過去話を回想にするから、キャラの性格を出そうと会話多くした。そしたら物語が進まないでござる。
さーせん。
第8話 紅色悪魔出待ち中 黒歌と弥彦
私は最初、喜んだ。
彼が私の体目当ての男なら、殺すことを躊躇わなくていいから。
私は次に、驚いた。
彼は彼なりに、私を大切にしようと努力していたから。
私は最後、嫉妬した。
彼の愚直なまでの真面目さに、誰かの為に働ける情愛に、無償で誰かを愛せる善性に。
そう、どれも、空虚な私にはないものだから。
私は愛したい。私は愛されたい。
私は誰かに必要とされていたい。私は誰かを必要としたい。
私の取り得は平均より少しばかり光力が濃いだけ。それだって上を見れば、私より優れている方は数多い。
私が何のために生きているのか、私にはわからない。
天使だったころも、堕ちたる今も、私は私の存在している意味がわからない。
だから、誰かを必要とし、誰かに必要とされたい。
そうすれば、私の存在理由がわかる。そんな気がするから。
彼は私を必要としてくれるだろう。愛してくれるだろう。
けれど、彼は私より先に死んでしまう。だって彼は人間だから。
彼を受け入れれば、一時の幸せを得れるかもしれない。でも、彼は寿命で私より先に逝ってしまう。
そしてまた、この空虚を感じ抱えて生きていく恐怖に、私は耐えられない。
だから、仕方がない。そう、どうしようもない。
恨んでくれていい。呪ってくれていい。許されるつもりなんてない。
倫理と罪悪感を諦めで塗りつぶす。愛しさと憧憬を空虚に染める。
「さよなら。イッセーくん」
そうして私は、彼を―――――
――――――――――
「―――――以上を依頼として貴殿ら『月の繭』に頼みたい」
現在、私達と直接連絡を取れるようになっているのは四大魔王と『神の子を見守る者』のアザゼル、シェムハザの二名。天界陣営ではミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルの四名、他神話体系にもいるが、基本的にかなりの上位者のみが連絡を取れるようにしている。私達の情報の拡散自体は幹部連中ならしっているが、末端は知らないレベルだとロフォカレからの報告にあったな。
そして『依頼』とは、私が暇に飽かせて始めた娯楽のようなものだ。いくら人と人が惹かれあうといっても、引きこもっていたのでは会うものも会えん。正直なところ、ただ日々を鍛えるだけで過ごすというのは退屈だったというのも大きいのだが。
「なるほど。だが、この内容を私に持ってくる必要性はないように思える。現魔王サーゼクス・ルシファーともなれば、使える手駒はあろう?」
私達に依頼を持ってきた理由くらいわかっている。しかし体裁だけの説明ではなく、何故依頼を出したのかを話すのが筋だと思うのだが、奴は言わなければそれをしない。組織の長としては弱みを見せないことは当然であるし、聞けば答えることから此方を信用しているという意図を示せる良い手段ではあることは認めるがな。
「やれやれ、そう言わないでくれ。ちゃんと説明するさ。
君も知っている通り、私は『サーゼクス・グレモリー』ではなく『サーゼクス・ルシファー』になった。早い話が悪魔全体の為に動かねばならないわけでね。『グレモリー』の『リーア』の為にあからさまな支援は難しいんだ。で、まぁ、リーアなんだが、あの子はちょっと感情的で負けず嫌いでね。いや悪いことじゃないんだ。ただ、時には状況を判断し引くことも必要だと学んで欲しいと思ってたところに、ちょうどリーア達だけじゃ討伐は難しいレベルのはぐれ悪魔『バイサー』が駒王町に入った。リーアがバイサーと自分達との戦力を比較し的確に行動を選択できるかどうか。それを見たいんだ。これは私事だからね。ルシファーとしての権限は使えない。そしてルシファーとして配下を使えないからこそ、君達に頼むというわけだよ。
さっきも伝えたけど、リーアがバイサーに接触、行動方針を決定した後に介入。撤退選んだのならその支援をして欲しい。もし戦闘を選んだら後で送る護符で彼女を拠点に強制転移させてくれ。注意事項はリーア達が行動方針を決めるまで見つからないこと、行動方針決定まで介入を避けること、リーアとリーアの眷属に死者を出さないこと、この三つだ。」
「最初からそう言えば早い話だったろうに。まぁいい。報酬に関しては、冥界の触媒等の物品、対象のはぐれ悪魔の生殺与奪権、後は適当にしてくれればそれで構わん」
