ミツミが人間の姿になってから数日がたった
カイン達は、色んなポケモン達に事情を説明し手助けしてくれるように森中を回った
幸いなことに手伝ってくれるポケモン達は大勢いた
湖に暮らすポケモン
木の上で暮らすポケモン
夜に活動するポケモン
彼らのおかげで、何時セレビィが現れてもカインの元に情報が来るようにできた
(これでセレビィが来た時に逃がさずに済む)
そう思っていたカインだったが、
ある日の朝平穏は崩された
「ミツミ!今すぐにげるわよ!!」
カイン達を起こしたのはナクラの叫びに似た声だった
「一体、何があったって言うんだ? 朝っぱらから大声出しやがって」
「どうしたの?ナクラお姉ちゃん」
「ミツミの存在がアイツらにばれたのよ! 早く逃げるわよ!」
「アイツらって誰?」
「おい、いたぞ!!」
洞窟の入口にビビヨンの群れが集まっていた
「こんなとこに人間を隠してやがったのか」
「この子はジュプトルのミツミよ!」
「変な嘘はよせ、どう見ても人間じゃないか」
その通りだ
今のミツミはどう見ても人間の姿である
納得してくれるはずもない
「嘘を吐いてまで人間をかばうのか!」
「人間に捨てられた我らの辛さ、思い知らせてやる! そこをどけ!!」
このビビヨン達は人間に捨てられ、人間に対し強い憎しみを抱いている
この森では、こういったポケモンは珍しくない
人間に恨みを持ったポケモン達が集まって、徒党を組む事がある
このビビヨン達もそんな集団の1つであろう
「信じられないだろうけど、セレビィの力で今は人間の姿になってるだけなのよ」
「ナクラ!貴様、我らの元を去っただけでなく、人間の味方になったのか!!」
「えっ」
ビビヨン達の言った事に驚き、ミツミは思わず声が出てしまう
「・・・昔の話よ」
ナクラは話したくないのか、静かにミツミに答えた
「ほう、我らの言葉が分かるのか・・・」
「ならばこの森に住むポケモン達の声を聞くがいい」
「我らのこの悲しみを!怒りを!!憎しみを!!!」
「ミツミ!”ぼうじんゴーグル”を貸して!」
「う、うん!」
「させるか!”ねむりごな”!」
ビビヨン達は一斉に”ねむりごな”をカイン達へ放った
だが、一歩早くナクラは”ぼうじんゴーグル”を受け取り、何も影響はない
ミツミも、人間の姿ではあるが草タイプ、効果はないようだ
「人間に我らの技が効かないだと!?」
「もしかして本当に・・・いやありえない!!」
「次は当てる!!」
ビビヨン達は再びミツミ達にむけて技を放とうとしていると
「"いわなだれ”!!」
そこへ向けて、カインが突然”いわなだれ”を放った
洞窟の中にいたビビヨン達は、岩に押しつぶされて身動きが取れなくなった
「いまだ!!」
カインが叫ぶ
「ミツミ、私の背中に乗って!」
「うん!」
ナクラはミツミを乗せると、すぐさま洞窟から飛び出した
「逃がすか!」
岩から這い出て後を追おうとしたビビヨン達だったが、辺りが薄暗い
洞窟の入口に大量の岩が置かれ、光がわずかに入ってきているだけになっていた
「へっ」
カインが“いわなだれ”で塞いだ為である
「行かせるかよ」
「カイン・・・まずは貴様からだ」
「貴様が我らに勝算があると思うのか?」
「・・・確かにやべぇかもな」
カインは草タイプ
粉系の技がきかないがひこう、むしタイプのビビヨン相手には分が悪い
「だが俺は”いわなだれ”を覚えてる、全くの不利ってわけじゃねえぜ」
「はっ強がりを」
「貴様を排除して、人間を追う!」
「死ねぇ!!」
洞窟を出たミツミとナクラは、ポケモンの村へ向かっていた
ポケモンの村は、この樹海で暮らすポケモン達は本来立ち寄ってはいけない事になっている
しかしある条件を満たしたポケモンだけは樹海から、ポケモンの村へ行っても良いことになっている
その条件とは、人間の事を本当に許し、また歩み寄ろうとする気持ちである
突然、ナクラの体が空中で停止した
「なに!? 体が・・・動かない」
「あら、もうそんな所に来てたのかしら」
ミツミ達は、体を見えない力で拘束されたまま地上へ降ろされた
降りた先には1匹のキュウコンがいた
「村へ入りたいのか?なんだその人間は」
ミツミは、先ほどのビビヨンの事を思い出し、怖くなってナクラの後ろに隠れた
一方、ナクラはこのキュウコンと知り合いなのか平然としている
「久しぶりね、玉藻」
「あぁ、久しぶりだなナクラ」
玉藻と呼ばれたこのキュウコンは、ポケモンの村へ行こうとするものが本当に人間と歩もうとしているのかどうか判断し、許可を出す役目を受けている
「それで・・・そなたがポケモンの村へ行こうとは、一体どういった風の吹き回しだ?」
「ちょっと、非常事態でね・・・このミツミちゃんを安全な所に連れて行きたいのよ」
「非常事態であろうと、掟は掟。裏切ろうとするならば、容赦はせんぞ」
「貴女にごまかしがきくとは思ってないわよ、私はやっぱり不合格?」
