「あははっ!孔雀ちゃんダメだよ〜!そんなに「死」の匂いばっかり嗅いでたら、思わずそっちに足を引っ張られちゃうんだよ〜?」
「あ、もう手遅れだったね!」とクスクス笑う花火。桜花は対称的に「お元気そうで何よりです、アベンチュリンさん」と柔らかく、それこそ、この状況に置いては不自然に見えるほどの自然体で微笑んだ。アベンチュリンは「ああ……君達か」とその痛みが再び激しくなり、顔をしかめそうになる中でぐっと堪えて口を開く。
「ロビンが死んだ後にテレビに映っていた「代役」……やっぱり君だったんだろう?仮面の愚者。偽物とはいえ、あれだけ歌えるんなら芸能界でも大活躍だよ。今からでもどうだい?」
「ふふっ、孔雀ちゃん、冗談キツいって〜!花火、あんなに狭い舞台はとっくのとうに飽きちゃったんだけど〜?」
「まあ、こうして無事に再会できたことを喜びましょう、金魚ちゃん。アベンチュリンさんも、その様子だとあの「見立て」は当たったみたいですね?」
そう言って、桜花は血をそのまま抜いたような真っ赤な液体が満ちた瓶をカラカラと揺らす。アベンチュリンは自らの首に刻まれた商品コード、その傍らに目立たぬように残された注射痕を撫でた。
「調和の「行薬」……急拵えにはなりましたが、「予防接種」がお役に立ったのなら幸いです」
「ああ、感謝してるよ。あれがなければ、今頃僕の頭は内側からかち割られてたかもしれなかったからね」
「さあ、どうでしょうか。私がいなくても、あなた一人でピノコニーを取り戻すことは十分に可能だったと思いますが」
「もちろん、ピノコニーを取り戻す「だけ」ならそれでも良かった。でも、君達を巻き込んで「ダブルダウン」するほうが間違いなく利益が出る。どんな形であれ、ね」
そう言って、アベンチュリンは大量にデバフを上乗せされた、最悪に近いコンディションながらも不敵に笑う。しかし、そんな彼に花火は「そんなこと言ってる余裕あるのかな?」とニヤニヤ笑いながら問いかける。
「花火、出血大サービスしたでしょ?「口の利けない人を仲間にしろ〜」って。こーんなに分かりやすいアドバイス、滅多に無いんだよ?でも、その結果君はどうなっちゃったのかな?君は失敗して、それどころか仲間を失って自分も犠牲にしようとしてる。口の利けない人とは言ったけど、君がそうなれなんて一言も言ってないのにさ?」
「心配なんですか?花火ちゃん」
「まさか。心配っていうには遅すぎるよ。ここまで来ると「憐憫」って感じかな?花火より、君の方が良く分かってるでしょ?歌い声を失くしちゃった小鳥さんが死んでくのを目の前で見届けたのは、どこの誰だっけ?」
「……それで?君が言う「口の利けない人になる」って意味を聞かせてくれるかい?」
「あっはは!それは質問じゃなくて答え合わせでしょ?君も、彼女と同じ道を辿るってこと。まあ……花火としては、それでも良いんだけどさ。だって」
「「僕が「真実」まで辿り着こうとしてるから」……違うかい?」
アベンチュリンの言葉に、花火に代わって桜花が「はい。正解です」と頷いた。
「結論から言えば、アベンチュリンさんはただの一度も間違った行動を取っていません。あの無意味に思える喜捨でさえ、金魚ちゃんを誘き寄せる餌と思えば納得の出来る行動でした。何せ「愉悦」は意味のない何かに感情の揺動を見出す方々ですから。……いえ、こうして、再び会えていることがその証明ですね」
「そうだろう?せっかくの再会だ、ちょっとくらい、「ご褒美」をくれたってバチは当たらないよ」
「君、そんなにグイグイ来るタイプだったっけ?花火びっくり〜!」
「既に僕達の目的は割れているはずだ。君はこのピノコニーに大きな花火を打ち上げたくて、桜花ちゃんはピノコニーを満たす運命について知りたくて、そして僕はピノコニーをカンパニーの手に取り戻したい。そして、そのために互いに協力することは間違いなくそれぞれの目的を果たすために役立つはずだ。これは単なる「利益」の話じゃない」
