【第一部】~吉良吉影は静かに生き延びたい~/【第二部】~Saint Babel Run~ 作:どくたあちょこら~た
大幅な書き直しを行っていないので、未熟な文章になっております。ご了承ください
――――――――――――――――――――――――――――――――
「――――――――…………………う……ぐっ……」
吉良吉影は泥のような眠りから目覚めた。全身が鉛のように重く、脳は溶けそうで、頭は割れるように痛む。
「(…ぐっ、ぐあああ……)」
しばらく目を閉じ、もう十年以上も味わっていなかった苦痛に耐えていた。だが、いくら待っても良くはならず、むしろ酷くなっていくばかりだった。何か苦痛から逃れる方法を探すため、彼はスカイフィッシュに襲撃されたかのように上がらない瞼を強引に開く。瞬間、彼の目に強烈な光が射し込んで来る。脳が焼けるような激痛に、吉影は慌てて手をかざし、朝日を遮る。まだ日は魔法の森の木々から近くにあったので、夜が明けてからすぐなのだと分かる。
「(うっ……二日酔い…か…何年ぶりだ…この感覚は…?)」
吉影はしばらく頭の痛みにぼんやりとして倒れ込んでいた。と、やや脳も活動を始め、吉影は頭を揺らさないようにゆっくりと身体を起こし、状況の整理を始めた。
「(ええと…まず今分かることは…
わたしは何故か食堂の外の庭の土の上で寝ていた。
そしておよそ十年ぶりの二日酔いに苦しんでいる…
二日酔い…と、いうことは…)」
「ッッッ!!!!」
昨夜の出来事を思い出し、吉影は慌てて懐に手を突っ込み確認する。
「よ、良かった…!酔った勢いで誰か殺したりしてはいないようだ…」
【恋人】がないことを確認して、ホッと安堵する吉影。と、何か硬い物に手が触れたので、取り出してみた。
「これは…たしか…」
取り出した瓶を顔の前にかざすと、中に錠剤が入っているのが見えた。
たしか、宴会をやる前に永琳が渡してくれた、二日酔いに効く薬だ。
この苦痛から逃れたい吉影は蓋を開け、錠剤をザッと手のひらにあけて口に運び呑み込む。
効果が表れるのが早いのか、それとも思い込みか、早速痛みがひいていく。
やっと頭がすっきりしてきて、昨夜の記憶を掘り起こしていく。
「(ええと…たしかわたしは【衝動】を抑えられず慧音を手に掛けようとして…妹紅に妨害されて…それから…それから…)」
妹紅と飲み競べを始めた後、あれだけ大口を叩いた吉影だったが、やはり人間無理なものは無理で、情けなくも御椀二杯目でダウンしてしまった。
その時、彼の防衛本能が偶発的に覚醒したのか、ハッと正気に戻った吉影は、妹紅がまだ己の勝利に気付かず酒壷に頭を突っ込んでいるのをいいことに、痙攣する腕で身体を引きずってエスケープしようとした。
ところが、その時復活した輝夜に
「なに勝手に私の勝負引き継いでんのよっ!!」
と、飛び蹴りをぶちかまされてふき飛ばされて……
そこから覚えてないが、おおよその予想はつく。
とにかく、彼は庭に落ちて今まで寝て(気絶して?)いたのだった。
「そうか…わたしは…酔っていても誰か殺さずにいられたのか…」
再度、彼は安堵の溜め息をつく。
苦痛から解放されると、急に不快感が沸き上がってきた。
髮や服は酒が染み込んで固まり、喉はベトベトと渇く。
「うっ…、風呂場に、行くか…水も飲もう…」
吉影は立ち上がり、ふっと食堂を覗き込む。
「…………やれやれだ……」
そこは、酒で血を洗う戦場跡となっていた。
妹紅と輝夜は粉砕された酒壷の破片と酒の中で折り重なるようにして倒れていた。
やはり最終的にはいつも通りの【決闘】となったのだろう、二人とも服のあちこちがズタズタに破れ、大量の血痕が残されている。
あまり家や家具には被害が見られないので、幸運だったと言えるだろう。
永琳とてゐは普通に酔って寝てしまったんだろうが、鈴仙は頭で襖を突き破ったまま気絶していた。
そして、致命的なのは……息をしていない。
寝息や横隔膜の動きがまるで感じられないのだ。
もしかすると、彼女は既に死んでしまっているかもしれない。
別にどうでもいいが。
「(ん?そう言えば慧音は……)」
食堂を見渡しても彼女の姿はなかった。
「何故彼女だけ…?一体どこへ……、んっ…?」
足に柔らかいものが当たったので、ふっと見下ろす。
「ッ!?」
彼の足元には、見覚えのある蒼い服―今は酒にまみれているが―を身に着けた、女性の身体が横たわっていた。
全く目を覚ます素振りを見せず、静かに寝息をたてている。
「……………………」
吉影は無防備に眠る慧音の顔を覗き込む。
「…隣で寝ていたのか…気付かなかった…。」
吉影はしばらく眠る慧音を見下ろしていた。
と、彼女の脇にしゃがみ、横たわる彼女の身体をそっと抱き上げる。
「……君だったのか、わたしを縁側に引き上げようとしてくれたのは。」
瞼を閉じた慧音の顔に、吉影は呟く。
彼は慧音を抱き抱えたままフラフラと危なっかしい足取りで縁側に上り、食堂に運び込んだ。
彼女を起こさないよう、静かに下ろし、部屋の隅に畳んでいたため巻き込まれずに済んだ自分の背広をそっとかける。
「……………………」
安らかに眠る慧音を、吉影はしばらく眺めていた。
その表情は温かいものだったが、どこか複雑な表情だった。
当たり前だ、つい数時間前に殺しそうになった女なのだから。
「(また、だ…また【衝動】に負けてしまった…)」
唇を噛み締め、己の軽率さを戒める。
「(【本性】は打ち明けてはならない…誰であろうと…絶対に…
そうでなければ、【平穏】は脆く崩れてしまう…ただでさえ厄介な妖怪や能力者が溢れているのだから…)」
彼は猛省した。
自身の情動を抑えつけ隠すよう、堅く心に誓う。
「(吉良吉影…【本性】を抑えろ…抑えるんだ…
わたしなら出来るはずだ…実際、今は【衝動】は鎮まっている…
この世界から脱出する方法を見つけるまでは…【彼女】を手に入れるのは、その後だ…)」
心に深く刻み付けた後、吉影は慧音から目を離す。
「…風呂場に行きたいな…家の中を通って行くのは…、無理か。」
襖に頭を突っ込んでいる鈴仙を一瞥し、
「…縁側を通るか。」
縁側に出て、風呂場に向かおうと歩き始めた時だった。
カシャッ
「むっ!?」
突然視界が真っ白になった。
と、思ったら、それも一瞬のことで、すぐに視力は回復する。
咄嗟に光の差してきた方向へ目をやる。そこには…
「どうも~!毎度お馴染み、清く正しい射命丸で~す!!」
背中に黒い翼を生やした少女が、ホバリングしながらにこやかにカメラを胸元に構えていた。
「……………………………」
吉影の「なんだこのアマは?」という不快感を伴った怪訝な表情を見て、その少女は「やれやれ、これだから外来人は…」といった感じに首を振り、スタッと降りて言葉を繋げる。
「初めまして川尻さん。
私は射命丸文と申しまして、この幻想郷で新聞記者兼編集長兼社長兼をやっています。
以後お見知り置きを。」
「新聞記者だと?」
「ええ、そうです。
ほら、あなたも聞いたことはあるでしょう?
