星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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夢を焚べる溶火(その3)

 その白銀の駆体による、溶火を纏った徒手空拳は、小細工の一切を圧倒する。星、黄泉、ブラックスワンの三人を相手にしてもその勢いは全く劣らない。むせ返るような高熱の中、僅かに鈍る動きにも容赦無く叩き込まれる連撃。ブラックスワンの援護がありながらも、星はそれをバットで防ぐのがやっとだった。

 

「あなたは、何が目的なの?」

「話す理由も、余地もありません、メモキーパー」

 

 彼女の疑問に最低限の回答を突きつけると、それは僅かに距離を取ってエネルギーを溜め込む。

 

「私は……大海に火を点ける」

 

 そう言い放ち、その手を薙ぎ払ったその瞬間、鉄騎の胸部装甲からバツ字上に炎が吹き出し、周囲はサムによって点火された。煌々と燃え盛り、彼女達を包む溶火。先程とはまるで比べ物にならない超高熱に、星は僅かにたじろいでしまう。そして炎を挟み、サムは彼女達に告げた。

 

「現実に戻ったら、全ての人に伝えてください。あなた達の旅を終わらせたのは……」

「っ……」

「「星核ハンター」だ、と」

 

 その瞬間、サムは炎を巻き上げて飛び上がった。まるで放物線軌道を辿るように上昇する、紅蓮を纏った駆体と、それに追従する火炎弾。

 

「協定採択……」

 

 流星群かのようなそれは、瞬間瞬間と彼女達に迫りくる。そして、星が防御姿勢でバットを構えた、その瞬間だった。

 

「焦土作戦実行!!」

 

 その着弾と共に高く、激しく巻き起こる爆炎。数十メートルに届かんとするまでのその炎の渦にロビーの調度品は跡形も無く焼け消えて、「焦土作戦」の通りに辺りは更地になる。しかし、星は無傷だった。

 

「……噂通り、随分手荒な真似をするのね」

「ああ、間一髪だった」

 

 ブラックスワンのアルカナカードによる加護と、黄泉による物理的防御。二段階の装甲に守られた彼女はきゅっとその口を結び、再びバットを構え直そうとする。しかし、黄泉はそれを制した。

 

「あなたは下がっていてくれ。……ここは、私がやろう」

「立ちはだかるなら、容赦は出来ません。巡海レンジャー」

「ああ、百も承知だ」

 

 そして黄泉はその大太刀の鞘を握り、強烈にその一歩を踏み込んだ。その跳躍と共に振り抜かれる、稲妻を纏った一撃。サムは溶火を纏った拳でそれに応答する。既にその領域は、星に干渉できるものではなくなっていた。

 

「何も、話すつもりは無いか」

「依然、その余地はありません」

 

 炎を起こすサムと、雷を操る黄泉の、圧倒的速度による連撃の応酬。彼女の隙を突いてサムは星に迫るも、黄泉はその後を追い、それを防ぐ。加熱する空気と、加速していく戦闘。ブラックスワンは一枚のカードを取り出すと、優しく星にかざした。

 

「この舞台は、彼女達に譲ってあげましょう」

 

 星は、瞼を閉じた。

 

◇◇◇

 

 そして、ステンドガラスが響いたような、カランという音が鳴った。一瞬閉じた瞼を開けると、そこは打って変わって、酷く静かな空間だった。夢境ホテルのどこかだろうか、星が少し考えようとしたその瞬間、その静けさは終わりを告げた。

 

「……おや。見てくれよ、夢見がちな我らの友人がとうとうお出ましだ!」

「ええ。それにしても、中々興味深いものを見せて頂きました」

「ああ、全くだ。素晴らしいショーを見せてもらったよ。……そうだろう、マイフレンド?」

 

 彼等は、彼女を待っていたようだった。カンパニーのギャンブラーと、繁殖(タイズルス)の模造品。ここにいるはずのない彼等の姿に、星は思わず刮目する。そしてアベンチュリンは彼等の間、ソファの上に広げられたチェス盤を片付けると、星の背後の彼女へ声を掛けた。

 

「それにしてもいい仕事だったよ。お疲れ様、メモキーパー」

「約束通り、この子をあなた達の下へ連れてきたわ。これで取引完了よ」

「ブラックスワン、あんた……」

 

 そう言ってブラックスワンに鋭い視線を向ける星だったが、アベンチュリンは「おっとマイフレンド、あまり命の恩人を無下にするもんじゃない」と彼女をたしなめた。

 

「命の恩人?どういうこと?」

「どうもこうも、言葉通りの意味さ。君はこのお姉さんに救われたんだから」

「救ったって、何から?星核ハンター?でもインシァンがいるってことは逃げれてなくない?」

「今は「桜花」です。それに、あなたの周りには、サム以外にも、もう一人いたでしょう?」

 

 優しく笑いながら、自らでの思考を促す桜花。そして少しの間、沈黙と共に思考した彼女は「まさか……」と、答えに辿り着くと同時にその目を見開いた。

 

「いいねえ。そういう驚いた表情、僕大好きなんだ」

「……黄泉が、私を?」

 

 呟いた星に、桜花は「よく出来ました」と微笑んだ。やはり、ルアンの娘だと、星はその、酷く似通った顔を見て思った。




高評価とか感想よろしくお願いします
あと、インシァンの背は星くらいあります
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