『ここか』
「ここに・・・ジラーチが」
ミツミたちは、このためにホウエンにやってきたのだ
セレビィの力によって人間の姿になったミツミ
しかし、ミツミの姿をもとに戻すことなくセレビィは旅立ってしまった
ミツミにかかった力は非常に強く、並のポケモンでは元に戻せなかった
そこで、伝説のポケモンであるジラーチの力を借りるべくここまでやってきた
はたして、ミツミは元に戻れるのだろうか
※これは、ミツミ達のホウエン地方での冒険が終了した後の話です。
時系列の関係上、ラルがすでにエルレイドになっていますが、気にしないでください。
~ファウンス 森の奥、祠前~
『本当にここなのか?』
『信用できぬか?』
『いや、そういうわけじゃねえけど』
ミツミ達はアクア団、そしてカイオーガとの戦いが終わり、ジラーチを探す旅へと戻った
そして、ここファウンスにジラーチが眠っていることを突き止め、やってきたのだ
そこで待ち構えていたのは“アブソル”だった。彼に事情を説明したところ、しぶしぶではあるが、ジラーチの眠る祠まで案内をしてくれている
「や・・・やっとついた」
『やはり人の姿ではつらいか』
「で・・・でもこ・・れで、元に・・・」
『ジラーチが目覚めるまでもう少しある、それまで休んでおけ』
この祠は、ファウンスの一番奥、しかもナクラのようなポケモンが飛べないような入り組んだ森の中にあったため、歩くしかなかった
その道も人のために作られているはずもなく、獣道すらない所なのでミツミはアブソルとそれについていくカインを遠目で追うのがやっとだった
『そうだな、ミツミはそこの木の根にでも腰かけてろ ジラーチには俺が会ってくる』
「う・・・ん」
『そこの崖に空いてる洞穴の中にジラーチの繭は安置されている ここまでジュカイン、お前が運んでくればいいだろう』
『ああ、わかった』
ポォン
『それにしても、すごいとこに安置されてるんだな』
ミツミのボールから、ななみがでてきて素直な感想を言った
「そ・・うだね・・・はぁ・・・はぁ」
『カインに言われた通り、ゆっくりしてなよ』
「も・・・もう落ち着いてきたから」
『いいから休みな 俺はそこにいるアブソルに聞きたいことがあってでたんから』
そういうと、ななみは今までミツミ達を導いていたアブソルの方に体を向けた
『ああ、まずは“なんでこんな所にジラーチが安置されている”んだ?』
『言っている意味がわからんが』
『ジラーチは情報では1000年に一度しか目覚めない しかし、その情報源はおとぎ話だけでなく、しっかりデータとして残っている』
『フム』
『“データとして残っている”という事は、人間に友好的でかつ数百年の間に目覚めているといえる・・・のにも関わらず人里離れた奥地に安置されてるのはおかしいと思ってね』
『・・・』
アブソルはななみが疑問に思ったことを聞いてしばらく黙ってしまった
『人間のくせに中々鋭いな』
『別に・・・昔気になって色々調べただけだよ』
『まあいいだろう、話そうか ジラーチ達のことを』
まず、ジラーチというポケモンは一匹ではない
ええ!?そうなの!?
ああ、そしてなぜこんな奥地に安置されているのかは、別のジラーチが関係している
そーなのかー
・・・真面目に聞く気がないならやめるぞ
スマンスマン
まったく・・・
それで、別のジラーチってどういうこと?
