星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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待ち侘びた休息(その1)

「……以上37点、現実への持ち帰りオプション込みで509万6400信用ポイントとなります」

「カードでお願いします」

 

 そう言ってインシァンは店員にカードを渡し、タブレット端末に「Yingshan Ruan Mei」と滑らかな筆記体でサインした。その所作の一つ一つが少し見惚れてしまいそうなほどに洗練されていて、ホタルは「あ、そういえばインシァンって天才クラブのお嬢様だったっけ」と思い出す。そして会計を終えた彼女はアクセやらコートやらが詰め込まれたいくつもの紙袋の内、半分くらいをホタルの方へ手渡した。

 

「どうぞ、こっちがホタルちゃんの選んだやつです」

「うん、ありがと。これでお土産は全部、かな」

 

 「一応確認だけ」とホタルとインシァンは紙袋の中身を覗く。カフカのためのドレス、コート、アクセ、化粧品、刃用のキッチン用品、調理器具諸々、銀狼に頼まれたゲーミングな電子パーツの山……流石はピノコニー随一の規模を誇るオーディ・ショッピングセンター、これだけ別ジャンルの商品でもいとも簡単に揃ってしまう。そしてこれでお土産は十分だと判断した二人は両手いっぱいの荷物をそのまま配送の方へ持っていくと、近くのベンチで一息ついた。

 

「やっぱりインシァンお金あるね……あたし、ピノコニー来たばっかの時に使いすぎちゃって……」

「お母様からのお小遣いが貯まり過ぎていただけです。帰ったら折半ですからね、ホタルちゃん」

「もちろん。……はあ、カンパニーもあたしに100億なんて懸賞金かけるくらいだったら1億くらいくれないかな……ダメ元でアベンチュリンさんに頼んでみない?」

「カンパニーに入ったら、なくはない話かもしれませんけど……いえ、身売りして1億では少し割に合わないでしょうか……」

「うーん、だね。しかもカンパニーに就職したらカフカもお小遣いくれなくなっちゃう」

「ふふっ、でしたら、やっぱりこの話は無しということで」

 

 「しょうがないかぁ」と紙コップに入ったメープルシロップ味のスラーダを飲みながら呟くホタル。時計を見ると、調和セレモニーまではまだ時間がある。「次はどこ行こっか?」と彼女が尋ねると、インシァンは5段積みのアイスクリームを頬張りながら「だったら、ホタルちゃんの服を探しませんか?」と提案した。

 

「え?あたしの服?」

「星ちゃんにネックレスを貰ったんでしょう?それに合う服を一緒に探したいんです。ええっと、だから……私からの、ホタルちゃんへのお祝いみたいなものなので、プレゼントさせてもらえませんか?」

「プレゼント……分かった、良いよ。でも、あたしにも選ばせてね、インシァンの服。もちろんお金は出すから」

「交換、ですか?良いですよ。一度やってみたかったんです」

「じゃ、決まりだね。……ふふっ、帰ったらカフカと銀狼に自慢しないと……」

 

 そして彼女達が入ったのはオーディ・ショッピングセンターからは少し離れた、先程よりは少し顧客層が若めのブティック。店員もパリッとスーツを着こなしたキャリアウーマンというよりはストリートファッションなどに近い、流行のファッションに身を包んだ最近の若者といった感じ。二人が店に入るなり、「いらっしゃいませ~!」という店員の明るい声が響いた。

 

「本日は何をお求めですか?」

「あの、お互いに似合う服を探してるんですけど……」

「かしこまりました!どうぞごゆっくり!」

 

 察しの良い店員は(あ、これ口出すべきな感じじゃないな)とそれ以上何を言うまでもなくスッと彼女達の前を去っていく。そんな服屋の店員としては珍しいほどの配慮はつゆ知らず、広いブティックの中を歩いていた。

 

「……あ!じゃあさ、インシァン。今から30分後、相手に着てほしい洋服を持ってもう一回集合するっていうのはどう?」

「コーデバトル、みたいなやつですか?……はい、悪くありませんね。私も、ああいうのは少し興味がありましたから」

「オッケー。じゃあ、また後でね」

 

 そう言って二人は別れ、相手に似合うであろうファッションを求めてブティック内を冒険し始めた。

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