幻想郷一早くて確かな真実の泉、【文々。新聞】…」
「なッ…あっ…!?」
吉影は心の中で舌打ちした。
そう、聞いたことがあるのだ、【文々丸新聞】についての評判を。
「(くそっ!!粘着質であることないこと書きなぐるという、あのパパラッチ天狗か!!
最悪なヤツに目をつけられてしまった…!)」
吉影は警戒心を表に出さず、やや戸惑った自然な反応を返す。
「えっ…ああ、知ってはいるが、読んだことは…
で、その記者が、何の為にわたしを撮影したんだ?」
「ええ、新鮮なネタの匂いがプンプンしたので。」
一切悪びれることなく爽やかに言い切りやがった。
「(くっ…こ、こいつ…とてつもなく不吉な感じがするぞ…!!
とにかく、なにか情報を…)」
吉影は警戒心を敵愾心に格上げさせ、尚且つそれを覚られないよう注意しながら、質問してみる。
「……何が言いたい?」
「いえいえ、大したことではありません。」
射命丸はいつの間にか手帳と万年筆を握り、あの不吉な笑顔を浮かべていた。
「ただ、少~しばかり【取材】させてもらいたいだけなんですよ。」
「……………はぁ、分かった、受けてやろう。」
吉影は溜め息をつき、承諾したが、彼の脳内では目まぐるしく思考が駆け廻っていた。
「(まずはこいつの【危険度】を確認しなければ…どれだけ深いところまで知っているかを聞き出して、場合によっては……)」
一瞬、彼の目が鋭い殺人鬼の光を帯びる。
「(塵ひとつ残さず、【始末】してやる。)
だが、その前に君もやるべきことがあるんじゃないか?
人に名を尋ねるときは自分から名乗るように、人から情報をもらう時は…」
「……分かりました。こちらも情報公開といきましょう。では、あなたの欲しい情報は?」
「君が撮影したわたしの写真、わたしについて知っていること、わたしについてどんな記事を書くつもりか、全て話してもらおう。
話はそれからだ。」
射命丸は手帳のページをめくる。
「ええっと、そうですね、まず見出しは【噂の外来人大特集 新月の夜に現れた謎の男の正体に迫る!!】
それから【外来人、寺子屋で授業 外の科学の実態とは!?】、
【謎の外来人VS幻想郷の不死鳥 飲み比べ対決!酒豪だらけの幻想郷で、果たして外来人は生き残れるのか!?】
…と、まあこんな感じです。あと…」
射命丸はいつどうやって撮ったのか分からない、吉影の授業風景や昨晩の様子を写した写真を見せながら話しを進める。
「(ううむ、そんな他愛もない内容なら、わざわざ危険を冒して始末する必要はないな。
人間や妖怪共に注目されるのは癪だが…)」
吉影が心の中で安堵の溜め息をついた時だった。
バサッ
「あッ……」
射命丸の手帳から、数枚の写真がハラリと地面に落ちた。
「むっ……?…!?」
吉影はそれらを反射的に目で追い、眉をひそめた。
それは、慧音が吉影に寄り掛かり、お互いの手を重ね合っている場面をバッチリ激写した写真だった。
「あッ…!!」
吉影はかがんで拾おうとした、が…
「おおっといけない。」
「!?」
小さなつむじ風が吹き、彼の手が届く前に写真をフワリと浮かせた。
そして写真は風に漂いながら、射命丸の手に滑り込んでいった。
「(今の風は…こいつの仕業か?)」
吉影は目の前の天狗の能力について思考し始めたが、それより差し迫った問題を解決するため、やや不快感を滲ませて彼女に問う。
「おい、お前、その写真でどんな記事を書こうとしているんだ?」
射命丸はあの嫌な笑いを浮かべたまま答える。
「いえいえ、最近外の世界から流入してきた雑誌を、なにか参考になる要素はないかと見ていたんですが、その時に興味深い内容を見つけましてねぇ。」
彼女はニコリと笑いながら、ポーチから女性物の雑誌を取り出す。
「私は以前から妖怪と人間双方の興味を引く記事を書きたかったのですが、やっとそれにたどり着いたんですよ。
つまり…」
彼女が雑誌のページをめくり、吉影に見せる。
「他人の【男女関係】ほど人妖老若男女万人ウケする話題はないということですよっ!!」
嬉々として得意気に語る射命丸を、吉影はあまり穏やかじゃない目付きで凝視し、考えを巡らす。
「(クソッ!やはりパパラッチ、幻想郷のソレも外のハゲ鷹共と同じく所詮ゴミクズということかッ…!!)」
胸の内で悪態をつきながら、吉影は怒りを抑えて口を開く。
「すまないが、それを記事にするのは勘弁願いたいな。
写真もフィルムも預からせてほしい。」
「おやおや、否定せずに口封じを企むとは、やはり事実ということですか!?
いやはや、人間としては長めの人生でずっと守ってきた慧音さんを僅か数週間でモノにするなんて、できればどうやってオトしたのか詳しく…」
「違う、そういった関係じゃない。
普通に居候の身分だ。
さあ、早く渡してくれ。
根も葉もない噂をたてられては、人里で安心して暮らせないばかりか、慧音の家に居られなくなるじゃないか。」
イライラと吉影は首を振り、射命丸に詰め寄る。
が、彼女は依然としてあの不愉快な笑みを絶やさず、手帳のページをめくる。
「もちろん、タダでとは言いません。
こちらからも、あなたにとって【非常に】有意義な情報をお教えしますよ。
それこそ、歓びで全身の毛が逆立つほどのを…」
「?」
何かを探してページをめくる射命丸を、吉影は訝しげに眺める。
と、お目当ての物を探し当てたのか、手帳から一枚の写真を抜き取る。
「ああ、あった!これがそれです。
気を強く持って、パニックに陥って叫んだりしないようにお願いしますよぉ~!!」
自信満々に鼻を鳴らし、射命丸はその写真を吉影に飛ばす。
吉影はそれをキャッチし、両手でしっかりと持って目を落とし―――
「―――ッッッ!!!!!?」
吉影は驚愕に目を見開き、愕然と口をあける。瞳が動揺で揺らぎ、息を呑む。
「(なッなんだとぉォォォォォォォォォォォォオッッ!?!?!?)」
吉影の両手がワナワナと震える。その手が握る写真には…
昨晩の宴会の様子、てゐが吉影に絡んでいる場面だった。
別にそれだけならなんら問題は無い。
問題なのは、【吉影の背後に佇む、巨漢の人型の影】が写っていることだった。
「(そんな…馬鹿なッ!?
何故だッ?何故【キラークイーン】が写真に写っている!?)」
吉影はギリッと歯を噛み締める。
「(なんということだ…始末しなければならない!!)」
相手に気取られないよう、間合いを測る。
「(相手は天狗だ…一瞬で片付けないと逃げられてしまう…
あと一歩近付いて、すぐさま爆弾を撃ち込めば…)」
吉影は、慎重に、だが何気無い動作で、射命丸との距離を詰める。
五十cm…三十cm…十cm…射程距離に入った。
「(死んでもらうぞッ!射命丸 文ッ!!)」
【キラークイーン】の手が足元の小石を拾い上げ、射命丸に撃ち込もうとした時だった。
「どうです?気付かなかったでしょう?自分が幽霊に取り憑かれていたなんて!!」
「……………………え……?」
予想外の台詞に、吉影は肩透かしをくらった。
「大丈夫です、まだ誰にも話していませんよ。
いくら幻想郷でも、幽霊に取り憑かれるなんてのはかなり良くないことですからねぇ。
里の人間にバレたらえらいことですよ。
ですが、ご安心ください。私が腕の良いお祓い師をご紹介してあげますよ。
あなたが良心的に【取材】を受けてくださるなら…」
射命丸は得意気に、ニコニコ笑う。
「あ、ああ、そうか、そうだな……………」
吉影は要領を得ない返答をし、必死に思案する。
ようやくひとまずの対策を練り、辺りをキョロキョロと見回すと彼は射命丸にサッと目を向ける。
「……ここで話すのはお互いにとって不利益になる。
どうだ、続きは人里の外でしないか?