今から12年ほど前、他のジラーチがここファウンスで目を覚ました
しかし、森を活性化させるほどの大きな力に魅了された人間が現れた
人間・・・
彼はその力をもってグラードンを復活させる気だったみたいだ
グラードン・・・
俺たちがルネで会ったカイオーガと対をなす超古代ポケモンだな
ほう、あの一件は君たちが解決してくれたのか
解決というか、なんというか
勝手にカイオーガが納得してまた眠りについただけだよ
ま、今は関係ないか
そうだな
そして、ジラーチの力を使ってグラードンを復活させる計画だが、失敗に終わった 不完全なグラードンは辺りの命を全てを飲み込もうとする化け物だった
そんなことが・・・
それで一度、ジラーチの繭がこの森の中に現れた時は人間に接触させないよう奥地であるここに隠し、様子を見ようとファウンスの者たちで決めたのだ
そうだったのか・・・
今回がその始めての試みだったのだが・・・上手くはいかんな
スマンな、このことは誰にも言わないからよ
ああ、頼む
それで・・・もう一つ聞きたいんだけどよ
なんだ?
はっきり言う お前は人間のこと、どう思ってる
ちょっとななみ!
いいんだ、そんな目に逢わされてて恨まれてても ただ正直な気持ちが知りたい
恨んではおらんよ
本当か?
ああ、その時のジラーチが許したんだ私もファウンスの一員として許している
ファウンスの者として聞いているんじゃねぇ、お前自身の気持ちを知りたいんだ
それでも答えは変わらんよ たった一人の人間の行いで人間のすべてを量れるとは思っておらん 人間に対しても特別な感情はもっておらんよ
そ・・・そうなのか
お前ら、なにやってんだ?
あ、お兄ちゃん
ミツミ達が話している間に戻ってきていたカイン
その手には紫色に輝く結晶体のようなものを抱えていた
『なに話してたんだ?』
『カインには関係ねー話だよ』
『あ?』
「まぁまぁ、それでこれがジラーチの繭なの?」
ミツミはカインをなだめながら、アブソルに訊ねた
『ああ、間違いない』
『これでミツミが元に戻れるんだな』
『さぁ、どうかな』
『どういうことだよ』
『そろそろ始まる 黙ってみてろ』
そう言ってアブソルは空を見上げた
「え?」
つられてミツミ達も空を見上げる
木々の隙間から無数の星々が見える
次の瞬間、星空の中からひとつ、またひとつと星がひとすじの線を描いて消えていく
瞬く間に光のすじはその数を増やし、やがて星々のイルミネーションを映し出す
「わぁ」
シシコ座流星群である
「きれい」
『ホウエンに来た甲斐があったな』
ミツミ達が流星群に見とれていた
その時だった
『うぉっ! なんだ!?』
「何!?この光!?」
突然カインの抱えていた繭が光をおび始めた
『始まったか』
「アブソル 何が起こってるの?」
『まあ見ておれ』
光り輝く繭はカインの腕から離れ、宙に浮き始めた
そして繭が一本一本の糸のようにほどかれ、中からポケモンが出てきた
「あ・・・あなたは誰?」
『僕?ボクはジラーチ!』
『ジラーチ様、お願いがございます』
『お願い?』
ジラーチは状況が呑み込めていないようでキョトンとした顔でアブソルを見つめる
『ここにいる人間はセレビィの力によって姿を変えられたジュプトルなのです どうかこの者を元の姿に戻してはいただけないでしょうか』
『うーん、できるかなぁ』
『それは、どういう意味でしょうか』
『変な感じの人間にしか見えないんだよ』
『ええ、私も不思議な雰囲気の人間にしか見えませんが・・・』
『お願いだ!!どうかミツミを元の姿に戻してくれ!!』
