決して、彼女の言葉を忘れぬよう。
強く、強く、心に刻み込む。
忘れちゃいけない、忘れたくない。
もう、これ以上、何も忘れたくない。
そう願って、星は目を開く。
「……!大丈夫か!?」
真っ先に視界に飛び込んできたのは、その肩を支える丹恒の姿だった。
彼曰く、オロニクスに連れて行かれてから数分間の間、星は魂を抜かれたかのように立ち尽くし、彼らの声に応えることもなかったのだという。
星は丹恒、ファイノン、キャストリスと順に目をやり、それから心配そうなアーロディッタの顔を見た。
知ってる顔が見せる、まだ知らない顔。
確信できる。
彼女は紛れもなく彼女であり、決して彼女ではないと。
「大丈夫だよ。環境クラスの単体サポ爆誕って感じ」
「何言ってんのかは分かんないですけど……取り敢えず、無事ならそれでいいです、星ちゃん」
「あの……星さん、先程からふわふわと飛んでいる、この……妖精のような生き物は……?」
キャストリスが尋ねると、星も彼女が指差した方向へ視線を向ける。
そこでは夢の中で彼女と共にいたピンク色の妖精、ミュリオンが少し得意気な顔で軽やかに浮遊していた。
「強いて言うなら……オロニクスからのお使い、かな。いやまあ浮黎からのお使いっていう可能性もあるけど」
「……待て、つまりお前は今、浮黎の一瞥を受けたということか?」
丹恒の言葉に星はその首を縦に振る。
彼はにわかには信じ難いという表情をしながらも、「ブラックスワンが言っていたのはこういうことか……」と思考を巡らせる。
「丹恒、もしかして、その「浮黎」っていうのは……」
「ああ。オクヘイマへ向かう途中、天外の神々……「
「つまり、その力がこの生き物……ミュリオンということかい?」
「ミュウッ!!」
ファイノンに元気よく応えるミュリオン。
そして一応メスらしい彼女は日記帳のようなものを開きながら、たどたどしく説明する。
「たいたん、にかどりー、かこ、もやもや……きおく、あつめる。かこ、さいげん。にかどりー、みえる……!」
「……!そう、ですね。クレムノスの全盛期、まだニカドリーが狂気に陥っていなかった頃の記憶を集めれば……もしかしたら、現在に至るまでの軌跡を追えるかもしれません」
「でも……クレムノスの記憶なんてどうやって集めればいいんだ?」
「まよう、だいじょうぶ!わたし、おしえる、あなた、できる!」
「……そうだね。今はもう時間がない。オクヘイマを守り、モーディスを救うには君を頼るしかないんだ、ミュリオン」
「はい。いくら不死身だったとしても……殴られて、切られて、貫かれて……そんな痛み、受け続けるべきじゃありません。モーディスくんを、早く助けないと」
「もしミュリオンが浮黎の造物だったとしたら……その力は「歳月」を発揮できるかもしれない。……頼むぞ、ミュリオン」
「あなたたち、たすける。きっと、うまくいく!」
こうして切り札を手にした彼らはオクヘイマに戻り、クレムノス、そしてニカドリーにまつわる記憶を集め始めた。
「黄金裔……分かってるよ。あんた達も、私達も、きっと何も変わらない。私が見てる「歳月」は、いつかの「記憶」の積み重ね」
「多分、あんた達の旅は辛くて、苦しくて、酷いものだろうけど……でも、ハッピーエンドの、ロマンチックな物語ではあるんだと思う」
「そうだよね」
「……