生殺与奪とは言うが、今までで一例を除いて全て悪魔の魂という上質な素材にしてしまっている。そのため、実際のところほとんど狩場の獲物扱いだ。とりあえず依頼の話は終わりだろう、飲み物の代わりをメイドのキキーモラに言いつけておく。
「受けてくれるか。ルシファーとしてでは無理だが、サーゼクスとして礼を言う。
それと黒歌の件だが、アジュカから伝言がある。『下手人の付近が最近どうもきな臭い。近々動きがあるようだから、それにあわせて一網打尽にするために黒歌の恩赦を使わせてもらう』だそうだ。これはまぁ以前の取り決めどおりだね。」
新しく入れなおした紅茶に口をつけながら短く言い切る。
「あぁ、構わん」
「では、よろしく頼む」
最後にそう言って通信が切られる。さて、十中八九つまらん輩だろうが、黒歌の例もある。ジラマ婆とロフォカレにバイサーとやらの素性について調べさせてみるか。
―――――
時刻は深夜。草木が茂り、人間の活動範囲から近くも遠くもない森の隣にある廃屋。普通ならば人気などあるはずもない場所なのだが、何故かそこには二人の人影がある。
ひとりは黒髪に和服を着た女性で、頭部には――本来人間にはないはずの――左右一対のネコミミが生えている。また、その整った容姿は世の人間が10人いれば10人とも美人というだろう。日系の顔をしているが、その胸は日本人の平均を超越しており、一部の特殊な性癖の方以外には夢のような豊かさを湛えていた。
もうひとりの外見もまた女性のように見える。髪の長さは肩にかかる程度、その髪をハーフアップにしており、目はつり目気味で意志の強そうな溌剌とした顔つきで、また体型は細身でスラッとしている。胸は平均程度あるように見えるが、隣のネコミミの持つ豊穣の塊と比べると、悲しいかなメロンとミカン程度の差がある。
さて、深夜に何故二人組みがこんな不気味な場所で張り込みをしているかというと―――
今日で張り込みを初めて5日目。この廃屋周囲に件のはぐれ悪魔がいるため、ここで……なんだっけ、えーと。……こりゃダメだわ、思い出せねぇわ。毛唐の名前は覚えにくくっていかん。まぁ、紅色の悪魔の御一行が来て、逃げるか、戦うかやりだしたらあっしらの仕事が始まるわけだわな。
つーわけで、今あっしらは命令どおり待機してる。御館様からの命だし、待つことは別に辛かねぇんだけど。
「にゃはぁぁぁ……憂鬱だにゃ~……帰りた~いにゃ~あ~……」
さっきからずっと隣で溜め息つくわ、ぶーたれるわしてる、この駄猫にちょいと一発、拳骨落すべきなんじゃねぇかとあっしは割と本気で思うわけよ。あぁ、面倒だな。もういいや、殴っちまえ。
「オラァ!」
御館様と九郎殿との訓練で身に着けたこの手加減を見よ! 殴った頭が潰れてない! あっし進歩してる! あっし凄い!
「ギニャア!?
な、何するにゃ! 弥彦! 私の頭を潰す気か!」
やれやれ、駄猫じゃああっしの進歩を感じ取れないか。仕方のない奴だぜ。
「なぁに言ってんだ。潰れてねーだろうが。ちゃあんと手加減出来てんだろうがよ」
「これが手加減!? 仙術で強化してる私じゃなかったら頭の骨が砕けてるところにゃ!」
あ?でもお前の頭、砕けてねぇじゃん。つまり手加減できてるだろうが。
「で、なんでいきなり頭ぶん殴って来たのにゃ。ディオ様に引き取られて5年以上一緒に暮らしてるし、弥彦が、まぁ、控えめに言ってバカなのは知ってるけども、それでも何もなしに殴ることはにゃいと思ってたんだけど?」
あっしがバカだとぅ!?……考えるのが苦手なだけだ。バカじゃねぇし。
それに黒歌、お前なんで殴られたか自覚なかったのか。お前もバカなんじゃないか。
「あ?そりゃ黒歌がさっきから溜め息ついてうじうじうだうだ言ってるからに決まってるじゃねぇか」
「そんな理由!?そんな理由で私の頭ぶん殴ったのかにゃ!?」
んなこと言われても、ずっとグダグダやられるとこっちからしたら鬱陶しいんだぞ。
「だってあっしが一回鬱陶しいっつったのにお前無視したじゃねぇか。それとよ、あっしら身内だけなら問題ないけども、今の『あたし』は一応『耶衣子』名乗ってるからよ。ボロを出すような真似すんなよ」
女に化けるのはあっしの特技だ。顔をほとんど変えないでも、服装と体つき変えるだけでまずバレないあっしの技術!女装趣味はねぇけども、今のご時勢、女の方がいろいろと都合がいいんだよなぁ。昔は女ってだけで侮られたもんだがなぁ。時代かねぇ。
「それくらいわかってるにゃ。
にゃぁ~……気が重いにゃぁ……」
この駄猫、あっしが何で殴ったかもう忘れたのか?これはもう1回グーでいっとくか?
