【第一部】~吉良吉影は静かに生き延びたい~/【第二部】~Saint Babel Run~ 作:どくたあちょこら~た
大幅な書き直しを行っていないので、未熟な文章になっております。ご了承ください。
【ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki http://www28.atwiki.jp/shinatuki/pages/1.html】より転載。
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―――――――
――――――――――――――
――………吉影……吉影や……
………吉影…何で残すんだい……?…私の料理…が…嫌いなのかい……?………
―――うっ、とお腹を押さえる。
目の前には自分が食べ残した料理。
その量は明らかに幼い自分の胃の許容容量をオーバーしている。
……そうなのかい……?……私が…心をこ……めて作った料理が…食べられないというのかい………?…
―――違う――そうじゃなくて―――――
口を開くが、幼い自分には抗いようもない力で髪をを掴まれ、卓上の御碗に叩きつけられる。
顔面が食べ物で汚れる。
―――――
―――――――
―――――――――――――
………吉影……
…何で…私と一緒に、お風呂に入りたくない…なんて…言い出すんだい…?……私が……嫌いになったの……?………
―――頭を掴まれ、湯のはった浴槽に頭を突っ込まれる。
苦しい。
息が出来ない。
―――――――
――――――――――
―――――――――――――
………吉影……何でだい………?………何で…私を………愛してくれないんだい………?…
――――ズル――ズル―――――
―――襟首を掴まれ、廊下を引き摺られる。
―――ガラッ――――ドシャッ――
物置の扉が開かれ、身体を投げ出される。
物置の中は暗く、扉からの光しか明かりはない。
……吉影…何がいけないんだい?私は…こんなに…お前を愛しているのに……何で、私を愛してくれないんだい?………
―――――――――――――――やめて―――――
――――――――――やめて―――――
―――――そんな重みを―――背負わせないで―――――――
―――物置の引き戸が閉じられる。
逆光の中、自分を見下ろす顔。
陰っているせいで、その表情を窺い知ることは出来ない。
だが、見えていなくても、それが誰か、彼には分かっていた。
――――――――――母さん――――――――――
―――――――
――――――吉影―――
――――――――――吉影―――――――――
―――――「………………………………う…………」
吉影は目を覚ました。壁にもたれていた身体を起こし、辺りを見回す。
「………夢……か…………」
ここは紅魔館地下。壁の蝋燭の仄かな明かりに照らされた、赤煉瓦の通路。
(…………それにしても…)
吉影は懐の地図を取り出し、広げる。
(……まさか、『あの頃』の夢を見るとはな…それだけ、自覚のない間にストレスを抱えていたという事か…?)
地図左上の時計を確認すると、既に『賭け』開始から半日以上経過していた。
「……吉影…吉影…」
頭上からの声に、吉影はハッと顔を上げる。
「…親父……」
そこにいたのは、彼の父親、吉良吉廣だった。
吉廣は写真から顔だけを出し、さめざめと泣いている。
「……吉影……すまなかった………お前の苦しみを知っておったというのに…わしはお前の母親を止める事が出来んかった……お前を助けてやれんかった…………」
(……寝言を聞かれてしまった…か…)
老いた顔をさらにしわくちゃにして泣いている父親に、吉影は声をかける。
「……いや…親父は十分わたしを助けてくれた…死後もわたしの側にいてくれているじゃないか…」
吉影の言葉に、吉廣は首を振る。
「いや…わしはどうしようもない役立たずじゃ…!生前も死後も、たった一人の息子を護ることも出来ずに…今も、自分のせいで息子が苦境に立たされておるというのに、何も出来ん…!わしは…わしは親失格じゃ…!!」
なおも泣き続ける吉廣に、吉影は優しい口調で話し掛ける。
「いや…今こうなっているのは親父のせいじゃない。あのとき親父が『キング・クリムゾン』とハッタリをかましてくれなければ、わたしは今頃妖怪共の糞になっていた…。それに、仮にそうなっていなかったとしても、あの天狗が『キング・クリムゾン』以外を目的にわたしを罠にかけようとするのは変わらないだろう。わたしは親父には感謝しているよ。
それに……」
吉影の瞳が吉廣の目を見据える。
「………わたしは、お袋にも感謝している。彼女の『教育』のお蔭で、わたしは『盲目的に享楽を追い掛ける浅はかな人生』を歩まずに済んだ…わたしの『性(さが)』を知っても、彼女はわたしを理解してくれた…。…だから………」
吉影は少し悲しそうに目を反らす。
「……お袋を責めるのは…もう止めてくれ…」
吉影の言葉に、彼の父親はハッと息を呑む。
「………分かったわい……」
吉廣はゴシゴシと涙を拭う。
「ところで……」
吉影が話を切り出した。
「どうだ…?手筈通りにいきそうか?」
「ん…?ああ、そうじゃったな。今のところ、問題無く事は運んでおる。」
「彼…宮本輝之輔は、協力したのか?」
「ああ、どうやらヤツもかなりキテいるみたいでな、『脱走の手助けをしてやる』と言ったら飛び付いてきよったわい。」
「そうか分かった。引き続き頑張ってくれ。」
「ああ、任せておれ。」
吉廣が写真の中に引っ込み『ジャンプ』した後、吉影は立ち上がった。
「よし、親父達が計画通りに動いてくれれば、問題は無い……あとは…」
吉影が何やら地図を眺め思案している時だった。
「ッ!!!?」
吉影の左手を強烈な衝撃が襲った。
「ヤツめッ!遂に来たかッ!【シアーハートアタック】の餌に食い付いたな!?」
左手の痛みに耐えながら、吉影はスタンドを出現させる。
「【キラークイーン】!!」
彼の傍らに【キラークイーン】が現れる。その時、また吉影の左手の甲を衝撃が走った。同時にそう遠くない場所から爆発音が響いて来る。
「ヤツの部屋の前に仕掛けておいた【シアーハートアタック】…爆弾化しておいても良かったが、そうするとわたしが近くで四六時中見張って起爆しなくてはならず、爆弾化しなければ以前のように容易く封じられてしまう…ならばッ!!」
【キラークイーン】がスイッチを押した。
ドグオォォォォ!!
