星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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星は「ルアンの娘」って聞いてちっちゃい子をイメージしてます
仕方ないですね


人と天才と神の玉座(その2)

「えっと、あんたがルアン・メェイの育てた「小生命体」?」

 

 人事課を訪れた星は、テーブルの上に鎮座する顔と耳と尻尾のついたゴミ袋のような何かに話しかけた。その周囲には職員が集まり、それのことを「チーズフォンデュケーキ様!」「チーズフォンデュケーキ様!」と崇め讃えている。

 

「可愛いゴミ袋だね。まあ私の方が可愛いけど」

「おい、貴様チーズフォンデュケーキ様に何を言う?!……ああ、もしかしてチーズフォンデュケーキの言葉が分からないのか?なら大丈夫だ。こんな時の為に共感覚ビーコンを用意してあるんだ!」

 

 ゴミ袋という一般的には暴言でしかない言葉を言った星に、それの信者の一人が近づいてきた。ちなみに共感覚ビーコンというのは、簡単に言えば接種するだけで言語という過程をすっ飛ばして意思疎通が出来るというスーパー技術。そして彼の言う通りに星が共感覚ビーコンを起動すると、目の前のゴミ袋はぴょんと跳ねた。

 

「アッハハ!私は天才!天才の中の天才!」

「うっわ喋った。しかも私の声で」

「そうだよ、悪い?あなたに合わせてあげようと思って、あなたの声を借りてるの!」

「へー。まあいいや。私の方が天才だし。天才の中の天才の中の天才だよ」

「私の方が天才だもん!それにしても、今ルアン・メェイって言った?ってことはとうとうルアン・メェイもこの天才の存在に気付いたんだね!」

 

 そう言ってぴょんぴょん跳ねるゴミ袋ことチーズフォンデュケーキ。どうやらそれは星がルアン・メェイの助手であることを理解したらしい。ゴミ袋の割には賢いな、と星は思った。

 

「ねえねえ、ルアン・メェイはこの天才であるチーズフォンデュケーキ様を2つ目の成功作品として認めてくれたの?!」

「知らない」

「ふーん。でも別に良いよ!ルアン・メェイが私のことを成功した生命体だって認めてくれるまで頑張るだけだから!」

「そんなにルアン・メェイが大事?」

「うん!ルアン・メェイは確かにこの宇宙の中じゃ一人の人間でしかないけど、私にとっては私を創ってくれた世界そのものだもん!」

「そっか」

 

 そして星はそれから少し目を離すと、アスターに向けて「なんかいい感じに生命体を収容できる設備とかない?」とメッセージを送る。ちょっとした待ち時間を挟んだ後、アスターから一つの部屋と、その中央に鎮座した便器の写真が送られてきた。

 

『えっ本気?』

『そうよ』

『これは最近作られたばかりの最新鋭の収容室とそこへの転送装置なの』

『中央の装置に対象物を入れてから蓋を閉めて、スイッチを押せば一方通行で収容部まで送られるわ』

『すごい安全な仕組みなんだから』

『せっかくだし試してみて』

『ありがと』

 

 星はメッセージを閉じると、相変わらず目の前でぴょんぴょん跳ね続けているチーズフォンデュケーキに声を掛ける。

 

「ねえ、あんた、ルアン・メェイに会いたい?」

「会いたい!」

「なら私についてきて」

 

 星がそう言うと、それはぴょんと星の腕の中に収まった。それを崇め讃えていた信者達はその様子を見て「チーズフォンデュケーキ様が彼女のことを認めなさったのだ!」と再び騒ぎ立てるが、彼女はそれをガン無視して部屋を出て、アスターから送られた座標まで向かった。

 

「そういえば、あんた「インシァン」って知ってる?」

「「インシァン」……ううん、知らない。まさか天才の中の天才である私にも知らないものがあるなんて」

「そっか。まあ天才の中の天才の中の天才であるこの銀河打者にさえまだまだ知らないものは多いからね」

 

 そして転送装置の前まで辿り着くと、それは「ここに入ればルアン・メェイのとこまで行けるの?」と星に尋ねた。彼女は首を縦に振った。

 

「あなた、また私に会いに来てくれる?」

「良いよ。だいたい暇だしね」

「分かった。じゃあね!」

 

 少し転送装置よりも大きかったそれを押し込み、星が蓋を閉めてスイッチを入れると、転送装置は水が流れるような音と共にそれをどこかへ送り込んだ。そして、それと同時に彼女からのメッセージが星の端末に送られた。

 

『助手さん、邪魔をしたのなら申し訳ありません』

『一度戻ってきてもらえますか』

『緊急事態が起こりました』

『あなたの助けが必要です』

 

 そのメッセージと共に送られてきた座標が示しているのはヘルタのオフィス。星は急いで向かった。

 

◇◇◇

 

「来てくれたのですね、星」

「うん。丁度流し終わったよ」

 

 そう言ってサムズアップする星に、ルアンは「順調でしたら何よりです」と微笑み、そして話を切り出した。

 

「実は、ヘルタが会議を始めるそうなのですが、インシァンと連絡がつかないんです。一応、本人からは「私と同じ意見と伝えておいて欲しい」と伝言を預かってはいるのですが、この期に及んで私の方が、あの子がいないと不安になってしまって」

「そうなの?ちっちゃい子なのにすごいんだね」

「私は人の感情の機微というものに疎くて、どうでもいいようなことでヘルタやスクリューガムの心を傷つけてしまうかも知れないので。もちろん、彼らは気にしたりしないでしょうが……。インシァンは、その点では私に似ないでくれて、人の心が分かる子に育ってくれましたから、このような場では私の話をサポートしてくれるんです」

「つまり、私にインシァンの代わりになってほしいってこと?」

「はい。そう多くは求めません。私の秘密を漏らさないこと、余計な質問などをしないこと、そして自分の感情を漏らさないこと……これだけです」

「超簡単だね。こんなので報酬もらっちゃっていいの?」

「ふふっ、良い返事です。それでは行きましょうか」

 

 先に歩いていくルアンの後を星はついて行く。そして会議室に入ると、そこではすでにヘルタとスクリューガムが待っていた。

 

「あ、ルアン・メェイ。やっと来たんだね。というか、星も来たの?どうやら仲良くやれてるみたいだね」

「うん。現在大親友真っ最中」

「相変わらず愉快な方ですね、レディ星。論理、予想よりも早い再会になりました」

「別に呼んでないけど、歓迎はしてあげる。天才クラブが3人も同じ部屋に集まるなんて、こんな歴史的瞬間そうそう見れないんだから。インシァンとスティーブン・ロイドもいればよかったんだけど……というか、インシァンは来てるはずだよね?今回はあの子の好きそうな話だと思ったんだけど」

 

 ヘルタが尋ねると、ルアンは「どうやら、気の向くままに宇宙ステーションを回っているみたいです」と答える。ヘルタは「あの子、最近ますますあなたに似てきたよね」とため息を吐いた。

 

「ま、良いよ。それよりも、今は二度とないかもしれないこの瞬間を目に焼き付けて」

「肯定:私達の交流は常に模擬宇宙を中心としています。今回も、それが変わることはないでしょう。活発な議論を楽しみにしています」

「いぇあ!」

 

 フェス会場のように右手を突き上げた星。そしてヘルタはそれを華麗にスルーすると、単刀直入に切り出した。

 

「結論から言うね。……模擬宇宙の仲間を、もう一人増やしたいの」




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