星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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インシァンについて質問とかあったらネタバレにならない範囲でなんでも答えますよ


パンクロード・ガールズ(その2)

「それで?スクリューガム、「パンクロードの精神」ってなんなの?」

 

 レオナードという職員を手伝って、「ヘルタ」に侵入した銀狼のログを追いかける星。そして彼女は銀狼の目当てである「パンクロードの精神」を求めて模擬宇宙に足を踏み入れると共にスクリューガムに尋ねた。

 

「お答えしましょう、友よ。「パンクロードの精神」、それはとある巡海レンジャーが宇宙へ宛てたラブレターのようなものです」

「ラブレター?巡海レンジャーってのはずいぶんとロマンチストなんだね」

「ええ。彼らは壮大なロマンを求める旅人でもあります。本題に戻りますが、貴方は「パンクロード」という星についてどれほど知っていますか?」

「舐めないで、スクリューガム。この銀河打者ほどパンクロードに詳しい人間なんて銀河広しといえどもそういないよ」

 

 バットを振り回しながらドヤ顔で答える星に、スクリューガムは「貴方とのコミュニケーションほど愉快なものもそうありませんね」と柔らかく、紳士的に笑った。

 

「「パンクロード」はデータとテキストによって構成された、現実と幻想が混ざり合う星です。そしてそこに生きるハッカーは「エーテルカセット」と呼ばれるツールを用いて世界を認識し、書き換える「エーテル編集」を駆使するのです。すなわち「エーテルカセット」とは彼らにとっての生命の記録であり、存在の証明でもある。「パンクロードの精神」とは、パンクロードで伝説となった人物の遺したものなのです」

「なるほど、つまりそいつにとっての「パンクロードの精神」は私にとってのバットってわけだね」

「肯定:そのように捉えてもらっても構いません。そしてパンクロードを飛び出し巡海レンジャーとなった彼はその生涯を懸けて宇宙を縦横無尽に巡り、彼らの言葉に直せば、多くのキャラクター、そして多くのイベントに遭遇しました。それらの記録はカンパニーや博識学会でも持っていないものが多く含まれています。故に、それはこの模擬宇宙を構成する演算資料の一部に組み込まれているのです。ヘルタさんが気紛れに決めたことであるため、カセットは「行方不明」として扱われてしまっているということになるのでしょう」

「だから銀狼は模擬宇宙に入り込んできた訳だね。あんなメスガキはバットでわからせてやらなきゃ」

 

 そう目を輝かせて意気込む星に「理解。ヘルタさんが気に入るのもよく分かります」とスクリューガムは頷いた。

 

「改めて、貴方は現在エーテルカセットが存在するデータリンクに位置しています。周囲に何か確認できるものはありますか?」

「そうは言われても……あ、あそこに銀狼がいる」

「なるほど。……理解しました。結論、それは模擬宇宙が作り出したホログラフィーです。全ての変数が保存されているのであれば、当然部外者の軌跡も残されているでしょう。貴方方が推測した通り、星核ハンターは模擬宇宙の深部まで入り込み、エーテルカセットまで迫っていた……これは、その時の記録であると考えられます」

「ちょっと、あなた、そんなところで突っ立って何してるの?」

「しゃべった。おもしろ」

 

 星の方を見て口を開いたホログラフィー。スクリューガムは「模擬宇宙のフローを進めました」と伝える。

 

「これは貴方に話しかけているのではなく、あくまでも過去の記録に過ぎません。ですが、彼女の言葉に耳を傾ければ何らかの収穫が得られるかもしれませんよ」

「さっきの続きだけど、私はあのカセットそのものに大して興味があるわけじゃない。あんなの、教科書みたいな普通のものだもん。……違う。あれ自体は彼が映画の試写会が始まる前につまんないコマーシャルソングを聞きながら食べたミックスポップコーンが何粒目で何味かまで分かるくらいの代物なの。……違う、興味は別にない。分かった?カフカ」

「カフカ?」

「銀狼と共に「ヘルタ」に侵入した星核ハンターの名前です。おそらく、星核を盗んだ後に訪れたのでしょう。……友よ、貴方を同行者となるようにリプログラムしました。これなら、彼女も貴方に反応を示すでしょう」

