色々用事があり、作成が滞っておりました。大変申し訳ありません…。
ただいま書き溜めしている最中であり、こちらのシリーズは、そこそこ溜まってきております。
完結は絶対にさせたい!(2部予定で1部は特に早めに!)と思っておりますので
末永くお待ちいただければ、と思います。
「…だめだぁ…!!ぜんっぜん分からない…!!」
霊夢は聞き込みを終了した人の家を出た瞬間に、思わず零してしまう。
とりあえず、人里で妖怪が隠れられそうなところをかたっぱしから探した。もちろん、そんなことで見つけられるはずもなく、潜りこまれないようにと、確認した場所には少しずつ霊力を込めるという、地道な作業を行った。そして過去に奇行をしてしまった人々の話を聞いていたのだが…手がかりはなし。性別、年齢、奇行をした場所、時間、直近の行動等、全てにおいて共通点は存在しなかった。
あまりの情報のなさに、思わず頭を抱えてしまう。はぁー、と大きな溜息をつき、甘味処でお団子を嬉しそうに頬張る子どもを恨めしそうに見つめる。
時刻はすっかり夕方だ。お腹も空いてきたし一度帰るか…と決めたところに目に飛び込んできたのは、お団子を頬張る魔理沙の姿であった。
目が合うと魔理沙は、にやにやとこちらを見て、声をかけてくる。
「よう、お疲れのようだな」
「魔理沙、あんた、こんなところで何してるのよ?!」
「見て分かるだろ、一服だ。ここのお団子は美味いからな」
「…おばちゃん!お団子!支払いはこいつが払うわ!」
「おいおい!勝手をぬかすな!!」
「あんた、前、勝手に私のおせんべい食べたでしょ?」
「それって戸棚にあったゴマせんべいか?知らないな」
「…いつ、私が戸棚のゴマせんべいなんていったのよ」
「おっと、これは口がすべった」
よしよし、いいぞ。完封勝利。しかし全く悪びれる様子がない魔理沙を、私はジト目で見つめながら、早速届いたお団子を頬張る。うーん仕事の後の甘味はうまい。
これは貸しだからな、という魔理沙を無視して私は魔理沙に尋ねる。
「それで、そっちの首尾はどうだったのよ」
「いい質問だ。とりあえず、まずはよく里にいる妖怪で、そこそこ力があるやつらだな。そいつらを当たってみようと思ったんだが…まぁ当然というか、里では今のところ姿を見てないな。見かけたのは小傘くらいか。一応聞いたが、白だろう。だからとりあえず場所問わず見かけ次第、問い詰めるしかないという感じだ」
「そう…。里によくいる奴らだと…人形遣い、化け狸、永遠亭の兎に聖や神子のやつらの面子…意外に多いわね」
「…まぁ、ちょこちょこ周るしかないな。妖怪以外の可能性もあるとしたら、咲夜、妖夢、早苗あたりはありそうだが」
魔理沙は団子をひとつ頬張りながら自身の考察をいう。
「妖夢はそんな能力ないだろうし、咲夜は種なし手品で他人のポケットに物を入れることぐらい容易いだろうけど、性格を変えることはできないでしょうし。マジックアイテムでも使わなきゃ」
「早苗たちはどうなんだ?あいつら、ちょくちょく色々企んでいるだろう?」
「うーん…さすがにやらないとは思うけどね、こんなやり口。信仰心を集める方法としてはさすがに不適でしょうし」
「ま、人間の線は捨てていいんだろうけどな。感じたのは『妖力』なんだろ?」
「まぁね。…結局手がかりゼロじゃない」
「そっちはどうだったんだ?」
「成果ゼロ、よ」
「お得意の『博麗の巫女の勘』も働かずか」
魔理沙は、にやりと笑いながら軽口をたたく。
「…うるさいわね。ていうかあんた、そんだけしか働いてないわけ?妖怪を調べてくるんじゃなかったの?」
