訓練から翌日、俺のところには質問がひっきりなしに来た。
「ねぇねぇ!藤丸君の個性って一体何なの!?」
「『英霊召喚』というからには過去にいた人物を召喚するのだろうが、
それでもあのような人物たちは見たことも聞いたこともないぞ!?」
「もしかして、前に会った武蔵さんみたいな人も召喚できるの?」
「っつーかあのクソデケェおっさんマジでヤバかったな!!」
正直、自分の個性、もとい転生特典は、自分の口で表現するには
かなり難しく、正直に話しても確実に信じられるものではないだろう。
せめて、似たような個性の人がいてくれれば、話はスムーズになるんだけど。
どうしたものかと考えていると、相澤先生がやって来た。
「お前ら、席に着け。HR始めるぞ。」
全員が席に着き、相澤先生が口を開く。
「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績、見させてもらった。
爆豪、お前もうガキみてぇなマネすんな。能力はあるんだから。」
「…………。分かってる。」
「んで、緑谷はまた腕ぶっ壊して一件落着か?
『個性の制御』、いつまでも『できないから』じゃ通さねぇぞ。
俺は、同じことを何度も言うのが嫌いだ。
ただ、それさえクリアすればやれることは多い。…焦れよ。緑谷。」
「! はい!!」
「で、一番気がかりなのは、お前だ。藤丸。」
「…………え?俺ですか!!?」
「あの大男だ。静岡一帯を徘徊してる。今のところ被害は無いが…。
アイツはお前の個性だろ?近隣住民から怖くて外にも出れねぇって苦情が来てる。
それに、オールマイトもあの大男を警戒してる。何とかしとけ。いいな?」
………やべぇ。そもそも勇次郎の手綱握れてねぇのに……。
いや、そのせいで静岡徘徊してるのかあの人!?
でも、相手は
神様からも夢、というより精神世界で……
「いいか?くれぐれも
下手な扱いしたら、世界が1個消滅するんだからな!?
そうなったら最後、『あの組織』に色々やってもらわなきゃならなくなるし…
……え?あぁ、ただの独り言だ。ともかく、しっかりやってくれよマジで。」
と、発言的に神様でも対処に手を焼く恐ろしい存在のようだ。
……じゃあなんで
「藤丸。聞いてんのか?」
「え!?あ、はい!!分かりました!なんとかします!!」
「………まぁ、頑張れよ。」
励まされた……。なんか悲しくなったわ。
「……さて、ホームルームの本題だ。急で悪いが、今日は君らに………」
全員が固唾をのんだ。
以前あった個性把握テストのような事をされるのではと予感していたからだ。
「『学級委員長』を決めてもらう!」
「急に学校っぽい奴来たーーーー!!!」
しかし、その警戒は杞憂であり、むしろ学校っぽいイベントが出て全員が歓喜した。
「委員長!!やりたいですソレ俺!!」
「うちもやりたいス。」
「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」
「ボクの為にあるヤツ☆」
「リーダー!!やるやるー!!」
全員が「我こそが!」と手を挙げる。
当然、自分も手を挙げた。
何故か?それは、自分の能力を制御することにも繋がると思ったからだ。
「大人数をまとめあげる」ことこそが、自分の能力を鍛えるのに最適なものだと思ったからだ。
「静粛にしたまえ!!多をけん引する責任重大な仕事だぞ!?
『やりたい者』がやれるモノではないだろう!!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務!