「じゃ、先に進むよ。私だって、天才クラブの領域に望んで長居するほど馬鹿じゃない」

 

 そう言って宇宙ステーションのマップを模した模擬宇宙を進んでいく銀狼のホログラフィーと、その後を追う星。そして模擬宇宙のエリア移動に使われる転送ゲートの前まで辿り着くと、ホログラフィーは彼女の方へ振り返った。

 

「イベントか戦闘、どっちか選んでみる?あなたの好きな「運命」とやらが教えてくれるかもよ?」

「スクリューガム、これって好きな方選んでいいの?」

「正確に言えば、彼女は貴方ではなく自身の仲間に聞いているのでしょう。貴方が答えなくても先には進みます」

「……あったりー。正解は右側でしたー」

 

 そして銀狼が飛び込んだ青いゲート。星も追いかけてその中に入った。

 

「……まずい。こっちは囮だった。ヘルタのやつ、利便性よりもいやがらせを優先してるってわけ?」

 

 囮の信号を前に、そう言って溜息を吐く銀狼。そして彼女は「しょうがない、セクタを変えてみよう」と手元のキーボードを弄り始める。

 

「銀狼、何かミスってるっぽいよ?」

「いえ、まだ途中ですが、彼女は正解のルートを進んでいます。おそらく彼女もすぐにそのことに気がつくでしょう」

「このまま帰ってくれたりはしない?」

「はい。星核ハンター「銀狼」、彼女は優秀なハッカーですから」

「知り合いなんだ」

「彼女とは過去に一戦交えたことが。ヘルタさんもその場にいたはずです」

「ああ、そういえば……銀狼を追い返した?みたいなこと聞いた気がする」

「いえ、私に言わせれば、あれは勝利ではありません。彼女は階差機関球のセキュリティを越えられず、私も彼女の逃走を防げなかった。これは、ある意味で前回の戦いの続きになるのかもしれません」

 

 そして少しの間が空いて、銀狼はキーボードを消して顔を上げた。

 

「なんだ、やっぱりこれで合ってる。ヘルタのやつ、心理戦なんて挑んでくるんだ」

 

 少し意外そうに呟いた彼女は、再び転送ゲートをくぐって先へ進む。星も引き続きその後を追った。

 

「なにこれ、謎解き?スキップすればいっか」

 

 そうしてエーテル編集によってギミックを突破し、彼女は模擬宇宙を歩きながらふと発見したヘルタの人形に文句をつけ始めた。

 

「もしかして、ヘルタってナルシスト?宇宙ステーションのあらゆる場所に彼女がいる。肖像画も、彫刻も、挙句の果てには大量の人形まで。1回くらいラクガキしてやろうかと思ったけど、ヘルタのやつ、宇宙ステーションのセキュリティは大した事ないのに、自分にだけは最高クラスのセキュリティを掛けてる。……ま、そもそもここに「ヘルタ」って名付けてる時点で、って話ではあるか」

「そういえば、ヘルタさんに暗号化ツールの制作を頼まれたことがありました。おそらく、それによるものだと思います」

「そろそろ例のカセットのとこに着く?」

「はい。お待ちかねのエーテルカセットは次の部屋にあります。この旅もそろそろ終わりを迎えるでしょう」

「なんか変な感じ……」

「肯定:今回の追跡が始まった時から、確かに違和感は存在していました。我々がエーテルカセットに気がつくように彼女のラクガキが残され、そして都合の良いタイミングで模擬宇宙に姿を現した。まるで、彼女が我々を出迎えているようだ。そういえば、面白い話を聞いたことがあります。パンクロードにおいて「ラクガキ」は特別なシンボルなんだと。自らの痕跡に自らの印を遺し、「生命のゲーム」を記録する、まるで今の状況のようです。こうなれば、彼女の行く末を見届けましょう」

 

 スクリューガムがそう言うと同時に銀狼は次のエリアへ向かう。星もその後に続いた。確実に、ゲームは終盤に近づいていた。




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