「ねえ、教授!君めちゃくちゃ大きくなってるよ!いや、僕がめちゃくちゃ小さくなってるんだけど!」
「分かっているならそう騒ぐな。ここは夢境だぞ、何が起きてもおかしくない」
突如として小さくなってしまい、箱庭の中で騒いでいたアベンチュリンだったが、レイシオの言葉に「それもそうだね」と頷き、そして現状を整理して思考し始める。そして数秒の間が空き、彼はポンと手を打った。
「そうだ!いっそのこと、このままここを出るのはどうだい?そして君が隙を見て僕をサンデーの服とかポケットに入れてくれれば、そのままファミリーに潜入できる!」
「それは笑うべきか?」
「安心してよ、ちゃんと冗談だから」
そしてアベンチュリンは箱庭探索を開始する。とはいっても、その設備やら建物やらは彼がその身を持って調査した黄金の刻と変わりない。しかし、「私は産業化によって産まれたゴミです」「案内以外の全てと案内が出来ません」なんて破綻した案内システムを流しながらも、一体どこから手を付けるべきか、と軽く探索しながら悩んでいたところで彼はとあることに気づく。
「あれは……ドリームメイクパズルか?」
彼はパズルに駆け寄ってそれを確認した。角度やそのパズルの大きさから考えて、その完成形はおそらく部屋の扉。そしてアベンチュリンがそのパズルに触れると、幾つかのピースが箱庭の中に散らばった。「やれやれ、少し面倒だな」と、呆れたような仕草をした後に、アベンチュリンはレイシオに声を掛けた。
「少し良いかい、教授!」
「何か発見でもあったか?ギャンブラー」
「ああ!ドリームメイクパズルがあって、ピースを追いかけないと行けないんだけど、ここにはピンボールマシンの「台座」しかないんだ!」
「分かった、任せておけ」
アベンチュリンがみなまで言うことなく、レイシオは「すぐに戻る」とその意図を察して広間の何処かにあるであろうピンボールマシンの本体を探しに向かう。「これで、ようやく静かになるな」なんてことを言いながらも、彼は先程のアーチ探索の際にはそのような物体を見かけなかったことを思い出し、先程アーチの置いてあった部屋とは対称にあたる、未だ足を踏み入れていない部屋の方へ向かった。
案の定、ピンボールマシンの模型はその部屋の片隅に置かれていて、レイシオはため息を吐きながらそれを手に取る。
「全く……残念だな。楽しい孤独の時間というものは、あっという間に僕を置き去りにしてしまう」
そして彼は、目的を果たしたからには、と早足でアベンチュリンの下へ戻った。
「……ああ、教授!戻ってきてくれたんだね!本当に助かったよ!」
「一々騒ぐんじゃない。……念の為、少し離れていろ」
レイシオがそう忠告すると、アベンチュリンは素直に、等身大換算で数m程度、ピンボールマシンの台座から離れた。すると、天からレイシオの右手が現れ、その台座に本体をセットしていく。そして「カチッ」と嵌った音がすると、レイシオの手は消えて、代わりに使用可能なピンボールマシンがアベンチュリンの目の前に現れた。
「ありがとう、教授!ピノコニーに来て以来、一番君に感謝してるよ!」
そう言って、アベンチュリンはピンボールマシンに乗り込む。その行き先は最寄りビルの屋上。そこへ降り立ち、周囲の景色を一望した後に彼はレイシオに呼びかけた。
「レイシオ、君も一回こっちに来たらどうだい?最高に壮観な景色だ!僕を一捻りにする権利と引き換えだけどね!」
「ほう、ということは僕はその権利を行使することも出来るわけだな」
「おおっと、君もこの趣味の悪い屋敷で一生なんてのは嫌だと思ってたよ」
そんな軽口を叩きながらも、アベンチュリンは素早く散らばったパズルピースを回収していく。そして繋がったビルの屋上を一周してピースを集め終えると、彼は再びピンボールマシンに乗り込んで箱庭の大地に降り立った。目の前には、ちょうどお目当てのドリームメイクパズル。彼は集めたピースを嵌め込んでいく。
「順調か?ギャンブラー」
「そう急かさなくていいくらいにはね。それにしても、このおもちゃの町の旅ももう終わりかと思うと少し悲しくなるよ」
彼がパズルを組み上げると、その先にある鍵の掛かった扉はパズルの図面通りに開け放たれ、その先に道が切り開かれる。そしてアベンチュリンは「この話はカードテーブルで話の種にしよう」なんてことを言いながら、無事に等身大への帰還を果たした。
「やあ、ただいま、教授」
「君が無事に箱庭から出てきたと考えると少し残念な気持ちになるが、今は「おめでとう」と言っておこう」
そしてレイシオは道の向こうを指差し、彼に問いかけた。
「いよいよ、オーク家当主とのご対面だ。準備は良いな?ギャンブラー」
「……ああ、もちろん。ギャンブラーの居場所は、常にテーブルだからね」
◇◇◇
「へえ〜!ピノコニーにこんな場所があったんだ〜!」
「おもしろ〜い!」と歓声を上げる花火。顔合わせを終えたロビンはドリームリーフの人々に声を掛け、歌を聞かせ、希望を伝えている。そんな中で空を見上げ、資料を記す桜花に、花火は問いかけた。
「ねぇ〜、桜ちゃん。花火、桜ちゃんに聞きたいことがあるんだけどさ〜」
「構いませんよ。答えられる範囲であれば、ですが」
「桜ちゃんはさ、このピノコニーで「無理矢理」他の運命の力を使ってるでしょ?「記憶」で記憶域に強引に入り込んだり、「調和」であの手羽子ちゃん治したりさ〜。桜ちゃんなら分かってると思うけど〜、この宇宙で自分に合わない力を使うのってとっても疲れちゃうんだよ〜?そんなに無駄遣いして、最後まで保つのかな〜?」
ニヤニヤと問いかける花火に「さあ、どうでしょうか」と桜花は微笑み返す。
「実験、実証というのは、いつも不確定要素に溢れています。別に予想は出来ますが、予想通りでは面白くはありません。一応は、余力もある計算ですが、どうなるかはまだ分かりません。ただ、一つ言えるとすれば……」
「すれば〜?」
「……私は、その程度に創られた訳ではありませんから」
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ピノコニー編終わったらスターレイルディスコとか日曜賛歌に出てくるインシァン描きたいです