「……まさか、この期に及んで「
「さあ、どうかしら。もしかしたら、アキヴィリとエナに代わって見届けに来たのかもしれないわ」
「ピノコニーの未来を、ね」と微笑む姫子に、サンデーは静かに目を瞑る。そして数秒の間が開き、彼は「分かりました」と彼女達へ静かに応えた。
「ならばピノコニーの「夢の主」に代わり、そして我が同胞120544人を代表して──オーク家当主サンデーの名を以て、星穹列車をピノコニー大劇場、「調和セレモニー」へと招きましょう。次に皆さんとお会いするのは銀河の衆目の中心……そこで、どちらがピノコニーを、いえ、人々を救うに値するか、「開拓」と「秩序」のどちらが人々の「未来」に相応しいか、決着を着けるとしましょう」
「亡き「
「ああいう頭でっかちは一回ズタボロにしないと現実見れないからね!」
「確かに、サンデーさんは自分の理想を固く信じている。だからこそ、こうして正々堂々と勝負できる場を用意したんだと思うわ。それに、彼は現実に葛藤しながらも理想主義者でいようとあがいているようにも見える。全力でぶつからないとという星の意見には私も同意出来るわね」
「それに、「時計屋の遺産」はウチらが受け継いだんだもん!ここでバトンを受け取った以上、ゴールまで行くしかないよね!」
「……多分、「秩序」も長い時間を掛けてこの「調和セレモニー」という舞台を整えてる。今から君達が相手をするのは、このピノコニーという星に宿り続けた大きな意志……つまり、「現実逃避」を望む人々の感情。それこそが、この星核の災いをここまで膨張させたんだと思うんだ。そして今、彼等が死した星神を一つの星を糧として復活させようとする中、彼等以外の全てがそれを阻止するために動いてる。もちろん、
「……待って、ホタル。なんで今「君達」って……」
「まさか、ここでお別れ……?」と問いかけたなのかに、ホタルは静かに頷いた。
「あたしは……どうしても、果たさないといけない約束があるんだ。だから、君達の戦いにはついていけないの」
「……分かった。ホタルがそう言うなら」
「心配しなくても大丈夫だよ、星。本当にあたしの力が必要になる時には、必ず君の下へ駆けつけるから」
そう言って、ホタルは優しく星の手を握る。そして彼女は自らの「脚本」について、徐ろに語り出した。
「あたしが「
「「三度死ぬ」……とても、私達には考えられない経験ね」
「う、うん……そんなに死んだら、ウチもう一回氷に閉じ込められちゃいそうだよ……」
「「一回目」は、ネムリの刃によってもたらされたの。あたしの身体は大きく貫かれて、星の腕の中で泡みたいに弾けた。それが、本当の意味でのあたしの物語の始まり。「脚本」は必ず訪れる未来を教えてくれるけど、でもその形はその瞬間までは明かされないんだ。でも……今のあたしには、二回目の死も、その意味も、なんとなく理解できる。そのための最後のピースは……きっと、あの子が持ってるから。それに、これが上手く行けば……「三回目」は、きっとハッピーエンドになると思うんだ。でも、それも「秩序」に勝たないとどうしようもない」
「さもなくば「三回目」は、「秩序」の深い夢の中で迎えることになるでしょうね」
「……それだけは、絶対にさせない。なんとしてでも食い止めて見せるよ」
強い決意を宿して答えたホタルに、今度は星が彼女の手を握り、「信じてるよ」とぎゅっと力を込める。「任せて」と彼女が笑顔で頷くと、星はその手に一つのネックレスを握らせた。
「……あ、これ……」
「拾っておいたんだ。もし、万が一ホタルが死んでなかったら渡そうと思って。でも渡すタイミング見当たらなかったから、今」
「……ありがとう。今度は、絶対失くさないから」
「星穹列車のナビゲーターとして、私からもお礼を言わせてちょうだい。私達のことを助けてくれて、本当に感謝してるわ。目が覚めたら、もう一度あんたと会えることを祈ってる。「彼女」にも、「ヴェルトを助けてくれてありがとう」って伝えておいて」
「うん。でも、まだお別れの挨拶には早いかな。きっと、あたし達はまた夢の中で会うことになるから。だから、こう言うよ。──「またね」」
彼女の言葉に星達は頷き、そしてスラーダ式のエレベーターに乗り込んだ。丸い床の隙間からスラーダの炭酸が漏れ、そしてまるで爆ぜたかのように、12の夢境の上空に君臨する決戦の地、「ピノコニー大劇場」へと向かって飛んでいく。ホタルはそれを見届け、そして静かに、熱砂の刻を去った。
◇◇◇
集合場所は、何も記されていなかった。ただ、インシァンは「彼女ならそこが気に入るだろう」と思い、ホタルは「彼女ならそこに気が付くだろう」と思っていた。クラシカルなレコーダーからは、ゆったりとしたピアノが流れている。そこはドリームボーダーの一角、流れ星と明けかけた空がよく見える、ピノコニーの空に最も近い場所。ホタルがそこに辿り着くと、彼女は「あれ、もう10分くらい待つと思ったんですが」と、作り物みたいにその母親譲りの長い髪を靡かせ、優雅に振り返った。
「そんなに、楽しみだったんですか?……ふふっ、ええ、私もです」
「インシァン……!」
「お久しぶりです、ホタルちゃん」
そして彼女達は、星だけが見る空の下、静かに、力いっぱいに抱擁した。