「当然だ。」
玉藻はきっぱり言った
「そなたはまだ、人間に憎しみを持っておる、村へ行かせる訳にはいかん」
「でも、このままじゃミツミが殺されちゃうのよ」
「知らん。樹海に立ち入った人間が・・・」
玉藻は言葉を途中で切り、ミツミをジッと見つめた
「なるほど、そういった事か」
何かに納得したのか、呟く
「そういう事、だからミツミちゃんをい安全な所へ連れて行きたいの」
「仕方がない・・・か」
玉藻はしぶしぶであったがナクラがポケモンの村へ行くことを許可した
「ありがと~貴女のその心意気、惚れてしまいそ~」
「からかうな、早よ行ってしまえ」
「はいは~い、それじゃ~ね~」
そそくさと行こうとするナクラ
その一方でミツミは今までの会話が理解できず、どうすれば良いのかわからず立ち竦んでいた
「どうかしたのか?お主も早く行け」
「あ・・・はっはい! あの・・・ありがとうございます!!」
「ああ、出来ればまた会おう・・・ジュプトルのミツミよ」
「! なんで私の事を・・・」
驚きと同時に、怖がるミツミを見て、玉藻は不敵な笑みを浮かべた
「フフ、ナクラの心にでも聞いた・・・どでも言っておこう」
「?」
「ミツミちゃーんどうしたのーいくわよー」
「あ、うん今行くー」
ミツミは不思議に思いながらもナクラヘ催促され、ナクラの背中に乗った
「それじゃ~ね~」
「もう来るな」
「ありがとうございました」
「あぁ、またな」
別れの挨拶を済ませると、ナクラはそのまま飛びたちポケモンの村へ向かった
~ポケモンの村~
「さて、と ここまで来れば大丈夫でしょう」
ナクラはポケモンの村へ降り立つと、ミツミを降ろしてその場に座り込んだ
「ナクラお姉ちゃん・・・ありがとう」
「いいのよ~お礼なんて、私がしたいようにしているだけよ~
後はカインが来るのを待って、これからの事を考えましょう
「・・・うん」
ナクラの言葉を聞くとミツミは顔を下げ、元気が無くなったように見えた
「どうしたのよ~元気ないわよ~」
「お兄ちゃん・・・ここに来れるの?」
ミツミは見ていたのだ
自分の住んでいた洞窟が岩で塞がれていったところを
カインがまだ脱出していないことを
「カインが心配なのね~大丈夫よ~そのうち来るわ」
「でもっ!」
ナクラはミツミの言葉を遮り、静かに、諭すようにささやいた
「信じなさい、カインを、自分のお兄さんを」
「・・・うん」
ミツミはナクラの言葉を聞いて、カインの事を信じて待つことにした
そんな時・・・
ガサッ
樹海に面している草むらから音が聞こえた
ミツミはすぐさまナクラの後ろへ隠れ、ナクラはいつでも攻撃できるように構えた
「無事だったか」
「アベルお兄ちゃん!」
「貴方もこっちへ来たのね」
草むらから現れたのは、アベルだった
「話は後だ、まずはコイツを診てくれ」
アベルは背中に背負っていたカインを降ろし、草むらへ寝かせた
カインはアベルに寝かされたまま、動こうとしない
「お兄ちゃん!!」
ミツミはカインの元へ走った
カインはそれに気づいたのか、目を開け息を切らしながらもミツミへ話しかけた
「ミツミ・・・か? ケガは・・ない・・・か?」
「バカッ!! 自分の事も考えてよ・・・」
カインの体はボロボロで、声を発するのさえ辛そうに見えた
それでもなお、ミツミの事を心配し声をかけた
そんなカインにミツミは怒鳴りつけようとしたが、その声は小さく、震えいた
今にも泣きだしそうなミツミの頭をカインは優しくなでた
「言っただろ・・・俺が守るって」
「・・・バカ」
ミツミはカインに寄り掛かるようにうずくまった
そんな2匹の様子をしばらく見ていたアベルとナクラだったが、
いつの間にか2匹に背を向けて、警戒態勢に入っていた
「気が付いたか?ナクラ」
「えぇ、ポケモンの気配・・・しかもかなりの手練れのようね」
「戦えるのは、俺ら2匹だけか」
「今更何言ってもしょうがないでしょ、私達で何とかするのよ」
「ああ・・・そうだな」
2匹はこれからここに来るであろう、強いポケモンに警戒していた
気配が感じる方向は迷いの森
新手か、それとも・・・
ガサガサッ
「リザードンにフライゴン・・・珍しいねここに新しい子がくるのは」
現れたのは、白髪頭の小太りな人間だった
「なにこの人間・・・」
「さぁな、ただ手は出すなよ」
「わかってるわよ」
アベルとナクラは警戒を崩さず、男を見つめ続けた
「うんあれだよ、新しくここに来れるトレーナーが増えるのは良いことだよ」
男はミツミに気付くと、何やら嬉しくそう呟く
「うん?」
倒れているカインに気付くと、さっきまでの様子から一変し深刻な顔をしてカインに近づく
「何をしているんだ、早くボールの中に入れてやりなさい」
男はミツミに話しかける
「ボール?」
「モンスターボールだよ、このまま寝かせておくのは危険だ」
「そんなもの・・・ありません」