わたしは着替えをすませてから行くから、すまないがそれまで待っていてくれないかな。」
吉影の言葉を聞き、【取材】の許可だと思ったのだろう、射命丸はニッコリと微笑んだ。
「分かりました!では、東門から真っ直ぐ行ったところの林の中でお待ちしています!」
バサァッ、と黒い翼を翻し、射命丸は物凄い速さで飛び去って行った。
――――――――――――――――――――――――
バシャァッ
「…クソッ!!」
バシャァッと激しく水がはぜる。
吉影の皮膚を伝い、早朝の澄んだ空気と相まって二日酔いの残る彼の意識を覚醒させる。
吉影は浴室にいた。
朝すぐにわかして酒にまみれた身体を流すために昨晩風呂桶に水をいれていたのだが、彼はそれをそのまま桶で汲み、バサッと頭から被る。
顔を流れ落ちる水が彼の鬼気迫る表情を一層険しくみせている。
「なんてことだ…せっかく平穏にこの家に、この世界になじむと思ってたのに…」
きつく噛み締めた歯の間から、低く唸り声が漏れ出す。
双眸が浴室の壁を貫きそうなほど鋭い光を放つ。
桶を握る右手がワナワナと震える。
「今年はヒドイ目にばかり会う…なんて年だ…【始末】しなくてはいけない!
あの小娘を【殺す】のは目立つことで非常にまずいことだ…しかし あれを見られた以上…」
バッと顔をあげ、窓の外、森の木々から全身をさらけ出した朝日を、その下で吉影を待っている【敵】を睨む。
「やらざるを得ない!」
彼の右手の中で、木製の桶が砕けた。
―――――――人里東門――――――
「……でさ、そしたらあいつ一升瓶一気に煽っちまってさぁ~」
「おいおい大丈夫かよ、あいつ酒癖悪いんだろぉ?」
門の前で、二人の門番が朝日を眺めながら話していた。
「ああ、だから止めとけって言ったんだよ。だけどあいつ相当ショックだったみたいで…」
門番の一人がもう一人に愚痴を言っていた時だった。
愚痴に付き合っていた方の門番がなにかに気付き、話を遮る。
「おっ、見ろよ、川尻さんだ。こっちに歩いて来るぞ。」
「川尻さんってっと、最近流れ着いた外来人だっけ?寺子屋で授業しているんだったか?」
「ああ、良く娘が話すんだ。
【川尻先生の授業は慧音先生のより楽しい】ってな。なんでも、素質や知識が無くても使える魔法みたいなものを教えてくれるらしい。」
「ふ~ん、にしても、こんな朝早くにどうしたんだろうな。」
寺子屋に通う娘を持つ男が吉影に声をかける。
「川尻先生~!おはようございます。」
顔を俯かせて歩いていた吉影はハッっと立ち止まり、門番に挨拶を返す。
「あ、ああ、おはよう。お仕事お疲れ様です。」
門番は友好的に笑いながら、自己紹介し吉影に話しかける。
「先生こそ、毎日寺子屋の授業、お疲れ様です。
娘が良くあなたの事を話していますよ、授業が面白いって。」
「そうですか。そう言ってもらえると、こちらも嬉しい限り、教師冥利に尽きるというものです。
娘さんはとても優秀ですよ。教えたことをすぐ理解して、良いところに目を付けて質問をする。本当に良い子です。」
吉影は脳内を駆け巡る怒りや不安、思考を頭の隅に追いやり、外交モードにチェンジする。
二、三寺子屋についての話題で談笑した後、門番はところで、と質問する。
「こんな朝早くにどうしたんです?里の外に出ようとしているみたいですが。」
吉影はなんと言って誤魔化すか少し迷った後、答える。
「幻想郷に来た時、森の中に落とし物をしてしまってね、一緒に探そうと妹紅と約束しているんですよ。」
「なるほど、妹紅さんと一緒なら心配ありませんね。探し物が見つかるよう、祈ってますよ。」
「有り難う。…ところで……」
吉影が何食わぬ顔で質問する。
「わたしがここに来るまでに、誰かこの門をくぐって行きましたか?」
「いいえ、誰も通りませんでしたが、それが?」
「いえ、里から出て外で仕事をする人はいないのかと思っただけです。それでは。」
吉影は軽く会釈し、門をくぐって里の外へと出て行った。
「(よし、二人の話だと、あの天狗は門をくぐらず空を飛んで待ち合わせ場所に向かったようだ。
勿論目撃されてもいないだろう。ならば―-―)」
吉影の身体から陽炎のように殺気が立ち上った。
―――――――――――――――――――――
「お、ようやく来たみたいね。」
樹の枝に腰を下ろし自分の手帖を眺めていた射命丸は、顔をあげバサッと土の上へと飛び降りる。
森のやや奥まった人里の人間に見られたり聞かれたりする心配のない場所、待ち合わせの場所に、人影が近付いて来る。
その人影は森の木々をかき分け、射命丸のいる場所にたどり着いた。
「随分遅かったじゃないですか、川尻さん。
外の世界は天狗でも追い付けないほど目まぐるしく変化していく社会だと聞いていましたが、そんな調子で置いてけぼりにされたりしなかったんですか?」
射命丸は暗に『何か余計な小細工仕掛けて来てねぇだろうなぁオィ?』と警告を込めて言ったのだが、吉影は悪びれる様子なく懐に手を入れる。
「いや、これを探していてね…」
彼が懐から手を出すと、その手には封筒が握られていた。
「?何ですか、それは……、っ!?」
吉影がその封筒を射命丸に向けて軽く放った。
射命丸は突然の動作に驚きながらも容易くそれをキャッチし、中を見る。
「これは………」
封筒の中に入っていたのは、札束であった。
それも、結構な厚み、人里の住人の平均月収の七、八割ほどだろうか。
そんなものをいきなり無言で投げてよこされた射命丸は、怪訝な表情で吉影を見る。
「これは……何のつもりですか?
