Nudist Archive ここは楽園、ならば服を着る必要は無いですよね?   作:ぱる@鏡崎琴春夜

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背中を押され、私脱ぎます!!!
だから、評価をください!!!
感想も欲しいです!!!
何でも脱ぎますから!!!


丈は短し、歩くよ乙女

 トリニティ総合学園を見下ろすテラスに二人の少女と一人の大人が居た。

 テーブルには軽食とティーカップ、ポットが置かれ、一段目が空になったケーキスタンドが、早く次を取ってくれないかなと待っている。

 

 この度は───と少女は口を開いた時、微かな風が吹いた。彼女の大きな羽の先がファサファサと動き、頭のカチューシャにあしらわれた大小様々な花々が彼女の長髪と一緒になって僅かに揺れる。

「───お越しくださり、ありがとうございます。お会いするのは初めまして、ですね。ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します」

 淑女らしくも少女らしい柔らかさの挨拶。だが、言葉にはそれなりの重責を思わせる圧もある。学生が学園を統治するキヴォトスらしいと言えばらしい、大人の役割を背負う少女という印象が感じられた。

「そして、こちらは───」

 大人の男性は桐藤ナギサと名乗った少女に示された方向へ視線を動かす。そうして男性の視線は、そこに居るもう一人の少女と目が合う。すると彼女は飴色の瞳を瞼で隠し、ニコッと完璧な笑顔を見せた。

「同じくティーパーティーのメンバー、聖園ミカさんです」

 桜の花びらで染めたかのような色合いの長髪。制服や翼に小物をあしらい、手首にはシュシュをつけている。ミカの姿をナギサの姿と比べると元は同じ制服なのだろうが、少々改造を施しているのが分かった。

 ナギサの制服を質素でありながら威厳を持つ為政者と表現するならば、ミカの制服は可愛らしさの中に貞淑さと高貴さを漂わせるお姫様のようだと言えた。

「改めまして、お初にお目にかかります。私たちがトリニティの生徒会、ティーパーティーです」

 ナギサとしてはそれ程載せる気は無かったのだろうが、我々がこの学園の統治者であると告げた彼女たちの姿は充分に威厳と高貴さを纏わせていた。

 

”こちらこそ、初めまして。私は連邦捜査部S.C.H.A.L.E(シャーレ)の先生だよ”

 

 先生と名乗った男性は、そう言って灰色のスーツの胸ポケットからシャーレの身分証を取り出して見せた。

 それにミカとナギサの二人の視線は向かう……と思いきや、ミカは顔の方へ、ナギサは服装の方へ視線を動かした。シャーレについてはある程度把握しているのだろうと思い、先生は身分証を再び胸ポケットへしまった。

 

「へぇー、これが噂の先生かぁ……」

 ミカはまじまじと先生の顔を眺める。ふわふわとした黒の癖毛をかき上げて柔らかさの中にちょっとだけ見える男っぽさ、少し垂れ目な部分は頼りなさも感じてしまうが、瞳の奥にはナギサのような頑固さが垣間見える。

「あんまり私たちと変わらない感じなんだね───なるほど~、ふーん……うん、私は結構良いと思う!」

 ナギちゃん的にはどう? とミカはナギサに訊ねた。

「……ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ。愛が溢れるのは結構ですが、時と場所は選びましょうね」

 そう言いつつ、ナギサも先生をじっくりと観察自体はしていた。

 上下灰色のスーツに白いシャツ、衣装に着られている感は否めないが、それがまた彼の雰囲気にマッチしている。少し緩んでいる黒ネクタイも行動的な人物であることを示しているのだろう。話し相手を観察する二人の違いは、その結果を口頭で出力したかどうかの違いだが、それはやはり彼女たちの正反対な性格を表していた。

「うぅっ、それはまあ確かに……」

 ミカの表情はコロコロと変わる。先ほどまで大輪の花のような笑顔かと思えば、次の瞬間には拗ねた幼子のように唇を尖らせて不満を発露させる。そして気づけば、はにかんで照れ隠しを含んだ謝罪を口にするのである。

「先生、ごめんね? まあとりあえず、これからよろしくってことで!」

 

”こちらこそ、よろしく”

 