民主主義に則り、真のリーダーを皆で決めるというのなら、これは投票で決めるべき議案!!!」
と、ここで立派な言葉で立派にそびえたつ飯田君が提案を出した。
当然、そんな飯田君の姿に「そびえたってんじゃねーか」とツッコミも入ったが、
「時間内に決めりゃ何でも良いよ。」
相澤先生は軽く許諾した。
そして、投票の結果……
「僕3票ッッッ!!???」
1位は緑谷君だった。
「な、何でアイツが!?」
「いや、少なくともお前には入れんだろうよ。」
「ボッ、俺に1票!?誰が入れたんだ!!?」
「他の奴に入れたのかよ!!何がしたいんだお前!?」
と、ここで問題が発生する。
「あれ?ちょっと待って。藤丸に2票入ってるけどこれだと22人になっちゃうよ?」
気付いたのは芦戸さんだ。
確かに俺の欄には2票入っている印があった。
全体の結果を見ると
緑谷3票
藤丸2票
八百万1票
青山1票
蛙吹1票
尾白1票
峰田1票
上鳴1票
切島1票
口田1票
砂藤1票
障子1票
耳郎1票
瀬呂1票
常闇1票
爆豪1票
芦戸1票
葉隠1票
飯田1票
麗日0票
轟0票
このようになってしまう。
ちなみに、俺は飯田に票を入れたため、この2票のどちらも俺の物ではない。
「俺は藤丸に1票入れたが、2票も入れてねぇ。
……藤丸、まさかとは思うが、召喚して票稼ぎなんてしてないよな?」
どうやら、俺に票を入れたのはまさかの轟君らしい。
しかし、俺が個性を使って不正したのではと、俺に疑いのまなざしを送った。
「いやいや。そんなセコイことするくらいならもっと票を入れてるよ。」
「………。それもそうか。疑って悪かった。」
とりあえず、俺への疑いは晴れた。もちろん俺は本当にやっていない。
それに、仮に不正が可能だったとしても、絶対にやらないと誓える。
だとしたら誰が票を入れたんだ?
「!! フォウフォーウ!!!」
「え?わ!?」
突然、バックからフォウ君が飛び出してきた。
また、勝手に俺のバックに入り込んで学校に来たのだろう。
しかし、フォウ君の様子がおかしい。廊下の方を見て何かに吠えている。
フォウ君が向いている方を見ると、一瞬だけ誰かが覗いているのが見えた。
身長的に生徒だと思われる。服的には女子生徒っぽいが制服が違う。
つまり、雄英生ではない『部外者』であるということだ。
こちらが見ているのに気付いた、というよりフォウ君に見つかったからか、
その人物はとっくに逃げ出そうとしていた。
「! 相澤先生!!」
「分かっている。お前たちは教室から出るな!」
俺が相澤先生に呼びかけると、
相澤先生は生徒たちに注意を促して、例の人物を追って教室から飛び出した。
しばらくして、相澤先生が戻ってきた。
が、少々、いや、かなり不機嫌そうだった。
「せ、先生。さっきの人は?」
葉隠さんが問いかける。
「…………逃がした。だが、身体的特徴は分かった。」
取り逃がしたものの、相手の特徴は把握したらしい。
「相澤先生、プロヒーローから逃げ出すなんて、一体どうやって?」
緑谷君は熟考し始め、ぶつぶつと
「緑谷ちゃん。気持ちは分かるけど、それ、怖いからやめて」
とにかく、委員長は緑谷君に選ばれ、緑谷君の指名で飯田君が副委員長に選出された。
昼休み
俺は、緑谷君、飯田君、麗日さん、轟君と一緒に学食を食べていた。
「僕が、委員長なんて……、僕に務まるかなぁ……?」
「ツトマル!」
「あぁ!君なら間違いなくやれるはずだ!」
「まぁ頑張れよ緑谷君。応援してるからさ。」
「……頑張れよ緑谷。」
全員が、緑谷君にエールを送った。
「ところで、さっきのあの人、誰だったんだろうね?」
「あの相澤先生が逃がしてしまった人物か?」
「一体、何が目的だったんだろう?」
「…………。多分だが…。」
轟君の推測に全員が耳を傾けた。
「俺は、アイツが藤丸に票を入れた犯人だと思う。」
「え!?」
「轟君、そう思う根拠は?」
「まず、アイツは
雄英のセキュリティは万全らしいからな。
そのセキュリティを抜ける奴なんざ、普通の奴じゃない。」
俺もそれには共感した。パンフレットやネットの口コミ掲示板で見たが、
雄英のセキュリティは堅牢であり、侵入者など絶対許さない作りになっているらしい。
だが、それを掻い潜ることが出来るなど、何者かの手引きなどが無ければ絶対不可能だ。
という事は、あの人物は
あるいは彼女自身が
「ふむ。あの人物が
一体何が目的で藤丸君に票を入れるなんて行動をしたんだ?
自分の存在を明かすようなものじゃないか。侵入者のやる事じゃない。」
「俺もそう思う。ただ、一瞬だがあの侵入者、俺達とほぼ同じ年の女に見えた。
藤丸、最近お前の周りで何か違和感はなかったか?誰かに後を付けられてたりだとか。」
「もしかして、轟君が言いたいのって……。」
「あの人は、藤丸君の『ストーカー』やってこと?」
「…あぁ。と言っても、俺にはストーカーがどんな行動を取るのが
当たり前なのかは分からねぇ。偏見だが、自分の存在を相手に仄めかすのは
ストーカーがやりそうな行動だと思ってな。」
……マジで?
