星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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秩序、調和、開拓

 星空に歌が響く。「秩序」の楽章の中に「調和」の朗唱が。聖歌の中に人間讃歌が。未来を望む「開拓」の意志が。ピノコニーの、最初で最後の不協和音が。人々の望に望まれたその反響が、「ハルモニア聖歌隊」に対抗して彼女の歌を美しい夢の遍く地平まで届けていた。

 

「「「ロビン……アナタは何故歌うのですか?ワタシ達の望んだ楽園が、もうすぐ手に届くというのに……!」」」

「いいえ、違うわ。鳥は空の景色を見るために飛ぶんじゃない、空を飛ぶために、自分の力で飛び立つの……!」

 

 一つのスタンドマイクと共に、列車組とディエス・ドミニクス・ハレルヤが衝突するピノコニー大劇場の舞台へと降り立ったロビン。彼女は凛として彼の言葉に答える。

 

「花火、まさかあんたも……」

「ふふっ、違うよ芦毛ちゃん〜。花火は「愉悦」なんだから!今は手羽男ちゃんの「楽園」より、芦毛ちゃん達の言う「未来」の方がずっと面白そうってだけだよ〜!」

「逆に安心するね、「仮面の愚者」って」

 

 そして彼女の歌う「未来」、すなわち「開拓」の音色にその背を押され、星は帽子を手に再び立ち上がる。彼女達の反撃によって装甲を破られ、項垂れたディエス・ドミニクス・ハレルヤはゆっくりと、その声を響かせた。

 

「「「しかし、それでも……誰かが、鳥達を導く天上の星とならなければならないのです。ワタシ達でさえ、こうして分かれ、迷ってしまうのですから……」」」

 

 「「「もう、交渉は終わりました」」」、そう言い放ち、彼はその手を天に掲げる。

 

 

「「「全ての創造は終わりを告げた──」」」

 

 

「「そして無疑の七日目、子は──」」

 

 

「──星に、手を伸ばす」

 


 

 「「星の祈り子」サンデー」

 とある少年の祈りの形。彼は不幸を憎み、幸福を望み、人を愛し、友を愛し、家族を愛し、そして妹と、彼女の生きる世界を愛した。

 

 「安息の日」

 味方全体に超大量の虚数属性ダメージを与える。二回目以降はチャージ状態に入り、7ターン後に味方全体に超大量の虚数属性ダメージを与える。このダメージはターゲットの防御力を無視する。

 

 「想像の夢」

 「「星の祈り子」サンデー」はすべての属性の弱点を持たない。「「星の祈り子」サンデー」は「安息の日」状態の時、味方が行動するたびに即座に行動し、味方の付与する行動遅延効果を抵抗でき、自身が弱点撃破される時の行動順がさらに遅延する。さらに自身の靭性が1層撃破されるごとに、味方に「暗闇の中に光あれ」を付与する。

 


 

「死した星神よ、アナタに敬意を示しましょう」

 

 「永劫の祈りへの賛歌」がサンデーの背で巨大な魔法陣、あるいはヘイローのように輝く。

 

「アナタが人を作ったのではない、人がアナタを創り上げたのだと」

 

 そしてそのヘイローは彼の背から浮かび上がり、ピノコニーの星空を食い尽くさんばかりに巨大化する。

 

「さあ、再び時は訪れました」

 

 その神聖さ、今彼の持てる「秩序」の全てがそこにある。それは強烈に星達を縛り付け、動くことさえ許さない。

 

「その神の肉体を以て、我が楽園の創造を──!!」

 

 伸ばしたサンデーの手、その人差し指が、ヘイローの中から現れた「秩序(エナ)」の手の人差し指に触れようとした。まさに、その瞬間だった。

 

◇◇◇

 

「ここは……一体何処だ?」

「とぼけても無駄じゃぞ、アベンチュリン!今日の掃除当番はオマエたちなんじゃ、サボろうったってそうはいかん!この星穹列車では「働かざる者食うべからず」、じゃ!」

 

 そう言って小さいホウキでペシペシとアベンチュリンのことを叩くパム。その優しい攻撃を甘んじて受けながら「ああ、そういうことか……」と頭を抑える彼の隣で、インシァンとホタルは顔を見合わせていた。

 

「ええっと……パム?だよね。あたし達、今は星穹列車の乗員ってこと?」

「何を当たり前のことを聞いてるんじゃ!全く、そんな演技をしようと俺の目は騙せんぞ!」

 

 「ほら、早く掃除をやるんじゃ!」とパムに促され、彼女達は仕方なく列車内を掃除し始めた。

 

「ねえ、インシァン、これって……」

「そういうこと、だと思います。……パムさん、私達が列車に乗った理由、覚えてたりしますか?」

 

 インシァンが尋ねると、パムは「当たり前じゃ!車掌じゃからな!」とその大きな耳を揺らして頷く。

 

「……おお!丁度オマエたちの目的地が近づいておる!間もなく到着するぞ!」

「僕達の目的地?」

「うむ!今掃除してるところが終わったら出発じゃ!」

 

 そしてインシァンが窓拭き、ホタルが花瓶の水換え、アベンチュリンが観葉植物の水やりを終えると、パムは彼女達をラウンジ車両の真ん中に集めた。

 

「オマエたち、短い間じゃったが立派な「ナナシビト」じゃったぞ!」

「「ナナシビト」……あたし達が?」

「うむ。「開拓」とは誰しもが持つ心、例え一瞬でも同じ列車に乗ったのならナナシビトの努めを果たしたと胸を張るのじゃ!あの「愉悦(アッハ)」でさえ一時はナナシビトであったのじゃからな!」

 

 「そうと決まれば、最後に「アレ」をやるぞ!」と彼女達に輪を作らせるパム。何をするのか、と疑問を抱いた彼女達だったが、ふと、どうするべきかがその頭に浮かんだ。小っ恥ずかしさやらなんやらが同時にその頭に浮かんできたが、今はそれに目を瞑り、最後、インシァンも、ホタルも、アベンチュリンも、それを同時に口にした。

 

「「「この旅が、いつか群星に辿り着かんことを!」」」

 

◇◇◇

 

「おいおい、あのハンサムな面が台無しじゃないか!」

 

 そんな、聞き慣れた声が響く。触れようとしていた指の間には完璧な状態でチップが挟まれ、その降臨が遮られる。

 

「……!本物だ……!」

「……何故、アナタがここにいるのです……!?」

「「何故?」、はっ簡単だね、君らしくもない質問だ。「開拓」したんだよ、「エナの夢」をね」

 

 そして、状況が変わる。チップが降り注ぐ。桜吹雪が吹き荒ぶ。溶火が舞い上がる。花火は「あ、や〜っと来た〜!」とクスクス笑った。

 

「インシァン!アベンチュリン!ホタル……!」

「おまたせしました。ふふっ、案外手強かったですね」

「今度は君のために戦わせて、星」

 

 そう言ってホタルは高々とデバイスを掲げ「サム」を纏った。だがその声は相変わらずホタルのものであり、その正体の一切を隠すこと無く、全身全霊の「完全燃焼」を解放する。

 

「これで、役者は揃ったみたいね、兄様」

「ええ。……決めましょう、ロビン。「永遠」と「未来」、人の在り方を」

 

 「秩序」と「開拓」、最後の衝突が幕を開ける。ロビンは、彼の懐中時計を握り締めた。

 


 

 「開拓」の記憶:「時計屋」

 敵全体に全ての属性の弱点を付与し、味方全体の弱点撃破効率+100%。




「開拓」の記憶は裏庭とか末日の特殊バフみたいなものです
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