星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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第二幕への間奏

 ブラックスワンが彼女を初めて目にしたのは、ホテルの宴会場だった。彼女は宴会場の片隅に佇み、まるで時の流れが違うかのような沈黙を保ちながら、一人で「夢からの目覚め」を飲んでいた。一杯、二杯、ひたすらにそれだけを飲んでいた彼女に、ブラックスワンは言った。

 

「この夢を楽しむなら……「夢からの目覚め」はおすすめしない。それは辛くて、苦くて、それでいてしつこくて、後味が悪いもの。この美しい夢に、相応しい代物とは言えないわ。もし、あなたが既にこの夢で遊び疲れていて、スラーダも飲み飽きてしまった、なんて言うのなら、話は別だけれど」

「そう、なのか?私には……どちらも違わないように思えるが……」

 

 ブラックスワンの頭には、そんな彼女の答えが小さく居座っていた。そして今、現実のホテル・レバリーにて、ブラックスワンはその客室を訪れていた。意外に簡素、シンプルな部屋だと、彼女はそう思い、「あなたの外見と同じね、黄泉さん」と呟いた。その手には、ファミリーからの招待状である一台のオルゴール。本来であれはアナイアレイトギャングが持っていたはずの物。口に出した言葉は記憶に残る、なんて話はよくあるが、彼女もそれに則っているかのように、彼女は独り言を呟きながら、一仕事に望んでいた。

 

「記憶は、一人だけのものではないの。メモキーパーがそれを覗けば、記憶は遥か過去の回歴にも、あるいは遠い未来の予言にもなり得るわ。少し工夫をすれば……死者に口を開かせることさえ、想像よりもずっと簡単に出来てしまう。「永火官邸」……あなたに出会ったことで、この宇宙の表舞台から姿を消した「壊滅」の行人達。彼等の遺言は……何かの手がかりになるかもしれない」

 

 そして、ブラックスワンはオルゴールに意識を集中し、その目を閉じる。集中と共に、空間に流れる沈黙。そしてもうしばらくの時間が流れた後に、ブラックスワンは酷く困惑した様子でその目を開いた。

 

「……何も、残っていない……?まさか、そんなことが……いえ、これが「虚無」の……?」

 

 そしてブラックスワンは再び瞼を閉じて心を落ち着かせると、「……どうやら、なりふり構っていられないようね」と、一層神経を尖らせ、オルゴールに残された記憶の残滓を拾い上げようと深く潜っていく。そして、彼女がある程度の深層に足を踏み入れた、その時だった。

 

「……っ、今のは一体……?」

 

 唐突に、彼女は現実へ引き戻される。そして再びの困惑の中、部屋の中に声が響いた。

 

「■■■■、あなた■■■は■■■、誰■■」

「これは……」

「……あなたは、誰ですか?」

 

 ブラックスワンは、僅かに遅れて、それが「記憶」の一部ではないことに気が付いた。それと同時に、その声も彼女を認識したようだった。

 

「あなたは……メモキーパーさん、ですか?ガーデン・オブ・リコレクションか……あるいは焼却人かは分かりませんが……」

「……あなたは?」

「私は……コンスタンス。アナイアレイトギャング、「永火官邸」のコンスタンスと申します。本来であれば、私達はピノコニーで出会い、一生に刻まれる時間を共にするはずだったのですが……どうやら、宴の星、その未来は、私達を歓迎はしてくれないようです。いえ、私もそれを歓迎していませんから……当然かもしれません。それに、こんなことはこの主題ではありません。私は……あなたの探し物を知っているんです……あなたは……「彼女」の、秘密が知りたいんでしょう?だから、あなたにそれを教えますから……代わりに、宴を楽しんできてください……」

「待って、あなたは何者なの……?」

「あなたが聞いた意味に答えるなら……このオルゴールに遺しておいた、応答AIのようなものです。どうか……あなたが「忘れがたい記憶」を手にできますように……」

 

 そして、部屋に響く声が消えたその瞬間、入れ替わるように部屋の固定電話が鳴り響いた。

 

◇◇◇

 

「……気分はいかがですか?」

 

 そう言って、桜花はベッドから起き上がった彼女へ声を掛けた。隠しきれない困惑を示しながらも「大丈夫」と、そう言おうとした彼女は、思わず喉に手を当てる。その表情に、僅かな喜びか、それに近いような感情が混ざった。

 

「私は大丈夫よ。身体も何ともないわ」

「少々荒療治にはなりましたが、余計な「運命」を取り除きましたから、おそらく元通りにはなっていると思います」

「ええ、どうやら……本当に、そうみたい」

 

 そして彼女は「ラー、ラー」と病室に軽やかで透き通った歌声を響かせ、自らの声が取り戻されたことを再確認すると、「あなたとは……ロビーの、カフェテリア以来ね」と微笑んだ。

 

「今……「ピノコニー」はどうなっているの?」

「それぞれがゆっくりと動き出しています。ファミリー、カンパニー、星穹列車……それに、星核ハンター(私達)も」

「あなたは……そう、そうなのね」

 

 そして彼女は静かに頷くと、決意を固めたような表情で言う。

 

「あなた達の目的、計画を教えてくれないかしら」

「……それを知って、どうするつもりですか?」

「そんなの決まっているわ。私は、あなた達と共に立ち向かう」

 

 「まさか、こんなに彼の歌姫が気丈な方だとは」と桜花は微笑み、そして答えた。

 

「……分かりました。少し、あなたの力を貸してください。……ロビンさん」




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桜花陣営:桜花、ホタル、アベンチュリン、花火、ロビン←new!!
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