「失礼な。行ってきたさ。とりあえず、小鈴のところには、な。まぁ特に問題はなさそうだった。…本格的に調べようと紅魔館に行こうかと思ったが、どうせ行くんだ。日が暮れてきたときのほうがレミリア達も起きているだろうから、そのタイミングで行こうと思ってな。この団子はその前の腹ごしらえも兼ねてるってわけだ。…霊夢も行くだろ?」
「あんたの泥棒の手助けはしないわよ?」
「なんだ、つれないな」
皿の上の団子に手を伸ばすが、気が付いたら食べ終わっていたらしい。魔理沙の皿に残っている一本にこっそり手を伸ばす。
…食べ物の恨みは恐ろしいんだぞ。お団子をおごってもらってチャラ、なんて思うなよ。お団子を急いで口に運ぶ。…盗ったのをばれる前に食べてしまわなければ。
「それで私のところに来たってわけね。…残念ながら、私は忙しいの」
読んでいた本から一瞬も目をそらさずに、パチュリーは魔理沙にそう言い返す。
「おいおい、少しは協力してくれてもいいだろう?…そうだ、アリス、お前はどうだ?」
「嫌よ」
日が沈み、ちょうど月が綺麗に輝き始めた頃。魔理沙は所狭しと本が並ぶ紅魔館の図書館を訪れていた。いつもパチュリーが座っている椅子の向かいにいたのは、魔法の森で暮らす魔女のアリス、彼女はバッサリと魔理沙の提案を断る。
なんだよーとむくれつつ、自慢の帽子をその辺にあった椅子の背もたれにかけ…る前に帽子についたコゲを払う。…私の団子を食べた霊夢と弾幕ごっこを少ししたときについてしまったやつだが、ここも「グレイズして(かすって)」いたとは。
ちなみに、座面には本が5冊6冊と積み上げてあり、人間が座る場所などない。この図書館では、人の命より本の方が重いのだ。
とりあえず自分の用を済ませますか、と近くの本棚を物色しながら、アリスに尋ねる。
「そういえば、いつからアリスは図書館にいたんだ?」
「あら、私を疑っているの?…そうねぇ、昼頃かしら。今日は研究の幅を広げてみようと思って色々な分野の本を見て周っていたから」
「…となると、ぎりぎり白か」
「ちょっと、私は『魔女』よ?使うのは『魔力』なんだけど」
「『妖怪としての』、な。…実際、使えるのか?」
「本人に聞く?それ?」
呆れた顔のアリスに対し、静観していたパチュリーがページをめくりながら答える。
「基本的には無理よ。妖力は妖怪の肉体、精神に宿っているもの。そして妖怪そのものは、人間からの『恐れ』などからきている。…つまり、妖怪化しているとはいえ、『自己の主題の探求』という根源をもつ魔法使いとは別物なのよ。まぁ、杖やあなたの使う八卦炉のような変換器を使わなけば、の話ではあるけれど」
「…ずいぶんと饒舌だな…」
「私は、早く帰ってほしいだけ。…特に油断ならない白黒の泥棒猫にはね。それとも、力尽くでお帰り願おうかしら?最も、今まで盗んでいった本を返してくれるのだったら、また別だけど」
イライラした口調でパチュリーは答える。
「落ち着けって。…この中から探して調べるのか…まぁやるしかないか」
「ちょっと、答えになってないけど?」
「…それにしても、霊夢のやつ、遅いな」
パチュリーの声を完全に流しつつ、とりあえず近くにあった『基本のき、これを知らずして魔法を語るべからず』をそっと肩掛けバックに突っ込む。
紅魔館についた私たちを歓迎したのは、弾幕の嵐。当然ながら、アポなし訪問であったため、門番とメイドに盛大な歓迎をくらったのだ。…ほとんどが私をめがけて、だったような気がするが。
私が門番に一撃被弾させたところで、霊夢がメイドにどうやってか、話をつけたようであった。霊夢は起きたばかりだというレミリアと話をしに行き、その間、私は図書館で妖怪について調べようとしていたのだ。…咲夜も美鈴もすごい目でこっちを見てきたが。少しは私を信頼しろよな。…ま、ついでに『本を借りること(用足し)』ができればよいとは思っていたが。