「……トリニティの外の方が、このティーパーティーの場に招待されたのは、私の記憶では先生が初めてです。普段は、トリニティの一般の生徒たちも簡単には招待されない席でして……」

 ナギサは自慢げにそう語る。それは先生に誇らしく思って欲しいという気持ちが見え隠れした言葉であった。

「あー、何それナギちゃんちょっといやらしい! 恩着せがましい感じー!」

 そして、それをもろに喋ってしまうミカ。暗に伝えたいことを正直に喋ってしまうことは時に美徳となりうるが、政治要素を含んだ場においては失礼となってしまうことが多いだろう。

「……失礼しました、先生。そういった意図は無かったのですが……それはさておき、ミカさん?」

「あー……ごめん、大人しくしてるね。できるだけ」

 ジロリと睨まれたミカは両手をを上げて降伏のポーズをする。だが、舌の根がまだ濡れている状態ですら冗談を付け加えるのだから、根が悪戯好きなのかもしれない。

 

 ───では、改めて、とナギサは場の雰囲気を戻して言った。

「こうして先生をご招待したのは、少々お願いしたいことがありまして」

 

”お願い?”

 

 本題に入れる、と思った瞬間のことだった。

「おおっ、ナギちゃんいきなりだね!? もうちょっとこう、アイスブレイクとか要らないの? ちょっとした小粋な雑談とかは? 天気がいいですね~とか、昨日は何を食べたのですか~とか、良いスーツを着てらっしゃいますね~とか、とか、とか! そういうの挟まないの? ほら、ティーパーティーって、基本的には社交界なんだし?」

 ミカの口からは、マシンガンのように次から次へと言葉が飛び出す。先ほどの大人しくしているという約束は守られず、ナギサの口調を真似た軽い物真似まで交えてミカは喋る。それに対しナギサは、口を開いて声を荒げる様なことまではしなかったが、先ほどより強い怒りを込めた瞳をミカに向けた。それでもミカの傍らに置かれた彼女の愛銃の如くお喋りは止まらない。

 

「そんな綺麗な目で睨んでも、これはティーパーティーとしての在り方の問題なんだからダメー! ナギちゃん、 一応は(・・・)ホストなんだから、きちんとしないと!」

 ミカは両手の人差し指でバッテンを作り、減点行為だよと言う。可愛らしい仕草ではあるが、ナギサからすれば恥をかかされていると思われても仕方ない行為でもある。

「ミカさん、そういったことは貴方がホストになった際に追求してください。()()()() 私がホストですので、私の方法に従ってくださいな。」

 お互いがお互いを睨む。なるほど社交界というのも頷ける。社交界とは拳の絡まない政治の場、廃校寸前のアビドスや研究者が集う新興のミレニアムとは違う歴史の積み重なった学校の雰囲気を先生は感じた。

 

「───まあ、お客様の前でこのような論争を広げるのもまた、望ましい姿ではないことは確かですね……そうですね。ミカさんの言う通り、少し話の方向を変えましょうか」

 結局はナギサが折れた。今大事なのはミカと争うことでは無く、会談の進行役を続けることだと判断したようだ。

 

”あなたたちが、トリニティの生徒会長なんだよね?”

 

「おお、先生の方から空気を読んでくれた! ほら、ナギちゃん見た!? これが大人の話術だよ! 自然な会話への誘導!」

 とても楽しげにナギサへミカが話しかける。しかし、ナギサはミカの言葉を無視して話を進める。

「……はい。仰る通り、私たちがトリニティ総合学園の生徒会長たち(・・)です」

 先生の質問への回答。それがこの会談の場で進行役としてするべき行いである。

 

 ()()()()()()というのは耳慣れない言葉かもしれませんね。とナギサは自身の治める学校について語り始めた。

「最初からご説明いたしますと、トリニティの生徒会長は代々複数人で担っているものなのです」

「あれ、ナギちゃん無視? もしかして無視かなー? おーい?」

 願い事は一つ聞いたのだから黙っていなさいとばかりにナギサはミカを無視する。

「昔……『トリニティ総合学園』が生まれる前───各()()()()()()()が紛争を解決する為に『ティーパーティー』を開いたことから、この歴史は始まりました。そして───先生、どうかされましたか?」

 生徒会の歴史の始まりを話し始めたナギサは、先生が不思議そうな表情を浮かべたことに気づく。

 

”分派の代表って子なら、さっき一人会ったよ”

”彼女は、生徒会の一員じゃないの?”