これで祈祷師を雇って欲しいということですか?それとも、この端金で記事の内容を書き換えてくれと、そういうことですか?」
吉影は、何も言わない。
「……なるほど、そういうことですか、私が、金の為に、そんな人間のおままごとの玩具の為に、記者をやっていると、そう思っているんですか。」
射命丸は自尊心を傷付けられたことに怒りを露にし、侮蔑の目で吉影を眺める。
「それはそうですよね、人間は権威があれば、多数派であれば、事実を歪めていいと思っている動物ですからね。短い時しか生きられないから、私達妖怪のように真実を知らず、誰かが自身の為に創った歴史に凝り固まって、考えることすら放棄してしまった、誠に【人間らしい】生き物です…か…ら…………」
射命丸の台詞が、途切れた。
吉影の瞳に、媚びとは真逆の感情、勝利の確信の光を感じたからだ。
「(ま、まずいっ、この男、何かを……)」
射命丸が黒い翼で空気を叩くのと、【キラークイーン】が右手のスイッチを押すのとは、同時だった。
「勝った!!死ねッ!!」
爆弾に変えた封筒のスイッチを押し、吉影は勝利の声を揚げる。
「ああああああああああああああああああああああぁぁぁ!!」
射命丸は断末魔の悲鳴をあげながら、肉体を内側から破壊され、全身がバリバリと裂け、砕け、粉々になり、塵と成って風に還っていく…………………………………はずだった。
「――――――――……なん……だと……?」
吉影が驚愕に目を見開く。
射命丸は何事もなく封筒を手に持ち、繁った樹の枝の下あたりの高さでホバリングしていた。
「……………………な~んてね。」
射命丸は封筒を手に持ち、一瞬前まで金切り声をあげていた口をニヤリと歪め、首に掛けているポラロイドカメラを硬直している吉影に向けて、
「はい、チーズ。」
シャッターをきった。
フラッシュが焚かれ、吉影が我に返る。
「き、貴様っ!一体何を…」
殺気を滲ませて問い詰める吉影にも全く臆することなく、彼女は飄々とした口調で、
「というわけで、この端金はお返ししま~す。」
吉影目掛けて封筒を投げつけた。
能力を付加して投げたため、追い風を受けて豪速球で吉影に迫る。
「はッ!?」
吉影は咄嗟に封筒を撃墜しようと【キラークイーン】に小石を投げさせた。
ドグォォォォォォォォッ!!
封筒に触れた瞬間、小石は爆炎をあげて粉砕された。
爆風で札束が吹き飛ばされ、吉影の周りを落ち葉の様に舞う。
吉影は【キラークイーン】を戦闘体勢に入らせ、カメラを構える射命丸を睨む。
「(今…爆弾に変えた封筒はきちんと作動した…奴が持っていた時は不発だったというのに…
それ以前に、奴は爆発が起こったことにも驚いていない…いや、それどころか、爆発が起こることを予想していた様な様子…まさか…!!)」
ギリッと奥歯を噛み締め、吉影は射命丸を見据える。
「貴様…最初から分かっていたんだな…わたしが能力を持っていることをッ!」
「あやや、流石に気付かれましたか。」
射命丸は見ているだけでぶん殴りたくなるような馬鹿にした笑みを浮かべ、吉影を見下ろす。
「お察しの通り、私は最初からあなたが【能力】を持っていることを知っていました。
そして、私の目的は初めからあなたに【能力】を使わせ、その現場を激写すること。
写真をワザと落としたのも、その後この【心霊写真】を交渉材料として見せることで、私があまり重要視していないように思わせたのも、全て貴方を人気の無い場所に誘い込み、安心して私に【能力】を使うように仕向けるためよっ!!」
射命丸はすでに営業用紳士モードの仮面を脱ぎ捨て文屋モードの本性を表していた。
敬語も止め高圧的な口調で吉影に言い放つ。
「…どこまで知っている?どこから知った?」
吉影は冷静に射命丸の挙動を【キラークイーン】の目で観察し、情報を聞き出す。
「ルーミアの件、神社での戦闘、人里での私生活、全て把握してるわ。
情報源は手段までは教えないけど、殆ど自分の目ね。
一度ルーミアと霊夢さんにインタビューしてみたけど、ルーミアは闇に隠れたままで何も言わなかったわ。
ちょっと【交渉】しようとしたけど、咽び泣くだけで要領を得なかった。
よほどあなたに痛め付けられたのが堪えたんでしょうね、『私を見ないで』とうわ言のように繰り返していましたよ。霊夢さんのほうは『あんたが見てたこと以上のことは知らないわよ』と言われたわ。」
射命丸はいけしゃあしゃあと吉影に答える。
情報源の人々が吉影に狙われるかもしれないのに平然と教えたのは、【取材】に協力しない者の安否は眼中にないと彼に伝えるためだろう。
「……わたしの爆弾の弱点も、知っていたのか…?」
吉影の質問に、射命丸は得意顔で解説を始める。
「いいえ。
ですが、戦いの様子をを観ていて、あなたの【能力】の特徴は分析出来たわ。
一つは爆弾そのものが爆発するタイプ、二つ目は爆弾に触れているものを爆破するタイプ。
そして、貴方がお金を渡してきた時点で、対策は決定した…貴方が今何よりも必要としているお金を、爆破してしまうわけがない。つまりっ!」
射命丸の瞳が優越感をいっぱいに湛える。
「封筒が爆弾に変えられていたとしたら、間違いなく【触れたものを爆破する】タイプッ!!
そして、それが分かっているなら、爆弾に触れるものを無くせばいい。後は…分かるわね?」
「……貴様の能力は、風を操る能力。…真空で爆弾を覆ったのか?」
射命丸が烏の羽でできた団扇をビシッと吉影に向ける。
「はい、せ~かい!!私には能力は通用しない!」
彼女の双眸に闘争心がたぎる。
「【取材】はたった今、【尋問】に変わった!!私の千年以上の天狗生の中で、【取材】に非協力的だった者を許したことなど、一度だってないわっ!!」
射命丸が威勢良く啖呵をきる。
その姿からは記者のそれを超越した使命感が感じられた。
そんな闘争心剥き出しの彼女を見て、吉影は額に手を当てる。
「なんということだ…あれを見てしまったか…そして…文屋きさま………も、わたしの【最も苦手とする能力】を持っている……のか!」
手をおろし、顔をあげ射命丸を見据える。
その目には不安や焦りはなく、ただ冷静に、しかし普段は見せない圧倒的な自信を静かに燃やしていた。
見下ろす射命丸、見上げる吉影、二人の視線が交錯し、空気がピリピリと緊張を高めていく。
「君」
「……?」
「ひとりかね…?」
「…ええ、今、誰も連れて来てないわ。私は一人よ。」
射命丸の返答を聞き、吉影はこの一触即発の場に似つかわしくない穏やかな口調で語り始める。
「私の名は【川尻浩作】、年齢33歳」
「?」
「自宅は杜王町北東部の別荘地帯にあり…結婚はしていない…仕事は【カメユーチェーン店】の会社員で毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。」
「………………………………」
とうとうと話を続ける吉影を、射命丸が油断なく睨む。
「タバコは吸わない。酒はたしなむ程度。夜11時には床につき必ず八時間は睡眠をとるようにしている…
寝る前にあたたかいミルクを飲み20分ほどのストレッチで体をほぐしてから床につくとほとんど朝まで熟睡さ…赤ん坊のように疲労やストレスを残さずに朝目をさませるんだ…
健康診断でも異常なしと言われたよ。」
「……なんの話をしているの?今さら【取材】に協力したところで――」
射命丸が口を開いたが、遮って言葉を返す。
「わたしは常に【心の平穏】を願って生きてる人間ということを説明しているのだよ…【勝ち負け】にこだわったり、頭をかかえるような【トラブル】とか夜もねむれないといった【敵】をつくらない…というのが、わたしの社会に対する姿勢であり、それが自分の幸福だということを知っている…
もっとも、闘ったとしてもわたしは誰にも負けんがね。」
【キラークイーン】が足元の小石を拾い上げ、射命丸の眉間に狙いを定める。
「……………………………………………………」
場の緊張は限界に達していた。二人の覇気が空気を伝い、木の葉や雑草をビリビリと揺らす。
一陣の風が、森の木々を音をたてて揺らして通り過ぎて行った。
「うおおおぁぁぁッ!!」
「せえぇぇぇぇい!!」
それを合図に、両者共に攻撃に入る。
吉影の方が、射命丸の団扇より一瞬早く爆弾の小石を撃ちだしていた。
爆弾が常人には見ることすらできない速さで射命丸に迫る。だが――
ゴオオォォォォォォォォォォォォ!!