「このジュカインは野生のポケモンなのかい?」
「お兄ちゃんは・・・私を助ける為に・・・」
「ともかく、ポケモンセンターへ連れて行こう」
的を射ない返事に男は考えようとしていたが、そんな暇はないと感じたのか提案をしてくる
「ポケモンセンター?」
「あぁ、そこで治してもらおう」
「どこにあるんですか?」
「あぁ、おれの住む町にある そこまではおれのポケモンに運んでもらおう、
でておいでクレベース」
男は腰につけていた紅白の色をした球のようなものを大きくした
すると、その球の中から光とともにクレベースが現れた
「・・・すごい」
「さぁ、クレベースの背中にジュカインを乗せてエイセツシティへ行こう
そこにいる2人に手伝ってもらって、クレベースに乗せよう」
「あ、はい!」
「クレベースもエイセツまで運ぶのを手伝ってくれるかい?」
「承知しました」
「あれだよ 皆で誰かを助ける それは良い事だよ」
「へー」
ミツミはボールから出てきたクレベースを不思議そうに見つめていた
「呆けてる場合なのか、早く回復させてやるのだろう?」
「うん!」
「アベルお兄ちゃーん、ナクラお姉ちゃーん!お兄ちゃんを回復させに行くから、手伝って―!」
クレベースにせかされ、早くカインを連れて行くためにアベルとナクラに声をかける
しかし
「よし、任せろ!ナクラもいくぞ」
「嫌よ」
「は?」
「え?」
ナクラからの返事は意外なものだった
「胡散臭いじゃないその人間、そのままどこかへ連れ去られる可能性だってあるのよ」
「それは・・・そうかもしれないが」
「大丈夫だよ、話したけど嫌な感じしないし、本当にお兄ちゃんの事を心配してくれてるよ」
「ミツミちゃんは知らないだけよ、そうやって優しくしておいて、
こっちが信用してから本性を現す・・・それが人間っていう生き物よ」
「だから大丈夫だって!あのクレベースも礼儀正しいし、あの人になついているもん」
「だから!それが奴らのやり方なんだって!!」
「ナクラ」
興奮してきたナクラにアベルが呼びかける
「今はカインを治すのが先決だ、騙してるようなら俺がミツミとカインを助ける」
「・・・」
「お前が人間を嫌がってるのは知ってる、だが今は一刻を争うんだ」
「・・・わかったわよ」
ナクラは渋々ではあったが、アベルの言う事はもっともなので従う事にした
「でも、クレベースにあの人間の事を聞いてみてそこから判断するわ」
「好きにしな」
ナクラはそう言うと、クレベースに近づき話しかけた
「初めまして、私はフライゴンのナクラ
早速の質問で悪いけど、あなたのトレーナーについていくつか聞きたいの」
「時間が惜しいのだがいいだろう、私はクレベース
トレーナーウルップのポケモンだ 主の何を聞きたいのか?」
「質問は2つ、1つ目はあなたの主は何をしているのか
2つ目はなぜポケモンの村へ来たのかよ」
「我が主はエイセツシティでジムリーダーを務めておる。
ここへ来たのは人間に捨てられたポケモン達とコミュニケーションをとるためだ」
「ジムリーダーねぇ・・・嘘はついてないわよね」
「当たり前だ、私が嘘をつく理由がない 主は心優しいジムリーダーだ
現に見ず知らずのお前たちの仲間を助けるため動こうとしている」
「・・・わかったわ、信用しましょう」
「じゃあ、早くカインをポケモンセンターへ連れて行くぞ」
ナクラとアベルは、カインをクレベースの上へそっと乗せた
「それじゃ、ポケモンセンターまでお願いね」
「ああ」
「話はまとまったようだな」
それまで沈黙していたウルップというトレーナーは、話が終わると声をかけてきた
「はっはい!」
「クレベース」
「はい」
「ジュカインのこと、頼んだよ」
「承知いたしました」
「うん、じゃあ行こうか」
ウルップはそう言うと自分が来た道を戻るように歩き始めた
ミツミも後を追うようにそれに続く
向かうは、ポケモンセンターのあるエイセツシティだ
~迷いの森~
迷いの森は複雑な地形をしており、初めて訪れる者は道がわからなくなってしまい
行方不明になる人も多いのだという
ウルップはこの森を熟知しており、迷わずに進んでいく
ミツミはここを通るのは初めてなので、辺りをキョロキョロしていたが、そのせいで遅れているとクレベースに「見失ったら迷うぞ」と言われ、それからはウルップの隣を歩いている
「名乗るのが遅れたな おれはウルップ
今向かっている町でジムリーダーをやらせてもらっている」
ウルップが話しかけていたしかし、それはすでにクレベースからミツミは聞いていた
「はい、それはクレベースから聞きました」
「おまえさんはポケモンの言葉がわかるのかい?」
「え・・・どういう事ですか」
「ポケモンと話せる人間は珍しいぞ、少なくともおれはおまえさんが初めてだ」
(やばいヤバイやバイやばイヤばいヤバいヤばイやばいやバい)
ミツミはこんらんしている!
