい!」と言われる。なぜなのだろうか。
彼女は俺の姿を写真に撮り、次々と別のコーディネートを試す。プチファッションショーみたいだ。
楽しそうに選ぶ遥に、口角が上がる。
「ん? あの服って.....」
「どうしたの?」
視界に入ったジャケットを見に行こうと試着室から出る。
ちょうど遥も戻ってきた。
「あのジャケット、前に杏たち4人で出かけた時に買ったやつに似てないか?」
俺が見つけたのは、メンズの青系のストリートジャケット。
いつも格好いい服装している遥にピッタリで、こはねちゃんとみのりちゃんにも絶賛だったそうだ。
写真を見せて貰ったが、雰囲気の変わりようにしばらく放心していた。
ちなみにスマホの壁紙にしているのは本人に内緒だ。
「本当だ。私のにそっくりだね」
「実際に着てるとこ、見てみたいな」
「響にならいくらでも見せるよ」
恥ずかしげもなく遥に、苦笑いをする。
それは非常にありがたい話だ。次のデートに期待しよう。
「せっかくだから、これも買うか」
そう言って、遥の選んでくれた物と一緒にカゴに入れる。
こっそりと遥の耳元に近づいて......
「お前とおそろいにしてみたかったんだ。実はな」
すぐに離れて会計に向かう。
これで少しは日頃の仕返しにはなったんじゃないか?
そう思った俺だったらから、顔を赤く染めて呟く彼女の言葉を聴き逃してしまった。
「.......ずるすぎだよ......ばか響」
ショッピングを済ませた俺たちは、お昼頃のためカフェに入店した。
お客さんは若者から大人まで、幅広い客層だ。
できるだけ遥がバレないよう、端の席を選んだ。
「遥は、ここには何度か来たことあるのか?」
「うん。咲希や一歌と一緒に来ることが多いかな」
「それなら遥たちがいつも頼むのにしようかな。どれだ?」
「私はいつもこれかな」
注文した物を待っている間、お互いの近況について話しをした。
学校生活のこと、アイドル活動のこと、イベントのこと......
俺も遥も、自分の夢や目標のために成長している。
それも全て、助け合える仲間や友人が居るから。
話の区切りがついた頃、丁度よく料理がきた。
普段厨房に居るからか、盛り付け方や調理のされ方など気になってしまう。
いかんいかん。食事を楽しまなければ。
運ばれてきた料理を口にする。
遥がオススメするだけあり、非常に美味い。
「響......」
遥が小さめの声で呼んだため、手を止めて向かいを見る。
すると、自分の料理を小さく切り分けて差し出していた。
これはまさか.......?
「あ.....あ〜ん」
「........恥ずかしいなら無理すんなよ」
「で、でも.......! この方が、恋人みたいでしょ?」
まだ付き合ってないんだけどな。可愛すぎかよこいつ。
頬を赤く染める彼女の要望に、しっかり答えねば彼氏ではない(彼氏じゃない)。
口を近づけようとすると恥ずかしさからか、フォークを持った手を引き戻そうとする。
そうはさせまいと、遥の手ごと掴んだ。
「え、ちょっと!」
これは遥にとって予想外だったのか、焦った表情でこちらを見ている。
俺はその様子に気にせず、そのまま食べる。
平然としているように見せて、内心じゃ動揺しっぱなしだ。
味が全くしない。
「......じゃあ、お返しだ」
そう言って同じように切り分けて差し出した。
正気を取り戻した遥は、少し恨めしそうに睨んできた。
多分、今の俺はニヤニヤしているだろう。
こんな可愛い反応してくれるなんて思わなかったから。嬉しくてしょうがない。
遥はなんの躊躇いもなく俺のあ〜んを受け入れ、「美味しいよ」とボソッと呟いた。
俺みたいにからかうほどの気力はないようだ。
そんなやり取りがありながら、俺たちは昼食を楽しんだ。
その後、遥の行きたい場所を中心に周ることにした。
昼の食事はどこへいったのか、大量のデザートの前に戦慄した。
彼女曰く「今日はチートデーだからいいの」、だそうだ。
女子ってすげぇんだな......