滅茶苦茶な威力の風が吹き荒れ、小石を弾き飛ばしてしまった。
「なにッ!?」
暴風が吉影に迫り、彼は【キラークイーン】の脚で身体を固定し身構える。
グオオォォォォォォォォォ!!
台風のそれより遥かに強力な風が、吉影を吹き飛ばそうとする。
【キラークイーン】に支えられていても、立っているのがやっとだ。
「(何だ、これは…!風なんて生ぬるいものじゃないッ!爆風や衝撃波の域だッ!!)」
吉影は爆弾を解除し、次の小石を爆弾に変える。
【キラークイーン】に狙撃の体勢を取らせ、風が止むのを待つ。
暴風はすぐに止み、二人は再度対峙することになった。
「風は大気の血流、気圧の不均衡の是正…」
射命丸は口元を団扇で隠し、吉影を見下ろす。
「情報もそれと同様。人妖、勢力、地域…あらゆる要素が密度、質、種類の偏りを生む…事実は独占され、隔離され、歪められる…
私はこの幻想郷に一陣の風を起こし、淀み埋もれた真実を、白日の下にさらけ出す。それが私の【使命】ッ!!」
射命丸が団扇を振り上げる。同時に、【キラークイーン】が小石を撃ち込む。
グオオォォォォォォォォォ!!
射命丸が団扇を振り下ろすと共に、さっきの衝撃波が吉影に迫り来る。
爆風はまたも小石を弾き返し、弾道をねじ曲げ、小石は木の枝に突き刺さった。
「ぐおおッ!!」
吉影は衝撃波に吹き飛ばされまいと【キラークイーン】の脚で踏ん張り、耐え抜く。
強風が吹き荒れる中、余裕たっぷりに彼を見下ろす射命丸を睨み――
「【キラークイーン】!!」
爆弾のスイッチを押した。
ドグオオオォォォォォォ!!
「ッ!!」
射命丸の右前方の木の枝が爆発し、人の胴ほどもある枝の破片が襲いかかってきた。
「(さっき撃ち込んだ小石は風に吹き飛ばされあの枝に命中するように狙って撃っておいた…!これで先手は獲れたぞ!!さあ、どう出る?)」
枝が射命丸に命中しようとした瞬間――
「ッ!?」
射命丸の姿が一瞬で消え失せ、枝は通り過ぎて木の幹にぶち当たっただけだった。
「な、なにッ!?消えただとッ?どこに行った!?」
「ここよ、のろまさん。」
ハッと後ろを振り返った瞬間、
カシャッ
射命丸のカメラがフラッシュをたいた。
その光は吉影の脳に食い込み、脳内を真っ白に染め上げた。
「ぐああぁぁぁ!?
(な、なんだこれはッ!?スタンドパワーが、う、奪われる…!)」
吉影は力が入らない身体に渇をいれ、【キラークイーン】にまたも小石を撃たせる。
が、射命丸はまさしく超人的な瞬発力でそれを回避し、吉影の周りを物凄い速さで飛び回り始めた。
さらに翔びながら団扇を振り、吉影を取り囲むように風を起こす。
「(クソッ!自分は軽快かつ高速に飛び回り、さらに風を起こして敵の自由を奪う…分かってきたぞ、コイツの戦い方…!)」
四方八方から押し寄せる風の洪水の中、引き倒されないよう耐えながら、吉川は冷静に敵を観察する。
「(そして…あのカメラ、どう言った原理か知らないが、わたしからスタンドパワーを奪っていった…
恐らく【キラークイーン】の影が写っていた写真も、あのカメラで撮影したものだ。
…しかし、本当に厄介な奴を敵に回してしまった…)」
【キラークイーン】ではどうしようもない高速飛行能力、風による攻防一体の遠距離攻撃、対スタンド兵器、観察眼、慎重さ…どれも恐ろしいものだが、それら以上に彼が危惧していることがあった。
杜王町で東方仗助たちと闘った時、彼らは決して逃げようとしなかった。
吉影を逃がさないために。己の大切な者を護るために。
だが、今回の敵は違う。
ネタは既に揃っているし、幻想郷でも最速クラスの足を持っているのだ。
いつでも逃げて良いし、逃げられる手段を持っているのだ。
「(…速い。速すぎる。姿を目視できない。過ぎ去った後の木の葉の動きで何とか追えるくらいだ…)」
だが、彼の目は圧倒的な自信に満ちていた。
「【わたし自身】にはなッ!!だが…!!」
【キラークイーン】が吉影のポケットから人の目玉ほどの大きさの【鉄球】を取り出し、爆弾に変える。
「【キラークイーン】の目ならッ!
至近距離で発射された銃弾を受け止める、仗助のクレイジー・ダイヤモンドと同等のスピードを得た、我が【キラークイーン】ならッ!!」
【キラークイーン】が【鉄球】を発射する構えをとる。
「見えるっ!見えるぞッ!!このクソアマの動きがァー!!」
目にも止まらぬ速さで縦横無尽に木々の間を飛び回る射命丸目掛け、【キラークイーン】が【鉄球】を発射した。
「はっ!?」
射命丸は、【鉄球】が自分の飛行軌道上を通過することも、それがこのままでは自分を貫通することも、咄嗟に理解した。
そして、それを回避するため、団扇で風を巻き起こし【鉄球】を弾き返した。
【鉄球】は吉影の頬を掠め、背後の木の幹に突き刺さる。
「…あなたも物分かりの悪い人ね。」
射命丸は団扇の風の反動を利用してブレーキをかけた。ホバリングしながら呆れた口調で吉影に言う。
「いくら爆弾を飛ばしても、烏天狗である私に命中させるなんて芸当、ホーミング無しでは無理よ。
例え今みたいに運良く当てられそうになっても、天狗の団扇で全て吹き飛ばされる。
いい加減、諦めたらどう?外来人風情が多少変わった力を身に付けたからって、赤子同然のあなたが千年の時を生きてきた妖怪に勝てるなんて、思い上がりもいいところだわ。
言っとくけど、ルーミアは幻想郷でも比較的弱い部類よ。
あんな弱小妖怪に勝ったからって、私を嘗めないでほしいわね。調子乗るんじゃないわよ人間風情が。」
「…フンッ、無駄だと?」
吉影は鼻を鳴らし、射命丸を睨み返す。
「何を言っている…跳ね返してくれるのが良いんじゃないか。撃ち込んだ爆弾を、きちんと吹き飛ばしてくれるのが良いんじゃないか――――――――」
「?」
「さっき撃ち込んだ爆弾も…君が風を起こしたおかげで、木の幹に突き刺さっている…丁度、わたしの背後にな…」
【キラークイーン】が、右手のスイッチを押した。
ピカアァァァァァァッ!!
