それは紛れもなく、真なる二カドリーの帰還。
不死という欺瞞を手放し、暗夜に呑まれた戦神の誇りを取り戻す最後の儀式。
クレムノスに聳える巨剣、否、「紛争」の象徴たる「天罰の矛」は抜かれ、敬すべき敵対者へ高らかに威光を示す。
「モーディス、これが
「……ああ。今の奴は狂気に染まってもいなければ戦神の誇りを失ってもいない。オンパロスの全てに戦火を齎し、争乱の爪痕を刻んだ者──クレムノス王朝、その最後の継承者として認めよう。これより俺達は対峙するものこそ、正真正銘の「紛争」だ──!!」
過去のクレムノスにて「紛争」の再鋳造を為し、現在のクレムノスへ帰還を果たした星達。
永夜に囚われたクレムノス大闘技場の中心、金色の光に包まれた二カドリーを彼女達は見上げる。
呪われた無限の生は、誇り高き無限の刃へと変わり、そこにあるのは生命体としての本能にさえ等しいような、「目の前の標的を上回り、退ける」という強烈な意志。
闘争本能を唯一の法則とするその戦場は各々の命を燃料として燃え盛るかのようだった。
「おまたせ、ファイノン!」
「相棒!キャストリスさん!よく無事で戻ってきてくれた……!」
「いえ、ファイノン様の方も皆様無事で良かったです……」
そして再会を果たしたそのタイミングを見計らったかのように星のポケットの中でアグライアからお守り代わりに受け取っていた金糸が震える。
取り出すと、それはスピーカーのように彼女の声を響かせた。
『星ちゃん!聞こえてますか!?』
「アーロディッタ……!そっちは大丈夫!?ってかこれどういうこと!?」
『先生のディアディクティオを急ピッチで
「もとよりそのつもりだ、アーロディッタ!!」
彼女の言葉に、モーディスは力強く応える。
そして彼はアーロディッタ、星達に、ニカドリーに、そして世界に宣言するかのように、高らかに言い放った。
「我が名はメデイモス!眩き火を追うオンパロス黄金裔の一席、ゴルゴーの子、2425年の時を刻んだクレムノス王朝、その終たる者!」
「……モーディス、まさか君は──」
「我らが崇めた戦神よ!このクレムノス大闘技場で貴様から火種を奪い、俺が「紛争」の冠を戴こう!!」
「────!!」
「来い、ニカドリー!!俺は神を殺し、その血を以て神となる──!!」
黄金裔として、オンパロスの今を生きる者として、彼はとうにその覚悟を決めていた。
輝かしい明日のため、クレムノスの全て、「紛争」の全てを背負って立つことを。
ニカドリーはその覚悟を称えるかのように、あるいは試練を課すように、金色の槍を彼へ、そして1人ではない彼らへと向ける。
かくして第二次火を追う旅、その第一戦。
◇◇◇
脈を打つ。
脈を打つ。
その拍動は境界を越え、神話の内側の彼女に囁く。
それは外側の水槽にて眠り、静かに、静かにリソースを喰らう。
まるで「知恵」の絶滅者が「壊滅」を知るように、彼女はそれをそれごと喰らう。
ただ無意識に、ただ無自覚に。
そのような自分の有り様を、彼女に託して。