最後に向かったのは、シブヤの街を一望できる展望タワー。
展望デッキからは綺麗な夕焼けが見える。
「わぁ、綺麗.....」
遥は、風に揺れる帽子を抑えながら嬉しそうに言う。
照らされたその横顔は、芸術品のように美しかった。
俺も隣に来て、一緒に眺める。
「ああ.....綺麗だ」
ポケットに手を入れ、ここに来る前に購入した物の感触を確かめる。
......言うなら今か。
「なあ、遥」
「.....なに?」
俺は前の景色を見ながら、言うべきことを模索する。
そんな俺の思考をわかったのか、遥は優しい声で言った。
「私はここに居るから、ゆっくりでいいよ」
横を向くと、彼女は頬を染めて微笑んでいた。
その顔を見た瞬間、言いたいことが見つかった。
「俺は.....遥が好きだ。幼馴染としてじゃなく.......1人の女性として」
緊張で震えていた体は落ち着き、上手く言葉を紡ぐことが出来た。
心臓はバクバクなのに、頭は冷静だった。
「自分勝手に街を出た俺を、怒ることなく包んでくれた。いつも笑顔で、隣に寄り添ってくれた」
思い出すのは、再会したあの泣き顔。
嬉しくて抱きついた時に触れた、華奢な感触。
俺の好きな香り。
その全てが、俺の心をくすぐった。
愛しいと思った。
「遥の立場上、きっとこの先苦労の連続だと思う......それでも俺は、支えたいと思った。一緒に進みたいと......思った」
「.............」
遥の顔は、その前髪に隠れて見えない。
俺の言葉に、どんな気持ちを抱いているだろうか。
俺は続ける。
「俺はまだ未熟だ......でも遥かと一緒なら、1人前になれると思う。だから━━━━━━」
ポケットに入れた、小さな箱を取り出す。
開いて、中を見せながら、言葉を紡ぐ。
「━━━━━━結婚を前提に、俺と付き合ってください」
中には、青い花形の宝石が光る指輪があった。
いきなり重いんじゃないか、と思ったが、これは俺の遥への想いだから。
実際の結婚指輪ほどではないが、なかなかの値はした。
自分のために、ここまでの買い物をしたことはあっただろうか。
俺はそのまま、彼女の返事を待った。
遥はようやく、顔を上げてくれた。その顔は涙が溢れていたが、笑顔だった。
「......やっと......やっと言ってくれた.....!」
「.......待たせてごめん。どうすれば伝わるか.....ずっと悩んでたんだ」
「ううん。響と居れるだけで......幸せだったから......」
ハンカチを取り出し、次々と流れる涙を拭う。
少し恥ずかしそうにしていたが、それでも綺麗だと思った。
「ずっと不安だったんだ..........私はアイドルだし......その所為で響に重荷を背負わせちゃうんじゃないかって.......」
「そいつは覚悟の上だよ.......一緒に背負わせてくれ」
「.......うんっ......!」
落ち着いた遥の右手の薬指に、指輪をはめる。ピッタリだな。
サイズは、衣装で指輪があった時に確認していた。
遥は、指輪がはめられた自分の手を見て、また泣き出しそうになっていた。
それを堪え、言葉を続ける。
「私も........貴方が.......響のことが好きです。よろしくお願いしますっ!」
満面の笑みで返事をする彼女の姿は、とても綺麗だった。
「........遥っ!!」
「きゃっ! もう!」
嬉しくなって、遥を持ち上げて抱きしめる。
彼女も驚いたが、受け入れて背中に腕を回してきた。
「遥........大好きだ。愛してる」
「私も.......大好き.......愛してる」
太陽が沈み、夜がやってくる。
月の光に照らされ、俺たちは口付けをした。
今の幸せな春海を味わうように。
ここまで来るのに、沢山の遠回りをしてしまった。
だがそれは、今があるからあったのだろうと思う。
これから先、様々な困難が来る。
だが、この愛するパートナーと共になら、乗り越えることができるだろう。
絶対に。
「それじゃあ、始めるわよ!」
「カメラの準備っ、オッケーだよ!」
「愛莉ちゃん、私は?」
「雫はお願いだから、そこから動かないで!」
「相変わらずだな。あいつらも」
「ふふっ、そうだね」
今日は彼女たち、MORE MORE JUMP!の配信の日。
俺たちの交際について、発表する日だ。
正直不安しかないが、ここで怖気付いてしまえば、もっと状態は悪くなるだろう。
遥たちのファンのためにも、俺の覚悟を見せなければならない。
隣に立つ彼女の覚悟も無駄にできない。
「ほら遥! 準備はできてるわよね!?」
「もちろん。いつでも行けるよ」
「言ったわね.......白石君も! 行けるわね!?」
愛莉の声に、つい笑いが零れる。
遥に手を握られ、前に出る。
彼女の温もりで、緊張は多少マシになった。
遥と向き合い、頷く。
「ああ。問題ないぜ」
「みんな、こんにちは! MORE MORE JUMP! よ! 今日はタイトルの通り、遥から重大な発表があるわよ!」
「うん.......みんな! 突然こんな感じの始まりでごめんね。でもどうしても、みんなには知らせないと思ったんだ」
チラリとコメントを見ると、遥を心配する声や急かすような声がある。
ここから間違いなく荒れてしまうことに、遥たちへの心配の気持ちは止まらない。
でも.......