突如としてセレビィとアブソルの会話に割り込んだカインは、ジラーチに対して両手両足を地面へつけ、額を地面にこすり付けるように頭を下げている
いわゆる土下座だ
『顔をあげてよ なんでそんなに必死なの?』
それを見たジラーチは少し不機嫌そうな顔をしてカインに尋ねる
『ミツミをこんな姿になったのは、ポケモンバトルをしたいっていう願いを叶えたせいなんだ ミツミが元に戻れるなら、なんだってやる それが俺にできる贖罪だ』
「お兄ちゃん・・・」
『・・・わかった やってみる』
『ありがとな、ジラーチ』
『そのかわり・・・』
『なんだ?』
『この子にかかっている術はかなりのもので・・・ダメだったとしても怒らないでね?』
『ああ、約束する』
それを聞いたジラーチはミツミの前に移動した
『それじゃ・・・始めるよ』
「うん、お願い」
アバタ オブ アカインドゥ ・・・
ジラーチがミツミに両手をかざし、何かを唱えだした
するとミツミから体からあふれるように光が輝きだした
「これは・・・セレビィの時と同じような感じ・・・これなら」
光は次第に強くなり、ついにはミツミの姿を覆い隠してしまった
そして光は弾けるように散らばり消えた
その中心に立っていたのは
「あ、あれ?」
『ごめんね、やっぱりダメだった』
人間の姿のままのミツミだった
『失敗・・・だと・・・』
「そんな・・・どうして」
『ジラーチ、君はミツミにかかってる術はかなりのものと言ってたよね』
ジラーチの術が効かず、声を出すのが精いっぱいの2匹に比べ、冷静にジラーチに尋ねるななみ
『う、うん』
『ミツミに術をかけたのはセレビィっていう話だけど、それが関係しているの?』
『セレビィというよりも、カロスのポケモンだから・・・かな』
「か・・・カロスだとなにかあるの?」
なんとか落ち着いたミツミは、セレビィに尋ねた
カインは約束を破り、ジラーチに襲いかかりそうだったのでボールへ戻された
『うん カロスはその昔、たくさんの命を犠牲にしたものすごいエネルギーのキカイが造られて発射されたことがあるんだ』
『・・・』
『その影響なのか、その時いたポケモンは本来よりもはるかに強い力を持ったみたいなんだ』
『それで、セレビィの力は普通より強くて、術も解除しにくいってわけか』
『たぶん・・・』
「そうなんだ・・・」
『ゴメンね・・・力になれなくて』
自分が願い事をかなえてあげられず、落ち込んでいるのが目に見えてわかる
「ううん、私のために力を使ってくれてありがとう」
『それで・・・もう一つ相談なんだけど』
『なぁに?』
『ジラーチ、君の力で俺はもとに戻れるか試してほしいんだ』
『君もおんなじ感じなの?』
『俺の原因はわからないけど、気がついたらミカルゲになっていたんだ』
『てことは、人間なの?』
『ああ』
『・・・うんわかったやってみる』
『いいのか?』
ななみはジラーチではなく、アブソルに言うように尋ねる
『ああ、ジラーチ様がそれでよいというなら反対する理由はない』
『じゃあ、いくよ』
『うん、お願い』
アバタ オブ アカインドゥ ・・・
今度はななみに対して手をかざし、唱え始めた
ミツミの時と同じように光に包まれていくななみ
そして光は弾けるように散らばり消えた
その中心に立っていたのは・・・
白黒のニット帽に、黒をベースとした赤いマークのついている長袖の服と長ズボン
そして左腕にメガリングをつけた男性が立っていた
「成功したみたいだな」
男はきょろきょろ自分の体を見回し、呟く
「あ・・・あなたは?」
「おいおい、さっきまで話してたじゃん 俺だよ、ななみだよ」
