Nudist Archive ここは楽園、ならば服を着る必要は無いですよね? 作:ぱる@鏡崎琴春夜
脱ぐので許して。
申請却下の思ひ出
トリニティ総合学園、そこは一つの信仰の下に様々な派閥が集まり出来上がった学校である。しかし、そこに迎合することなく去った者、去らざるを得なかった者たちがいる。これは楽園を夢見た者がそんな者たちを救おうとする話である。
「───今回の議題はこれぐらいでしょうか?」
「はぁ、疲れた~、ナギちゃんロールケーキちょうだい?」
「ミカ、君は特になにもしてなかっただろう。それとまだ残っているよ、嘆願書がいくつか届いている」
広々とした部屋にテーブルが一つと椅子が三つに、この学校の統治者が三人。『パテル』『フィリウス』『サンクトゥス』の三派閥による三頭政治組織ティーパーティの定例会であった。
白を基調とした制服を身につけた生徒が三人の代表に資料を渡す。
「・・・・・・これは、制服自由化の嘆願書ですか」
一枚目の資料に目を通し、大まかな内容を口にしたフィリウス分派の長 桐藤ナギサは、視界の端をちらついた自身の長髪を耳にかけ直し、他の二人の反応を伺う。
「いいんじゃない? みんなでお洒落した方が楽しいよ」
ニコニコと好意的な反応を示したのはパテル分派のトップ 聖園ミカである。彼女はナギサが渡したロールケーキを口に運んで、自分の意見は終わりだと示した。
「───却下だ、これは承認できない」
狐耳をピンと尖らせたサンクトゥス分派の君主 百合園セイアは強い口調で拒否する。ピタリと閉じられた瞼は、この嘆願に対する彼女の意志が変わらないことを示していた。
「えー! なんで? いいじゃん、歴史が古いとお洒落もしにくくて大変なんだよ。これを機に許可しようよ~」
きっと通過すると思っていたのだろうミカさんは目を大きく開いて問いかける。私もそこまでの驚きはないものの、少し意外に感じ、ミカさんに続いて訊ねる。
「確かに全面許可は性急ですが、何もそこまで反対する必要は無いのでは?」
「これを出してきた者たちが問題なんだ」
パチリと瞼を上げたセイアさんはトントンと嘆願書の提出者欄を叩いた。
「・・・・・・エデン分派代表、アイナ?」
「うちにそんな分派あったっけ?」
私は首を横に振る。そんな分派は無いハズだ。
「分派───と言っても三人ぐらいの集まりだ。少し前まではたった一人だったけれどね」
「で、それがどうかしたの? ゲヘナの生徒ってわけでもないし、所属だけで差別なんて良くないよ☆」
言い方は悪いが、特定の派閥に所属しているだけで提案を却下にするなんて普段のセイアさんがするようなことではない。
「私はね、確信しているんだ。これを許可してしまえば、彼女らは服を脱ぎ捨てるだろうとね」
「・・・・・・なぜ、そんなことを?」
セイアさんは首を横に振った。
「理由は分からないが、何故か服を脱ぎたがるんだ。ほら、随分布面積が少なくて、背の高い生徒と学園ですれ違ったことはないかい?」
「セイアちゃんも布面積なら人のこと言えないじゃんね☆」
「むっ、そんなことはないだろう。これは、歴とした───」
反駁するセイアさんとそれをからかうミカさん。まだ次の嘆願書はあるのに、進めるのは何時になるのか・・・・・・
同時刻 正義実現委員会 留置施設
「なぜ、貴女は下着をつけていなかったのでしょうか」
こめかみを押さえながら正義実現委員会の副委員長 羽川ハスミは訊ねた。
「・・・・・・ある健康法があるのですわ。素晴らしいですわよ、ストレス軽減やリンパにも影響がありまして、ダイエット効果も」
くりくりとした深い青の瞳を輝かせ、膝掛けを掛けられた少女は語る。
「下着をつけないことでそんなことが?」
ずいっとハスミが身を乗り出す。それによって彼女の豊満な胸は机の上でむにゅりと少しつぶれた。よく見ると、まるで盾のような黒い翼の先が小さく揺れており、復楽園アイナはハスミが釣れたと確信した。
「えぇ、ショーツのゴムが苦しいと感じたことは? 実は血管を押さえてしまっては───ふぎゃっ!」
食いついた魚を釣り上げようとしたアイナの計画は後頭部を引っ叩かれたことで頓挫する。
「痛ったいですわねっ!」
「黙れ変態───ハスミ騙されるな、確かにその健康法はあるが寝るときだけだ」
叩いたのは正義実現委員会の委員長 剣先ツルギだった。いつもの人を取って食べそうな雰囲気は余りなく、呆れの色が強かった。
「そうなのですか?」
一度釣り損ねた魚は食いつきにくくなってしまう。それを実感させるようにハスミの声色から興味が消えていく。
「・・・・・・昼にも効果がないかは検証中ですわ」
ガタンとハスミの座っていたパイプ椅子が後方に吹っ飛ぶ。
「騙しましたね!」
「騙すだなんてとんでも御座いません。昼間の効果実証中だったんですの!」
「問題はそこじゃない」
もう一度頭を叩かれて、復楽園は連れて行かれた。