「にゃ!?ちょ、ちょっと落ち着くにゃ!謝るから落ち着いてその拳骨を下ろすにゃ!」
「はぁ……。で?なんでそんなに駄々こねてんだよ。こいつァ御館様の命令だぞ?」
しゃあねぇなぁ。聞けば大人しくなんだろ。こんなにうだうだ言うったァ、スゲェ飲み屋とか飯屋の予約でも入れてたのか?
「今回私達が様子を見てなきゃいけない悪魔、リアス・グレモリーなんだけど、その眷属の中に私の妹がいるんだにゃ……。
ディオ様の影響力のおかげで悪魔側のトップと交渉できたし、恩赦も確定したにゃ。けどその情報はまだ伏せられてるから、白音から見た私は『主殺しのSS級はぐれ悪魔 黒歌』にゃ。……どんな顔して会えばいいのにゃ~!」
「そんなもん、妹と再会するんだから笑えばいいじゃねぇか」
なんだ。別に難しくねぇじゃん。立場変わったけど姉と妹だろ。なら、普通に再会喜べばいいだけだろ。常識的に考えて。
「……はぁ。弥彦に言った私が馬鹿だったにゃ」
ようやく自分が馬鹿だとわかったか。鞭打ち?ムチムチ?が大事だってなんか前に哲学のテレビ番組で言ってたし、黒歌ももっと賢くなるだろ。身体だけ見たら既にムチムチだし、これで安心だな。
「黒歌よォ。あっしだって困ってることくらいあんだぞ?」
怪訝そうな顔でこっちを見る黒歌。三日月以下、新月以上の月で周囲は暗闇だ。種族的な特徴という奴で夜目が聞くからまったく問題ないけど。
「あっしは穀潰しの黒歌と違ってコンビニでバイトしてるからな。こう毎日深夜の夜勤に出れねぇとなると、今月の給金が下がっちまう。
それによ、コンビニ近所のガキが深夜くらいに好色本買おうと来てよ。ソイツをからかうの面白いんだが、バイトに出れないとそれも出来ねぇ。
まったくはよ来てさっさと戦うか帰るか、適当にしろってんだ」
ほんと、紅色悪魔御一行には今日あたりにでも来て欲しいぜ。なにより今月の飲み代が厳しくなっちまうのが辛ぇわ。それに今月はようやく珍しい純米大吟醸酒の予約が取れたんだし、いまさら『買いません』なんて、勿体無くて出来るわきゃねぇしな。あぁ、でも本醸造酒でも旨いのあるし、そっちも飲みてぇよなぁ。
「……いや、弥彦のそんな困り事と一緒にしないで欲しいんだけど。
それに、バイトしてても弥彦はお金を家に入れてないにゃ!働いてないのと一緒にゃ!」
「言うじゃねェか。そもそも働いてもないくせによォ。
知ってるぜ。黒歌、お前いわゆるニートってやつだろ。やーいニート、ニィートォ!」
「うるさいにゃ!馬鹿鬼!
自分で潜伏の結界も呪文も出来ないくせに!」
「んだと!このアホ猫!
これから来るっていう妹にニートしてるって言ってやろうか!」
「にゃ、にゃにおぅ!?
なら結界を私だけ指定にして、弥彦はディオ様の命令を失敗したことにさせてやるにゃ!」
「「ぐぬぬ……」」
こんの駄猫はァ……。
「「……帰ったら覚えてろ(にゃ)」」
週末の予定が少し早まりました。
けどやっぱり忙しいのは変わらず。次の予定は明言できないです。ごめんなさい。
誤字脱字、あれば報告をお願いします。
ではでは。