「ッ!!!!」
吉影の背後の木の幹にめり込んでいた【鉄球】が、眩い光を放った。
光は射命丸の視力を奪うほど近くはなかったが、吉影の姿を彼女に見えなくするには十分だった。
「くっ…!!逆光で…み、見えないッ!!」
【鉄球】の正体――――――――それはアルミニウムと酸化鉄「(Ⅲ)」の混合粉末を封入した【爆弾】。
アルミニウムが酸化されると同時に酸化鉄「(Ⅲ)」が還元され、膨大な光と熱を生む【テルミット反応】と、【キラークイーン】の【第一の爆弾】を組み合わせることによって、熱と光の量を調節できる【焼痍閃光弾】である。
今回は発生するエネルギーを光に偏らせ、【閃光弾】として使用したのだ。
吉影は背後からの閃光弾の光には影響を受けない。
敵だけを視界不良にし、自らは視覚に頼っている感覚を衰えさせない、完璧な目潰しだ。
「(成功だッ!殺れるチャンスは今!今しかないッ!!)」
吉影は【キラークイーン】の脚で跳躍する。
爆弾に変えた小石を構え、極力至近距離から撃ち込むつもりだ。
「うおおおおおおおおおォォォォォォッ!!」
【キラークイーン】が、射命丸の額に狙いを定めた。
――――――――――――
射命丸は、視力を奪われながらも、ニヤリとほくそ笑んでいた。
風を操る程度の能力を持つ彼女にとって、空気の動きを感じて周囲の様子を察知することなど、朝飯前だったからだ。
だから、吉影が自分に向かって来ることも、その彼の隣で右腕を突きだして自分を狙っている者――――――背後霊のような――――――がいることも分かっていた。
そして、彼らが向かってきたということは…
「(フフッ、やっと攻撃の瞬間を撮影できるわ…)」
射命丸が期待に胸を膨らませ、カメラを構える。
彼女のカメラは幻想郷の少女たちの弾幕勝負を撮影するため、美しく光り輝く弾幕を綺麗に写せるよう、逆光対策を施していた。
この逆光の中でもいつも通りの働きをしてくれるだろう。
そして、彼女が【攻撃の瞬間を撮影】したかったのは、単に写真の迫力のためではなかった。
「(ターゲットの攻撃の瞬間…それは相手の強い敵意や意志が最も顕著に表れる一瞬!!その瞬間、シャッターをきれば、相手の力を最も鮮明にこのカメラに収めることが出来る!!
あの【キラークイーン】っていうのを完璧にカメラに収めるには、その瞬間以外ないッ!)」
彼女の頭には、スタンドパワーを奪い尽くされると吉影がどうなるかなどという考えは、欠片も無かった。
自分の安全すら眼中に無かった。
【スクープを独占したい】、ただそれだけが彼女を突き動かしていた。
「(もっと…もっと近くから!!)」
黒い翼で宙を打ち、カメラを構えて吉影に向かって行った。
―――――――――――――
「(これで…わたしの勝ちだッ!これで今夜も熟睡できるッ!!)」
吉影は、【キラークイーン】の腕で、爆弾を発射しようとした。
射命丸の眉間に狙いを定め、小石に添えた親指を引き絞り、渾身の力をこめて撃ち込もうとした。
だが…
「……………………?」
吉影は攻撃を止めた。戦闘の最中、それも二度と訪れぬやも知れぬ最大のチャンスを目の前にしているというのに、訝しげな表情をしている。それは、幽かな物音に耳をそばだてているような様子だった。その直後、
「ハッ!?」
吉影が目を見開く。射命丸が、逃げるどころかこちらに突っ込んで来ていたからだ。
「ま、まずいッ!【キラークイーン】ッ!!」
寸でのところで攻撃を思いとどまる。その瞬間、
「ぐおおおぁぁぁぁぁぁ……!!」
シャッターがきられ、吉影の視界は白一色に染まった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「―――?………」
射命丸はカメラから目を離した。閃光弾の光が消え、視力が元に戻っている。辺りをキョロキョロと見回す。
「…あや?あややや?」
カメラは確実に【キラークイーン】を撮影した。風の動きが、彼の攻撃の瞬間を教えてくれた。だから、今頃は力を奪われ倒れ伏している吉影が彼女の足下に転がっている、はずだった。
「い、いない!?馬鹿なっ!確実に仕留めたはず…!!」
吉影の姿が、何処にもないのだ。有り得ない、彼女はそう呟き、周囲を見渡した。と、その時だった。
「どこを見ている?のろま。」
ハッと声のした後ろを振り返ると、そこには吉影が立って自分を見ていた。
「ん?どうしたんだい?そんなに驚いた顏をして。」
ホバリングして何時でも逃げられるよう身構えている射命丸に、吉影は悠然と話しかける。その姿には、絶対的な安心感と自信に満ち溢れていた。
「…………………………」
再度カメラを構える射命丸を見て、吉影は微笑みながらやけに落ち着いた声で言う。
「親切心で言ってあげるが、無駄だ。君が何をどうしようとも、わたしは無敵になったんだよ。」
「…………無…敵…?」
射命丸は内心怖じ気ついていた。先程まで敵意を剥き出しにしていた相手が、急に微笑を浮かべ、穏やかな声で諭すように話し始めたら、だれだって不気味に思うものだ。
「ああ、そうだ。今のわたしには、どんな攻撃も通用しない。」
吉影は穏やかに射命丸に言う。
「【キングクリムゾン】…と名付けたんだがね…」
「…キング…クリムゾン…?」
「ああ、そうだよ。この能力は、この世の全ての時間を吹き飛ばし、その間に起こった出来事を、全て消し去る。」
「じ、時間を吹き飛ばす…ッ!?そんな、馬鹿なっ…!」
射命丸が信じられないと声をあげる。だが、吉影はそんな彼女を無神論者がカルト教団を侮蔑するような目で見る。
「フフッ、何を言っている?わたしの外での知り合いには、時間を止めるヤツまでいた…時間を爆破する者がいても、不思議じゃない。そして、消し飛んだ時間の中で、君はわたしの身体を通り抜けて、今いる場所で止まったんだよ。」
「ぐっ……!!」
「(時間を爆破ですって…!?信じられないわ…。でも、紅魔館のメイド長にすら出来ないことを、ハッタリで思い付くとも思えないし、何より私は今こうして気付かない間に背後をとられた…まさか、本当に…!!)」
「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
団扇を抜き、振り回した。先程までの相手を負傷させない非殺傷風ではなく、鋭利な鎌鼬を発生させ、吉影目掛けて飛ばす。だが、吉影は身動ぎもせず黙って笑っていた。そして風が吉影の身体をバラバラに斬り刻もうとした瞬間―――
「―――ッッ!!!?」
鎌鼬は吉影の髪の毛一本そよがせることなく、彼の背後の木々を直撃した。枝や幹がスパッと切断され、バラバラに崩れ落ちる。
「どうだい?これでよく分かってくれたな?今、わたしは時間を0.5秒だけ飛ばしたのだ。」
吉影はニヤリと笑い、射命丸を眺める。
射命丸はかつてない戦慄に震えていた。吉影の放つ気配が、殺人鬼のそれに変貌を始めたからだ。
「(こ、この人間…!危険よ…危険だわ!!私の能力では、何をやっても避けられてしまう!!ここは兎に角三十六計…!!)」
射命丸の頭には、最早【スクープ】の文字はなかった。彼女は踵を返し、黒い翼で空気を叩き、一目散に逃げて行った。