ナクラに聞いたことを考えると
自分がポケモンであることがばれると人間から何をされるかわからない
今、ミツミは自分の正体をウルップにばれそうになっているのである
(落ち着け落ちつけ落着け落着おちつけおちつケオチつけ)
「うん あれだよ おまえさん 人間じゃないだろ」
「何イッテルンンデスカ、私ハ人間デスヨ」
「しゃべり方が変になってるぞ」
「ひゃい!?」
「なら、おまえさんはどうやってポケモンの村に来たんだい?」
「えっと・・・ポケモンの村の南の方からナクラお姉ちゃんにのって・・・」
「ポケモンの村の南は樹海と言って人間が立ち入る事は禁止されている場所だが?」
「うぇ!?」
「やっぱり人間の事情は知らないか」
「え・・・えっと・・・その・・・」
「ポケモンと話せる、樹海を抜けてきた、人間の事を知らない」
「・・・」
「これがおれがおまえさんが人間ではないと思った理由だよ」
「・・・はいそうです私はわけあって人間の姿になっています
そのせいで樹海を追われてポケモンの村に来ました」
ミツミはこれ以上この人に隠していても意味が無いと思い、打ち明ける事にした
「そうか、その時にこのジュカインが庇ってくれてたのだな」
「はい、お兄ちゃんは私を助ける為にこんなにボロボロに・・・」
「そうだったのか 良かったらその訳を話してくれるか 何か力なれるかもしれない」
「わかりました」
ミツミはウルップに自分たちに起きた事を説明した
カインが人間と戦いたがっていた事
セレビィと出会い、人間の姿になった事
バトルスポットに行って、ポケモンバトルを行った事
セレビィがミツミを元に戻さずに帰ってしまった事
セレビィの力でしか元に戻せない事
人間の姿のせいで他のポケモンに襲われた事
「なるほどな これはここだけの話にしよう」
「お願いします」
「うん あれだよ おまえさん、おれのジムへ来なさい」
「え・・・」
「おれの遠い親戚という事にしよう そうすれば人間の中で暮らせる
それから元に戻れる方法を考えよう」
「・・・」
「どうした?」
ミツミは手を口に当て、しばらく考えていた
そして口を開いた
「お兄ちゃんの事といい、なんでそんなに優しくしてくれるんですか?」
ナクラの話を聞いていたミツミは怖くなっていた
だからこそ、ここまで優しくしてくれるウルップにこのような質問をしてみた
「うん ほら あれだよ 生き物は助け合って生きている 困ったときはお互い様だよ」
「そう・・・なんですか」
「そんな理由では納得できないか?」
「いえ・・・納得できました、ありがとうございます」
「そのかわりといっちゃあなんだが、今おれもちょっと困っててな
それをポケモンと話せるおまえさんに頼みたいんだが・・・」
「わかりました、できる限りのことはやってみます」
「そう言ってくれると助かるよ
詳しくはポケモンセンターでジュカインの治療をしている間に話そう もうすぐ町だ」
~エイセツシティ ポケモンセンター~
「あら、ウルップさん」
「急患だよ 早く治療を」
ウルップは女の人にそう言うと、女の人はカインに近寄ってきた
「これは酷い・・・今すぐ治療室へ」
そう言うと女の人はそのそばにいたプクリンとともに
カインをポケモンセンターの奥にある治療室へ運んでいった
「お兄ちゃん・・・死なないで」
「ポケモンセンターに連れてこれたから、一安心だ」