「私、桐谷遥は..........交際している男性がいます!」
数秒だけ止まったが、すぐに不審がるコメントや怒りのコメントで埋まる。
当然の反応だな。自分の推しに男がいるなんて、信じられないだろう。
だが遥は、そんなコメントに動揺はしない。
「みんなの気持ちも、もちろんわかる。でも、お世話になってるみんなが大事だから、伝えさせてください」
遥は、俺と出会ってから今までの話をした。
自分の抱えてきたことや俺とのやりとり。
途中俺だけ知らない情報もあったが、今は気にしないことにした。
後で問いただそう。
「そんな彼だから.......私は心のそこから好きになったんだ。みんなには、彼の良さを知ってほしかった」
遥の話によって、荒れていたコメントは平常に戻りかけていた。
だが、あるコメントに目が見に止まった。
『だったらそいつを出せよ』
.......ようやく来たな、待ってたぜ。
これは想定済みで、それ用の内容も考えていた。
認めさせるなら、俺が直接行かないとダメだろうからな。
「うん.....今日その人が来てるから、みんなにも聞いてほしいんだ。彼の話を」
そう言って横にずれた遥の近くに歩いていく。
心臓はバクバクで、不安でいっぱいだ。
そんな俺の横顔を、遥は微笑んで見ていた。
「......リスナーの皆様、初めまして。遥さんと交際させていただいております。白石響と申します」
コメントが再び荒れる。
喧嘩を売ってくるコメントや罵倒のコメントが多数。
その中に数人だけ、優しいコメントがあった。
『すげえイケメンじゃん!』
『お似合いかも?』
ありがとうな。顔も知らない人たち。
俺もいい感じにあったまってきたぜ!
「俺のことは大体、彼女が言ってくれた通りだ。だから今日、俺から歌を聴かせようと思う。聴いたことあるだろう? ミュージシャン『Hibiki』って」
俺の発言に、驚きのコメントが流れる。
この中にも俺のファンが居てくれたみたいだ。
「だったらまあ、言いたいことはわかるよな? 俺の本気.......全員に教えてやるよ。だからそれで判断してくれ」
ギターの準備は既にしている。あとは奏でるだけ。
愛莉たちに目を向け、頷く。
「それでは聴いてください━━━━━━━━“イフ”」
[♪]
ありのままを伝えよう。ありのままの自分を知ってもらおう。
歌は俺の人生の象徴。
それに触れたのならば、直に俺のこと知ることができるだろう。
俺は生きる、この先も.......遥と一緒に。
そして支えてくれる、家族や仲間と共に。
これでオリ主と遥の交際までの話は終わりです。
次回からは様々なカップリングと関わっていきます。
アンケートも実施していますので、よろしくお願いします。
ということで、また次回お会いしましょう。
さようなら。
天馬司編のカップリング相手
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星乃一歌
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日野森志歩
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日野森雫
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その他感想欄に名前のみ