星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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全て、収束の頂へ(その1)

 ピノコニー大劇場、「調和セレモニー」開幕まで3時間。彼はその中央で静かにカーテンを眺めていた。そして、1羽のワタリガラスが降り立った。

 

「「「ここにいるのは、君だけか?我が子よ」」」

「……ええ」

「「「もはや、私達の相手は「開拓」のみではない。カンパニー、自滅者、仮面の愚者、星核ハンター……ピノコニーにある全てが、「秩序」を止めるべく躍動している。今こそ、全ての要となる時だ。しかし、肝心の調律師(ロビン)の姿が見当たらないのは残念だな、サンデー」」」

「そうでしょうか?事実として、ワタシはこうしてアナタの前にいるのです。これで十分ではありませんか」

「「「分かっているだろう、サンデー。彼女は必ずあの「繁殖」の手から奪い返されなければならない。彼女こそ、この「調和セレモニー」の主演であり、私達の悲願を叶える者なのだ」」」

「ワタシは彼女の双子の兄として、「秩序」が彼女の本意でないことを理解しています。その務めは代わってワタシが果たしましょう」

「「「幼い頃から賢明だった君のことだ、その代償も承知の上なのだろう」」」

「天に2つの太陽はありません。必要ならば、ワタシは太陽さえも撃ち落としましょう」

「「「……君は、報いを信じるか?」」」

「もし報いがあるとして、その責を負うのは当人です。アナタがワタシの報いを受けることがなければ、ワタシがアナタの報いを受けることもない。ワタシ達になんら関係など無いのです、ゴフェルさん」

「「「良いだろう。君が自らを生贄として差し出すのなら、私はそれを受け取るとする」」」

「ええ、生き存えることを望むのなら、退き時を見分けることです」

「「「やれやれ、君も随分と自信家になったものだな。道を踏み外せば、君も「調和」と同じ轍を踏むぞ」」」

「……今の答えで確信が持てました。やはり、この星核の災いを引き起こしたのはアナタではなく──」

「「「おしゃべりも程々にしよう。間もなく君の舞台の幕は上がる。ここに至るまでに在った全てのオーク家の魂が、今君の歩む道の礎となっているのだ」」」

「……」

 

 彼は沈黙を保ったまま、振り返った。そこには、地に落ちたワタリガラスの亡骸が、ただひたすらに、無数に横たわっていた。

 

「……「ワタシは天高く飛び、天井の太陽となる」」

 

「「全ての生命は我が光の下で生き生きと育ち、全ての罪悪は隠れることが出来なくなる」」

 

 そして彼は、楽園への最後の道のりを踏み出した。

 

◇◇◇

 

 「調和セレモニー」開幕まで2時間。星、姫子、なのかはとうとうピノコニー大劇場へと足を踏み入れた。

 

「ソーダで空飛ぶのは結構面白かったけど……ここ、思ったより暗いね?もうすぐ始まるってのに、誰もいないみたいに真っ暗……」

「ええ。2時間前とはいえ、もう少しいて良いような気もするわね。というか本当に観客も、スタッフさえ1人もいないみたい」

「あのサンデーの奴、また変なことでも企んでるんでしょ。っていうかチケット全然売れてないんじゃない?」

 

 「これじゃあ採算取れないね(笑)」なんていつものペースを崩さない星。その大劇場の様子は彼女達が思っていたような、歓声に溢れたものではなく、ただ何処まで行っても静まり返っていた。そして観客やスタッフの代わりに置かれているのはやたらと等身の高いマネキン人形。舞台のセットのようにも見えるが、それがまた何とも言えない不気味さを醸し出す一因だった。

 

「パッと見でも20、30体くらいいるのかな……も、もしかして……急に動き出して襲ってくるとか……!?こ、怖すぎるよ……!」

「とにかく先に進みましょう。三月ちゃんの言う通り、決して居心地の良い場所とは言えないわ」

「な、なのか……後ろ後ろ……」

「きゃぁぁっ!?!?……って、何にもいないじゃん!!」

 

 そうして彼女達は廊下を進んでいくが、やはりどこもかしこも人形だらけ。「もしかしてウチら、場所間違えたのかな……?」なんてなのかが疑ったその時、「『お待たせしました、星穹列車の皆さん』」とサンデーの声が響いた。

 

「『改めて、このピノコニー大劇場、「調和セレモニー」の舞台で皆さんと相見えること、光栄に思います。ですが、その前にこのアスデナの伝統に則り、ある3つの幕前劇を皆さんに楽しんでいただこうかと』」

「おっ、良いおもてなし精神じゃん。オリンピック誘致できるよ」

「またこの子変なこと言ってる……」

「その劇に他意はないのね?サンデーさん」

「『ええ。ワタシは皆さんに、この劇を通じてピノコニーと星神の歴史についてより深く理解していただき、その思考と、その未来のさらなる発展を促そうと考えただけですから』」

 

 「『それでは、始めましょうか』」、サンデーの言葉と共に、ステージへと続くカーテンは上がった。

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