「ギャアアアあァァァァー!!」
爆音と悲鳴が地下の空間に木霊する。
「【シアーハートアタック】の他に、『第一の爆弾』も仕掛けさせてもらった!【シアーハートアタック】に気を取られて上に注意が向いている間に、足元を攻撃できるよう、床を爆弾に変えてな…!!」
吉影はニヤリと笑い、左手の痛みも気にしていない様子だ。
「だが……モチロン、この程度で君を倒せる――などと、甘い考えは持っていない…」
……ザッ…ザッ…
背後からの足音に、吉影は悠然と応え、振り返る。そこに立っていたのは、黒い笑みを浮かべ吉影を見つめるフランの姿があった。
「あははっ、随分と情熱的なモーニングコールではなくて?」
彼女はニィっと笑い、ませた口調で話し掛けた。彼女の足はズタズタに崩れていたが、そんな事気にも留めていない。右手をきゅっと握る度に、【シアーハートアタック】の爆発音が轟き吉影の左手が悲鳴をあげる。
「昼夜逆転生活を営む引きこもりのお嬢さんには、このくらいの衝撃が眠気覚ましにはちょうど良いと思ったんだがね……」
吉影も左手の痛みなど意に介さず、微笑を浮かべフランを睨む。
二人とも戦闘態勢にはいり、身構える。空気が熱を帯びる。
「……ねえ…貴方…」
フランがスペルカードを抜き、吉影に話し掛ける。
「聞いたわよ…人里で、『先生』をしてるらしいわね……」
「…それがどうした?」
「…私ね、昨日寝る前に、外の世界のご本を読んだの…幻想郷に来る前、私が住んでいた地域の事が書いてあるご本を…ね……」
フランは自慢気に話し掛ける。
「その中にね…昔の王国で行われていたとっても楽しそうなショーの事が書いてあったの…
『ころっせお』っていうおっきな入れ物の中に、人間とかヒョウとか、ライオンとか入れて、最後に誰が生き残るか観て楽しむそうよ…」
フフフっとフランは笑う。
「でも、実はみ~んな『人間が死ぬ』のが楽しみで見に来ていたそうよ…今やってる『お遊戯』もおんなじ。私がライオンで貴方がカワイソーな人間、貴方は『お客様』を楽しませるために死ぬのよ。」
クスクスと可笑しそうに笑うフラン。
「フン、貴様がライオンでわたしが人間だと?なるほど、理にかなっているな。」
吉影は無表情にそう答え、ニヤリと笑う。
「ライオンの君は、檻に繋がれて鞭で打たれ、生肉を喰らい芸を仕込まれて、人間の見世物になっているのがお似合いだ。」
フランの目付きが険しくなる。
「ねえ…『ころっせお』って…『殺っせよ』って聞こえない…?国語の先生…?」
フランがスペルカードを掲げた。
「残念、ダジャレは零点だ。」
吉影も姿勢を低くし、【キラークイーン】のビジョンを自身に重ねる。
「……ならば…折角だから、『先生』として一つ教えてあげよう…」
吉影の瞳が殺人鬼のそれに変貌する。
「では教育してやろう…
本当の『化け物』の、闘争というものを…!」
「キャハハハハッ!分かったわ、よ~く覚えておいてあげる……」
フランの瞳が心の底から楽しそうに笑う。
「大それた事を言ってしまって……二秒後にピーピー泣きじゃくる事になったおバカな人間の事をねッ!!」
フランのスペルカード宣言が地下に響き渡る。
「禁忌『禁じられた遊び』」
フランの両手に十字架が出現し、それらが膨大なエネルギーを纏って巨大な十文字となる。
「せぇぇいっ!!」
吸血鬼の腕力で投げられた十字架が、吉影に迫る。壁をギャルギャルと削りながら肉迫するそれらは、まさに歯車的破壊大車輪。
「…フンッ…吸血鬼が十字架とは……」
吉影は眉一つ動かさず、ただ一言。
「やれ、【キラークイーン】。」
【キラークイーン】が床を叩き壊し、煉瓦の破片を掴んで投げつけた。破片は十字架弾幕の間を縫い、フランに迫る。
「んっ……」
フランが『破壊の目』の視界に移行し見ると、吉影の投げた煉瓦からは、『目』が抜き取られていた。
「……フフっ…」
ほくそ笑むと、フランは翼をひろげ、空気を打ち叩き飛翔する。天狗並の物凄い速さで爆弾煉瓦を避け、一直線に吉影に突っ込んでいく。
フランと十字架弾幕が吉影を八つ裂きにしようと襲い掛かる。
「しばッ!!」
【キラークイーン】のラッシュで弾幕を捌く。弾かれた十字架が壁を木っ端微塵に破壊する。だが、一発一発が重く、左手も使えない今、フランの接近に対応出来る状況ではない。
「キャハハハッ!」
隕石のように向かって来るフラン。両手の十字架がギャルギャルと回転し、吉影目掛けてブゥンッ!と投げつけた。
ガガガガガッ……!
