東方裏影録   作:寒月

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…書いとくかぁの作品1。

酔っ払いにつきキャラ崩壊注意です。


【閑話休題2】 異変後は宴会

 月が明るい夜。あの月食の日から二日経った月の明るい夜。博麗神社には、たくさんの人妖集まっていた。それも当然、今日は博麗神社では宴会が行われていたからである。

 

 主役は当然、異変の元凶である影の妖怪…ベリルといったか。それと被害者兼、共犯者のアリス。そして一番の功労者かつ、異変解決者の霊夢とこの私、霧雨魔理沙だろう。

 

 私はこの宴会の雰囲気が大好きだ。この宴会があって始めて異変が解決したのだと実感することができるし、何よりたくさんの人妖と関わり合うことができる。人里にいたら、もっと言えば幻想郷でしかこんなことはできないだろう。

 

 私は早速、ベリルに絡みに行く。ベリルは部屋の片隅でアリスと飲んでいたが、アリスは諏訪子に絡まれ、ベリルは誰が部屋の真ん中まで引きずっていったのか、文や龍を始めとする烏天狗たちに絡まれていた。今もこうして異変の詳細を聞きたがっている文から逃れようとしているが、迷惑をかけまくった烏天狗相手だからか、それとも龍も横で何かを話しているからなのか。抜け出せない様子である。龍もほどほどにしろよと文をいさめているようではあるが、当の本人はお酒も入っており、一歩も引いていない。

 

 「文屋、そこをどけ。私もたーっぷりとこいつに聞きたいことがあるんだよ」

 「あややや、魔理沙さんじゃあないですか。今回の異変、大活躍でしたねぇ。それで、えっと、どこまで聞きましたっけ?」

 「あら、魔理沙じゃない。色々迷惑かけたわね」

 「全くだ。霊夢を見ろ。浴びるように酒を飲んでるぜ」

 

 これ幸いと、ベリルは私に反応を示す。話題の霊夢はというと、萃香を始めとする妖怪と共にお酒を飲んでいた。いつもよりペースが早いのは決して周りの妖怪のせいではないだろう。いつもより積極的に動き周っていたのに加え、今回の宴会の後片付けのことを考えないようにしているのだろうか。

 

 本来であれば今回の異変は共犯者のアリスの家ででもやるべきだったのだろうが、それはさすがに難しいということで却下。次にやるとすれば守矢神社であろうが、さすがに妖怪の山で行うことは面子が保たれないということでこれも却下。消去法で博麗神社となったのだ。…さすがに酒の手配はベリルにやらせたらしいが。

 

 「あの巫女がこのまま酔いつぶれて朝まで眠ってしまって欲しいところだわ。…あの感じだと片付けでも、相当こき使わされそうだし」

 未だ負けじと呼びかけをする文の声を華麗にスルーし、その身を震わせながらそういう。

 

 「やっぱり随分とこき遣わされたようだな」

私が笑いながらいうと、彼女は肩をすくめながら答える。

 「…見せてあげたかったわ。あの鬼っぷりを。満身創痍の私を叩き起こして、そこから説教タイム。そして次の日には、明日までに宴会の準備をしろっていうんだから。こちとら復活してまだ日が浅いんだから、少しは配慮してくれても良いものを。…全く、アリスを家に帰して正解だったわ」

 ベリルの様子を見るに、よほどの様子だったのだろう。よくもまぁ二日で準備を終わらせたものだ。相当頑張ったことはうかがえる。

 

 「やはり博麗神社に様子を見に行かなかったのは正解だったようだ。この様子だと、私も手伝わされていたに違いない」

 「本当に残念だわ。何がなんでも、それこそ能力を使ってでもやらせたのに」

 

 恨めしそうな表情で私を見る。いやはや、さすが霊夢だ。ここまで、この妖怪をまいらせることができるだなんて、霊夢は人の心があったものじゃないな。

 

 「おぉっとそれは危ないところだった。それで、お前はこれからどうするんだ?」

 私は感じていた疑問を口にする。こいつは魔界から復活してきたんだろうから、居住地などないだろうに。 

 「それはまだ決まっていないわ。スキマ妖怪とは全然話せていないのよ。宴会の合間合間にちょっかいかけられたぐらいで」

 

