星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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多分あと2話くらいやります、里帰り


インシァンの里帰り(その3)

「はぁ〜、やっと銀狼に勝てた〜!」

「一回まぐれが起きただけ。まだ通算では私が圧倒的に勝ち越してる」

「お待たせしました、お母様」

 

 夕飯の支度が出来たとルアンに呼ばれた彼女達。丁度ゲームの決着がついたところで、タイミング的にもまさにベストといったところ。やって来たインシァン達に彼女は「楽しそうな声が漏れていましたよ」と微笑む。

 ルアン宅のダイニングは半屋外のテラスのようになっていて、目の前には彼女が手塩にかけて作り上げた、清流を中心とした大庭園が広がっている。日が沈んだ今は静かな水面に大きな月が映っていて、ホタルは思わず「綺麗……」と言葉を漏らすと、ルアンは「そう言っていただけて何よりです」と満足そうに言った。

 

「お母様、何か手伝うこととかありますか?」

「そう、ですね……ああ、あの子達にご飯をあげてきてもらえますか?コーンフレークが棚に入っていると思うので、一匹30グラムほど」

「ルアンさん、あたし達も何かやろっか?」

「でしたら、ホタルちゃんは庭の水で冷やしてあるスイカを取ってきてください。銀狼ちゃんは冷蔵庫から飲み物を。麦茶もコーラも、色々と用意してあるので、好きなのをお願いします」

「オッケー」

 

 そしてインシァンはルアンに言われた通りに創造物達のご飯を用意した。棚から業務用と思わしき10kg入りのメープルシロップ味コーンフレークを取り出すと、ご飯の時間だと気がついたのか、創造物達がぴょんぴょんと彼女の足元へ集まってくる。その数はおおよそ十何匹。

 

「ふふっ、待て、ですよ。ちゃんと全員分ありますから」

 

 彼女はルアンに言われた通り、創造物達の分をまとめて大皿に盛る。食べるのが早い子、先に自分の分を取り分ける子、少食で他の子に譲ってあげる子……個性豊かなその様子を眺めてから、彼女はダイニングの方へと戻った。

 

「ピノコニーはどうでしたか?」

「色々あったけど……うん、すごく楽しかったよ」

「聞いてよルアン・メェイ、ホタルったら帰ってきてからずっとスラーダのCMソングを歌ってるの」

「ああ、それなら私も知っていますよ」

 

 「飲もうスラーダ、素敵な夢へ〜……」とすき焼きを取り分けながら口ずさむルアン・メェイ。「ピノコニーの話ですか?」と創造物達にご飯をあげて、食卓に戻ってきたインシァンが尋ねると、彼女は楽しげに頷いた。

 

「そうそう、私も以前……インシァンが幼い頃、ピノコニーへの旅行を計画していたことがあったんです。少し興味があったお店が、ピノコニー限定の梅スラーダ味を発売するという噂を聞いたので」

「へえ、そうだったんだ?」

「はい。結局別の伝手で手に入れる事ができたので、ピノコニーに行くことはありませんでしたが。ふふっ、ちょうど、インシァンが買ってきてくれたものと同じお店なんですよ」

「そう、なんですか?」

「あはは、血は争えないってやつだね」

 

 そして取り分け終えた皿と艶のある白米を盛り付けた御椀を並べ終えると、彼女達は「いただきます」と揃って手を合わせた。

 

「思う存分食べてくださいね。おかわりも、沢山用意してありますので」

「もちろんです。お母様のご飯、楽しみにしてましたから」

 

 すき焼きは食べ盛りの彼女達に合わせて肉山盛りの特別仕様。100g4000信用ポイント以上の超高級A5黒毛牛を全く惜しみなく2kg以上も用意しているところからルアンがどれだけ今日を楽しみにしていたかよく分かる。椎茸や春菊、白菜も彼女なども直売所まで赴いて手に入れたブランド品。食べている彼女達が思っている数倍の値段が掛かったハイレートすき焼きなのだ。

 

「このご飯美味しい。これ普通の炊飯器じゃないよね?」

「正解です、銀狼ちゃん。実は、今日のご飯は釜戸で炊いてみたんですよ」

「あ、そう言われてみれば……」

「インシァン、たまご取ってもらって良い?」

「はい、どうぞ」

 

 旅の疲れもあったのか、次々にすき焼きを口に運んでいくインシァン達。一時間も立つ頃には鍋はおかわりも含めて空になっていて、彼女達が「ごちそうさまでした」と手を合わせると、ルアンは嬉しそうに「お粗末様でした」と微笑んだ。

 

「そしたら……ああ、お風呂に入るなら、その間にスイカを切っておきますよ」

「え、ルアンさんも一緒に入ろうよ」

「そうそう、久々に愛娘が帰ってきたんだから。でしょ?インシァン」

「そう、ですね。今回はだいぶ間隔も空いてしまいましたし……」

 

 「駄目ですか?お母様」と少し照れながらも尋ねるインシァン。ルアンはその頭を撫でながら「分かりました」と笑った。

 

「でしたら、少し待っていてください。少し準備をしてきますから」

 

 彼女は鍋を流しに置いてから自室に向かい、インシァン達も寝間着を取りに部屋へと戻る。丁度「お風呂が沸きました」と自動音声が鳴った。

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