壁をぼろぼろに削り取りながら2つの十字架が吉影を襲う。
「しばばッ!!」
右手だけでは弾ききれないと判断し、蹴りで弾き飛ばす。軌道を逸らされ弾幕は壁に突っ込み、破片が飛び散る。
「せぇぇいやァッ!」
もうもうと立ち込める土煙を破り、フランが吉影の目の前に現れる。渾身の力を込めた拳に加速を乗せ、吉影の顔面を狙う。
吉影は【キラークイーン】の右腕でガードする間も無く――――
――ニヤリと笑い、【キラークイーン】右手のスイッチを押した。
ドグオオォォォォ!!
フランと吉影の間、フランの背後で、寸分違わず同時に大爆発が起こった。
「きゃあッ!?」
フランは前方からの爆風に押し戻され、吉影は衝撃を利用・軽減しバックジャンプで距離をとる。
(こ…この人間…!爆弾を二つに割って最初の一発をわざと私に避けさせて…二発目を私の弾幕が起こした土煙に紛れて……ッ!!)
視界を遮断されていては『物』自体が見えないので『目』の有無は分からない。
自分の能力の弱点を『自分の攻撃を利用されて』突かれた事に、フランは怒る。だが―――
ドドグオオォォォォ!!
「ッ~~~~!!」
前方の煉瓦の破片を爆破!
後方の煉瓦の破片を爆破!
けっこう楽しむつもりでいたフランも全身をエアバックに押し潰されるかのような爆風風圧にはビビった!!
「ギャアアァァァあ!!」
その二つの爆心の間に生じる超高圧の圧倒的破壊空間はまさに万力的砂嵐の小宇宙!!
これぞ闘技『二重(フタエ)の起爆』!!
「アアァァァァ………――」
悲鳴は爆音に掻き消され、やがて爆発は止まった。
「さて、どうなったかな…」
サンジェルマンにカツサンドを買いに行くかのような雰囲気で、吉影はゆったりと歩み寄っていく。
「…あ………あぁ…」
滅茶苦茶に破壊された瓦礫の中、フランは仰向けに倒れガクガクと痙攣している。右腕は肩から千切れ飛び、両足は膝のあたりから吹き飛んで骨が見えている。
「ああぁ……い…痛い……痛い…!!痛い…」
自分の血溜まりの中で、フランは痛みに悲鳴を上げる。
吉影は彼女の前に立ち、冷酷な目で見下ろす。
「そうか痛いか、なら死ね」
一切の感情の籠っていない声で言い放つと、【キラークイーン】の発射した拳銃弾がフランの脳天を撃ち抜いた。
「ガグッ……」
頭から血を吹き出し、ふっと倒れた。同時に、接触起爆型爆弾に変えられた拳銃弾がカチリ、と音をたて、爆発した。フランの身体はバラバラと塵に還り風の吹かない地下の床に積もる。
「さて、それじゃあ………」
パンパン、と手を払い、吉影は何の感動なさそうに振り返る。
「『本物』を片付けなければな…」
背後に佇むフランを、ギロリと睨む。
「すっご~い、なんで『分身』だって分かったの?」
「『アレ』の右手を吹き飛ばしてやったのに、左手の痛みがとまらないからだ。」
感心するフランにつまらなさそうに言い、吉影は身構える。フランも片足を引き、構える。
「ねえ……私…少し思ったんだけど…」
フランが楽しそうに笑う。
「よく考えたら…スペルカードバトルなら、けっこうしょっちゅう出来るのよね。今みたいな『お泊まり』で『思う存分』出来るのはめったに無いけど……せっかくの私の『能力』で壊れない人との『お遊戯』を、いつものスペルカードだけで戦うのは、ちょっともったいないかな~って。それでね……」
フランの目が無邪気な輝きを帯びた。
「こ~いうのはどう?」
フランが左手を吉影に向けた!
