「『──繰り返します。先程の奇妙な光景はクラークフィルムランドの演出機械のトラブルによるものだと判明しました。現在はファミリーの迅速な対応によりクラークフィルムランドは閉鎖され、また幸いにも怪我人は出ていません。皆様、どうかご安心して「黄金の刻」でのご遊戯をお楽しみください。繰り返します──』」
「ほら、ファミリーもこう言ってるじゃない。大袈裟に反応しすぎでしょ」
「大袈裟なんかじゃないよ!あれは本当の出来事だったんだって!確かに沢山のチップが雨みたいに降ってきたんだから!拾った途端、跡形もなく消えちゃったけど……」
緊急ニュースの流れる街頭モニターの下、「ならやっぱり大袈裟なだけじゃない」「でも本当に……!」と言い合うピピシ人のカップル。そのやり取りが徐々にヒートアップしようかという中で、1人の少女が「もしかして、あの事故の話かしら?」と声を掛けた。
「ええ、そうだけど……って!?」
「ろ、ロビンさん!?ど、どどど、どうしてあのロビンさんがこんなとこに!?本物だよね!?」
「ふふっ、そう驚かないで。この出会いが、あなた達の夢の旅のちょっとしたアクセントになれば幸いだわ。ところで、あなた達の言っていた「チップ」に少し興味があるの。もう少しだけ、詳しく聞かせてもらえないかしら?」
「も、もちろん!と言っても普通のチップだったんだ。全体的には金色なんだけど、ところどころにスペードみたいな模様と、緑色の宝石?みたいなのがデザインされてたと思う。それが空からジャラジャラーってスロットの大当たりみたいに降ってきたんだよ」
「そして、そのままチップは消えてしまった、そうよね?」
「ええ、そうみたい」
「なら……そうね、ここで出会ったのも何かの縁かもしれないし、2人には特別に教えてあげるわ。あれはアイリス家が長い時間を掛けて用意した「ドリームトレース」っていう新技術なの」
「そ、そうなの?」
「ええ。本当は調和セレモニーでお披露目する予定だったのだけれど、せっかちな誰かが慌ててお漏らししちゃったのね。だから、あなた達も秘密にしてくれると嬉しいわ。私の公演のサプライズを少しでも味わってほしいから」
「まあ、そういうことだったら……」
「う、うん!ロビンさんに協力するよ!」
「ありがとう、嬉しいわ!」
そして彼女は「あなた達には、ちゃんとお礼をしないとね」とポケットから大きすぎず小さすぎずなボタンを取り出し、二人に手渡した。
「このボタン……は何なの?」
「ふふっ、ちょっとしたプレゼントよ。それをここぞって言う時に押せば、サプライズがあるかもしれないわね?」
「ありがとう、ロビンさん!」
「喜んでくれたなら何よりだわ。それじゃあ、私はもう少し他の困っているゲストのところを回るから、二人は引き続きこの夢境を楽しんでね」
そう言って彼女はピピシ人のカップルに別れを告げ、あのクラークフィルムランドの出来事の余波で混乱する人々を、当の事件の情報なんかを聞き出しながらも宥めて回る。もちろん、その手には「プレゼント」と称した一つのボタンを添えて。
そしてそれを軒並み配り終え、一仕事終えたようにベンチで休んでいたその時、彼女は「偶然にも」再会を果たした。
「調子は如何ですか?……
「あっれれ〜?花火、まだ「
「金魚ちゃんも、そんなものに頼らなくても人は見分けられるでしょう?私も、それと同じです」
「ええ〜?花火と桜ちゃん一緒にしちゃう〜?」
そうニヤニヤと笑う花火に、桜花は「本質は何も変わりませんから」と微笑み返す。
「あっはは!そっかそっか!確かに、花火と桜ちゃんお揃いだもんね?目が2つあるところとか!」
「そこは、金魚ちゃんにお任せします」
そう言ってベンチを立った桜花。「もう行っちゃうの?」と彼女が問いかけると、桜花は「充分、おしゃべりしたでしょう?」と柔らかに言う。そして彼女は「ああ、そうでした──」と何かを思い出したかのように呟いた。
「──銀狼ちゃんとの約束、お願いしますね」
「もっちろん!花火、お友達は大切にするから!」
その言葉に「それなら何よりです」と彼女は再び微笑み、そして桜吹雪に紛れて「黄金の刻」を去っていった。