二冊目の『五行~土の章、応用編』を手に取り、これまた拝借しようと、そっとバックに入れようとしたところで、突然手に持っていた本が消える。
「ちょっと、そこの白黒。これ以上うちの司書の機嫌を損なわせないで頂戴」
そのタイミングで、入口の方から声が聞こえてくる。
この紅魔館の主、レミリア・スカーレットだ。
後ろには、私が持っていた本を手にしている銀髪のメイドがいる。
…二冊持っている姿を見て、そっとバックの中を見ると、先ほど『借りた(盗んだ)』本まで消えている。
相変わらず手癖の悪い奴だ…とつぶやくと、いつの間にか横で本を棚に戻していた咲夜に、あなたに言われたくはないですね、と返される。…ちょっとびっくりしたぞ。インチキ能力め。
レミリアがこちらに歩みよりながら、
「パチェ、協力してあげなさいな」 と親友に声をかける。
「嫌よ、めんどくさい」
「…どうせ暇してるんでしょ?」
「私は暇じゃないわよ。…私は…私を待っている本たちがたくさんいるのよ。知識を、叡智を。私は深めなければならないのよ」
ここまでずっと本から目を離さなかったパチュリーがちらりと目線だけ、レミリアに向けて答える。
「あなたなら、その知識をもってアドバイスや、ちょちょっと本を見繕ううぐらい、造作もないことだと思うんだけど」
パチリとウインクしてレミリアはパチュリーにそう返すと、パチュリーは素早く目線を本に戻し、小さな声で
「いや、まぁ、そうだけど、でも」
と誰に向かっていっているのか、ぼそぼそとつぶやく。
「それにしても、めずらしいな。関係ない、興味がないとつっぱねると思ったんだが」
と、私はレミリアに声をかける。
「…最近、畜生界の獣どもが幻想郷を支配しようとしていたじゃない」
「あぁ、あいつらか」
私は3人の畜生界の組長たちを思い浮かべる。
「それにあたって、所有権をめぐる争いを繰り広げたり…本当になによ?って感じなのよ。この私がいる以上そんなことを繰り広げること自体、愚かしいこと、それを分からずしてそんなことを起こし…」
レミリアらしい理由だなと思うと同時に、これはしばらく止まらないと察した私はレミリアの話を聞き流しつつ、ゆっくりと霊夢の方に近づき、そっと尋ねる。
「もちろん、こいつらは白だったんだろうな?」
「当然よ。そもそも、こいつらを大して疑ってはいないわ。こいつらなら、こんな風に、こそこそしないで、もっと大胆にするでしょうし」
「まぁ、そうだろうな」
どんどん話が逸れ、気がつくといかに自分が起こした異変が堂々とし、素晴らしかったののかを語り始めているレミリアを横目に話をする。
「ちょっと、聞いているの?!」
「えぇ、もちろん、聞いておりましたわ、お嬢様」
「あんたじゃない」
レミリアと咲夜の主従コントが炸裂したところで、パチュリーが図書館の奥で本の整理をさせていた、小悪魔を呼び出し、羊皮紙を一枚手渡す。
「こあ、このリストの本を持ってきて」
「うぅ…相変わらず悪魔づかいの荒さ…いえ!なんでもないです!いってきます!」
小悪魔がパチュリーにジト目を向けられた途端に、火のついたようにリストを持って猛スピードで本を取りにいく。
「おっと、協力してくれるのか?」
思わず茶化すと、パチュリーは読んでいた本に視線を戻しながら
「…ま、ここいらで博麗の巫女に恩を売っておくのも悪くないと思ったのよ…どうせ片手間で終わるし。どうせね」
と、これまた、どこを見て答えているんだが、本から目を話さずにボソボソと早口で答える。
「全く、ここの住人は素直じゃないな」
そういったところで、何冊かの本が置かれる。
思った以上にお早い到着で、驚きつつ、パチュリーに尋ねる。
「おぉ??意外に少ないな、もっとたくさんあるかと思ったんだが」