 

 先生の言葉に、ティーパーティーの二人は表情を硬くする。二人の行動は、まるで政争において相手に先手を打たれてしまったかと焦る政治家の様であった。

 そんな二人を他所に、先生は自身の対面にある空席に目をやって、一言続けた。

 

”その椅子からして、普段はもう一人いるんだよね?”

T()r()i()n()i()t()y()って言うくらいだし、三人でやってるんでしょ?”

 

 単純な思い付きか、それとも探りを入れているのか、二人の君主は目の前の男性のことを観察しなおす。私たちは彼を猫のように害のないものでは無いかと思っていたが、本当はもっと大きな百獣の王だったのではないかと、自身の判断と分析を疑う。だが、この場にたった一人の大人へらへらとした笑顔には裏があるようには思えない。ナギサは不思議に思われる前に質問に答えることにした。

「───そうですか、もうお会いになられたのですね。ですが、その方はティーパーティーの一員では無いかと」

 話しながら、ナギサの頭の中では先生と接触した相手の顔を浮かべていた。

 まず思い浮かぶのは、ヨハネ分派で救護騎士団の団長である蒼森ミネである。澄んだ空のような青髪を風に靡かせ、救護と叫んで争いの渦中に飛び込んでいく彼女ならば、その活動中に先生と出会うだろうか? しかし、だとしても自分を分派の長であると名乗る可能性は少ないだろう。確かにそれも彼女の側面だが、主軸は救護騎士団の団長としての顔であるはずだ。それに最近はあまり外部での活動をしていないと聞く。

 であれば、ともう一人の候補がナギサの頭の中で、ミネに替わって浮かぶ。

 シスターフッドの長 歌住サクラコ。長い白髪を車輪のような意匠とサフランをあしらったウィンプルに包み、白い顔には蠱惑的な微笑みとヴィンテージの赤ワインが如き高貴な色合いの瞳を浮かべる彼女。聖堂付近からはあまり動かないだろうが、絶対ではない。古書館に移動する最中にでも会えば名乗るかもしれない。

「へぇ~、どんな子だったの?」

 偶然か故意の接触か考えるナギサを他所に、ミカが訊ねる。

 

”復楽園アイナって名前の子だったよ”

”エデン分派の代表だって言ってたかな”

 

 ガチャン! と、手から滑り落ちたティーカップが運良くソーサーによって受け止められる。

 

”大丈夫!?”

 

 驚いて立ち上がろうとする先生を片手で制し、ナギサは紅茶とカップが無事なのを確かめて、先生へと向きなおる。

「……その方は、自称分派の方です。実際にそういうものがあるわけではありません。学園に出没する要注意人物の一人です」

 

”あぁ……うん、個性的な子なのは分かったよ”

 

 愛想笑いが先生の顔に浮かぶ。その目は少し虚ろだった。

「あの方は、その……少々特殊な方でして。お忘れいただければ……」

 


 

 ()()()()()()()()()()

  トリニティ総合学園内 小広場

 

 先生と呼ばれる男性が、ティーパーティーの行われるテラスへと向かっている最中に通りかかった小規模な広場──といっても、ちょっとした公園のサイズはあるのだが───そのベンチに横になっている少女に目が留まった。

 朗らかな陽気によってキラキラと輝くブロンドの長髪。毛先がクルクルとカールを描くことはなく、真っすぐに重力の理に従って地面へと惹かれている。しかし、それ以上に目を引くのは彼女の服装だった。()()()()()()()()()()()()()()()。これまでの道すがらにすれ違った生徒の制服と似てはいるものの、白を基調とした上半身の制服は大胆なカットが入っており、もはやセパレートタイプの水着とも言うべき状態になっている。その為、切り上げられた上とスカートの間で健康的でハリと艶のあるお腹が派手に露出している。視線を上に移せば側部には青に染めた紐が通してあるのみで、第11肋骨のあたりで可愛く蝶々結びされていた。袖は殆ど無く、申し訳なさげに肩先からこじんまりと数センチ布が伸びた程度で、先端を薄く桜色に染めた軽いフリルがそよ風に揺れていた。

