「『レディース・アンド・ジェントルメン!銀河の夢追い人、身の丈知らずの挑戦者たちよ!ようこそ、「熱砂の刻」メインステージへ!大志、闘志、野望、そして夢があるのなら──ピノコニーの送り出す次の大スターは、間違いなくあなただ!』」
星達が「熱砂の刻」に足を踏み入れるなり、そんな大仰なアナウンスが彼女達のことを出迎えた。「本格的だね……」とホタルが声を漏らすと共に、アナウンスは彼女達の姿を捕捉したようだった。
「『さあ、ご覧下さい!また新たな4人の夢追い人がこの地に現れました!』」
「えへへ……お母さん、また私テレビに出るかも……」
「あんた何照れてるの?っていうか、カフカはあんたの母親じゃないでしょ……」
「何言ってるの?カフカは私のママなんだけど」
「『どうやら闘志は十分な様子!彼女達からは紛れもないスターの原石としてのオーラが漂っています!後は迷わず一歩を踏み出すだけだ!』」
煽り立てるアナウンスに、彼女達に気が付いたピノコニーや各地のエンタメ誌の記者達が星達を囲み、そして戸惑う彼女達に質問攻めを開始する。
「皆さんにお聞きします、ずばり「スラーダ™セレモニーオーディション」には何を求めて参加したんですか?」
「皆さんは最終グループとしての参加となりますが、全ての挑戦を乗り越える自信はお有りでしょうか?」
「我々の独占取材を受けていただけないでしょうか!?お時間は取らせませんので!」
「前途洋々、彼女達こそ不倶戴天の好敵手共を討ち果たし戴冠を迎えるのか!?」
「純美、純美!ああ、女神イドリラよ、彼女達にもその祝福を!」
「琥珀も嵐も硬すぎる!琥珀は身体が、嵐は頭が!愉しみ以外のものの全ては塵芥!」
「ね、姫子、バット出しても良い?」
「それは荒すぎるけど、でも早急に切り抜けたいのは事実ね」
「どうすれば良いのかな……」
3人が頭を捻る中、なのかは愛用のカメラで記者達をパシャパシャと撮し、「これ以上しつこいとネットに晒しちゃうから!」と反撃する。すると記者達も流石にそれは避けたいのか、先程のような囲いは解けて彼女達は見事に脱出に成功した。こういう時だけは頼りになるなぁ、と星は彼女を見直した。
「『そして宴のスターを目指す勇敢な挑戦者の前に、あの大人物が檄を飛ばします!ピノコニー長者番付常連、スラーダ™商業帝国を創り上げた男──エディオン・レーダーさんです!』」
そのアナウンスとともに、1人の老人が姿を現した。腰は曲がっているものの未だにその覇気は衰えておらず、その目にはまだまだ夢追い人の炎が燃えている。
「失礼、紹介に預かったスラーダ™工場の工場長を務めているエディオン・レーダーだ。君達もぜひ全銀河の観客達に向けて新たな大スターの名を叩きつけてやってくれ!」
「ええ、そうしましょう。私は星穹列車のナビゲーターを務めているナナシビト、姫子よ。彼女達と一緒に旅をしているの」
堂々と答えた姫子に、素性を隠すことが基本のホタルは「君達は正体とか隠さなくていいの……?」と少し不安そうに尋ねる。星は「私達は有名人だから仕方ないんだよ」と少し誇らしげに言った。
「私は銀河打者。文字通り銀河最強のホームランバッターにして最強のアベレージヒッター。こっちは三月なのか。私のお供」
「いつからウチがあんたのお供になったの!?ウチの方が先輩なんだけど……って、そうだった。改めて、ウチは三月なのか!銀河のあちこちを冒険するのと写真撮影が好きな普通の女の子だよ!」
「みんなこんにちは、あたしはホタ……サミュエル。ええっと、あたしも色んなところを旅してる、普通の女の子……かな」
「やはり、ピノコニーで噂になっていたナナシビト一行というのは君達だったか!それならば会場も大盛り上がりだろう!さ、時は金なりとも言う、君達をオーディションの入口まで案内しよう!」
そう言って彼は腰の曲がった老人とは思えないスタスタとした足取りで会場の奥へと進んでいく。星達もそれについて行った。
「飲も〜スラーダ、素敵な夢へ〜」
「ホタル、スラーダ好きなの?」
「なんというか、この曲だけ耳に残ってるんだ……」
◇◇◇
そしてオーディションの入口であるピンボールマシンの前まで辿り着いた御一行。エディオンは星達の方へ向き直り、彼女達へ檄を飛ばし始めた。
「ナナシビトの諸君、君達を見るとかつてのピノコニーが始まったばかりの、あの頃の隆盛を思い出す。まだ私は若造でな、「時計屋」に憧れて1人の夢追い人として故郷を離れたんだ。だが、夢の元手を作るための労働の中で不覚にもある日倒れてしまったのだ。そんな私の命を救ってくれたのがスーサさん、そして彼の作ったドリンクだった。それ以来、その甘美な味わいと彼に救われた経験は私の土台となり、そして今のスラーダ™が世に生まれるきっかけとなったのだ!」
「美味しいよね、スラーダ」
「そう言ってくれると私としても喜ばしいことだ。だが、スラーダはそれだけではない。あの味は夢追い人の味、夢を追う時代とはそれほどまでに素晴らしいものなのだ。この熱砂の刻のステージもあの時代と「時計屋」を忘れぬため、新たな「夢追い人」のために作られたのだよ。そして今、新たな時代のスターとなるべき君達がここに姿を現した。君達が最後まで勝ち進み、大スターの栄誉を掴むこと、私は心の底から祈るとしよう!」
そして檄を飛ばしたエディオンは彼女達に向けて「君達からも、何か一言ずつ貰えるか?」と問いかける。星は頷き、そして右手を突き上げて言った。
「ナナシビトが次に「開拓」するのは芸能界だよ!」
「ははは!それでこそ真の夢追い人だ!次は君だ、三月なのかさん」
「ええっと、観客の皆さん!このスーパーなのかの大活躍から目を離さないでね!」
「おお、負けず劣らずの勇ましさ!サミュエルさんはどうだい?」
「……そうだなぁ、みんなが望む結末を手にできますように」
「おお、ロマンチックな祝福だ!最後、姫子さんはこのチームに何を期待するのかな?」
「私としては皆が無事ならそれで良いわ。「開拓」の旅に終わりはないもの」
「はは、ナナシビトらしい優しい言葉だ!」
そしてエディオンは言う。この先に待ち受ける3つのステージはどれもかつてのピノコニーをモチーフとしていることや最初の2つは選択制のこと、そして最後にはこの「スラーダ™セレモニーオーディション」のチャンピオンが待ち受けていること。それらを説明し終えると、彼は高く手を上げて宣言した。
「これよりスラーダ™リミテッドカンパニー協賛、第20回熱砂の宴「スラーダ™セレモニーオーディション」、第33試合──開始!!」