星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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記憶域:セカンドダイブ

「……どうやら、答えは出たようね」

 

 上機嫌で戻って来たブラックスワン。姫子は彼女の言葉に頷く。

 

「ええ。列車組はあんたに協力するわ。危険な旅には相応なガイドが必要だもの」

「ふふっ、任せてちょうだい。星穹列車の皆さんの期待を、裏切ったりはしないわ」

「それじゃあ、各自自分の部屋に戻りましょう。そして上手く行ったら、夢境ホテルのロビーに集合ね」

「なら、俺は現実に残って君達の安全を確保しよう。ファミリーに対処する必要があれば、それも俺が行っておく。構わないか?ブラックスワン」

「そう。この手で仲間を救ってみせても駄目なんて、ナナシビトの信用を得るのは難しいのね……ええ、構わないわ。私の心は、少し傷ついたけれど」

 

 少し肩を竦めてみせたブラックスワンに、ヴェルトは「すまない、「最悪の事態」に備えてだ」と軽く頭を下げた。

 

「それじゃあ、そろそろ別れましょう。「夢境の真実」を見る準備をしないとね」

「私は、あなたに同行するわ。星さん」

「良いよ。この銀河打者の冒険に同行できるなんて幸運だね」

「ふふっ、ええ、ありがたくご一緒させてもらうわ」

 

 そして姫子、なのか、ヴェルトはそれぞれの部屋へ戻っていく。星も、ブラックスワンと共に自分の部屋の方へ歩き出した。

 

「あ、そうだ。取り敢えず、助けてくれてありがと、ブラックスワン」

「気にしないで。私がやるべきことだったから。あなたはこの物語において、とても特別な存在。だからこそ、あなたの、その一挙手一投足に衆目は集まっているの」

「なるほどね」

 

 そう相槌を打った星だったが、彼女の不安のようなものを感じ取ったブラックスワンは「もしかして、あのお嬢さんのことが心配なのかしら?」と首を傾げる。星はそれに、らしくもなくしおらしく頷いた。

 

「安心して大丈夫よ。あの時開いた扉は、現実の「目覚め」にしか繋がっていない、一方通行なの。あのお嬢さんが余程強い意志で望まない限り、夢から覚めないなんてことは無いでしょうね。今頃は、ホテルのどこかで眠い瞼を擦ってるんじゃないかしら。だから、あなたも少し、肩の力を抜いて。互いの最終的な目標がどうであれ、今私達が協力するのはどちらにとってもメリットのある話なのは間違いない、違うかしら?」

「……まあ、それは……」

「ふふっ、だったらあなたも安心して、お姉さんを頼ってちょうだい」

「……分かった。そうするよ。……ところで、あんたは部屋には戻らないの?」

「ええ。メモキーパーは、ドリームプールが無くても夢に入れるの。それに、あなた達を守らないといけないなら、一緒にいるのが一番早いもの。だから、安心して眠りなさい。私は、あなたの傍にいるから」

 

 その言葉に頷き、星はドリームプールに横たわった。そして目をつむると、さっきまでは影も形もなかった眠気が彼女のことを優しく包み込む。そして意識が落ちる寸前、彼女の頭に、優しい手が触れた。

 

◇◇◇

 

「……んむぅ……あ、また……」

「おはよう……いえ、おやすみなさい、かしら。身体の調子はどう?」

 

 眠りに落ちて、夢の中で目を開いた彼女を、ブラックスワンは待っていた。そして彼女からの問いかけに、星はサムズアップして答える。

 

「大丈夫だよ。少しすっきりしてるくらい」

「そう。それは何よりだわ。もしかしたら、特別にこの夢境と相性の良い体質なのかもしれないわね。それでも、あなたは普通の人よりもその影響を受けやすいというのは間違いないわ。だから、私はあなたに付き添っているの。もし苦しくなったら、すぐに言ってちょうだい。私がそれを取り除いてあげるから」

「分かった、機会があったらね。それと、みんなは大丈夫なの?そっちの方が気になるかな」

「何も問題はないわ。実は、夢に入る前に二人にはちょっとしたお守りを渡しておいたの。それを伝えば、私はいつでも、この記憶域の中で彼女達の存在を感じることが出来るのよ」

 

 「これで、もう憂いはない?」と尋ねるブラックスワンに、星はその首を縦に振る。

 

「それじゃあ、出発しましょうか。時間は、常に私達を置き去りにしてしまうもの」

「うん、行こう」

 

 そして、彼女達は部屋を出発した。

 

◇◇◇

 

「……誰だ?」

 

 万が一の救援要請に備えながら、部屋で「クロックボーイ」のコミックを興味深そうに読んでいたヴェルト。そんな中で、誰かがその部屋のドアをノックした。そして突然の来訪者にヴェルトが警戒する中、彼はそこに足を踏み入れた。

 

「失礼する」

「君は……」

 

 そこに姿を現したのは、鍛えられた肉体に白い衣を纏った一人の男。彼は開いていた一冊の本を閉じ、ヴェルトの方を見た。

 

「僕の名前はベリタス・レイシオ。博識学会所属の学者だ」

「レイシオ……名前は目にしたことがあるな。ニュースか何かだ。第一真理大学で教鞭を執っていると聞いている」

「彼の星穹列車に名前を知られているとは、中々に光栄だな」

 

 「しかし、今の僕はカンパニー陣営の人間でもある」と彼は言う。そしてヴェルトが座るよう促して初めて、レイシオはソファに腰掛けた。

 

「それで、君は何の用でここに来たんだ?俺に用があるのか、あるいは星穹列車か……」

「僕としては、そのどちらでも大した違いはない。それよりも、早急に伝えることがあるからな」

「……分かった、聞こう」

「僕はとあるカンパニーの人間のパートナーとして、このピノコニーを訪れた。彼には、君達も会っているはずだ」

「……なるほど、アベンチュリンか。カンパニー「戦略投資部」、ダイヤモンドの下で働く「十の石心」の一人、確かにこのピノコニー争奪戦に加わるには十分な格だな」

「ああ。そして彼はそのために何人かの仲間を集めている。……結論から言おう。彼は、星核ハンターと手を組んだ」

 

 その言葉に、ヴェルトは少し驚いたような反応をする。そして彼は眼鏡の位置を直し、レイシオに尋ねた。

 

「それは「カンパニー」か?それとも彼個人か?」

「それについてはおそらく後者だろう。だが、僕も詳しいことは知らされていない」

「なら、何故君は俺の下にこの情報を持って来た?」

「それは、このピノコニーにおいて、君達星穹列車が台風の目となると踏んだからだ。彼の言う通り、ピノコニーにおいて信用に値する仲間が必要なのは事実だろう。だから、僕は星穹列車との繋がりを持っておきたい。少なくとも、君達は愚かな集団ではないからな」

 

 「以上だ、返答の必要はない。また提供できる情報があったら連絡しよう。逆もまた然りだ」、そう言ってレイシオは部屋を去った。そして彼の背中を見届け、残された連絡先を拾い上げると、ヴェルトは一本の杖と共に立ち上がる。

 

「やれやれ、少し休めると思ったんだがな」

 

 そして、彼は姫子達との連絡を取れるようにしたまま、部屋の外に繰り出した。




高評価とか感想よろしくお願いします
インシァンは今アベンチュリンとチェスしてる最中だと思います
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