 下の方はもっと壊滅的だった。膝上どころか股下から数えた方が早いほどスカートを折り上げている。そんなスカートでベンチに横になって眠りこけているものだから、むっちりと肉付きの良い臀部が露わになっており、大変よろしくない。太ももどころか身じろぎすれば文明人として隠しておかなければいけない部分が見えてしまいそうだ。というか、もう若干見えてしまっている。紳士として、教職者としての理性が先生という一人の男を押さえつけているに過ぎない。その為、その圧政より抜け出た本能がチラリと、モチモチの太ももたちの間から覗くフリル付きの黒のTバックを見てしまっても仕方ないことだと言える。

 

”起きて”

”こんなところで寝てちゃいけないよ”

 

 先生は、スーツを脱いで寝ている少女の下半身を隠してから少女を起こす。

 しばらく声をかけていると、少女は眠たげな唸り声をあげながら体を起こした。

 

”おはよう”

 

「おはようございま───あら、どなた様ですの?」

 むにゃむにゃと目を擦りながら半開きの眼で先生を捉えた少女はそう問うた。

 

”私はシャーレの先生だよ”

 

 先生がそう名乗った瞬間、少女は深い青色の目を数回しばたたかせ首をカクンと動かした。それはフクロウの様な動きだったが、彼女に羽は生えていない。頭上に燈った円環は蛇が己の尾を食らった様な印象を受ける。そして円の中にはリンゴの様な模様が浮かんでいた。ただ、彼女の個人的な癖なのだろう。

「こんにちは、(わたくし)復楽園(ふくらくえん)アイナと申しますの。エデン分派の代表をしていまして───あら、これは……」

 自己紹介の途中で復楽園アイナは自身にかけてある灰色のスーツに気が付いた。先生が何か言う前に、彼女は先生の手を取り、ずずいっと顔を近づける。その目は爛々と喜びに溢れてて、真夜中のように深い青の瞳に星々が浮かんでいるように思えた。

「素晴らしいッ! 貴方は良い方ですね先生! 夏も近く良い天気だからと、うたたねしていた私に涼風が吹きつけぬように、スーツをかけてくれていたのでしょう!?」

 本当は目の毒である女学生の柔肌を隠す為であったのだが、彼女はどうやらそんなことは一切気にしていないようだ。

 

”えっと、その恰好は?”

 

 ずっと思っていた疑問をぶつけてみる。アイナはまたカクンと頭を捻る。恥ずかしがるようなしぐさも見えず、距離感もとても近い。必死に男の本能を押さえる先生の脳裏には、大型犬系メイドと天然系高熱ビキニ娘が浮かんでいた。この子はこの類の子なのだろうと脳内で『対応に要注意』へカテゴライズする。

「この格好、まぁ確かにおかしいとは思いますわ」

 しょんぼりとした表情に切り替わったところを見て、先生はホッとする、きっとこの子は純粋な子でこの格好にも理由があるのだろうと、カテゴリーを変える気は起きなかったが、もう少し接する態度は改めなければと思った時だった。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 石のように固まるとはこういうことを言うのだろう。先生はビシリと体を硬直させた。今、目の前の少女は何と言ったのか、おかしい? 服を着ていることが、おかしいと宣ったのか、この少女は。何を言ったのかちゃんと噛み砕いて飲み込んだと同時に、先生は目の前の少女 復楽園アイナについて、脳内のカテゴリを『超危険-社会生命の危機編』に再カテゴライズした。

 

”えっと、どういうことかな?”

”服はちゃんと着た方がいいと思うな……”

 

「……? あぁ、先生は教えを知らないんですわね? ではざっくりと説明しますわ! まず、我らの主が天地と動物を作り、その後に人を作ったのですわ───」

 何故薄着なのか、何故脱ぎたがるのかの説明を求めていたはずなのに、なぜか宗教の話が始まり、先生は困惑を浮かべる。だが、人差し指を立て、目測Cカップの胸を得意げに張って説明を続けるアイナはそれに気づかない。

「───人は果実を食べ、知識を得た結果、追放されてしまったのですが、それも昔の話、我々は再び楽園に足を踏み入れたのです」

 

”それが、なんで服を着ないって話に……?”