「な・・・ななみ?」
「うん」
男は自分のことをななみだと言っている
『君にかかった術はミツミに比べると簡単だったから何とかできたよ』
「ああ、ありがとうジラーチ」
『あれ?僕の声が聞こえてるの?』
「え?そうだけど」
『テレパシー使ってないのにおかしいなぁ』
「は?」
なんとななみは、ジラーチの声が普通に聞こえるらしい 一体どういうことだろうか
「ジラーチ、どういうこと?」
『ちょっとまって、もう一度君の気を探らせて』
「うん、いいけど」
了承をえたジラーチは、ななみに対してもう一度手をかざし、両手に力を込める
『そういうことなんだ』
「どういうことだってばよ」
『君にもカロスの力が込められてて、完全にはもとに戻せなかったみたい』
ななみにもカロスのキカイの影響があったらしいそのせいで不完全な解呪となっているようだ
「・・・どれぐらいこのままいられるの?」
『うーん ボクが起きている間なら何とかなるけど・・・』
「そのあとはわからない・・・か」
『うん ゴメンね?こんな中途半端で』
「いや、いいよ じゃあそれまでに色々やらなきゃ」
「色々って?」
「ゴメンミツミ、この七日間は別行動でもいい?」
「いいけど・・・」
「じゃ、七日後ここに集合ってことで!」
そういうと、ななみはファウンスの入り口へ・・・
『ちょっと待て』
行こうとしたが、アブソルに止められてしまった
「なに?」
『ここはファウンスの奥地で、さらに夜ももう更けっている どうしてもいくなら明日の朝になってからのほうが良いだろう』
「ああそっか じゃあここで一晩過ごさせてもらうか」
「あの・・・私たちもいいの?」
『うん! ファウンスはすべてを受け入れてくれるさ!』
『だからあの事件も起きたのだがな』
こうしてミツミたちは、ファウンスで一晩過ごすのであった
~トウカシティ トウカジム前~
ファウンスで一晩過ごしたななみは一人、トウカジムへと足を運んでいた
ここにいる人物と会うためだ
「・・・」
しかしなかなか中に入れずにいた
そんな時、ジムの扉が開いた
「さっさとはいってこないか!」
ジムから出てきたのはこのジムのジムリーダー、センリだった
「あ、父さん」
「・・・おかえり」
「・・・ただいま」
「いろんなとこを見て、自分のやりたいことが見つかったのか?」
「いや・・・」
ななみは少し言い淀んだ
「話さなきゃいけないことがあるんだ」
~ムロタウン ななみの家~
「俺は今、不思議な力でポケモンになっているんだ」
ななみはこれまでのことを両親に説明していった
カロス地方でチャンピオンと制し、殿堂入りしたことを
その自分よりもはるかに強い人たちと出会ったことを
ポケモンの力が絶対と思い、その結果ポケモンを捨てたことを
その罰なのか、自分の姿がミカルゲになっていたことを
そして・・・これからは一匹のポケモンとして生きることを
「バトルだ」
「ちょっと、パパ」
「お前が勝ったら好きにしろ、だが父さんが勝ったらお前は私のポケモンになれ」
「んな横暴な」
センリが提案したものは、ななみと一対一でバトルを行い、その勝敗でこれからを決めるというものだった
「お前がこれ以上迷惑をかけないようにする これも親としての役目だ」
「・・・わかった、受けるよ」
「家じゃ危ない、101番道路へ行こう」
「ああ」
「ちょっと二人とも!」
「母さんは夕食を作って待っていてくれ、すぐ戻るから」
~101番道路~
バトルを行う為に対峙する二人
このバトルの結果で、ななみのこれからが決まる
「いけ!ヤルキモノ!」
センリはヤルキモノをくりだした!
