星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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永夜:「運命の深淵」ヤヌサポリス

「ここがヤヌサポリス……星ちゃんと丹恒くんが、オンパロスへと迷い込んだ場所……」

 

 辺りを見回し、アーロディッタは静かに呟く。

 そこには廃墟と化した神殿の群れと、果てしない夜空が広がっていた。

 

「ごめんね、みんな。「百界門」で行けるのはここまで。今オロニクスがいる神殿は、捨てられてからもう長い時間が経ってるけれど、まだ「歳月」の司祭達が張った結界が周りに残ってるから、「門と道」(ヤーヌス)の力じゃこの辺りが限界なの」

「いえ、ありがとうございます、トリビー様」

「頑張ってね、キャスちゃん」

 

 そしてトリビーは「ライアちゃんを手伝わないといけないから」と星達に「門と道」の司祭であることを示す石符を預け、そして「あなたたちにケファレの祝福がありますように!」という祝言を残してオクヘイマへと引き返す。

 5人は改めて互いの顔を見た。

 

「これで、ここにいるのは私達だけになったってこと?」

「そうなるんですかね。……取り敢えず、落ち着いて、それでいて急ぎましょう。どれだけの時間が残ってるか……モーディスくんに全てを押し付けるわけにはいきません」

「ああ。それに僕達の行動にはオクヘイマの全市民……そして「火を追う旅」の命運が懸かってるんだ」

 

 ファイノンの言葉に4人もその首を縦に振る。

 それから彼らは朽ち果てた神殿へと目をやった。

 目標はかつてのヤヌサポリスの入口でもあった「万路の門」、その奥に鎮座する「運命の三相殿」。

 「歳月」のタイタン、オロニクスの力を借りるべく、彼らは歩き出した。

 

◇◇◇

 

「────、────?」

 

 破壊された神殿に足を踏み入れると、形容し難い囁き声のようなものが辺りを満たす。

 それは奥に進むにつれて大きくなり、それと共に突如として現れた柱が道を塞ぐ、道のはずが行き止まりに変わるなど、まるで彼女達を拒むかのような、不安定さに満たされた神殿。

 キャストリスは「もしかして……」と呟いた。

 

「分かるのか?キャストリス」

「はい。あれは多分、オロニクスの話し声です。……今度は、少し集中して聞いてみます」

 

 そう言って彼女が目を瞑ると、再び自然音を混ぜ込んだような「歳月」の声が響いた。

 

「……「愚かで狡猾な人の子よ、我が身に迫る災厄も省みず、まだ余の安寧を侵すというのか?」」

「嘘、罫線しか書いてないのになんで読めるの?もしかしてこんにゃくとか食べてる?」

「キャストリスさんはタイタンの言葉が分かるんだよ、相棒。ヒントになるかもしれない、キャストリスさん、もう少し試してもらっても良いかな?」

 

 ファイノンが言うと、キャストリスは「かしこまりました」と頷く。

 そして再び、耳を澄ませた彼女の下に神は語りかけた。

 

「……「留まれ……時空の狭間で永劫に混迷せよ……」」

「「拒絶」、「恐怖」、「憤慨」、「葛藤」……キャストリスちゃん、もしかしたら、オロニクス自身も感情の収拾がついてないのかもです」

「さっきから突然神殿の空間が乱れてるのもそれを現してるんだろう。相棒、ここから先は君の「祝言」の力が必要になりそうだ。頼んでも良いかな?」

「もちろん。この銀河打者、基本的にNOは言わない主義だからね」

 

 そしてオロニクスの妨害に同じく「歳月」の力で対抗しながら、星達一行は先を急いだ。

 

◇◇◇

 

「あの門の奥に、オロニクスが……」

 

 朽ちてなお荘厳なる「万路の門」を見上げ、丹恒は呟いた。

 それはかつての活気に溢れていたヤヌサポリスの象徴であり、「門と道」のタイタン、ヤーヌスの神権の象徴でもあった。

 千年以上も前に殞落したヤーヌスは、オンパロスという世界にルールをもたらした運命の三タイタンの中でも最古の存在であり、世界に「空間」を創ったとされている。

 そしてその火種を奪い、神権を受け継いだのが当時のヤヌサポリスの聖女、トリスビアス……つまり、現在のトリビー、トリアン、トリノンだった。

 

「へぇ、ちびっこだと思ってたけど、あの子そんなにすごいんだね」

「ああ。確かに強さで言えばそう大したものじゃないかもしれない、だけど彼女はオンパロス中に「神託」をもたらした、最も称えられるべき英雄の1人なんだ。大丈夫、そんな彼女の石符があれば問題なく運命の三相殿にも入れるはずだよ」

 

 ファイノンがそう言った直後、一段と大きいオロニクスの声が響く。

 それを聞いたキャストリスは思わず目を逸らした。

 

「……ごめんなさい、今のは、何と言えばいいのか……」

「「憎悪」に「拒絶」……さっきよりも遥かに強くなってます。タイタンがこんなに強い感情を人に向けるとか……」

「どうやらそう簡単な話でもなさそうだ」

「そうだね。でも僕達は先へ進むしかないんだ」

 

 そして彼らは古びた扉へ石符をかざし、それを一気にこじ開けた。

 

◇◇◇

 

「ヘルタさん。インシァンの座標を発見しました」

 

 彼女からの一切の連絡が途絶えてから数日。

 ヌースへの再謁見を試みていたヘルタの下にスクリューガムのホロが現れ、そう告げた。

 

「感謝するね、スクリューガム。それで、あの子は無事なの?」

「結論:生命活動は継続しています。ですが普段より極めて弱い反応しか示していません。衰弱、あるいはそれに近い状態に陥っていると推測されます」

「それ……言ってる意味分かってるの?あの子を衰弱させるとか……最低でも使令の1人や2人が関わってくるよ。……それで、肝心の居場所は?」

 

 ヘルタが尋ねると、スクリューガムは少しの間をおいて告げた。

 

「……「永遠の地」、オンパロス。星穹列車の次の目的地です」

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