―――彼女がほんの少し冷静で、真実を探る努力をしようと思い立っていたなら、風の動きを読み彼の嘘っぱちを見抜くことができていただろう。
「…ふぅ……。」
吉影が安堵の溜め息をついた。なんとかあのパパラッチを撃退することに成功した。だが、彼はそれよりも心から歓んでいることがあった。
「……親父…?いる…んだな…?そこに…。いたんだな…この世に…」
吉影の背中には、一枚の写真が貼り付いていた。その写真から、老人が顏を出す。
「……吉影…そうじゃ、わしじゃ…わしじゃよ…!」
写真の老人、吉良吉廣は涙ぐみながら答えた。そう、さっきの【キングキリムゾン】の正体、それはは、彼のスタンド能力【アトム・ハート・ファーザー】で、射命丸のカメラに写って吉影を【写真空間】に隔離していたのだ。彼は写真から全身を出し、吉影の前に立つ。涙が滝のように溢れている。歓びが彼の皺だらけ顔をさらにしわくちゃにしている。
「親父…!本当に、親父なんだな…!!」
吉影も驚きと歓喜に目尻に涙を浮かべる。だが、今は手放しに感動できる状況ではない。涙を拭い、自分の父親に言う。
「親父、すまないが、再会の喜びに浸るのはまだ早い。ヤツに写真を持って逃げられてしまった。」
吉良吉廣は早くも点のように小さくなった射命丸のシルエットに目を向け、涙をゴシゴシと拭いて優しい口調で言う。
「吉影、安心してくれ。わしは…今度こそ、今度こそは…お前を、護ってみせるからな…」
彼は、出てきた写真の中に入り込み、写真の枠の外に隠れてしまった。
「………?」
吉影は写真を手に持ち、首を傾げながらも父親からの報告を待つ。ほどなくして、吉廣が写真の中に現れた。
「親父、一体何処に…?」
「おお、この世界に来てから、スタンド能力や幽霊の力が成長してな、以前わしが写った写真を行き来できるようになったんじゃ。そして…ほれっ!」
写真の中から、吉廣がなにかを吉影に手渡す。吉影はそれを受け取り、目を見開いた。
「こ、これは…ヤツが盗撮した写真じゃないか!!」 「そうじゃ。さっきヤツがわしの姿を撮影しておったが、逃げながら現像しておったようじゃ。その写真からヤツのウエストバッグを探ってやったわい。それにしても、この世界のカメラは凄いぞ。フィルム式じゃというのにその場で現像できるんじゃ。」
得意げに話しながら、吉廣が写真から身体を出す。写真の中にいた時とは違い、ちゃんと生前の身長に戻る。
「…親父…生きてたんだな…!?」
吉影は目に涙を浮かべ、たった一人の信頼する父親を見つめる。
「ああ、そうじゃよ…!いや、すでに死んでいるが…わしはこの世にいる…!そして、異世界に来てしまったというのに、こうしてお前と出会えた…!奇跡じゃ…よかった、本当によかったわい…!!」
憂いの本を絶ち、二人は改めて再会の喜びに浸る。 「ああ、よかった、本当に…」
二人は堅く抱擁し合う。
「…親父、幽霊なのになんで暖かいんだ…?」
「さあな、これもひとえに【愛】の成せる技かのう。」
「…よしてくれ、気持ち悪い。」
「ケケケ、心に染み入るわい。」
二人はしばらくそうしていたが、やがて抱擁を解いた。
「それにしても、よくわたしの爆弾を食らって生きていたな。一体何があったんだ?」
「それがのう、よく分からなかったが、ふと気が付くと巨大な日本屋敷の前に立っていたんじゃ。」
「日本屋敷?」
「そうじゃ、わしらの家より何十倍も大きいぞ。そこで庭師に追い回されて、逃げ回っていたら屋敷の主人と出会ってのう、【ここは冥界よ】と言われてな。」
「なにッ冥界!?ということは…」
「いや、それがな、その女が【まだあなたは成仏できてないから、私の管轄外ね。何処にでも好きに行きなさい。】と言われてしまってのう、この幻想郷に下りてきて、お前の気配を感じたから、探し回ってやっと今見つけたというわけじゃ。」
「そうか。とにかく無事でよかった。わたしの爆弾で親父を成仏させてしまっていたらと、気が気でなかったんだ。」
「ケケケ、愛しい一人息子を置いて地獄で隠居なんぞ、出来るわけがないじゃろう。父親に定年退職はないわい。」
二人は声をあげて笑う。と、吉影が話を変えた。
「ところで、ヤツから奪った写真だが、何故親父が写ったものは持って来なかったんだ?」
「ああ、それはヤツの住み処を探って、カメラを手に入れるためじゃ。わしのスタンドはカメラがないと何もできないからな。」
「なるほど。だが、その写真だけ残っていたら怪しまれたり、足がついたりしないか?」
「大丈夫じゃ、その心配はない。」
吉廣は写真の中に入り、
「ほれ、こうすれば…」
写真の縁をぐんぐんと写真の中に引き込み始めた。完全に縁を引き込むと、写真は完全に姿を消した。
「おお、これは凄い…」
吉影は写真があった場所に手を伸ばす。もちろん、何も触れない。
「どうじゃ、これなら安心じゃろう。」
空中に写真が現れ、吉廣が身体を出す。
「ああ、とても心強い。カメラを盗むとき、ついでにヤツの住み処も爆破してやってくれ。」
「ケケケ、それは面白そうじゃな。ヤツの悔しがる顔が目に浮かぶわい。」
吉廣がケラケラと笑う。だが、吉影にはその笑いが何処か不自然に思えた。親子の勘というやつだろうか、その表情と声がなにか自分自身を励ましたり、落ち込んでいるのを覚られないよう、無理にやっているように感じられたのだ。
「…親父?どうかしたのか?」
気にかけて吉影が尋ねる。
「ん?い、いや、何もないが…」
吉廣ははっとして弁解する。その様子からやはりなにかあったのだと確信したが、言いたくないことを無理に話させようとは思わなかったので、その話は流す。
「そうか、ならいい。」
「じゃあ、次は吉影の番じゃ。わしが戦闘不能になった後、仗助共とはどうなって、なにがあってこの世界に流れ着いたのか聞かせてくれ。」
「ああ、そうだな。まずは親父の携帯から……」
人里に向かって歩きながら、吉影は吉廣にこれまでの経緯を話して聞かす。
「(…そう言えば、この世界に来てから、敵と闘うことが多くなったな…)」
吉影は話しながら、ふと思った。
「(もともと、わたしは誰かと闘うことは、全くといって無かった…子供の頃から社会人になっても、口論すらしないよう常に気を配っていた。だが…)」
「(重ちーとかいう小僧、そして仗助達と会ってから、わたしは闘わざるをえない状況に追い込まれることが多くなった…しかし、それでも奴等とは三回闘ったきりだ…)」
「(だが、わたしはこの世界に来てからというもの、僅か三週間のうちに四度も闘った…この幻想郷の住人は、皆闘争心が強すぎる…何より、能力や超自然滴な力が平然とまかり通っている。外では誰も怪しまないのに、ここで能力を使えばすぐバレてしまう…この世界に、わたしの望む【平穏】はあるのだろうか…)」
ここまで考えた時、彼の脳裏を声がよぎった。
―さあ…?でも…【安心】なんてない所よ…少なくとも…―
冷たい感覚が背筋を走る。
「(大丈夫だ…今までのトラブルは全て乗り越えてきた…恐れることはない)」
吉影は嫌な予感を振り払うい、吉廣に話を聞かせながら、人里へと帰っていった。
「(―――そうか、吉影、そうなんじゃな…)」