「ありがとうございます そういえば、さっき森で言ってた「頼みたいこと」ってなんですか?」
「ん? ああ、あれか 今はまだいい カイン君の容体が安定してから頼むよ」
「わかりました」
トゥン
治療室のライトが消え、中からあの女の人が出てきた
「ジョーイさん、ジュカインの容体は」
「大分落ち着きました あとはしばらく安静にしていれば治ります」
「良かった」
安堵するミツミの肩をジョーイさんと呼ばれた女の人は力強く掴んだ
「何が「良かった」ですか!ひんし状態になっても戦わせて!それでもトレーナーですか!!」
「ご・・・ごめんなさい」
「まぁまぁジョーイさん この子はトレーナーではないんだ
ポケモンに襲われた所をあのジュカインを中心に3匹が助けてくれたそうだ」
「か・・・仮にそうだとしても」
「ジュカインが自分で決め、行動したことだ ミツミは悪くない」
「・・・わかりました ごめんなさい、怒鳴ってしまって」
ジョーイさんは掴んでいた手を放し、深呼吸を数回行うとミツミに話しかけた
「いえそんな・・・お兄ちゃんを助けてくれてありがとうございます」
「お兄ちゃん?」
(あっ)
「ジュカインの事だよ この子は一緒に暮らしているポケモンを家族のように思ってるんだ」
「そうですか・・・大丈夫、あなたのお兄さんはもう少しゆっくりすれば元気になりますよ」
「は・・・はい」
(ばれたんだと思った 危ない)
「さて、そろそろいいか?」
~エイセツシティ エイセツジム地下~
「ここで何をするんですか?」
ミツミはウルップに連れてかれ、エイセツジムの地下にやってきていた
その途中でアベルとナクラが飛んでいる姿を見つけた
樹海から追手が来ていないか警戒しているのだろう
邪魔しちゃ悪いと思い、何も告げずにここに来た
なんで地下なのか、何故歩いている最中にも何も教えてくれないのか
それに疑問を持ち、ここまで来てやっと2人きりになれたところでミツミが質問をした
「ここにはあるポケモンを閉じ込めている」
「え・・・」
「この町で暴れていた だから捕まえたが、全くいう事を聞いてくれなくてな」
「それで・・・私に?」
「ああ、ポケモン通しならば何か話せるかと思ってな」
「なるほど」
「ここまで来てなんだが・・・頼まれてくれるか?」
「わかりました、できる限りの事はやってみます」
「ありがとう そうだ万が一の為にクレベースとフリージオを渡しておく」
そういうとウルップは2つのモンスターボールをミツミへ渡した
ミツミはモンスターボールを投げ、クレベースとフリージオを出した
「よろしくねクレベース、フリージオ」
「ああ、奴が暴れた時は我々がなんとかしよう」
「ケケケ・・・ヨロシクナ」
「さて、着いたぞ」
ウルップがそう言って立ち止まると、そこには訓練所と書いてある扉があった
「この先にそのポケモンがいる、頼むあの子と仲良くなってくれ」
「はい!」
ミツミが扉を開けると、そこ先には重々しい鉄でできた扉があった
おそらく訓練をするときに扉が開かないようにするためだろう
今はその扉が、ポケモンを抑える為に使われている
(この先に・・・)
ミツミは深呼吸を行うと、扉のドアに手をかけ 重い扉を開いた
そこにいたのは
水色のしなやかな体躯
青いたてがみ
そして、額には水晶のようなもの
“北風の化身”スイクンである
「人間・・・」
「ねぇ、スイクン・・・」
「来るな!」
ドォン!!
