星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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たまにCVを考えて遊んでます
悠木碧さんとかも良さげ


彼女の痛み

「────、────!」

 

 「近づくな、入ってくるな──!」、オロニクスのどこか幼気な叫びが木霊する中、星達は先へ進む。

 オロニクスの感情の昂り、それに呼応して混沌とする空間に「オロニクスの祝言」で対処しつつ、部屋から部屋へと急ぐ彼女達。

 そして閉ざされた大きな扉の前で一際大きな叫びが響いた時、ファイノンはそれに応えた。

 

「歳月」(オロニクス)よ、この声はあなたのものなんだな!?確かにあなたの言葉は間違っていない──いずれその火種も、僕達が手にする時が必ず来る!……だがあなたの協力がなければ、あなた達が創り上げたこの世界が悲しみや滅び──果てしない暗闇に覆われてしまう!!どうか僕達に力を貸してほしい!!」

 

 そんな力強い言葉とともに、ファイノンはトリビーから預かったヤーヌスの石符を高々と掲げる。

 それを見たであろうオロニクスは怒るでも悲しむでもなく、打って変わって静かに告げた。

 「ならば来るが良い。汝らに我が試練を越えることは出来ぬ」と。

 そして大扉が開くと同時に彼らの前に姿を現したのは、朽ち果ててなお巨山の如くそびえる天秤だった。

 

「……!これ、まさか……」

「知ってるのか?アーロディッタ」

「あ、はい。「公正たる天秤」って言うんです。ヤーヌスに次ぐ運命の三タイタンの二柱目、「法」のタイタン、タレンタムの象徴。万理万物に絶対的な価値を与え、それを計るという「法」の神権そのもの……」

「既にタレンタムは殞落し、その火種も返還されましたが……今、その座を継いだ黄金裔は行方不明になっているそうです」

「だが、世界の法則はそう乱れてはいない。その半神もどこかで己の使命を果たしてるんだろうね」

 

 タレンタムと「法」の説明の後、部屋を捜索し始める5人だったが、「公正たる天秤」を除いてめぼしい手がかりは見つからない。

 彼らが悩んでいると、再びオロニクスが囁いた。

 

「今度は何?キャストリス」

「……「汝らに姉上の意思が分かるはずはない……大人しくここを出ていけ……」」

「姉上ってどういうこと?擬人化?」

「それに近いかもしれません。運命の三タイタンの関係はよく「姉妹」に例えられます。上から、ヤーヌス、タレンタム、そして末娘がオロニクスなのだと」

「じゃあ人間ってオロニクスにとってはお姉ちゃんの敵ってこと?」

「そう、なのかもしれません……」

「「憎悪」、「葛藤」、「悲哀」……それでも、今の私達は進まないと行けないんです。火追いの旅は……神の屍の上にのみ、成り立つんですから」

 

 アーロディッタの言葉に頷き、星は再び「歳月」の力を振るう。

 オロニクスの形容し難い叫び声と共に、「公正たる天秤」は在りし日の姿を取り戻した。

 

「……「痛い……痛い……!!」」

「ごめんねオロニクス、もう少しだけ耐えて……」

「ああ、これで天秤が直った。後は隠された謎を解き明かすだけだ」

「「無駄だ」……ゲホッ、「汝らに天秤を傾けることは出来ぬ……」」

 

 タイタンとの共鳴による決して軽くはない負荷が伸し掛かり、思わず口を抑えて咳き込むキャストリス。

 だが彼女は「この程度大したものではない」と再びオロニクスの言葉へ耳を傾けた。

 

「……「今天秤を傾けているのはオンパロスの運命そのもの……運命を越えるのであれば、世界の重みを凌ぐ何かを見つけ出すが良い」」

「オンパロスの運命って、この世界そのものじゃないですか……!?」

「この神殿には重りに使えそうなものもあるけど、多分それじゃあオロニクスの思うツボだろうね」

「ああ。これはタイタンとの知恵比べだ」

 

 そして丹恒の提案で彼らはそれぞれの持ち物を確認し、突破口を探し始める。

 ファイノンが振り続けてきた剣、200年ほど前にアグライアからアーロディッタへ送られた黄金のナイフ、キャストリスの日記帳……どれも彼らにとってかけがえのないものではあるが、世界より重いと断言できるものではない。

 そんな中、丹恒はとあるものの存在に気がついた。

 

「……星、あれを出してもらえるか?」

「あれ?」

「ああ。三月のカメラだ。確かにオンパロスの存在であるタイタンやそこに住む人々にとって「世界」はあまりにも重い分銅だろう。だが、彼らにも想像できないような……天外から来た俺達ならば話は変わる。俺達にとって何よりも大切なこと……それはこの旅そのもの、そしてそれを共にする「仲間」なんだ」

 

 そう言って丹恒は受け取ったなのかのカメラをそっと天秤の右皿へ乗せる。

 次の瞬間、「公正たる天秤」は荘厳な装飾の重ねられた「世界」の乗った左皿を跳ね上げ、小さなパステルカラーのカメラの乗った右皿を深く沈めた。

 

「……!扉が開きました……!」

「ああ、先へ進もう」

「あの……星ちゃん、その映写ストーン……カメラって言うんですか?」

「そうだよ、オンパロスの外ではそう呼んでる。良かったら中身も見る?」

「え、良いんですか?」

 

 「もちろん」とそれをアーロディッタへ見せながら慣れた手つきで操作する星。

 だが、彼女がアルバムを開いたその瞬間、アーロディッタはその目を大きく見開き、過呼吸気味の口を手で押さえた。

 

「ここが宇宙ステーション「ヘルタ」、ピノコニーに……って、どうしたのアーロディッタ!?」

「ケホッ……ングッ……気に、しないでください……ちょっと、オロニクスの感情に当てられちゃったのかも……ゲホッ、なので……先、行ってて……」

 

 少し休んだら追いかける、と伝えて星達に先を急ぐように言うアーロディッタ。

 「無理はしないでくれ、アーロディッタ」というファイノンの言葉に頷いて彼らを送り出した後、彼女はその場に、力の抜けた様子で崩れ落ちた。

 


 

「……知ってる……?私は、あの星、あの星空……全部、知ってる……の……?」

 

 考えるほど、鈍い痛みが頭を包む。

 目を逸らしていた自らの中の空白が、淡々と牙を剥くかのよう。

 

「宇宙ステーション「ヘルタ」」

 

 知っている。

 

「ヤリーロ-Ⅵ」

 

 知っている。

 

「仙舟「羅浮」」

 

 知っている。

 

「ピノコニー」

 

 知っている。

 

「私は……」

 

 オクヘイマ一のラプティス。

 

「私は……」

 

 アグライアに救われた黄金裔。

 

「私、は……?」

 

 ■■■■■■「■■」。

 

 ■■■・■■■の一人娘。

 

「……私、は」

 

 「■■」。

 

 「■■」。

 

 「■■」。

 

「……誰?」

 

 ■■■■■・■■■・■■■。

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