いや、まぁ英霊の中にも愛が重い奴もいるとは神様から小耳にはさんだけど、
「すごいね!轟君!そこまで推測できるなんて!!」
「あくまで推測、というより妄想……だな。違うかもしれねぇ。」
「けど、ほんとにすごいよ!まるで名探偵!ホームズみたいやった!!」
そんな風に轟を称賛していると……
ウゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
『セキュリティ3が突破されました。
生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい。』
けたたましいサイレンとアナウンスが雄英高校中に鳴り響いた。
「す、すみません!セキュリティ3って何ですか!?」
飯田君は上級生にこのサイレンとアナウンスについて質問した。
上級生は慌てながらも説明してくれた。
「校舎内に誰かが侵入して来たって事だよ!!3年間でこんなの初めてだ!!」
「侵入者……ってさっきの?」
「いや、麗日さん。それならあの時にもサイレンは鳴ったはずだよ。」
「という事は……」
「さっきの奴とは違う
食堂は阿鼻叫喚。混乱真っ只中で収拾がつかない状況だ。
「麗日君!僕を個性で」
飯田君が麗日さんに何かを提案しようとした次の瞬間
「は~い!皆様~!獣のように騒ぐのはそこまでで~す!!」
全員が声のした方を向くと、武装した人間を引き連れた
ピンクの髪と尻尾(?)を携えた眼鏡をかけた美人がいた。
「こちらのアナウンスとサイレン、我々NFFサービスが調べましたところ
正門前にいらっしゃるマスゴミの皆様が侵入しただけでございま~す。
ですので、何の脅威もございませ~ん!あんまりうるさいと撃っちゃうゾ☆」
「……マスコミ?」
「なんだぁ…。そうだったんだぁ。」
「え!?ていうかNFFサービスってあの!?」
「とうとうNFFサービスも雇ったのか雄英!」
食堂にいた生徒達は、安心したと同時に
NFFサービスという存在の登場に歓声を上げた。
「? NFFサービス?」
「む?藤丸君、知らないのかい?」
「NFFサービスは、世界政府公認の警備会社だよ!
そして、その会社のほぼ100%が無個性の人たちなんだ!
すごい!あのNFFサービスをこの目で見られるなんて!!」
緑谷君は感激しているかのような眼差しを向けていた。
「じゃあ、あの女の人は?」
「! あ、失礼。ちょっとどいてくださる?はい、ありがとう。」
すると、例の女性は俺の前に近づいてきた。
「フフッ♪あなた、お名前は?」
「え?あ、藤丸志郎です。」
「ふ~ん…そう♪あ、失礼。私、NFFサービス代表取締役社長の
タマモヴィッチ・コヤンスカヤと申します。以後お見知りおきを。」
そう言って、俺に名刺を渡してきた。
「あ、どうも。」
「だ、代表取締役社長!?」
「あのタマモヴィッチ・コヤンスカヤ!!?」
緑谷君と飯田君は仰天していた。
「え?何?そんなすごいの?いやまぁ社長だからすごいのは当然だけど。」
「だって、NFFサービスはロシアを本拠地にしてるんだよ!?」
「あぁ!社長本人がわざわざ現場まで足を運ぶなんてことは滅多にない!
加えて、社長はメディアへの顔出しは一切しない!覆面の存在なんだぞ!」
周りは別の意味で大騒ぎになっていった。
「え~…コホン。私が来日した理由は、2つ。
ここ日本の静岡にNFFサービス日本支部を設立すること。
そして、この雄英高校のセキュリティとして配備されるためです。
まぁ、この件に関しましては後程、先生方が説明されるでしょう。
と言う訳で皆様、私、この後も予定がありますので。ごきげんよう。」
そう言って、コヤンスカヤさんは部下を引き連れて、食堂を後にした。
「……………なんか、騒がしくなってきたな。雄英高校。」
この世界のヒロアカでは
学級委員長は緑谷君、副委員長は飯田君で固定です。
加えて、雄英がNFFサービスに警備依頼をすることになりました。
そして、藤丸に票を入れたあの人物は……
まぁ、可能性のるつぼだろうけど頑張って推理してみてクレメンス。