おおきな音と共に、ミツミの足元に小さなクレーターができた
スイクンがそこへ向けて“めざめるパワー”を放ったのだ
「来るな・・・それ以上近づいたら今度は当てる」
「スイクン!私の話を聞いて!」
「人間の話なんか信用するもんか!!」
「私は人間じゃないの!お願い、話を聞いて!」
「嘘だ!そんなもの信じられるか!」
「嘘じゃないよ、少なくとも私はあなたの言葉がわかる・・・ねぇ私とお話ししよう?」
ミツミはそう言いながらスイクンの元へ近づいていく
「く・・・来るな・・・来るなよぉ!!」
スイクンはミツミに向かって“めざめるパワー”を何度も放つ
それらはミツミの目の前を横切っていく
「いかん!」
「ヨシ、殺ッテヤロウジャナイカ」
クレベースとフリージオはその様子を見て、戦闘態勢に入る
「やめて!!」
が、それをミツミの言葉が遮る
「大丈夫、心配しないで」
ミツミはそう言うとスイクンの攻撃に臆することなく近づいていく
一歩、また一歩と 歩みを止めない
「なんで・・・なんで来るんだよ!」
ミツミはスイクンの前に立つと突然抱きついた
「君は人間が大好きなんだね・・・じゃなきゃ私に攻撃を当ててたでしょ」
「・・・」
「大丈夫・・・怖くないから・・・襲わないから・・・」
ミツミはスイクンを安心させる為にささやいた
その言葉は自分自身にも言い聞かせているようだ
「私はミツミ、セレビィの力で今人間の姿になっているの」
「僕は・・・Storm」
「Storm君・・・いい名前だね」
「前のトレーナーがつけてくれた名前なんだ・・・」
「そうなんだ・・・ねぇStorm君、よかったら君の事教えてほしいな」
Stormはこれまでの事をミツミに話した
ジョウト地方で、あるトレーナーに捕まったこと
そのトレーナーとずっと旅をしてきたこと
ジョウト、イッシュとまわってカロスにやって来たこと
突然そのトレーナーに「いらない」と言われ捨てられたこと
「何で捨てられたのかわかる?」
「・・・わからない・・・ただ、「遅いからいらない」って言われただけで・・・」
「そっか、そうだよね」
「ごめん」
「なんでstorm君が謝るの、悪いのは君を捨てたトレーナーだよ」
「うん・・・そうだけど・・・」
Stormは俯いてしまった 捨てられたとはいえ、前のトレーナーが好きなのだろう
「ねぇStorm君」
「何?」
「私と一緒に旅をしてみない?」
「え・・・」
「私・・・いろんな所をまわってみたいの、いろんな町を見て、いろんなポケモンと出会って、
いろんな人と出会って・・・」
「なんでいろんな人と会ってみたいの?」
「私、今こんな姿でしょ だけど今まで人と話したことすら無かったんだ
私の仲間の話だと平気でポケモンを捨てる人ばっかりだと思ってたんだ・・・でも」
「でも?」
「ウルップさんやジョーイさんの様にポケモンの事を本当に思ってくれる人達に会って
人のことわからなくなったんだ」
「そうなんだ・・・」
「だから私の目で人間って生き物のこと知りたいの」
「うん・・・」
「だからStorm君も一緒に人と出会う旅・・・行かない?」
「いいの?」
「もちろん! ただ私の仲間も一緒だけどいいかな?」
「それは構わないけど・・・」
Stormは言葉を詰まらせた
「どうしたの?」
「弱いボクなんて必要なの?」
「ムッ」
ミツミはStormの口を両手でつまみ、左右に伸ばした
「い・・・いふぁいいふぁい(痛い痛い)」
「強いとか弱いとか関係ないの!ただ一緒に旅をしたいだけだからね!!」
「・・・ふぁふぁっふぁお(わかったよ)」
「よし! じゃあこれからよろしくね!」
「うん」
「終わりましたか?」
いつの間にか入っていたジョーイさんがミツミへ尋ねてきた
「ジョーイさん、どうしてここに?」
「あなたのお兄さん達を連れてきましたよ」
そう言いながらジョーイさんは入口の扉を開けた
そこにはカイン、アベル、ナクラが立っていた
「みんな!」
ミツミはカイン達の元へ一目散に走っていった
「カイン君はすっかり元気になりましたよ では私はポケモンセンターへ戻りますね」
「ありがとうございます、ジョーイさん」
「今度はあんな状態になる前に来てくださいね」
ジョーイさんはそう言い残すと、訓練所から出ていった
「ミツミ・・・この3匹が君の言ってた“仲間”?」
Stormはミツミの近くへよると、尋ねてきた
「うん、そうだよ みんな紹介するね、私と友達になったスイクンのStorm君だよ」
「Stormか、よろしくな! 俺はカインってんだ」
「う・・・うん!よろしく カイン君」
「あー“君”なんてつけなくていい、カインって呼んでくれよ」
「うん、カイン・・・・君」
「もういいやそれで めんどい」
「お前それでいいのか・・・ 次は俺だな 俺はリザードンのアベルだ これからよろしくな!」
「こちらこそよろしく アベル君」
「最後は私ね 初めましてStorm君、私はフライゴンのナクラよ よろしくねぇ~」
「よろしく ナクラさん」
「さん付けなんて仰々しくていやねぇ 気軽にお姉ちゃんって呼んでほしいな~」
「は・・・はい!ナクラお姉さん」
「う~ん ま、いいわ」
「よし、ウルップの奴をただ待つのもヒマだし、バトルスポットへ行こうぜ!」
皆の挨拶が終わると、カインは突然言った
「お前・・・さっきまで死にかけてただろうが」
「だからだよ!さっきまで寝てたから体が疼いてしょうがねぇんだ」
「どこの凶戦士だお前は・・・」
「まぁ、本人が大丈夫って言ってるんならいいんじゃない?