「さぁ、お前もポケモンを出さないか」
「・・・」
「どうした?」
「今はポケモンを持ってないんだ だから俺自体が相手になるよ」
「生身で私のヤルキモノに勝てるとでも?」
「俺は“ミカルゲ”っていったよね この姿でも戦えるよ」
「そうか、ヤルキモノ!手加減はなしだ!」
『本当にいいのか?』
ヤルキモノは二人に問いかけるように言った
だが、二人とも同じような目でヤルキモノを見る
((構わない))
『わーかったよ』
ヤルキモノは二人の気持ちに答えるようにつぶやいた
「行くぞ!!ヤルキモノ“シャドークロー”!」
ヤルキモノは一瞬で距離をつめより、右腕に力を込めななみに突き出す
ドスッ
鈍い音がななみの腹から響く
「いい突きだね こんなに強かったんだ」
『わかった気になりやがって』
「でも、俺の戦い方を気づいてほしいなぁ」
ななみはヤルキモノに突かれた腕をつかんだ
『?力がっ!?』
「フフッ」
ヤルキモノはななみに触れているときに感じた脱力感を恐れ、後ろへと下がった
「あれ?もういいの?じゃあこっちからいくよ」
そう言うと、ななみは両手から赤黒い炎を生み出し、ヤルキモノへと投げつけた
『グッ』
「ヤルキモノ!」
「これで、君の力は半減だ」
「おにび・・・か」
ななみが放った技は“おにび”だった
ヤルキモノはその力で“やけど”し、力が思うように発揮できなくなった
「本当にミカルゲになったようだな・・・ヤルキモノ、もういい休んでくれ」
『チッ』
センリはそう言うと、ヤルキモノをさっさとボールへと戻してしまった
「どうしたの」
「この勝負、お前の勝ちだ」
「まだ、終わってないでしょ」
「ヤルキモノが攻撃した際、ただ受け止めるのではなく、“いたみわけ”を使っただろう」
「うん」
ヤルキモノが感じていた脱力感はななみの“いたみわけ”によるものだった
「そして、“おにび”を使われた このまま続けたらどうなるかぐらいわかる」
「じゃあ、これから俺はミカルゲとして生きていくよ」
「ああ、好きにしろ」
「それじゃ、サヨナラ」
「まて」
もう行こうとしていたななみをセンリが止める
「何?」
「せっかく戻って来たんだ、一日ぐらい良いだろう そこにいるお嬢さん方もおいで」
「え?」
「気づいてなかったのか ほら、あそこの木の後ろにいるだろう」
センリはそう言うと、道から外れた森にある一本の木を指差した
ななみが指された方向を見ると
「・・・なんでいるんだよ」
『・・・えへへ』
そこにいたのは、ミツミともう一匹
ジラーチだった
「ジラーチがあなたのとこに行きたいって」
「まぁいいや、バトルを見てたんならわかってるでしょ、俺のポケモン達をよろしく頼む」
「・・・うん」
ポォン
ななみがミツミにポケモンのことを頼んでいる時、急にカインがボールから飛び出してきた
カインはその手に“エナジーボール”をつくり、ななみの目の前で止めた
「どういうつもり?」
『それはコッチの台詞だ、お前のポケモンをよろしくだと?ふざけんな』
「じゃあどうしろと?今更ポケモン達を逃がすようなマネ、できないよ」
『・・・それを決める為に俺らとポケモンバトルをしろ』
「・・・1対6とか厳しくない?」
『俺はお前となんてバトルしたくねぇ』
「言ってる意味がよくわからないけど」
ななみのいうことは確かに正しい
バトルをしたいと言うが、ななみとはしたくないという
どういうことだろうか
『お前じゃねぇ、俺らとお前のポケモンでだよ』
「・・・」
『この問題はお前が勝手に決められるものじゃねぇ、お前とお前のポケモン達、全員で決めるものだ』
「・・・たしかにそうだね」
『決まりだな、やる日は6日後、ファウンスのあの場所でだ』
「わかった 試合形式は6対6のシングルバトル、完全入れ替え制で行う」
『ああ、それでいい 逃げんなよ?』
「そっちこそ」
一人と一匹は互いにニヤリと笑いながらポケモンバトルをすることを決めた
~ななみの家~
「行くのか」
センリは家を出ようとするななみに問いかけた
ななみが自宅に戻って一晩がすぎた
すでにミツミとジラーチはホウエン中をこの5日間見て回る為に出ていた
「ああ、俺はもうミカルゲとして生きていくことをほぼ決めたよ それが捨ててしまったポケモン達への償いに少しでもなるなら」