「ッ!!!?」
吉影は自分の『目』が引き寄せられるのを感じ、
「【キラークイーン】ッ!!」
【キラークイーン】の指が吉影に触れ、彼の『目』がスイッチに『ジャンプ』する。
「……………」
『きゅっとしてドカーン』への特効薬を持つ吉影だが、何かに気付き、ギリッと歯を噛み締める。
(くっ……!この小娘、まさか…!)
フランの目を睨み返すと、彼女はニィっと笑う。
「アハハハハ、分かってくれたようね…」
悪戯っぽい笑みを浮かべ、フランは吉影を見つめ返す。
「これから、私はスペルカードを使わないわ。代わりに、貴方の『目』を引っ張り続ける。そうすれば…貴方も『爆弾』が使えなくなるでしょ…?そうしたら、弾幕の撃てない貴方は……」
吉影がゴクリ、と喉を鳴らす。
「…『肉弾戦』、……か…?」
ウフフフっとフランは可愛らしく笑った。
「…なるほど、それなら……」
吉影は足を引き、身構える。
「それ相応の『覚悟』が必要だな……!」
【キラークイーン】にファイティングポーズをとらせる。彼の瞳には躊躇いは無く、既に『覚悟』が宿っていた。
「キャハハハ、さあ、始めましょう……?サイコーにエキセントリックな『遊び』をねっ!!」
二人の視線が交差する。空気が闘争心にビリビリと震える。
歪な翼が空を打ち、筋骨隆々の脚が床を蹴る。その瞬間、フッと二人の姿は消え……
ドオオオォォォォォンッ!!
拳と拳が激突し、衝撃が波動となって地下空間に響き渡っていった。
――――――――
―――― 同時刻、某所
「ええい、なにをモタモタしておるんじゃ!もっと気張れ!!『スタンドは気合い』じゃぞ!!」
「そ…そんな事言われても…!もともとタクシーより大きい物をファイリングした事なんてありませんし…た、体力も弱ってるんで…」
「全く、近頃の若いモンは…!ほれ、これでどうじゃ!?」
「ブッ!?ゲホッゲホッ!!なっなんですかこの怪しげな粉!?」
「魔法の森に自生しておる茸の胞子じゃ。なんでも魔法使いの力を高めるそうでな、スタンド使いにも(たぶん)効果はある。」
「な、なるほど、でもこれって、害は無いんですかぁ?」
「安心せい、ちゃんとスタンド使いを被験者にして安全性を確かめておいたわい(被験者はわしじゃがな…)」
「そ、そうですか。だったら安心ですね…
おおっ!ホントだッ!!力がみなぎって来たぞ!!ハハハハハ最高にハイってヤツだぁぁぁ!!
あれ、なんか親父さんが二人見える……」
――――――――――――――――――――
――――――――
「せぇぇぇぇぇいッ!!」
「しばばばばばばばはッ!!」
ドオォン!!
ガァン!
ドギャアァン!!
「うっ……!」
「ぐぅッ………!」
空中で打ち合い、バッ!と離れる。
スタッ
「はぁ…はぁ…」
着地し、フランは荒い息を整える。彼女の両手は手の甲が裂け、真っ二つに折れた骨が飛び出していた。
タンッ
「ハァー…ハァー…」
【キラークイーン】の脚で着地し、吉影はフランを睨みつける。
「グッ……!」
左手の痛みに呻き耐え、吉影は思考を巡らせる。
(わたしに有利な点は…『ヤツには【【キラークイーン】のスイッチ】以外見えない』という事…そして『スタンドを攻撃出来る手段が無い』点、そして『相手が【能力】を使えない』『相手はスペルカードを使わない』の二点…ッ!
対して、わたしにとって不利な条件は……『爆弾が使えない』『左腕を動かせない』の二つ…。
通常なら、総合的にはわたしの方が有利なのだが……)
ビリビリと痛む右肩に手をやる。
(…流石は吸血鬼…!東方仗助の『クレイジー・ダイヤモンド』と互角に渡り合えるパワーを持つ我が【キラークイーン】に…スタンドも持たずにこれほどのダメージを…!与えるとは…ッ!!)
スタンドは実体化したタイプ以外スタンドでしか倒せないと言われているが、実はスタンド攻撃以外の手段によってダメージを受ける場合がある。
それは『スタンドから触れようとして、触れた対象に【押し負けた】』時である。
実際、スタンドであるシルバー・チャリオッツはセト神に弱体化された状態で銃弾を弾こうとした際、『力負け』しレイピアが曲がってしまった。
つまり、本体を攻撃されなくてもスタンドがダメージを受ける危険があり、安心は出来ないのだ。
(だが…打ち合って分かったッ!ヤツは実戦経験は殆ど無い!ただ吸血鬼のパワーとスピードに頼るだけの、幼稚な闘い方ッ!!その経験の浅さを、うまく点く事が出来れば……!)
