星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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八日目の旅立ち

 かくて一つの幕が下り、最後の荷は下ろされた。

 彼の手に残った旅の供は、一冊の日記帳と懐中時計。

 二度とその手から溢さぬよう、彼は確かにそれを握った。

 

「……どうやら、決着はついたようだな」

「ええ。どのような形であれ、こうして最後に自分自身と向き合うことが出来ました。これでようやく……ワタシはこの夢の地に別れを告げることが出来ます」

 

 最後の調律を終え、ヴェルトの下へ戻ったサンデーは「これまでのご同行、心より感謝します」と彼に深々頭を下げる。

 ヴェルトは静かに頷いた。

 

「俺の方こそ貴重な経験をさせてもらった。……それで、ピノコニーを離れてどこへ向かうつもりだ?旅には目的が欠かせないだろう」

「ここまでついてきてもらったのです、隠す必要もありませんね。……実は、ピノコニーの星核について調べようと考えているんです」

「つまり、君にも知らない何かがここには隠されている、そういうことか?」

「ええ。確かに星核と調和セレモニーを利用して「秩序」を復活させようとしたのはオーク家であり、間違いなくその野望は「開拓」の手によって打ち砕かれました。ですが……ワタシには「秩序」と「調和」に何かが隠匿されているように思えるのです。もしかしたら、モントール星系の「ファミリー」も関わっているのかもしれません」

「モントール星系……「調和」の聖地か」

「はい。ですが、ピノコニーも彼らにとっては辺境の小さな領地、その管理者である「夢の主」でさえもそこに足を踏み入れ、「主」(デウム)の真意を尋ねる術はないのです。もし神さえもこれを黙認しているとすれば……「強きを以て弱きを助ける」という、その言葉までもが偽りになりかねない」

 

 そして彼は少し目を瞑って考えた後に、小さく息を吐いて、ヴェルトの方へと向き直った。

 

「ヴェルトさん、どうか覚えていて下さい。「調和」(シペ)」は無数の顔を持つ存在であり、其は星穹列車の最も頼れる盟友にも──星軌を塞ぐ、最大の障壁にもなり得るのだと」

「君の忠告に感謝しよう。だが、少なくとも今のピノコニーがその危機に陥ることはない。そうだろう?あの騒動を越えて、宴の星は「調和」(ファミリー)「存護」(カンパニー)が混ざり合う場所になった。そして「開拓」によってその門はより大きく開かれた今、いずれピノコニーは決して閉ざされることのない「自由」な夢へと変わっていく」

「「自由」……」

「ああ。それこそが俺達ナナシビトがこの星に示せる唯一の答え。それがピノコニーをより良い未来へと導く燃料になることを祈っている」

「そう……ですね。きっと列車に乗った理由はそれぞれ違うのでしょうが……それでも、星穹列車の皆さんは同じように人々を救う道を選び、迷うことなく突き進んでいる……異なった「運命」の下になければ、ワタシ達が対立することはなかったのかもしれません」

 

 サンデーがそう口にすると、ヴェルトは「それは違うな」と首を横に振った。

 

「「運命」なんて誰かが明確に定めたものじゃない。それを理由に戦う必要も、それを理由に手を取り合う必要もないんだ。大事なことはたった一つ、「今生きている人間がどうしたいか」、それだけでいい。今日同行したのも、一度君と同じ景色を見てみたいと思ったからだ」

「同じ景色……ですか?」

「ああ。こうして今話せているのも、俺にとってはとても貴重で、替えの効かない経験だ。何と言われようと──紛れもなく、君も俺の「開拓」対象の一人だからな」

 

 「開拓」、その言葉が深く心の内で反響する。

 彼はその意味を噛み締めた。

 人と歩むのはいつだって人なのだと。

 彼はゆっくりと、息を吸った。

 

「……ワタシは、アナタ達のような人間にはなれないかもしれません。ですが、もし未来が万人に等しく待つものであり、その道を進むことが英雄の特権でないのなら……それが誰もに与えられた権利なのなら──」

 

 そしてサンデーは言った。

 

「──どうかワタシも、皆さんの「開拓」の旅に加えていただけないでしょうか?」

 

◇◇◇

 

「……以上が、彼がここに来た理由だ。サンデーさんは列車に乗ることを望んでいるが、それは俺の一存で決められることではないから、皆の意見を聞かせてほしい」

 

 列車に戻ったヴェルトがそう言うなり、星は「はいはーい!!」と勢い良く手を挙げた。

 

「私大賛成!!末っ子生活も楽しいけど、そろそろ妹か弟が欲しかったんだよね!!あんたを弟にすればロビンは実質妹みたいなもんだし一石二鳥!!あ、別にこれは羽根は関係なくて、とにかく私は大賛成!!」

「わざわざ繰り返さなくても良いよ……っていうか原作だと断る選択肢もあるくらい悩むパートじゃないの……?」

「は?悩むわけないじゃん。倒した相手が仲間になるとかあるあるでしょ?獣王クロコダインとか」

「例えが古すぎるよ……あ、ウチも賛成!ここに来たってことは反省したんだろうし、何よりヨウおじちゃんが連れてきたってことは大丈夫でしょ!」

「そうね、私もヴェルトの判断を信じるわ。列車は旅立つ人を決して拒まないもの」

「皆が賛成するのなら、俺からも異論はない。もちろん、仲間に手を出すつもりなら容赦はしないがな」

「どうやら、俺が聞くまでもなかったみたいだな」

 

 相手はピノコニー編ラスボスにも関わらず一人で大歓迎ムード、なんなら「ようこそ星穹列車!」なんていつの間に用意したのかも分からない横断幕を掲げている星と、それに流されるように全体的に歓迎ムードになる列車組。

 反対されると思っていたらしいサンデーは目をパチパチしつつも「本当にありがとうございます」と深く頭を下げる。

 

「……あ、デーさんの部屋ってどうする?なんなら私の部屋超広いし来る?星穹列車と星核ハンターの合同お泊まり会御用達の超VIPルームだよ」

「あ、いえ、流石に女性の部屋というのは……というか少し話が早いような……」

「……あ!だったら資料室は?車掌さんのお手伝いしたらお布団とか用意してもらえるし、丹恒もアーカイブの整理とか手伝ってもらえるかもよ!」

「確かに、今のところはそれが一番丸い選択か」

 

 そんな感じであっという間に列車組の輪に引きずり込まれていくサンデー。

 ヴェルトはその様子を微笑ましく見守っていた。

 

◇◇◇

 

「……あ、ホタルちゃん。サンデーさんが星穹列車に乗ったみたいですよ」

「えっ嘘!!?」

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