「いや〜!歌った歌った〜!」
夜も深まってきた午後11時。
たこ焼きやら焼肉やらもだいぶ少なくなってきた中、なのかはビッグパムぬいぐるみに突っ伏した。
「ねえ星、お風呂入ってもいい?汗かいちゃったからウチ一回リセットしたいんだけど」
「んじゃ私も入ろ。ホタル達どうする?」
「んー、どうする?インシァン、銀狼」
「そう、ですね、折角なら混ぜてもらいましょうか」
「私もリセットかなー」
「花火も花火も〜!」
「ふふっ、仲間外れはナシよ?」
続々と参戦を表明する女性陣に驚きながら、隣で星リクエストのポップコーンを焼く丹恒に「そんな大所帯でも大丈夫なんて、随分と大きなお風呂だね」なんて呟くアベンチュリン。
「まあ、決して無理な話ではないな」と丹恒は頷いた。
「おや、もしかして……君やサンデーも普段からここのお風呂を借りてるのかい?」
「いや、俺達はもっぱら雲吟の術だ。お前も一風呂浴びたいのなら後でまとめてだな」
「うんぎん……ああ、星核ちゃんが話してたやつか!それは良いね、ぜひお願いするよ」
「えー!私もそっちが良いんだけど!」
「ちょっと星!?あんた見た目だけは良いんだからそういうのやめときなって!」
その場で脱ぎ始めた星を慌てて止めるなのかに、顔を真っ赤にしつつガン見するホタル、ロビンはそっとサンデーの目を覆う。
そしてなのかの説得に応じた星は渋々と服を脱ぎ、浴室の方へと消えていく。
それに続いてインシァン達も風呂場へと突入し、男三人がその場に取り残された。
「ちなみに雲吟の術ってどんな感じなんだい?」
「……ウォータースライダーと洗濯機を足して2で割った、でしょうか」
◇◇◇
「ヤバいヤバい!!助けて丹恒!!」
突如として浴室の扉が開き、なのかと思わしき声と泡まみれの腕が飛び出してきた。
丹恒は目隠しをしながら「何があった?」と尋ね、ついでにサンデーとアベンチュリンは素晴らしいコンビネーションで互いの目を塞ぐ。
配慮バッチリな男達である。
「せっかくなら泡風呂とかやろうってみんなでシャンプーとかボディソープとかぶち撒けてたんだけどさ、やり過ぎちゃってお風呂場全部泡で埋まっちゃったの!」
「お前達は一体何をやっているんだ……」
「でもでも!悪いのはウチだけじゃないんだから!一番泡立つ配合見つけたのはインシァンだし、一番撒いてたのなんてロビンだよ!?」
「兄様も後でやってみて!すごく楽しいわよ!」
「愚者よ、ロビンを騙らないでください……!」
「手羽男ちゃん、それ花火じゃないよ?」
そうこう言っているうちに風呂場のあわあわもこもこは一層増していき、今にもリビングまではみ出さんばかりになっている。
丹恒はため息を吐いた。
「……それで、俺は何をすれば良いんだ?」
「ほら、あれやって!「蒼龍、世を灌がん」って!もう蛇口から出てくるのも全部泡立っちゃってるの!」
「全く……お前達はもう少し加減というものを知った方が良い」
そうは言いながらもいつもの構えを取り、風呂場をまるごと洗い流せるほどの水を渦巻かせる丹恒。
そして彼が水流を解き放った瞬間、あわあわな風呂場は一瞬で洗剤ちょい多めの洗濯機へと成り果てた。
タイミングよく閉められた扉によって良い感じに密閉された空間からは遊園地のアトラクションにも似た歓声が響き、サンデーとアベンチュリンは少し羨ましそうにそっちの方向を眺めている。
「あの、丹恒さん……」
「ああ、お前達にも後でやってやる」
それから1分ほど。
流石に洗い流せただろうと丹恒が雲吟の術を解除すると、再び風呂場の扉が開き、今度は銀狼、インシァン、そして星の3つの頭がひょこっと飛び出してくる。
「どうした、星。何か問題でもあったか?」
「丹恒、今のもう一回!」
「……仕方ない」
丹恒は再び雲吟の術を放った。
◇◇◇
「いやぁ、あれはすごいね。癖になりそうだ」
「はい。とても……楽しませてもらいました」
めちゃくちゃ楽しそうな顔で客室車両のシャワールームから帰還した男子三人組。
その間に先程までたこ焼きやら焼肉やらを乗せていたテーブルはガっと端の方に寄せられ、代わりに多分人数分あるかもしれないし、ないかもしれないくらいの寝袋がバーっと敷かれている。
そしてパジャマに着替えた女子組は余り物を明日の朝ご飯に回し、今度はお好みの容器にアイスやらフルーツやらホイップクリームやらを詰め込んでスイーツパラダイスに興じているところだった。
「いえ、これだけは譲れません。あんみつ、和風パフェには圧倒的につぶあん、これは揺るぎようのない世界の真実です」
「嘘、絶対こしあんだって!あの滑らかさが良いんじゃん!」
「アタシもそう思うな……♭」
「だよね……って、アンタの出番はまだ先じゃない?」
「あら、おかえりなさい、兄様達」
新たに出された折りたたみの大きなテーブルの上にはインシァンの買い込んできた常識ではあり得ない量の大量のお菓子の数々。
当然その中にはサンデーの好物であるプリンもバッチリ用意されている。
彼は「失礼します」と空き容器を受け取り、少し遠慮がちにしながらもプッチンプリンをプッチンプッチンと器に盛り、その上にたっぷりとホイップを盛り付けていく。
「意外だな……」と少し驚いた様子のアベンチュリンに「兄様、昔から甘い物には目が無いの」とロビンはクスッと笑った。
「ねえねえインシァン、練乳一気飲みとか行ける?」
「見たいですか?ふふっ、良いですよ」
「良くはないでしょ」
「あ、銀狼のパフェくまさんみたいになってる!」
時計の針は12を回ったが、まだまだ彼女達に眠気は訪れない。
「素晴らしいものだな、若さというのは」
「ええ、全くね」
パーティ車両の1階で騒ぐ声を聞いていた2人は、シャラップお手製カクテルの入ったグラスを、コツンと打ち合わせた。