 

「まぁ、先生。先ほど言いましたわよ? ここが、このキヴォトスが楽園(エデン)だからですわ! 楽園で人が服を着てるのなんておかしな話だと思いません?」

 真っすぐに相手を見つめるアイナに、先生はどういうべきか悩む。生徒の思いや考えは否定したくないが、これはどうしたものだろうか……と。復楽園の名に恥じぬ解釈を唱えた彼女の中に、疑念や悪意などは感じられない。本当に心の底からそう思っているのだろう。

 

”……他の子たちは脱いでないけど、それはいいの?”

 

 先生には珍しい、意地悪な質問。だが彼の声色に彼女の考えを笑い飛ばし、嘲るような要素は全くない。天地の始まりを問うた子供のように純粋な気持ちで訊ねたのである。その質問に対し復楽園アイナは、眉間にしわを作り瞼をキュッと瞑る。そうして数瞬唸った後にちょっとうつむきがちに瞼を上げた。

「……その質問は、大変に悩ましいですわ。ですが、主は常に裸であれと告げたわけではありませんわ。知恵の実を食べた後、楽園を去る夫婦に主は衣服を与えたのですから、寒い所に行けば防寒着を着ることを、荒れ狂う風に肌が切られるような荒れ地に行くなら、きっと硬いコートをくださりますわ。ですから、主が楽園に招いている時点で心配など無いのですわ。服を着ていてもよろしいんですわ!」

 一種の思考放棄にも思える答えに、眉根を寄せる青年。その思いを知らず、できれば脱いで欲しいとは思うのですが……とアイナは付け加えた。

 

”───あれ、じゃあ脱いでる理由は?”

 

 そう、先ほどの理由からすれば、復楽園アイナが薄着をしている理由にならないのだ。

「なにを仰いますの? 私が脱ぎたいからに決まっていますわ!」

 大胆な宣言。復楽園アイナの発言の度に、先生は目の前にいる少女が分からなくなる。常識が無いように見えて、他人に慮る考えをしていて、さりとて自分の軸から動きが見えない。分かってあげられるような面があるように見えて、全く無いような感覚を覚える。

「理由があれば服を着ることを良しとするならば、服を着る理由を感じなければ脱いだって良いでしょう?」

 そうかな? そうかも? 堂々と、何の不安も感じず、自分の信念を疑ったことは一度もないと言った態度に、年上の青年は思わず飲み込まれそうになる。だが、天の助けか、悪魔の悪戯か、それともただの偶然か、独特の価値観を持つ少女とそれに飲み込まれかけた青年の元に、もう一人少女がやってきた。

「こんなところに居たんですか、アイナ先輩。中々約束の場所にいらっしゃらないので、心配して探したんですよ」

 背後から聞こえた声に先生は振り向く。そこには、白を基調にした制服であるはずのトリニティ総合学園において珍しい真っ黒の制服を着ている少女だった。ただ、露出度がアイナより少しだけマシな程度であることだけが問題だった。

 アイナと同じように切り上げて腹部がバッチリ露出する上と、アイナと同じような部分まで足が出ているスカート。だが、彼女はアイナと違ってスカートが腹部を隠し、長い袖が腕を隠している。また、スリットや紐で繋いでるだけの部分も無く、相対的に見ればアイナよりマシな服装のように思えた。

「約束を破ることは『悪』ですよ」

 カラスのような黒髪のボブカットの少女は真っすぐにアイナに向かい、歩み寄ってくる。

「あら? マシロ様、約束とは……あぁ! そうでしたわ! 私、正義実現委員会のところに行かなければならないんでしたわ」

 約束自体を忘れられていたと気づいた、マシロ様と呼ばれる少女は眉を下げ、キュッと口を結んで、歩く速度をピョコピョコとしたものから小走りに切り替える。

「貴方の愛銃でしょうに……銃は肌身離さず持ち歩くべきものです。さぁ、行きますよ」

 背中にとても大きな狙撃銃を背負う彼女の言葉は重い。そもそもキヴォトスで銃を持ち歩かない存在はとても珍しいものである。そのことを暫くキヴォトスで生活するようになった先生も実感していた。そしてマシロの言葉を聞いて、よくよくアイナを観察しなおすと、確かに彼女が装備している銃は見当たらない。服の下に隠している子もいるとは思うが、復楽園アイナにおいては、この心配の必要は無いだろう。