「・・・」
センリはななみを止めようと思った
しかし、その為の言葉が出てこない
―私の元へいろと? いや、その事は昨日決着がついている
―ポケモンとして生きることが償いにはならないと言うのか? いや、ななみはそんなこと気づいている 気づいていながら罰を受けようとしている
「お前のポケモン達はどうするんだ?」
結局、本人のことは言えず、ななみのポケモン達のことに話をすり替えた
「ああ、大丈夫昨日泊まったミツミに任せてる ダメでもカロスのウルップさんが面倒を見てくれるように頼んである」
「そ、そうか」
「大丈夫、もう捨てるようなマネしないさ」
「・・・」
そういうことじゃない―だが言えなかった
「こいつを連れて行け」
「?」
センリはななみに一つのボールを手渡した
「・・・リク」
そのボールには、ジュカインが入っていた
リクと呼ばれたジュカイン、それはななみが初めて捕まえたキモリが進化したポケモンだった
「オダマキ博士に無理を頼んで私が預かっていた」
「こんな俺になにしろと」
「リクは今や私のポケモンだ だからお前に預ける、お前が一人前の“ポケモントレーナー”になった時返しに来い」
「昨日の話聞いてた?」
「お前がこれからミカルゲとして生きていくのは勝手だ だが、お前は小さい頃からポケモントレーナーに憧れていただろう?」
「・・・」
「リクがその例だろう お前はポケモントレーナーに憧れ、どこからかキモリを連れてきた そしてそれからはずっと一緒に暮らしてたじゃないか」
そのとおりだった
ななみは幼い頃、ポケモントレーナーに憧れ、落ちていたボールでキモリをゲットし旅に出るまで・・・いや旅に出てからもずっと一緒にいた
それが、ななみの思っていた“ポケモントレーナー”だったからだ
一体いつだったのだろうか
力を求め、ポケモンを人間の決めた盤上でしか考えずにただひたすら勝つことを求めるようになったのは
「私はこれからもお前が憧れていた“ポケモントレーナー”になって私の元へ来るのを待ってるよ」
「はぁ」
ななみはため息をついて言葉を続けた
「ずるいなぁ父さんは」
「ずるいのが大人というものだ」
「・・・待っててよ、どれぐらい先かわからないけどいつか“ポケモントレーナー”になって父さんに挑戦するから」
「ああ、待ってるよ」
~6日後 ファウンス~
ジラーチが眠っていたファウンスの奥底
そこでミツミとカインは待っていた
そしてそこに、ある一人がやって来た
『来たな』
「待たせたな」
「ああ、ミツミにお願いがある」
「うん、わかった」
「早くない?まだなにも言ってないんだけど」
『言われなくてもわかるさ、このままミカルゲとして終わる気はねえんだろ』
「お見通しか、じゃあこれからも俺のポケモンを預かっててくれ」
『それはお前たち全員で決めたのか?』
「ああ、こんな状態だから全員に話を聞けた、みんな俺が人間に戻るまで待っててくれるってよ だったら元に戻る方法を探すしかないでしょ」
ななみはこの6日間、自分のポケモン達と話し合ってきた
最悪、自分のポケモン全員から見捨てられることも覚悟していたが、みんな今の状態を受け入れ、ななみが人間として、ポケモントレーナーとして戻ってくるのを待ってくれると言ってくれた
『そうか、それじゃ早速やろうぜ!お前がどんなトレーナーなのか知りたいしな』
「・・・」
「どうした?」
カインの“トレーナー”という単語を聞いて言葉を失う
「俺はもうトレーナーじゃないよ、ただポケモンを持ってるだけの人さ」
『どっちも変わらねぇだろ』
「いや、全然違うよ」
『俺にはどっちも同じだと思うけどな』
「わからなくても良いよ、俺の勝手な考えだし」
『まあいいや、早くポケモンバトルしようぜ!』
「ああ、いくよ!ミツミ!」
「うん!」
『これより、ななみ対ミツミの6対6のポケモンバトルを行うよ 進行はこのボク、ジラーチがやるからね』
「うん、お願い」
『それじゃあ、お互いに一匹目を出して』
互いにボールを手に取る
「あれ?先発はカインじゃないんだ」
『うっせ!』
「じゃんけんで負けたんだもんねー」
『あっコラ言うんじゃねえよ』
「そ、そうなんだ(どうやってやったかは聞かないでおこう)
それじゃ行くよ いけ!ウィス!」
ななみはマニューラを繰り出した!