吉影が【振り返ってはいけない小道】のことを話したとき、吉廣は確信した。抱きしめたときに既に覚悟はしていたが、それでも涙を流さないで堪えるのは辛かった。
「(…お前も、わしと同じ…【魂だけの存在】になってしまったんじゃな…もうお前は…死んでしまったんじゃな…)」
彼の頬を、涙が伝った。
「――――――――――――な…………
………なによ…これ…は…………」
射命丸は茫然と呟き、くずおれた。
中に入る前、外から見た時から、妙な違和感は覚えていた。
窓が異様に煤けていて、僅かな焦げ臭さが漂っていたからだ。
だがまさか、これほどの惨状とは思わなかった。
帰宅した彼女を迎えてくれたのは、住み慣れた心地よい近代的な我が家ではなく。
彼女の目の前には、そんな今朝までの面影など見る影も無く破壊し尽くされた、彼女の自宅。
窓から射し込む夕陽が赤く染めるのは、部屋や階を区切っていた筈の壁、床、天井が綺麗にぶち抜かれ、焼け崩れ、吹き抜けワンルームと化したかつての生活空間。
彼女の宝物であり命の綱である印刷機は、切り刻まれた後粉微塵に爆破された跡があった。
今まで蓄えてきたネタ帳とフィルムは、丹念に焼き捨てられている。
いくつも持っていた予備のカメラと新品のフィルムは、持ち去られたように残骸が無かった。
そんな、外観だけ残してがらんどうと化した自宅の玄関で、射命丸文は一人項垂れていた。
「――――――――ク…っ………」
一瞬にして全財産を失ってしまった彼女の口から、嗚咽が溢れた。
「―――ク――――クゥ―………ク……ク」
ついに堪え切れず、胸の内に逆巻く感情を吐き出した。
「ク……クク…クククク……ッ
アハハハハハハハハハハハハ――――――――!!」
突如顔をあげ、狂ったように哄笑した。
「ハハハハハハ――――フフフ―――
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――――――――」
自宅の成れの果てである閑散たる空間に、家主の笑い声が木霊する。
暫く存分に笑い、漸く笑い終え、目尻に浮かんだ涙を拭うと、
「久し振りね……この気分………」
くつくつと忍び笑いし、射命丸は言葉を紡ぐ。
「何十年振りかしら……久しく忘れていたわ……
『妖怪の本分』…『人間の【敵】で在り続ける』という、我ら人ならざる者どもの幸福観……」
射命丸の双眸が、爛々と光と熱を帯びる。
その瞳が宿すのは、妖怪としての本能に刻まれた途方も無い嗜虐心。
「人間に畏れられ、怯えさせ、負の感情を喰らう!
【幻想】を忘れた『外来人』に、我々の恐怖を思い出させてやる……なんて胸の踊ることかしら!」
好戦的に輝く彼女の眼は、そう、無邪気な子どもが絶品の玩具を前にした時の輝きを灯していた。
彼女の周りに、鴉が群がる。
「良いでしょう、貴方からの宣戦布告、貴方の望んだ闘争、受けて立ってあげるわ。
貴方をとことんまで追い詰め、吊し上げ、晒し者にしてやるわ……!!」
目が、鷹のそれより遥かに鋭く、睨まれただけで凍り付くほど冷たい光を帯びる。
それに呼応して、鴉達が喧しく鳴き声をあげる。
「覚悟なさい………川尻浩作っっっ!!!!」
無数の鴉がバサバサと喚きたて、飛び去って行った。
ED♪ 石鹸屋 【二足歩行の天狗 walkin'】
次回予告
――――――――――――
「なによっ!!うっさいわね!この馬鹿っ!!」
「…馬鹿と言う方が馬鹿だとさっき言わなかったか?」
「う、うるさい!さっきのカエルみたいに氷漬けにしてぶち割ってやるわ!!【ホワイト・アルバム】!!」
―――スタンド使いの氷精―――
「キチョーメンな性格でね
おまえを殺「(バラ)」す前にちゃんと「DISC」をぬいてキチッとしまっておきたいんだ…おまえは一枚のCDを聞き終わったら キチッとケースに仕舞ってから次のCDを聞くだろう?
誰たってそーする おれもそーする」
―――さらに現れるスタンド使い―――
「M16カービンライフル兵隊60名!アメリカ陸軍攻撃用ヘリ【アパッチ】四機!戦車七台!溶解弾砲台二台!弾丸中継衛星一機!何者も逃がさないッ!規律正しい我がスタンド 【極悪大隊】のこの戦場からはなあ~っ!!」
―――ついに明らかになる【DISC】の存在―――
「あいつにな…言ったんだ、【どこへ行くんだ億泰】
そうしたらあいつ…【兄貴について行くよ】なんて言いやがって…鬱陶しいから【おまえが決めろ】【億泰…行き先を決めるのはおまえだ】って言ってやったら、あいつ… 【杜王町に行く】っつって、消えやがったよ。
まったく、俺が死んだ後も足を引っ張る、馬鹿な弟だ…。でもな…」
「あいつはなッ!たった一人の弟なんだよッ!!それを傷付けたお前を、外に帰すわけにはいかねえッ!!キサマは…ここで殺す!!」
―――そして、相容れぬ者達の闘いは、幕を開ける!!全ては己の護るべき者のために!!
次回 ~吉良吉影は静かに生き延びたい~
第⑨話 【⑨と兄貴と極悪大隊「(バッド・バタリオン)」】
お楽しみに!!
ネタバレ
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これは嘘予告です
【後書き】
第八話、お楽しみいただけたでしょうか?面白いと思っていただけたなら幸いです。
最後の吉影の台詞ですが、これがこのSSにおけるテーマです。【忘れられた者達】である妖怪や神々にとって幻想郷は楽園でしょうが、【忘れられたい者】である吉良吉影にとって、はたして幻想郷は楽園たりえるのか、それを主題に据えて話を展開していくつもりです。
今回、吉影の父親【吉良吉廣】が登場しましたが、かなり独自設定・解釈が入っているので、ここで説明したいと思います。
吉良吉廣…通称【写真の親父】。
東方仗助の策略により吉影の爆弾に巻き込まれたが、その際に【振り返ってはいけない小道】を通過して幻想入りし、冥界に迷い込んだ。それからは吉影を探して幻想郷を徘徊していたが、その途中で森近霖之助に出会い、外の道具の使い方を教えて仲良くなったりしている。
幻想郷の魔力の影響を受けて亡霊になったり、写真から全身を出すことができるようになった。
【アトム・ハート・ファーザー】…吉良吉廣本体が写った写真の空間を隔離するという結構凄い能力。たぶんカーズ様にも勝てる。
あの東方仗助をここまで震え上がらせた敵も他にない(チンケなんて言わせないっ!!)
本体の成長によってスタンド能力も変化し、これまでに写った写真全てを行き来できるようになった。
【エレクトリック・グランドファーザー】…今までに【アトム・ハート・ファーザー】の支配下に置いた写真の中の空間を、【写真の縁】を越えることで移動する。名前の元ネタは石鹸屋の楽曲『エレクトリック・グランドファーザー』
【ファインダーダイバー】…クリームのように写真の縁を写真内に引き込むことで完全に姿を消せる。名前の元ネタは石鹸屋の楽曲『ファインダーダイバー』
【Crazy Atom Faith Father】…親父の身体の一部が入っている二つの写真同士の空間を繋ぎ、【写真の小窓】にする。名前の元ネタは十方世界の果ての空のCD『狂った原子信母 Crazy Atom Faith Mother』