吉影の瞳が殺気を放つ。
フランの手の甲の傷はみるみる塞がっていき、やがて完全に治癒した。
(クソッ!化け物め…!!これではジリ貧だ…)
フランは手の具合を確かめようと、強く握り締める。また【シアーハートアタック】の爆発音が響き、左手に激痛がはしる。
「ぐッ………!!」
痛みに耐え、吉影はフランを睨む。
と、フランが顔をあげ、身構えた。吉影も【キラークイーン】に構えさせる。
「「……………………………」」
また空間が覇気で満たされる。壁や天井がビリビリと震える。
二人の緊張が極限に達した時―――
「えぇぇぇぇぇいっ!!」
フランの翼が空気を打ち、弾丸のように突っ込んで来る。一気に間合いを詰め、頭上から吉影に襲い掛かる。
「せぇいッ!!」
フランの右ストレートを【キラークイーン】の右拳が迎え撃つ。
「しばっ!!」
ビキギキ…!
(くっ…!重いッ!!…)
右肩にはしる痛みを振り切り、手刀で反撃するが、射程距離外に逃げられ空振る。
「ええぇい!!」
更に頭上からのフランの猛攻を【キラークイーン】の右手で捌いていく。
(クソっ、やはり右手が見えているッ…!!)
右拳を弾き、右足の蹴りを頭上に受け流す。
(そして、この小娘…我が【キラークイーン】の射程距離を熟知しているッ!常に空中から攻撃して、危険な一撃を避けつつ短期決戦で反撃の余地を奪う作戦だッ!)
「しばっ!!」
僅かな隙を突き、左ストレートを手刀で払う。パワーAのスタンドの手刀を喰らい、手首が骨まで斬られる。動脈まで傷が達し、鮮血が噴き出す。
「ギィッ!……」
フランの表情が痛みに歪む。だが次の瞬間、
「獲ったぁ!!」
凶悪な笑みを浮かべ、右足で強烈な蹴りを放った!
「なッ!?」
がら空きの吉影の左側頭部に満身の力を込めた蹴りが叩き込まれる!!
「勝った!第三部完!!」
だが、フランの想像のように吉影が脳髄を撒き散らす事はなかった。
「見えたッ!!」
ガギィィィィン!!
フランの蹴りは吉影の耳の数センチ手前で止まる!
「えっ!こ、これは…頭突きっ!?」
驚愕するフランの右足を、【キラークイーン】の右拳が強打する。
バギィッ!!
「ギャアァァ!」
へし折られ血の噴き出す右足の痛みにフランが悲鳴をあげる。その隙を吉影が狙う。
「今だッ!」
【キラークイーン】の脚で跳躍し、射程距離限界までフランに肉迫する。吉影、【キラークイーン】、【キラークイーン】の右腕が一つの槍のように一直線に伸びる。
「しばっ!!」
【キラークイーン】の手刀が、フランの鳩尾を突いた!
「アギャアアァァァ!!」
フランの身体がビクビクと痙攣する。さらに力を込め突くと、手刀がズブズブと肉を破り食い込む。
「もっと奥へ…心臓を…!心臓をッ!!」
「ウガアァァァァ!!」
【キラークイーン】が咆哮し、心臓へと達しようと渾身の力を込め突く。血が噴き出し、【キラークイーン】のショッキングピンクの肌を深紅に染める。
だが――
「淑女(レディ)の胸元に手を突っ込むなんて乱暴じゃなくって?」
「ッ!!!?」
狂気を帯び始めた双眸が、吉影を見下ろしていた。
「ざんね~ん、本当は吸血鬼は心臓を潰された程度じゃ死なないの。そしてこれで……」
ガシィッ!
フランの両手が【キラークイーン】の右腕を掴む。
「これで捕まえたわァッ!!」
ビュゥン!
右足の蹴りが吉影のこめかみを狙う!
「ぐおッ!?」
また頭突きで防御しようとするが、
「ぐあッ!!」
先程とは比べ物にならないパワーで押しきられ、姿勢が揺らぐ。
(こっコイツ…!なんて不死性だッ…!)
かなりの衝撃に思わず後退り、さっきの爆発でできた凹凸に足を取られる。
「しま…ッ!?」
仰向けに倒れ込んだ吉影に、フランが強襲をかける!!
「もらったわッ!!」
左手で【キラークイーン】の右手を押さえ、満身の力を込めた拳を叩き込む!吸血鬼の拳が吉影の顔面に迫り―――
ドバギャァッ!!
「…ガハッ……!」
【キラークイーン】の蹴りが、フランの腹にめり込んでいた。
「スタンドは精神エネルギーの具現…幽霊のように宙に浮いているのだから、足捌きなど不要なのだよ。と、いっても君には見えないか……」
吉影は腹筋の力を利用して飛び起きる。
「さあ反撃と行こうか!!【キラークイーン】!!」
強烈な衝撃を受け動きを止めたフランの横っ腹に、【キラークイーン】の左膝が突き刺さる!
ドバキィッ!!
「か……は…!!」
ゴボッと血を噴き出し、フランは項垂れる。
「よし、いけるぞ!そのまま叩き込めっ!!」
「ウガアァァァッ!!」
【キラークイーン】が吼え、フランの脳天にエルボーを見舞う!