 それはさぞかし鬱陶しかったであろう。そしてこの宴会が終わったら、休む暇もなく隙間妖怪と話し合いになるのだろうか。

 「まぁ最悪、どっかの影にでもいれれば良いけど…その場所さえ、勝手に決めるわけにもいかなさそうだし。話し合いは早くした方がよいでしょうね」

 「言っていることはよくわからんが、まぁそうだろうな。あんまり下手なところにいても、他の妖怪の縄張りがあるだろうし」

 「そう、それよ。…全くもってこっちのことも知らないのよ、私は。どこにどんな妖怪がいるのか、とか、立地とか。少しはアリスから教えてもらっているけれど、情報を全く寄こしてくれない。…そうだわ。この際、あなたに教えてもらおうかしら。あの油断ならないスキマ妖怪なら、多少誤魔化しをしてくる可能性もあるだろうし。照らし合わせる材料はあるにこしたことはないわ」

 

 「もちろん良いが、ただで、とは言わないぜ。こっちもどこまで話していいか、リスキーなんだからな。情報一につき、こっちも質問を一、だ」

 「結構よ。じゃあ、まず―」

 私とベリルが互いの情報交換タイムが始まる。周囲の妖怪たちもそこに便乗(茶々と誇張が充分に入り混じった話を)し、有意義な時間をすごしていると、少し入口が騒がしくなる。どうやら紅魔館組が到着したようだ。今回は、紅魔館の当主、レミリア・スカーレットと、その友人の居候魔女のパチュリー・ノーレッジ。人間メイドの十六夜咲夜の三人だけで、門番と悪魔の妹はどうやら留守番組なようだ。レミリアは会場をぐるっと見渡すと、迷わず私のほうへと向かってくる。私は早速とばかりに話しかける。

 

 「おぉ、随分と遅い到着だったな」

 「あら、魔理沙。お隣の方は今回の異変を起こした妖怪ね?…ごきげんよう、そしてはじめまして。レミリア・スカーレットよ」

 「はじめまして。ベリルよ。あなたのところの図書館ではまぁお世話になったわ」

 ずっと横で喚いていた文屋を引きはがし、レミリアは挨拶をしてからベリルの横に座る。ベリルもすっと立ち上がり、自己紹介してからまた席に着く。

 お互い、最初は様子見スタートのようだ。そこからレミリアは軽いジャブを放つ。

 

 「ふふん、そうね。私の館の図書館にいたんだもの、その分の賃貸料取るわよ。なんてね。私の館に泥を塗ってくれたんだから、そんな安いものじゃ済まさないわよ」

 「そのときはただの妖魔本だったんだから、そこはただの賃貸料のみにしてほしいところね。というより、あの図書館、本は自動的に集まる仕組みにしてるんでしょう?で、あったら私は選ぶ権利さえ与えられていなかったんだけど」

 「あまり悪魔の館を舐めるんじゃないわよ。ほら、パチェもなにか言いなさいよ」

 

 ここで近くに座ったパチュリーに話をふる。パチュリーは終始ぶすっとした表情をして話を聞いていたが、その重い口をやっと開く。

 「本当にありえないわ。妖魔本にしてはお粗末もいいところね。仕掛けもつまらない、話もつまらない。いいところなしだわ」

 

 おっと、開口一番がそれか。なかなかやるじゃないか。

 

  「言ってくれるじゃない、図書館の魔女。私に気づけなかったくせに」

  「…アリスはアドバンテージがあったじゃない。それがなかったし、何より読み終わった本は、後腐れなく閉じるだけよ」

 「読み終わった本の余韻に浸りもしないのね。あなたのテーマ的にはそれも一つの答えなのかもしれないけど」

 「あまり知ったような口を聞かないで」

 「私も嫌われたものね」

 

 じとっとした表情を向け続けるパチュリーに対し、けらけらと笑うベリル。

 「あらあら、パチェと相性ぴったり?仲良くなれたようで何よりだわ」

 「この様子を見て、仲良くなったって思ったものなら、なかなかのものよ」

 

 パチュリーはレミリアのいたずらっけある表情を見て、さらなるジト目を返す。

 これは、果たして妖怪流の挨拶だったのだろう。…いや、パチュリーは半場本気だろうが。

 

 「そういえば、レミリア。お前のところに星たち…聖のところの寺の妖怪どもが来なかったか?」

 

 私はあの日、星たちと別れた後の話を聞こうとレミリアに質問を投げかける。

 「え?あぁ、来たわよ。…突然のことで驚いたけどね。何事かと思ったわ。なかなか訪れないメンバーだったし。というか、初めてじゃない?」

 「あいつらから話を聞こうと思ったんだが、今日はまだ、いないようだしな…」

 聖たちはあの後、人里の人間たちと寺を頼ってきていた妖怪たちのケアに追われているらしい。これは今日、来るとしても遅くなりそうだな。

 