「じゃあ、こっちも・・・お願い、いらないさん!」
ミツミはフラージェスを繰り出した!
「相性悪いなー」
『それじゃあ行くよ、試合開始!』
『はっ』
ウィスは開始の合図とともにいらないの懐に潜り込んだ
「先手必勝だ!ウィス、“れいとうパンチ”!」
『うりゃああ!』
「ぐっ」
ウィスの放つ“れいとうパンチ”をもろに食らういらない
『なんか私、ミツミのとこ来てから突かれてばかりね』
しかし、その表情にはどこか余裕があり、その手にはすでに光の玉が生み出されていた
ドッ
光の玉がウィスを捕え、そのまま地面へと叩きつける
『ガッ・・・ハッ』
『弱点をもろに受けたんですもの、もう動けないでしょう』
『・・・まだまだぁ!!』
ウィスは上体を起こし、バックステップでいらないとの距離をとろうとした
しかし、ウィスのスピードにしっかりとついてきて、いらないとの距離は一向に縮まらない
『なっなんでっ!!』
『残念ね』
いらないは再びその手に光の玉を生み出し、ウィスへと放つ
真正面から“ムーンフォース”を食らったウィスの体は宙に浮き、そのまま後方へと飛ばされる
ドカッ
『ぐっ』
ウィスはその勢いのまま、木へとぶつかる
ぶつかった木から、沢山の葉が落ちてきた
『大丈夫?』
ジラーチがウィスに近づき、尋ねる
『大丈夫に見えるか?』
『そうだね、ウィス戦闘不能! いらないの勝ち!』
「ウィス、お疲れさん 相性悪い中よく頑張ったね」
『そう思うんなら交代しろよ』
「そういうルールでやってるからね、無理」
『・・・さっさと人間に戻れよ 戻ったらぶっ叩いてやるから』
「それ聞くとあんまり戻りたくないなぁ~」
「やった!いらないさん!勝ったんだよ!」
『はいはい、次もあるんだから落ち着きなさいな』
『じゃあ、第二試合を始めるよ お互いにポケモンを出してー』
お互いに二つ目のボールを取り出す
「お願い、ラル!」
「いくよ、きりゅう!」
ミツミはエルレイドを、ななみはボスゴドラをそれぞれ繰り出した!
『それでは、はじめ!』
「こっちも先手必勝で行くよ!ラル、“インファイト”!」
『ハァッ!』
ラルはきりゅうに詰め寄り、渾身の突きを叩き込む
しかし
『いい突きね、でもまだ踏み込みが足りない もっと修行が必要ね』
きりゅうにはほとんど効いてないようだった
ラルの“インファイト”が終わるのと同時に、きりゅうの体が白く光り出した
「まずい、ラル!離れて!」
『遅い!』
「きりゅう、“全弾発射”だ!」
きりゅうから放たれた無数の粒は、ラルへと直撃する
『うっ・・・がはっ』
吹き飛ばされたラルは、2、3回地面へとバウンドし、ラルはようやく動きを止めた
『大丈夫・・・じゃないね ラル、戦闘不能! きりゅうの勝ち!』
「お疲れ様ラル、もっと早く気づいてあげてればよかった」
『いや、あれはしょうがないよ でも、もっと修行して強くならなくちゃね』
「きりゅう、お疲れ様」
『ねぇ、メタルバーストを全弾発射っていうのもうやめない?』
「えー」
『人間に戻れたら考えなおして・・・ね』
そして次々とバトルを行い、そして最後の一匹となった
『じゃあ、最後の試合を始めるよ お互いにポケモンを出してー』
「じゃあ、お願いねお兄ちゃん」
『ああ、任せろ!』
「やっとカインの番か 面白い組み合わせになったな」
「どういう事?」
「こういうこと、行け!リク!」
ななみは、ジュカインを繰り出した!
その手には、メガストーンが握られている
『なるほどな、早速やろうぜ!リク!』
『はい!』
『それでは、はじめ!』
「行くよリク」
『うん!』
「『メガシンカ!!』」
ななみのメガリングにリクのメガストーンが反応し、輝きだした!