「ギャアァッ…!」
頭蓋骨が砕ける音、肉が裂ける音。フランの身体はくずおれ、ドシャリと床に倒れ伏した。
「まだだッ!そいつの息の根をとめろッ!」
【キラークイーン】がフランの頭を砕こうと右脚を振り上げた。その時!
ズバシャァ!!
「ぐおあぁぁ!?」
意外!それは翼ッ!!フランの七色の宝石のような歪な翼が、吉影の頬を掠める。
「ぐっ!」
バックジャンプで距離を開き、頬を撫でる。鋭利な刃物で斬りつけられたようにパックリと傷が口を開き、血が流れ出ていた。
「…うっ……ううッ…」
血にまみれたフランが身体を起こし、立ち上がる。その身体には既に傷は無く、治癒し終わっていた。
「くそッ…!なんて化け物だ……!!」
吉影の額を一筋の汗が流れる。
「くっ……ククク…ハハ……アハハハハハハ…!!」
すこぶる愉しそうに笑い、吉影を睨む。その目は地獄の底のように深く、飽くなき悦楽を求めていた。
「まったく…わたし自身も『化け物』と自覚していたが…」
ギリッと歯を食い縛り、口角を吊り上げる。
「コイツを見るかぎり…やはりわたしは『人間』のようだッ!!」
自信の籠った笑みを浮かべ、【キラークイーン】の脚で突撃していった。
―――――――――――――――――
――――――――同時刻――――
「くそっ…!!」
彼―宮本輝之輔がいるのは紅魔館地下大図書館。彼のスタンド『エニグマ』で本棚を掃除している。
「あっちで呼ばれてコッチで怒鳴られ…!!僕に休みは無いっていうのかッ!?」
悪態をつきながら仕事をしていると――――
ドグオオオォォォォン!!
「……………………え……?」
何の前触れも無く壁が吹き飛び、極太レーザーが襲い掛かって来た!
「なんだってェェェェーッ!?!?」
レーザーは輝之輔に向かって一直線に迫り来る。
「くそぉォォォォォッ!!エニグマ!!」
彼のスタンドが彼の前に立ちはだかり、レーザーを紙に変える。圧倒的なエネルギーは紙に封じ込められ、ファイリングされた。
「あ…危なかった……!」
腰が抜け、輝之輔はヘナヘナと座り込む。と、そこへ――――
「あーやれやれ、ちょっとやり過ぎちまったぜ…」
長い金髪に黒いとんがり帽、黒服に白のエプロンという出で立ちの少女が、箒を持って壁の穴から登場した。白黒魔法使い、霧雨魔理沙である。
「おおラッキー、本棚まではギリギリ大丈夫だったみたいだな。じゃあせっかくだから無事だった本を『借りて』いくとするぜ。」
キョロキョロと図書館内を見回し、他人事のように呟くと、今日も今日とて泥棒稼業に精を出そうと……
「んっ?変だな…」
彼女の視線が輝之輔の足下に向けられた。
「私の『マスタースパーク』の痕が、本棚の前でぷっつりと途絶えているぜ…これは…どういう事だ?」
そこでやっと彼女は輝之輔の存在に気付いた。
「おーいそこのお前、ちょっと訊いてもいいか?」
「ひぃッ!?」
すっかり放心していた輝之輔は突然の声掛けにビクッと驚いた。
「お前…私のマスパを―どうやってか知らないが―止めたみたいだな…?パチュリーの新しい使い魔か?」
魔理沙は右手のミニ八卦炉を輝之輔に向ける。
「どうやって私の十八番を防いだのか、見せてもらうぜ!!」
ミニ八卦炉が熱と光を帯びる。それを見て、輝之輔はヤバイ!と直感した。
「恋符『マスタース――』」
「うああああああ!!」
輝之輔は懐から一枚の紙を取り出し、開いた。炎の弾幕が魔理沙に向かって飛んでいく。
「ッ!」
魔理沙はミニ八卦炉を下ろし、箒に飛び乗って回避した。
「これは…パチュリーの火符『アグニシャイン』か?」
輝之輔は震えながらも立ち上がり、必死に考えを巡らす。
(こいつは…『白黒強盗』霧雨魔理沙!しょっちゅう本を盗みに来ては、パチュリーと戦って逃げていくヤツ…あの紫もやしに一泡吹かせているのを見るのは楽しかったけど、その後僕がどれだけ八つ当たりされたか…ッ!!)
彼女への恨みが高まっていくが、今はそんな事を考えている場合ではない。
(しまった…ヤツに弾幕をファイリング出来る事を気付かれてしまったっ…!下手をすればパチュリーに話してしまうかもしれない…なんとかしてこいつをパチュリーに会わせないようにしないと…!!)