「それでは、失礼します」

「ご機嫌よう、先生」

 そうして、先生の前から大変刺激的な格好をした二人の女学生は立ち去った。

 

”───もしかして、ああいう服装した子って多いのかな……?”

 

 先生の常識とトリニティ総合学園のイメージに大きなダメージを残したまま……。

 


 

”トリニティって個性的な子がいる学校なんだよね”

 

 生気のない目で回想を終えた先生の一言に、ナギサは叫んだ。 

「あっ、あの方たちは本当に特殊な例なんです! 他の生徒はッ───マトモな方です!」

「待ってナギちゃん、今の間は何」

 ダンッとナギサはテーブルを叩き、ケーキスタンドがピョンと跳ね上がる。

 

”……”

 

 テラスを静寂が支配する。ケーキスタンドに乗っているスコーンやケーキは、幸運にも無事だったが、ナギサのティーカップからは揺れる水面がティーカップのふちという壁越えを果たし、外側を伝ってソーサーに小さな水溜まりが出来上がる。

 ミカと先生はナギサの指先一つの所作までも細かくジッと眺める。だが、運の良かったことに、ナギサの爆発はそれで収まり、一呼吸、深い深い深呼吸を。二呼吸目には短くスゥと吸い込んだ。

「───私ったら、何という言葉遣いを……失礼しました、先生……ミカさんも。」

 落ち着いたことを示すように、それまでよりより落ち着いた声でナギサは謝る。

「……そろそろ本題に入りましょうか。私たちが先生にお願いしたいのは簡単なことです」

 ようやく本題に入る。随分回り道をしたような気がするが、紅茶からはうっすらとまだわずかに湯気が昇っていた。

「簡単だけど、重要なことだよ」

 ミカがナギサにつなげて、そう付け加える。そして、ナギサはそれを更につなげて、ミカの言葉に同意を示しながら、一つの()()()を口にする。

「補習授業部の、顧問になってはいただけませんか?」

 

”補習授業部?”

 

 先生はオウム返しで部活名を呟いた。だが、その気持ちはわかる。ゲーム開発部やエンジニア部ならまだしも、補習授業と倶楽部活動は普通結びつかないだろう。どうしても結びつけるなら、成績不良者は部活動禁止といった具合だろう。先生の疑問に対し、ナギサはそれに答える。

「つまり、落第の危機に陥っている生徒たちを救っていただきたいのです。『部』という形ではありますが、今回は顧問というより『担任の先生』といった方が良いかもしれませんね」

 どうやら内容は補習授業の認識と変わらないらしい。トリニティ総合学園は文武両道を掲げる学校であり、やはり勉学は厳しくしているのだろう。ナギサが続けた説明によると、該当する生徒は四名いるそうだ。

 

「私たちとしてはちょっと困ったタイミングでっていうか……『エデン条約』の件で、今はバタバタしててね。あの子たちの件も何とか解決しないといけないんだけど、人手も時間も足りなくって……その時にちょうど見つけたの! 新聞に載ってた『シャーレ』の活躍っぷりを!」

 秘密裏にしておきたい陰謀……というよりは、裏事情で中々に厳しいのだろうと先生は解釈する。

「それに『先生』なんでしょ? 今はみんなBDで学習する時代だし、学校の職員とか、教授とかならまだしも『()()』って概念は珍しいんだよね。先の道を生きると書いて『先生』……つまり『()()()()()()()()』ことだよね? 尊敬の対象、あるいは生きる指針としてみんなに手を差し伸べ、導く……『補習授業部』の顧問として、これはぴったりだなって思って!」

