「……!良かった、無事だったんだね、アーロディッタ!」
「はい。迷惑かけちゃってごめんなさい」
「大丈夫さ。……それじゃあ、オロニクスとご対面と行こうか」
少し遅れてアーロディッタが合流し、彼らは運命の三相殿、その最奥の扉を開く。
扉の先の冷たい空気がどっと流れ込み、それはまるで脳に溶け込んで記憶をかき乱すかのようだった。
「────」
「出ていけ」、オロニクスはそう冷たく告げるが、彼らは屈することなく先へ進む。
「頼む、オロニクス……このままではいずれ人類やタイタン諸共世界が滅び、暗闇の狂気に陥ってしまう……だから、僕達と共に滅びの運命に抗って欲しいんだ!!」
そんな言葉と共に扉を開けたファイノン。
扉の先には広大な暗闇が広がり、その果てには氷の結晶のような、恐ろしく神秘的な淡い青白色の光が煌めいていた。
「彼女が……オロニクス……?」
アーロディッタが呟くと、オロニクスはそれに答えるように光を放つ。
「これが本来のタイタンの姿なのか……」
「はい。理性を持ち、正しく君臨するタイタンの姿は……このように、それに相応しい威厳を放っているものなのです」
「……聞いてくれ、オロニクス。暗黒の潮に飲まれ、狂気に堕ちたニカドリーは今や天父ケファレや彼が守るオクヘイマを「紛争」の誇りから大きく外れた企みによって破壊しようとしているんだ。ニカドリーの過去を暴き、奴の陰謀を食い止めるためには……どうしても「歳月」の力が必要なんだ!」
「──あんた達が滅ぶ?それが何だって言うの?」
ファイノンの声に応えたのか、再びオロニクスの囁きが響く。
しかしそれは先程までの形容し難い響きなどではなく、どこか幼さを残した少女のような声だった。
「むしろオクヘイマごと黄金裔が死んでくれるなら清々するわ!そうでしょ?私からタレンタムもヤーヌスも奪って……まだそれでも足りないっていうの?!もういい、勝手に滅んでなさいよ!力なら今まで貸してあげた!そこの灰色の髪の女の子だって、ここに来るまで散々使ってたじゃない!これ以上なんて……そんなの私の知ったことじゃない!!早く帰って!!ありったけの神の血で汚れたあんた達の顔なんて二度と見たくない!!」
必死な声色で捲し立てるオロニクス。
しかしそれでも引くわけにはいかないファイノンも決死の思いで食い下がる中、パシャっという軽快なシャッター音が1つ響いた。
「……星、写真を撮るにしても今じゃないだろう……」
「あ、ごめん。つい神秘的だったから……」
「ママ……?今の音、ママの……?」
なのかのカメラのシャッター音に強く反応するオロニクス。
あ、出番っぽいな、と察した星が前に出ると、彼女は静かに声を掛けた。
「ママが探してたの……もしかして、あんたなの……?ママが、あんたと会いたがってる……」
「え、それマジで私?人違いとかではなく?ベクターXとか名乗ってたりしない?」
「……私についてきて。多分、懐かしいものが見れるから……」
オロニクスがそう言うと、まるで星を誘うかのように青白い光が彼女へと寄り添う。
そしてファイノン達が見守る中、星はおもむろにその光を抱き締めた。
「……さあ、あんたの過去を見に行こう……」
◇◇◇
「……?」
星が目を開くと、そこにいたのはいつかの夢で見た、ピンク色の毛並の、犬かうさぎのハーフのような謎の小動物。
彼女は目を擦りながら立ち上がった。
「またあんた?あんたがどこかへ連れてってくれるの?」
「あなた。あたし。どこ?つれてく」
拙い言葉を並べながら、その小動物は星の額へ肉球を当てる。
どうやら星の記憶を覗こうとしているようだった。
「きおく。あなたの。よむ?たのしみ」
「やっぱり私の……」
「みらい?かこ。めくる。ひみつ……」
そう言って、まるで本のページを捲るかのように動く肉球。
次の瞬間、彼女は見慣れた列車の中に立っていた。
「……あれ、帰って、きた……?」
そして、それを出迎えるように誰かが声を掛けた。
「ふふっ、おかえりなさい、星ちゃん」
酷く見知った