そう考えている時、魔理沙が何気ない口調で口を開いた。
「なんだ、お前パチュリーの『奴隷』か。」
彼女の言葉に深い意味は無かった。彼女が言った『奴隷』とは、スペルカードのうち自分以外のモノに弾幕を撃たせるタイプの技で、その弾幕を撃つ人形や本等の『モノ』の事を指している。
つまり、彼女は輝之輔がパチュリーの弾幕を撃った事で、彼を『パチュリーの新しいスペルカードか?』と思っただけである。
しかし、そんな幻想郷の少女達の事情など露ほども知らない輝之輔にとってその言葉は致命的だった。魔理沙の放った言葉のマスパが、彼の衰弱しきった自尊心を跡形も無く粉砕した。
「まあいい。お前がパチュリーの新スペルなら、攻略すれば良い話だぜ。」
放心している輝之輔に構う事なく、魔理沙は再度ミニ八卦炉を構える。
「恋符『マスタースパーク』!」
極太レーザーが迫るが、輝之輔はショックで動けない。
――――さらに悪い事は、彼女の言葉のレーザーは彼の心を吹き飛ばすだけでは飽き足らず、その膨大な熱でドロドロに融解させ、煮えたぎる溶岩のようにした事だ。
バシュウゥゥゥゥン!!
「なっ…!!」
魔理沙のお気に入りのマスパは、一瞬で消滅してしまった。
「マスター……なんだって…?」
マスパを封じ込めた紙をヒラヒラと振り、輝之輔がギロリと魔理沙を睨み付ける。その圧倒的な負のオーラに、魔理沙は思わずたじろぐ。
「マスター…ベーション…だったか…?こんだけ上機嫌に撒き散らしやがって…ティッシュ何箱必要なんだよ…!ああッ!?」
完全プッツン状態の輝之輔は相手が同じ年頃の少女だというのに躊躇いなく下品な事を口走る。
「…お前、私を挑発してるのか…?」
怒りに顔を赤くしながら、魔理沙は再度ミニ八卦炉を構える。
「魔砲『ファイナルスパーク』!!」
さらに強力なレーザーが輝之輔目掛けて放たれた。図書館の床を削りながら、彼に迫る。だが――――
「エニグマ。」
輝之輔の呟きと共に、レーザーは掻き消える。彼の手にはもう一枚の新しい紙。
「うっ、ファイナルスパークまで…!」
魔理沙はギリッと歯を噛み締める。
輝之輔は目に見えそうなほどのマイナスオーラを全身にみなぎらせ、魔理沙を睨む。
「お前の事はよく知ってるぞ…しょっちゅうあの紫もやしと戦ってたな……【切り裂き魔羅沙】…だったか?」
ぶちギレながら下品なセリフを吐き掛ける輝之輔に、魔理沙の怒りも有頂天になった。
「おまえッ!!私をなんだと思ってるんだッ!!」
箒につかまり、輝之輔に向かって行く。
「これならどうだ!」
直進しながら一発目を撃ち、急カーブして斜めから二発目を発射した。
「『ダブルスパーク』!」
二本のマスパが輝之輔を襲う。輝之輔は微動だにせず、スタンドに命令する。
「小賢しい!エニグマッ!!」
スタンドのヴィジョンが彼の身体と重なり、漆黒の鎧となって二発のレーザーを封印した。
「無駄無駄ァ!僕のスタンドはいうなれば!『パワーを吸い取る盾』!『弾丸を撃ち返す防御壁』!エネルギーは紙にされ封印されてしまうのだッ!
お前の弾幕のスピードがいくら早かろーが火力がいくら強かろーが我がスタンド―――――『エニグマ』の前には無駄だッ!僕を倒す事はできないし貴様に出来ることは逃げることしかないィィ!」
輝之輔が吼える。だが、魔理沙は箒に乗って上昇し、さらにスペルカードを掲げる。
「光撃『シュート・ザ・ムーン』!」
魔方陣がいくつも飛んできて、輝之輔を包囲しレーザーを放つ。
「無駄だッ!何発だろうが紙に変えて…、
ッ!?」
レーザーが床をなめて迫って来て、彼の立っている床の周りが炎をあげて燃え始めた。
「レーザーで燃えた床の足下からの炎とレーザーの包囲網、防げるものなら防いでみな!」
「うああああああ!!」
炎とレーザーの中から輝之輔の悲鳴が轟く。
「――――……な~んてね。」
ハッと背後からの声に振り向くと、輝之輔が無傷で立っていた。
(自分を紙に変えて、ファイリングしておいた『悲鳴』を置いて脱出した…ちょっと驚かされたけど、弾幕戦なら僕は無敵!!これなら吉良の親父さんに頼らなくても、あの紫もやしをメタメタに出来る!)
散々痛め付けられた彼の心に、優越感が染み渡っていく。
「さあ、反撃だ!!」
マスパを封印した紙を開く。すると、さっき撃ち込まれたレーザーと全く同じものが魔理沙に向かっていった!
