「サンデーがどんな奴だったか?」
合流を果たし、「黄金の刻」へと向かうために「朝露の刻」からの脱出方法を探すアベンチュリンとロビン。その最中でロビンから投げかけられた質問を、彼は聞き返し、頭の中でサンデーとのやり取りを思い出していた。
「そうだな……強情で、素直じゃなくて、神経質で、心配性で…………少しだけ、僕の古い知り合いに似てるかもしれない」
「あなたの知り合いに?」
「……ああ。もう、だいぶ昔の話にはなるけどね。守りたいもののために、自分一人で抱え込んで……それでいて、自分の弱さを人には見せまいと必死になってる……そんな、優しい人だったんだ」
「つまり、アベンチュリンさんの目には兄様が「優しい人」に映ったの?」
ロビンの言葉に、アベンチュリンは手を止めずに、少しの間考える。そして結論を出した彼は、「ああ」と静かに頷いた。
「今やってることもそうだけど、彼は自分一人が犠牲を払うことで人を幸せにしようとしてる。例えるなら、英雄が自らを生贄に捧げることで「救世」を成し遂げようとするみたいにね。半端なお人好しなんかじゃ、それだけ強く「人の不幸」を憎むことなんて出来やしない。そのために自分が一人で無限の犠牲を払わないといけないなんてなれば尚更だ。それに……これだけ
「……ふふっ、そう考えると、アベンチュリンさんと兄様も似た者同士かもしれないわね」
「……そう、かもね。案外僕達は馬が合うのかもしれない。もちろん、この夢が終わったらの話だけど」
彼がそう答えると同時に、彼の手の中で「朝露の館」に飾られた「黄金の刻」を模した箱庭、その門である「ガリバーアーチ」が組み上がる。今回は止めるレイシオもいないため、アベンチュリンが「あんなこといいな、できたらいいな」と口ずさんでいると、ロビンは「懐かしい歌ね」と微笑んだ。
「おや、君も世代かい?」
「ええ。晩ご飯を食べながら兄様と見ていたわ」
「そうなのかい?僕はジェイドにDVDで見せてもらって……」
そんなことを話しながら、彼等はガリバーアーチの中に飛び込む。以前サンデーに招かれた際に訪れた時とは何処か違う雰囲気に、アベンチュリンは「やっぱり、そういうことか」と小さく呟いた。
「アベンチュリンさん、これって……」
「……ああ、間違いない。この箱庭は今、「エナの夢」の中の「黄金の刻」の影響を受けてる。マクロコスモスとミクロコスモスじゃないけど……ある程度の相似性があると考えていいだろうね」
「だとしたら……アベンチュリンさん、ここのドリームメイクパズルを使えば「黄金の刻」へ道を繋げられるかもしれないわ」
「……分かった、行こう」
そして、二人は箱庭を進んでいった。
◇◇◇
「……あ、ホタルちゃん」
「どうかした?インシァン」
ホタルに抱えられたままの彼女は、何かを思いついたように声を掛ける。
「「綻び」の場所、分かったかもしれません……」
「本当に?」
「はい、「確信」といっても問題ない、かも……」
未だ消耗は激しいながらも思考を続ける彼女。ホタルは周囲に「秩序」に操られた人々がいないことを確認すると、彼女を優しくベンチへと寝かせた。
「インシァン、取り敢えずこれ、お水……」
「……ありがとうございます、ホタルちゃん。少し、落ち着きました……。……それで、「綻び」についてです」
そしてインシァンは、息を整えながらホタルにゆっくりと説明する。この「エナの夢」が「黄金の刻」の模倣品であることを再確認し、その上で、「黄金の刻」に、彼の導きによって、彼女が刻んだ傷があることを。その「綻び」を自覚するとともに「秩序」の影響から抜け出していき、少しずつ彼女の頭痛は和らいでいく。インシァンは、ベンチから身を起こした。
「……「クラークフィルムランド」、そこに「エナの夢」の致命的欠陥……「虚無」の傷痕があります」