ポケモンバトルなら安全だし、Storm君の仲間入り記念にでもしましょう」
呆れるアベルに対して、ナクラは乗り気なようだ
「お前らも手伝ってくれるよなぁ!!」
カインはその場にいたウルップのポケモン達に向かって手伝いを頼んだ
「ケケケ仕方ネェ、手伝ッテヤルカ」
「お前は戦いたいだけだろう、まぁウルップに頼まれているしな 手伝おう」
「そうこなくちゃな じゃあミツミ、行こうぜ!」
「じゃあStorm君・・・行こっか」
「うん!」
ミツミ達はPSSを使い、バトルスポットへ向かった
~バトルスポット~
「よっしゃー!またやって来たぜー!!」
「うるさいわよ、それで提案なんだけど今回、ダブルバトルをやってみない?」
ナクラはカインを一度注意してから、バトルの方法を提案してきた
「ダブルバトル?ってなにナクラお姉ちゃん」
「互いにポケモンを2匹ずつ出して戦う方法よ、これならカインを助けながら戦えるでしょう?」
「そうなんだ・・・それなら丁度いいのかな」
「面白そうなルールだな!今回はそれで行こうぜ!!」
「カイン・・・お前2回目なのにテンション高すぎないか」
「なんでだよ!夢の舞台だぞ!それを2回もこれたんだぞ!!嬉しくないわけないだろ!!!」
(ダメだコイツ、早く何とかしないと)
「お兄ちゃんは放置しとけば大丈夫だよアベルお兄ちゃん
じゃあダブルバトルで受付してくるね」
「お、おう」
(すごいクールだな)
「じゃあStorm君、ミツミちゃんが対戦相手を見つけてくる前に
貴方の戦い方を教えてほしいなぁ~」
ミツミが受付に行くのを見送ると、ナクラはStormに尋ねてきた
「あ、はい」
「僕は、性格はおくびょう、特性はプレッシャー、HPとすばやさを重視して育てられたよ
技構成は、バークアウト、ねっとう、れいとうビーム、めざめるパワー炎だよ」
持ち物は、とつげきチョッキをミツミから渡されたよ」
「こ・・・こんな感じかな」
「ありがと~」
「なら、我らの型も教えておこう 選出の時に参考にするといい」
「あら、ありがとう」
「私の型は基本的な物理受けだ 性格はわんぱく、特性はがんじょう、HPと防御に厚く振っている、持ち物はゴツゴツメットで、技構成はゆきなだれ、じしん、ジャイロボール、じこさいせいだ」
「ナラ次ハ俺ノ番カナ」
「俺は高火力デ上カラ叩ク特殊アタッカーダ 性格ハおくびょう、特性ハふゆう、とくこうトすばやさニ振ッテイルヨ 技構成ハこおりにつぶて、こごえるかぜ、フリーズドライ、ラスターカノンダヨ」
フリージオが型を教えていると、ミツミが戻ってきた
「2匹ともありがとな! ミツミも戻って来たし、早速対戦だ!!」
「お相手さんのパーティーは
ユクシー、エムリット、アグノム、ファイアロー、ガブリアス、ガルーラだね」
「なら、ガルーラ、ガブリアスを上から攻撃できる私が行こうかしら」
「あぁ、ナクラは確定だな、同じ理由でフリージオ・・・行ってくれるか?」
「アァイイゾ」
「じゃあ、2匹目はフリージオに決定だね」
「3匹目は・・・Storm君がいいんじゃないかしら」
「ぼ・・・ボク!?」
「えぇ、“バークアウト”で相手の火力を抑える事が出来るし、貴方のデビュー戦だもの
でなきゃ」
「うん・・・じゃあ行ってみる」
「よし、ラストはお・・・」
「アベルお兄ちゃんがいいんじゃないかな、前にファイアロー倒しているし」
「は?」
「そうね、晴れ状態にした“かえんほうしゃ”の火力もかなり強いし、賛成ね」
「オイ」
「ソウダナ、全テノポケモンニ共通シタ技ガ通ルカライイダロウナ」
「待てって」
「じゃあ、最後はアベルお兄ちゃんに決定だね、お相手さん対戦よろしくお願いします!」
「俺はあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
お相手さんはエムリットとファイアローをくりだした!
「ファイアローカ、ヤバイネ」
「じゃあ、ボクが出るよ 交代だ」
「ヨロシクタノムヨ」
「じゃあ私は攻撃するわね」
フリージオはStormと交代した!
Stormの“プレッシャー”
Stormはプレッシャーを放っている!
ナクラの“りゅうせいぐん”!
急所に当たった!
ナクラの特攻が がくっと下がった!
相手のファイアローはたおれた!
「あら、幸先良いわね」
相手の エムリットの “ひかりのかべ”!
相手は ひかりのかべで 特殊に 強くなった!
お相手さんは ガブリアスをくりだした!