 おべっかや社交辞令ではなく、純粋な興味と尊敬のない交ぜになった言葉は自然と先生を勇気づける。

「もう少々説明しますと……この『補習授業部』は常設されているものではなく、特殊な事態に応じて創設し、救済が必要な生徒たちを加入させるものです。急ぎと言うこともあり、シャーレの超法規的な権限をお借りしつつ……といった形で、ですね。色々とややこしいですが、本質はあくまで『成績の振るわない生徒たちを救済すること』にあります。だからこそ、こういった特殊な形での創設が許されたわけですが……いかがでしょう、先生? 助けが必要な生徒たちに、手を差し伸べてはいただけませんか?」

 つまりは成績が悪くて悩んでいる生徒を助けるということだ。廃校を救うために奔走したり、ゲーム開発の手助けをしたりといったことよりは先生らしい仕事といえるだろう。そもそも、先生にとって困った生徒を見捨てるという考えはない。助けられるなら助ける。が彼の信条である。

 

”私にできることであれば、喜んで”

 

「やった! ありがとー先生!」

「……ふふっ、きっと断らないでしょうとは思っていましたが……ありがとうございます。では、こちらを」

 喜ぶティーパーティーの二人。そして、先生は補習授業部に加入した生徒たちの名簿を受け取り、それの中身に目を通す。

 

”(あれ、この子って……)”

 

 見知った顔がいることに気づく。しかし、この子はそこまで成績が悪いようには思えないのだが、何故この補習授業部に入ってしまったのだろうか。

「ん? 何か気になる子でもいた、先生?」

 そんな先生の反応を不思議に思い、ミカは質問を投げる。だが先生はそれを適当に誤魔化した。それは、もしかしたら彼女とやったことが問題で入ってしまったのかもしれないからと先生が思ったからであった。

「詳しい内容についてはまた追ってご連絡いたします。他に気になる点はございませんか?」

 ナギサの質問に先生は先程気にかかりつつも訊ねなかったものについて質問する。

 

”エデン条約……って、何?”

 

 条約というぐらいだから何か大きな動きがあるのだろう。だから政治と運営を行う彼女たちは忙しくしていて、補習授業すら外部に頼らなければいけなくなっているのだろうと先生は解釈していた。だから、何か手伝えることはないだろうかと先生はエデン条約について訊ねたのだった。だが、聞かれたミカとナギサの反応は芳しくなかった。どこをどう説明するべきか分からないという顔だった。そして少しの間二人はアイコンタクトで意思疎通をし、何事か決めたのか小さく頷きあった。

「その説明には中々時間がかかってしまいますので、また後日お話しますね。一応、それなりの内部機密ということもありますし……それに、補習授業部の件とはそれほど関係のないことですから……」

 答えは詮索するなというものだった。

 

”あと、ティーパーティーのもう一人の生徒会長は?”

 

 先生は次の質問として、そのように訊ねた。エデン条約の件で忙しいのか、ほかの業務で忙しいのか分からないが、これからこの学校で補習授業部の生徒の面倒を見るのであれば、そのうち顔を見ることもあるだろう。だが、その時分からずにおかしな対応をしてしまっては不味い。そう思った先生だったが、それは杞憂に終わる。

「セイアちゃんは今、トリニティにいないの」

 ミカは先生に、三人目のティーパーティーメンバー、百合園セイアが入院中で不在であることを告げる。

「本来であれば、今のホストはそのセイアさんだったのですが……そういった事情で不在のため、私がホストを務めているところです」

「元々ティーパーティーのホストは、順番でやるものだからね」

 二人の会話に、先生は少し前の会話を思い出す。アイスブレイク云々の会話時、一応と言っていたり、今はと称していた理由はそういう理由であったことに気が付いた。

 

”そっか、早く良くなると良いね。……今聞きたいのはこれぐらいかな”

 

「承知しました。先生のご協力に感謝します、これで一安心です。また何かあれば聞いてください」

「じゃっ、またね先生。また会えるのかどうか分からないけどっ」

 

”うん、よろしくね”




先生どんな感じにしようかと思ってアドバイス貰ったら、好きなタイプの男性とか言われて出てきたのが、ルパン一味や松平健、楽太郎さん、キアヌ・リーヴスで絶対に生徒の裸にあたふたしない人選だったので、アニメ先生に変態と出会う義務が発生しました可哀そうだね!
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