「…影にまつわる妖怪というのは少ないの。と、いうより、何かの影響で影にまつわる話は非常に多いんだけど、影そのもの、となると途端に少なくなるのよ」
「へぇ―勉強になったぜ」
そういって本を手に取り、パラパラと見始める。霊夢も一冊、本を手に取り、開くが、途端に閉じ、私の目の前に置く。
「…文字が細かくてめんどくさいわね。ま、こういうのは魔理沙に任せましょう」
といったかと思えば、立ち去ろうとする。
「おいおい、ちょっと待てよ。この量だとすぐに終わるぜ?」
「…じゃあ他のことしてるから、終わったら神社まで来てちょうだい」
「神社までって…お前、寝る気か?」
「そうよ、悪い?朝から動きっぱなしだし、そのうえ夜に紅魔館まで来てるんだから…くたくたなのよ!」
「おま、ちょっと…!ってあぁ、行っちまった」
話終わるのが先か、図書館から出ていくのが先か、霊夢は私の返事を聞かずに立ち去る。
「…仕方ない、やるしかないか…」
諦めて本の前の椅子に座り、ページを開く。
「…じゃ、私も帰るわ。パチュリー、この本借りてくわね」
この間、無言でやり取りを聞いていたアリスが自身の目のまえに置いていた数冊の本を持って、席を立つ。
「いいわよ。…あら、その本も借りてくのね」
ちらりとアリスの持つ本を見ていう。
「えぇ、ちょっと面白そうなものも見つけたし」
アリスは少し魔女らしい、かつ、どこかいたずらっ気のある表情で返事をする。それに対し、パチュリーは、興味なさげな表情でふーんと返すばかりであった。
この対極の様子は自分の興味あるもの、自分の求め極めるものに対してはとことん突き詰める。そんな魔女らしい様子が現れているのだと実感しつつ、少し腑に落ちないある一点について言及する。
「アリスには本をかすのかよ…」
「おあいにく様、私はきちんと本をかえすのよ。きちんと期限を守ってね」
と、アリスはどこか皮肉気な表情で私に言う。
「あ、そうだ、アリス。お前も協力しろよな。異変解決。…手がかりが無くて困っているんだ」
アリスは人里にも顔をだしているし、人里の人間にとっては馴染みある妖怪の一人だ。人里の様子を見てもらうだけでも十分助けになる。
しかしアリスは案の定
「興味ないし、そんな義理はないわ」
と答える。
「頼むよ…そこを…な?」
私が手を合わせ、「お願い」と大げさな懇願をする。知っているぞ。アリスはこう正面を切ってお願いをすると弱いこと、ぐらい。
案の定、アリスは大きなため息をつきながら
「……ま、人里にはたまに行くしね。そのとき様子を見るぐらいならいいわよ」
と、いう。案外すんなり受け入れたあたり、本当は私があえてお願いするまでもなく、なんだかんだ様子見ぐらいはする予定だったのだろう。このお人よ…魔女好しめ。
「じゃ、今度こそ本当に帰るわよ。またね、パチュリー」
パチュリーはそれに対し本から目を離さずに、ひらひらと手を振ってこたえる。
アリスの姿が見えなくなると同時に、レミリアがつぶやく。
「…人形遣いもちょろいわねー…霊夢も帰ったし、じゃ、解散ね。ま、がんばりなさいな、白黒」
そういうと、これで終わりだといわんばかりに、立ち去ろうとする。その後ろをついていく咲夜を最後に一度、呼び止める。
「ちょっと待てよ。これから徹夜で本を読むんだぜ…?それに、私は客人だ。だからー」
「紅茶ならお断りですわ。先ほど本を盗もうとしていた泥棒猫に出すお茶はありませんから」
と完璧な笑顔で言われてしまう。
「…はぁー…今日はとんだ厄日だぜ」
思わずそう口にし、本に向き直る。
「…人形遣い『も』も…って他は誰の事かしら」
そうぽつりとつぶやいたパチュリーの発言を聞き、全力で聞こえなかったふりをする。
…余計なことをしてパチュリーに追い出される前にさっさと読み終わるべきだ。