「……ふふっ、良いよ。花火、ゴンドラは最後まで降りたくないから」
そして僅かな間が空いて、アベンチュリンは尋ねる。
「「口の利けない人」は……ロビンのことだったのか?」
「うーん……「そうだけど、そうじゃない」ってところかな」
「……そうか。ありがとう、仮面の愚者。ピノコニーに来てから、君の言葉が一番親切に思えてるよ」
「じゃあ、おまけで教えてあげるね。「口の利けない人」は、元々ピノコニーには2人いたんだ。もちろん、ロビンはもう死んじゃったけど……でも、もう1人は君が引ける山札の中に混ざってる。その気になれば、君にだっていつでも引けるような場所にあるんだよ」
「……分かった。君達に最大限の感謝をしよう。君達のお陰で、僕は自分の行動も、考察も、全てが最初から間違ってないことを確信できた。あと、ぼくに足りないものはたった2つ。真実の裏に隠された意味と、そこに辿り着く方法だけだ」
「あっはは!そっかそっか!よかったぁ、これで花火の大好きな、孔雀ちゃんの強情っぷりがまた見れるんだね!ね、桜ちゃんも面白いでしょ?だって、まだ何も分かってないんだもん!」
「さあ。でも、私は好きな作業ですよ。何せ、存在そのものは証明できているんです。後は、それについて思考を巡らせるだけ。最も純粋な探求作業です。そうでしょう?アベンチュリンさん」
「16システム時間。それだけあれば、僕は全ての真実をこの手に収めることが出来るさ」
決して折れること無く言うアベンチュリンを、花火は「その調子その調子!」と囃し立てる。そして彼女は、ポケットから大きすぎず小さすぎずの一つのボタンを取り出した。
「じゃあ〜、これ!花火からの餞別だよ!名付けて「「相互保証破滅」ボタン」!花火も同じのを持ってるんだけど、どっちかがボタンを押しちゃうともう一人はピノコニーを巻き込んで大爆発するの!」
「金魚ちゃん。私には、くれないんですか?」
「だって〜、桜ちゃんが爆発したって別に傷一つ負わないでしょ?そんなの面白くないんだもん〜。こういうのって、耐えるのは御法度なんだよ?ま、孔雀ちゃんにはきっと役に立つよ!だって……負けそうになったら、ゲームテーブルそのものをひっくり返せば良いんだもん!だから、どうしようもなくなったときは、ね!花火からの最期の気遣いだよ!」
そして、アベンチュリンは受け取ったボタンを眺めながら言う。
「そんなに危険な代物なのに、ファミリーは相手にしてくれなかったのかい?ファミリーがそれをちゃんと受け取っていれば、僕が渡されることもなかったっていうのに」
「別に、君が持ってるとか持ってないとかは知らないけど、でも花火も、桜ちゃんにもそれくらいの力はある、って覚えといて」
「ならありがたく断らせてもらうよ。これ以上は、僕一人でどうにか出来る……いや、どうにかしないといけないエリアまで来た。君達もその瞬間を楽しみにしててくれ。ファミリーが崩壊した暁には、全ての壁が打ち崩れ、口の利けない人にも声が戻る。その時が来たら、そのボタンと共に盛大な打ち上げ花火を打ち上げてくれよ」
「あっはは!良いよ、花火が約束してあげる!」
「私から言う事は……いえ、ありませんね。ここで言っても仕方のないことばかりです」
そう言って、桜花は「あなたに「運命」の祝福があらんことを」とアベンチュリンのことを言祝ぎ、花火は「花火のこと、絶対にがっかりさせないでね」と笑う。そして彼女達に背を向けて、「さようなら」とアベンチュリンは歩き出し、花火もどこかへ姿を消した。
「……では、また後で」
桜花は、遠くなっていく彼の背に手を振った。
桜花はSPを大量に使う通常攻撃アタッカーの限定です