 「そうね。…実は、私たちも貴方たちのところに駆けつけたのよ?二人が来て、皆で図書館を探して、こっちで感じる妖力はどうやら本の残滓みたいなものだって分かってからは、貴方たちの後を追った方が良いって結論に至ってね。でも、だめね。天狗たちが妖怪の山に入れてくれなかったわ。そいつらの相手をして、貴方たちの元にたどり着いた頃には、もう弾幕ごっこは中盤に差し掛かってたし。貴方たちがやられるまでは出しゃばらないであげていたわ」

 「そりゃあどうも」

 

 そう会話をしていると、咲夜はレミリアとパチュリーの分のお酒を用意する。もちろん、用意といっても一瞬で済んだでいたが。ワイングラスになみなみと注がれた赤ワインだ。もちろん、パチュリーの分はかなり少なめに注がれている。当の本人はもう、どこからか用意した本に夢中だから、それでもこの量が宴会の終わるころまでになくなっているかは怪しいところだ。

 

 「あら、美味しそうね。私にも少しくれない?」

 「いやよ、これは私たちの分なんだから」

 ベリルがレミリアに言うが、レミリアはこれは私の特権だと言わんばかりの表情で断りをいれる。

 「お嬢様」

 「…もちろん、冗談に決まっているでしょう。私からの差し入れよ。ありがたく受け取りなさい」

 「感謝するわ」

 咲夜がレミリアの戯れをたしなめる。まぁ、いつものことだな。レミリアの引っ込みが着かなくなる前に、咲夜が止める。全くもって良いコンビだ。

 

 咲夜がベリルの分のグラスを用意し、注いで渡す。それを美味しそうにあおったタイミングで、私はレミリアに話の続きをうながす。

 「じゃあ、なんで弾幕ごっこが終わった後に私たちの元に姿を現わさなかったんだ?」

 「そりゃあ、霊夢がすぐに説教を始めたからよ。私たちがそこに現れたら、下手をすると私たちにまで火種が及ぶじゃない」

 「たしかに、本を渡して、復活の決定打を作ったのはお前らだもんな」

 私が笑いながらいうと、パチュリーはすかさず口を開く。

 「だから、あれは私が悪いんじゃなくて―」

 「そういえば、本を渡す前から異変の兆候は起きていたわけですよね?なんでなんでしょう」

 パチュリーの言い訳を遮るように、咲夜が疑問を口にする。良かったな、パチュリー。お前の体裁は咲夜のマイペースっぷりに救われたぞ。

 

 「これは想定にすぎないけど、そもそも、私は復活に近づいていたのよ。…私の身体があった魔界から、幻想郷の景色が見えた。最近、異変があったらしいじゃない。…なんだっけ?侵攻されたり、カード的なやつとか」

 「えーっとここ最近だと…畜生界からの侵攻と、アビリティカードのやつか?」

 「そうそう、そんなやつ。…それらの異変によって、誰かの所有物になる、自分の者に所有権が生まれるみたいなことが顕著に起こりうる。そんなことに恐怖したんじゃない?誰かから影響を強く受け、否応にも『個』というものを意識してしまうこと。それが起きれば

、私がそこに引きずられていくのも少しわかる気がするわ」

 「うん、よくわからん」

 私は早速さじを投げる。レミリアは、どこかなるほど、という表情を浮かべているし、パチュリーは相変わらず、本をめくっているが、どこか興味深そうにしている。咲夜もじっと考え込んでいたが、次の瞬間、レミリアのグラスに空きが生まれていることに気づき、すぐにワインを注ぐ。まったく、従者は大変なもんだな。

 

 レミリアは自分のグラスにワインが注がれているのをじっと見つめ、そして注ぎ終わったタイミングで何か話そうと口を開く。その時、私の後ろから突如大きな声が聞こえる。

 「なーに小難しい話をしてんのよ」

 私が後ろを振りむくとそこにいたのは、霊夢であった。顔は赤く、呂律も少し回っていない。絶頂酔っぱらっていることは一目瞭然であった。

 「なんだ、霊夢か。いや、なに、皆でこいつが復活した経緯を考え―」

と私が話すが、霊夢は私の声を無視し、ベリルの後ろに座る。そして、思いっきりベリルの肩を汲み、

 「経緯?そんなもの、どうでもいいのよ。復活して、異変を起して、私が退治した。それ以上でも、それ以下でもないのよ」

といいながら、自身の盃を差し出す。ベリルは苦笑しながら、手にしていたワイングラスを置き、霊夢の盃に日本酒を注ぐ。

 