「壁をはられちゃったし、私とStorm君の一斉攻撃でガブリアスを倒しましょうか」
「はい!」
相手の ガブリアスの ガブリアスナイトと お相手さんの メガリングが 反応した
相手の ガブリアスは メガガブリアスに メガシンカした!
「運が良いわね」
ナクラの“りゅうせいぐん”!
効果は バツグンだ!
ナクラの特攻が がくっと下がった!
Stormの“れいとうビーム”!
効果は バツグンだ!
相手のガブリアスはたおれた!
「さて、お相手さんの返しなんだけど」
相手の エムリットの “ふぶき”!
Stormには 当たらなかった!
「ぐっ」
効果は バツグンだ!
「ナクラお姉さん!」
「後は任せたわよ」
ナクラはたおれた!
「ヨシ、ふぶきニ強イ俺ガ出ヨウ」
お相手さんは アグノムを くりだした!
「俺ハアグノムニ負担ヲカケヨウ」
「ならボクはバークアウトで相手の火力を奪うよ」
相手の アグノムの “サイコキネシス”!
「その程度じゃ、ボクは倒せないよ!」
フリージオの“フリーズドライ”!
「チッ倒セナカッタカ」
Stormの“バークアウト”!
相手の エムリットと アグノムに 効果は バツグンだ!
相手の エムリットの 特攻が 下がった!
相手の アグノムの 特攻が 下がった!
相手のエムリットの“ふぶき”!
フリージオと Stormに 効果は いまひとつだ
「サテ、アグノムはStormニ任セルヨ 俺ハエムリットニ攻撃スルネ」
「わかった、バークアウトでアグノムをもっていくよ」
相手の アグノムの “かえんほうしゃ”!
効果は バツグンだ!
「今ノハ効イタ、デモヤラレル訳ニハイカナインデネ」
フリージオの“フリーズドライ”!
「くらえ!」
Stormの“バークアウト”!
相手の エムリットと アグノムに 効果は バツグンだ!
相手の エムリットの 特攻が下がった!
相手の アグノムは たおれた!
「よし!」
相手のエムリットの“ふぶき”!
フリージオと Stormに 効果は いまひとつだ
降参が選ばれました
「・・・勝ったの?」
「アァ、相手ガ降参ヲ選ンダカラナ」
「それではお相手さん、対戦ありがとうございました」
~エイセツシティ エイセツジム訓練部屋~
訓練所に戻ると、そこにはウルップともう一人、白衣を着た男が待っていた
「ウルップさん、ただいまです」
「うん お帰り 仲良くなってくれたようだな」
「はい! もうStorm君は私の友達です!」
「安心したよ ならこれを おまえさんに渡そう」
ウルップはそう言うと一つのボールをミツミに差し出した
「これは?」
「Stormのボールだ これからはおまえさんがStormのトレーナーだ」
「あ・・・ありがとうございます!」
ミツミはウルップからStormのボールを受け取った
「それで・・・そちらの人は?」
「自己紹介が遅れたね、わたしはプラターヌ、このカロス地方でポケモン博士さ
君の事はウルップさんから聞いたよ」
「え・・・あの・・・どこまで・・・」
「全部さ 非常に興味深い話ではあるけど、これは全部誰にも言わないよ」
「そ・・・そうですか」
口ではそういうが、内心とても不安になるミツミ
「それで、力になれないかなと思ってね君にこれを託そうと思うんだ」
プラターヌはそう言うと、2つの機械をミツミに手渡した
「赤い機械は、ポケモン図鑑 出会ったポケモンを自動で登録してくれるハイテクマシンさ
もう一つは最近ホウエンから送られてきたマルチナビというものさ
様々なアプリで拡張できて、PSSもこれに入っているよ」
「こんなもの・・・貰っていいんですか?」
「もちろんだよ! これで君は正式にポケモントレーナーになった!
これからの旅で多くのポケモンや人と出会い、その一生を豊かにして欲しい!」
「あ・・・ありがとうございます!」
「うん これは俺からの餞別だ これに君の仲間達を入れて連れて行きなさい」
ミツミはウルップからモンスターボールを3つ受け取った
「何から何までありがとうございます」
「うん 私もジムリーダーだ おまえさんとはいずれ戦うだろう」
「はい!その時は全力でおねがいします!」
「うん では行っておいで」
「行ってきます!!」
ミツミはウルップとプラターヌに別れを告げ、エイセツジムをあとにした
ミツミを元の姿に戻す方法を見つけるため
樹海にはいなかった色んなポケモンと出会うため
そして、人間という生き物を知るため
エイセツシティから様々な目的を胸に秘め、
ミツミ達の旅は今、始まるのであった
次回予告
エイセツシティから始まったミツミ達の旅
様々なトレーナーやジムリーダーとの出逢い
その中でミツミは人間について考えていく
そして舞台はホウエンヘ!
はたして、ミツミは元の姿に戻れるのか?
次回「トレーナー」