星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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閑話


数奇で枢機な協力者

「じゃ〜あ〜、2人ともお仕事で来たんだ〜!」

「ああ、そうだね。この立場になってからは旅行に行く時間なんてロクに取れたものじゃないんだ」

「私は……そうですね、たまに行くこともありますが、基本的には友人に連れられて。おおよそ受動的なものです」

 

 とある大仕事を終えた桜花達は、アベンチュリンの提案で、ピノコニー最高級のレストラン「ドリーミング・バタフライ」にて打ち上げを行っていた。個室の中央の回転テーブルにはそれぞれの頼んだ仙舟料理が大皿に盛られ、彼女達はそれを自らの小皿に取り分けては口に運んでいく。

 

「アベンチュリンさん、大福のお代わりを頼んでもいいですか?」

「いいとも。君達のおかげで、無事に目的は果たされたからね。ここは僕が出すから、君達も好きなものを頼んでくれ」

「あっはは〜!桜ちゃん、さっきから甘いものばっかり食べてる〜!」

「ある意味では、理にも叶ってると思いますが。この「夢」では、三大欲求というものが欠落しています。性欲、食欲、睡眠欲……それらは、夢の中で生産されることはありません。それらは、ただ、夢を訪れた者が外部から持ち込んだだけですから。睡眠欲については、持ち込むことさえ出来ません。つまりは……ああ、すいません。要約が苦手なんです。私が言いたいのは、夢の中で食事に求められるのは味だけで、そして、私が求めているのは甘味だけ、ということなんです」

「それさあ、桜ちゃん。もしかして、桜ちゃんの偏食をそれっぽく言ってるだけじゃない?」

「まあ、そうとも言えるかもしれません」

 

 そう言って桜花は大福の後続がやってくる前に残りを口に押し込み、咀嚼する。そして訪れたお代わりも、彼女は黙々と口に運び始める。甘味というのは、彼女にとって思考のための脳のリソースでありながら、一つの娯楽、趣味的側面も兼ね備えていた。故に、桜花にとってその重要度は非常に高い。どれほどかと言えば、月のカフカからの小遣いの内、およそ70%が日々の菓子類に注ぎ込まれる程度。桁で言えば6桁は下らない。厭世的なルアンに対して、比較的世間に触れる機会も少なくない彼女の選択肢は多く、スーパーの菓子コーナーやコンビニスイーツ、星間ネットワークで話題のパフェやパンケーキなどなど決して退屈しない程度には桜花のスイーツ人生は明るかった。

 

「それにしても、ツガンニヤの人ってお話が上手なだけじゃなくてストーカーまでお手の物なんだね?花火気付かなかったよ〜!」

 

 「それとも、桜ちゃんに手伝ってもらってたの?」と小籠包を冷ましながらクスクス笑う花火。アベンチュリンは少盛りの天津飯の皿を空にして答えた。

 

「いや、あれは桜花ちゃんに集合場所と時間を伝えて、僕がその通りのタイミングに現れただけさ。僕は残念ながら君達の道中にお供する暇が無かったからね」

「ふふっ、本当かな〜?……エヴィキン人(ハチミツ)は有名なんだよ?生まれつきの話し上手で、人に取り入るのが上手くて、八方美人で、詐欺師な腹黒民族!そうでしょ?孔雀ちゃん」

「訂正させてください、金魚ちゃん。遺伝的に語れるのは、エヴィキン人が平均として優れた容姿を持ちやすく、コミュニケーション能力に長けている、というところまでです。それ以外は、確固たる証拠が存在しない」

 

 杏仁豆腐を味わいながら冷静に言う桜花に、花火は「つれないなぁ桜ちゃんは」と少し残念そうにし、自らの炒飯をよそい直した。

 

「でも〜、孔雀ちゃん本人には、どれくらい当てはまってるんだろうね?」

「さあ、どうだろうね。少なくとも、僕は基本的にWin-Winになる取引しかしない主義だけど」

「そういうことを言っちゃうから疑われるんじゃないかな?やっぱりカンパニーのペットは口が減らないね〜」

「悪いね。僕は僕以外の生き方が分からないんだ。君達のように「パブ(愉悦)」の招待をありがたく受け取っていれば少しは違ったのかな?」

「二人共、少し止めてください。胡麻団子に似合う雰囲気でなくなってしまいますから」

 

 そう言うと、桜花は一つの胡麻団子を串に刺し、口に入れる。そして不思議な沈黙の中でそれをゆっくりと咀嚼し、飲み込んだ彼女は「……お待たせしました、どうぞ」と二人に再開するように促した。その様子を見た花火は、プッと吹き出した。

 

「アッハ!やっぱり桜ちゃん変なの〜!」

「……そう、でしょうか……」

「そうだよ〜!さっきだって、スパーンってしたり、ドッカーンってしたり、グッチャグチャにしたりしてたのに、ずーっと真顔で調べてるんだもん!」

「いえ、あれは……貴重なデータを取る機会だったので……」

「そんな理由なんていらないんだよ?もっと全部楽しんじゃえばいいんだから!笑いの神様もそう言ってるんだよ〜?」

「笑いの神様、か」

 

 アベンチュリンは目の前の彼女達を見て、フッと笑った。

 

「……ああ、そうだね。星核ハンターに、仮面の愚者に、十の石心が集まってあんなことをしてたんだ。きっと、笑いの神様も腹を抱えてるだろうね」

 

 そう言って、彼は席を立つ。「何?もう解散しちゃうの?」と花火が首を傾げると、アベンチュリンは頷いた。

 

「これ以上、僕の都合で君達を引き止めてしまっては申し訳ないからね。ここらで一時解散としよう。……ああ、そうだね。面倒事を手伝ってもらったんだ、僕の力が必要になったら、遠慮なく呼んでくれ。一度だったらそれに応えて見せよう」

「……あ!なら、花火からのお土産をあげるよ!」

「土産?何だい?」

「テッテレ〜!花火様からのアドバイス〜!今日の孔雀ちゃんは……ズバリ!「口の利けない人」を仲間にするとラッキーだよ〜!」

「……分かった。頭に留めておこう」

 

 「それじゃあ、失礼するよ」とアベンチュリンは一足先にレストランを去っていく。「バイバ~イ!」と花火は大袈裟に手を振り、桜花もそれに合わせて杏仁豆腐の4杯目を食べながら小さく手を振った。

 

「それじゃあ、桜ちゃんはこの後どうするの?花火は〜、もう少し孔雀ちゃんと遊ぼっかな〜」

「私ですか?私は……そう、ですね……」

 

 「もう少し、甘味をいただきましょうか」と、桜花は微笑んだ。




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ちなみに理由は言いませんが、何故かこの世界線のホタルの強化戦闘スキルは通常攻撃として扱われます
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