リクの体が光に包まれ、その光が爆発するようにはじける
リクはメガジュカインにメガシンカした!
『ちっ見せつけてくれるぜ』
「お兄ちゃん、私とじゃメガシンカできないもんね」
『うるせぇ』
「『えっそうだったの? まあでも関係ないよね』」
『ああ、かんけー』
カインは言いながら、手にエネルギーをためている
『ねぇよ!』
カインは、そのエネルギーをリクへ向けて放つ
カインの“めざめるパワー”だ
リクはめざめるパワーを受け止める為に、手をかざす
そして放たれた力がその手からはじけるように分散していく
『な、なんだ!?』
「『残念だったね、今度はこっちの番だ!』」
そう言うとリクは一気にカインとの距離を詰める
その腕からは剣のようなものが生えている
「『食らえ!』」
リクはその剣でカインを切り裂く
「・・・“リーフブレード”か、悪いがいまひとつだぜ」
「『わかってるさ、目的はダメージを与える事じゃないからね』」
『何を』
「お兄ちゃん!背中!見せてる!」
リクとカインの目的はこれだった
リクはリーフブレードを主軸とした型だったため、特殊型のカインでは真正面からの戦闘では不利だ
そこで、メガシンカで手に入れたスピードと“まもる”による意表を突く形で背後に回ったのだ
「食らえ!」
『はぁああああ!!』
リクは渾身の一撃をカインへとぶつけた
リクの“げきりん”だ
その一撃の衝撃はものすごく、あたり一面が土埃で見えなくなった
『そ・・・そんな』
『残念だったな』
土埃が晴れ、立っていたのはカインだった
なんとカインは“げきりん”に耐え、土埃のなかで“めざめるパワー”を放っていた
さすがに4倍の攻撃に耐えられずリクは倒れ、メガシンカも解かれていた
『これは迷う事もないね リク戦闘不能! カインの勝ち!』
『なんとか勝てたな』
「お疲れ様、でもメガシンカ羨ましいねー」
『しょうがねえよ、あれがアイツらにある絆なんだから』
「リク、お疲れ」
『勝てたと思ったのになー』
「こればかりはしょうがないさ」
『それで・・・またミカルゲになっちゃうの?』
「・・・多分」
『そっか、でもいつかは人間に戻って、また旅をするんでしょ』
「・・・ああ必ずしてやるさ」
『それを聞いて安心した じゃあ、ボックスでだけど待ってるね』
「ありがとな」
「じゃあジラーチ、今回はありがとな」
『ううん、ボクも力不足で元に戻せなくてごめんね』
「いや、少なくとも俺は助かった」
『本当?』
「ああ、本当だよ」
『俺もななみのポケモン達とバトルできたしな』
『もう、ミツミのことはいいの?』
『それはそれ、これはこれだ』
「あーひっどーい」
ザッ
バトルが終わり、ミツミ達がジラーチとの談笑をしているとアブソルが近寄ってきた
『ジラーチ様』
「もう時間か?」
『ああ』
『もう、お別れなんだね』
「元気でね」
『うん、二人ともぜ~ったい元に戻ってね』
「ああ、約束だ」
ジラーチがななみと別れの挨拶を終えると、ジラーチの体が輝きだした
『おやすみ』
「ああ、おやすみ」
光がまるで糸のように細くなり、ジラーチを包み込んでいった
そして、再び結晶体となった繭はそのまま地面へと吸い込まれるように消えていった
次の瞬間、ななみの体が輝きだした
「そうか、もうなのか」
やがてななみの体が光で覆われ、見えなくなってしまった
しばらくすると、徐々に光が弱まり・・・
光の中心にいたのは
ミカルゲだった
「それじゃあ、これからも私と一緒に旅をするの?」
ミツミがミカルゲに問いかける
『ああ、これからもよろしく』
ミカルゲになったななみの表情は、読みとることができなかった