 「それにしても、あんた、私のところで飲まないなんて、いい度胸しているじゃない。私に退治された側のくせに」

 「もちろん最初に行ったじゃない」

 「あんなのは回数に入らないわよ。ほら、今日は私を立ててたてて、立て続けなさい」

 ベリルのうんざりとした表情をよそに、霊夢ベリルの手元にあった空の盃をもたせ、そこに日本酒を注ぐ。酷い絡み酒だ。

 「それにしてもあんた、酒強いわね。そこそこ飲んでいるはずなのに、微塵も顔が変わっていないじゃない」

 「まぁね。かつて、色々付き合いもあったし、それなりには、ね」

 「これは楽しみね。こいつを酔わせた、一生の語り草にしてやるわ」

 「その前に貴方がつぶれそうだけどね」

 「いやー、ごめん、その前にさ」

 霊夢とベリルがお互いに酒を注ぎ合い、それをあおる。そしてそれを周りの妖怪が野次を飛ばす。と、なり始めた場面で、それを止める声が聞こえる。

 「…アリスちゃん、つぶれちゃった」

 やっちゃった、という様子の声の諏訪子がそこに立っている。諏訪子は、顔を真っ赤にして自力で立つこともままなっていないアリスに肩をかしており、その後ろには同じようにべろべろになっている早苗が諏訪子を背面から抱きつくような形で絡んでいる。

 「あー、私を唆した悪い妖怪じゃないー」

 「諏訪子さまぁー、だぁってだって、聞いてくださいよ!そのとき、神奈子さまったらン案ていったと思います?『早苗、あんたはもう少し―」

 「はいはい、その話はもう今日で3回聞いたよ。これ以上絡むなら、神奈子の方に行っといでって。空いてるよ、神奈子のほう」

 「神奈子さまも、諏訪子さまの方にっておっしゃっていたんですもん!!」

 「あーもー、誰よ、こんなになるまで早苗に飲ませたの!」

 

 アリスはベリルの顔を見るなり、へらへらと笑い、早苗は泣きながら諏訪子に絡んでいる。アリスは笑い上戸、早苗は泣き上戸か。二人ともろくに呂律が周っていないところだけは共通している。

 「そうね、そして、誰よ、こんなになるまでアリス飲ませたのは」

 諏訪子の突っ込みに、呆れた表情でベリルもそう言葉にする。その目は諏訪子に向いているあたり、アリスを酔わせた犯人はお見通しらしい。諏訪子はそれに対し、そっぽを向いて知らぬ存ぜぬを貫き通している。

 

 諏訪子からベリルはアリスを受け取る。

 「んー、あなたって意外に体温低いのね。気持ちいいー」

 ベリルに抱えられたアリスはゴロゴロと喉を鳴らしそうな勢いで、そのまま抱きついたままでいる。

 「あら、本当だわ、あんた夏にちょうどよさそうな体温しているわね」

 アリスの言葉を聞いた霊夢も、ベリルにもたれかかる。

 

 「…暑い、苦しい、そして重い」

 苦しそうな声をがあげ、霊夢を引きはがしにかかる。

 「誰が重いですってぇ~?」

 アリスはむくれながら、ベリルの頬を引っ張る。

 「痛い、痛いってば。あなたじゃないわよ。むしろあなたは軽いわ」

 「ふふん、よろしい」

 アリスは満足気な表情でベリルから離れると、ベリルの膝を枕にして横になる。

 

 「ってことは、なに、私が重いってこと?あんた、ふざけるのもいい加減にしなさいよ」

 「別にあなたに言ったわけでもないだけど…」

 「いいえ、アリスじゃないなら、私ってことじゃない。うん、やっぱりこいつ、もう一回痛い目見せないとダメね」

 霊夢がお札をどこからか取り出して、ベリルに向けて脅しをかける。ベリルは霊夢の札に嫌悪感をしめしつつも、膝ですやすやと早くも寝息を立てているアリスを撫でながら、つぶやく。

 「はぁ、全く騒がしいったらありはしないわね」

 

 言葉とは裏腹に、少し楽しそうな表情をしているのは気のせいではないだろう。

 幻想郷だから、騒がしいのは当然だ。少しはこの楽しい喧噪に洗礼されるがいいさ。私は、まだまだこの宴会はこれからだということを、霊夢の怒号を聞き、感じるのであった。

 

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