「な、なんだって~ッ!?」
慌てて魔理沙もマスパを撃ち、相殺させる。ミニ八卦炉を握った両手がビリビリと痺れる。
「全く同じ威力…!間違いないっ!あいつ、私のマスパを撃ち返したぜッ!」
辺りを見回すと、輝之輔は既に何処かに逃げてしまっていた。
「いったいどんな術を…!これは是非とも確かめないとすまないぜッ!」
怒りは何処かに吹き飛び、好奇心に目を輝かせ魔理沙は雷のように飛び出した。
――――――――――――――――――――――――――――
「はぁ…はぁ…」
「ハァー…ハァー…ゲホッ……」
フランは片膝を着き、背中に手をやる。左翼がもがれ、血が噴き出していた。右足は踝から変な方向に曲がり、折れた骨が皮膚を突き破って飛び出している。
吉影は壁に右手を着き、荒い呼吸を整える。その右手は甲が裂け、血がドクドクと流れ出ていた。左半身の負傷が酷く、左側頭部からの出血、左腕の骨折と、かなりの重症を負っていた。
「クソッ…なんというパワーとスピードだ……【キラークイーン】が『押し負けて』ダメージを負うとは…!」
ギリリッと歯を食い縛り、身構える。フランの傷はみるみるふさがっていき、千切れ飛んだ翼以外は完治して余裕綽々と立ち上がる。
「くそッ、まったくなんという化け物っぷりだ…!冗談じゃないぞ…ッ!」
フランは身構え、二人は対峙する。二人の身体から闘気が立ち上る。
「う~ん、ゾクゾクするぅ…」
ゾクゾクと背を震わせるフラン。
「イイわ…!スゴく…!堪らないわね…」
頬を赤く上気させ、恍惚の表情で吉影を見つめる。
「ホントに…スゴく……愉シイわ……!!」
彼女の紅い瞳が、蠱惑的な光を帯び、吉影を映す。
「……………わたしは………」
吉影はそっと尻ポケットからライフル弾を取り出し、【キラークイーン】に握らせる。
「…『闘い』は嫌いだ……『闘争』は私が目指す『平穏な人生』とは相反しているからだ……だがッ!!…」
凶悪な笑みを浮かべ、フランを睨む。
「…面白い…酷く面白いぞ…!!この『闘い』は…!」
殺人鬼と吸血鬼、二人の『鬼』が向かい合う。
「そう…貴方も楽しんでくれて嬉しいわ…」
フランも可笑しそうに笑う。
「でも…………………」
フランが懐から一枚のスペルカードを取り出した。
「なッ……!?」
吉影が目を見開く。
「これで終わらせてあげるッ!」
約束を破り、フランはスペルカードを掲げる。
「クソがァァァッ!!」
【キラークイーン】の脚で床を蹴り、吉影が肉迫する。フランのスペルカード宣言が響く。
「禁忌『レーヴァテイン―――――」
ドバシャァッ!!
カードを握るフランの左手を、ライフル弾が貫通した。
「ギャアァァァァ!」
指が弾け飛び親指ほどの穴があいた左手を押さえる。
(『目』への引力が消えた!やるなら今だッ!今しかないッ!!)
【キラークイーン】の脚で跳躍し、フランに迫る!
「うおおおおあぁぁぁぁぁ!!」
自身の『目』を解除し、【キラークイーン】の右手がフランの身体に触れる寸前だった。
ギィンッ!!
「ッ!!!?」
フランが顔をあげ、吉影を睨んだ。狂気の滲んだその姿は、まさに悪魔。
「もらったァーッ!!!」
フランが崩れかかった左手を突き出す!
「マズイッ!【キラークイーン】!!」
解除され持ち主のもとに戻ろうとする『目』を、【キラークイーン】が捕まえようと手を伸ばす。だが、『目』は【キラークイーン】の指から離れ、フランの左手に引き寄せられた。グシャグシャに傷付いた左手のひらに、『目』が着床する。
バギィッ!
「うぐあッ!!」
【キラークイーン】の顎にフランの蹴りが炸裂する。派手にぶっ飛ばされ、吉影は床に叩き付けられる。
「がはッ…!」
上半身を起こし、吉影は自分の『目』を見る。彼の全身の『目』は、全て抜き取られていた。
「きゃははははッ!!やったッ!勝ったッ!仕止めたッ!
お姉さまッ!この人間を仕止めたわよ…この私が『川尻浩作』をとったわ!」
今までで一番嬉しそうに、フランは笑い声をあげる。
「やったァァーッ!あはははははははッ!!」
「ぐっ…………」
吉影の額に汗が浮かぶ。瞳が震え、絶望が彼の表情に刻まれる。
「お…圧すのか…その『目』を…!!」
「ええ!そうよ!圧すわッ!」
フランの表情が狂気に溶ける。
「アイツとの約束を破ってしまう事になるけど…そんな事どうでもいいわッ!コワシテアゲルッ!!」
紅い瞳が快楽に爛々と輝く。
「や、やめろ…!た…大変な事になるぞ……ッ!!」
吉影が必死に思い止まらせようとする。だが、フランは耳を貸さない。
「いいえ!『限界』よッ!圧すわッ!」
彼女の左手に力が籠る!
「今だッ!!」
ドグオオオオオォォォォォォォォォォ!!!!
『目』が握り潰され、爆発した――――
第十一話、お楽しみいただけたでしょうか?面白いと思っていただけたなら幸いです。
紅魔館地下決戦編はあと後編の一話で終了です。ご期待下さい。