星核ハンター「桜花」の日常と波乱   作:あるふぁせんとーり

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ゲーム続行(その1)

「──みたいな感じで、星穹列車は二手に分かれてるみたいだ。今は「ドリームホール」を見に行ってて、色々と回った後にロビンに会いに行くつもりなのかな」

 

 隠れ家のハンガーポールに孔雀の意匠が織り込まれたようなコートを掛けながら彼は言う。何らかの計算に夢中になっていた彼女は彼が帰ってきたことに気が付くとその手を止め、「お帰りなさい、お疲れ様でした」と振り返って労った。

 

「ああ、それと小耳に挟んだ話なんけど、ここはあと10システム時間かそこらであのドリームホールに呑み込まれてしまうらしい。急がなくて大丈夫かい?」

「その程度でしたら、何ら問題も」

 

 彼女は「十二分な時間です」と笑い、「それで、やることが終わったと言うには随分と早い帰りですね?」と尋ねる。彼は「いや、まだだよ」と答えた。

 

「確かに僕は勝った。紛れも無く、これは僕にとって最高の展開だとも。だからこそ、僕は行けるところまで勝ち続けないといけないんだ。そのためにも、やれることは全てやらないと。まだまだゲームはこれからだからね」

「私から言うべきことは特にありません。元々こうなることは織り込み済みですから。そうでしょう?」

 

 問いかけた彼女に静かに頷き、その上で「もう一勝負、手伝ってくれるかい?」と、そうアベンチュリンは口にした。

 

◇◇◇

 

 黄泉とのやり取りの後、ブラックホールを抜けた彼が目を覚ましたのは見知らぬ夢境、夢境の中のホテル・レバリーにも似ているがどこか違う、まるで稚児の夢かのような記憶域だった。そして体を起こした彼の周りには、主人に代わって「虚無」の力を受け止め、砕け散った「基石」の欠片。彼はどうにもならないと分かっていながらも、たまたま持ち合わせていた巾着袋にそれを拾い集めた。

 

「っ……ったぁ……はは、流石に無茶し過ぎたかな……」

 

 立ち上がった瞬間に彼を襲った全身の痛み。例え「砂金石」が辛うじて彼の身を「虚無」から守ったとしても、肉体的なダメージばかりはどうしようもないものとして彼の体にのしかかる。その痛みを堪えながらも、一体全体どうしようかと彼が思案すると同時に、何かが侵入してきたことを嗅ぎ付けた記憶域ミーム達が異物を排除しようとその下へ集まってくる。何とか自衛しようと、彼がサイコロを手に取ったその瞬間だった。

 

「「純美」の名の下に!」

 

 勇ましい声と共に、槍による一閃がミームを薙ぎ払う。そしてその輝かしい赤槍の持ち主はアベンチュリンにその手を差し出した。

 

「友よ、ようやくお会いできました」

「あ、ありがとう……でも、君は一体どこの誰なんだい?」

「僕は「純美の騎士団」所属のアルジェンティと申します。このピノコニーで出会った友の頼みを受け、あなたのことを助けに来ました」

「「純美の騎士団」……!?本当にピノコニーに来てたのか……!」

「その姿……一目で分かります。あなたも高潔なる「純美」の魂を持つ者であると。友よ、ご安心を。必ずや僕がお守りします」

 

 そしてアベンチュリンは彼に促されるままに、いわゆる「お姫様抱っこ」のような状態で持ち上げられる。アベンチュリンは少し戸惑いながらも彼に体を預けた。

 

「い、良いのかい……?ここまでしてもらって……」

「友を支えるこの重さこそ騎士の勲章です。先へ進みましょう」

 

 「自らの為すべきことに全身全霊を費やす、それもまた素晴らしい「純美」です」、そんなことを言いながら、彼はアベンチュリンを抱えて記憶域を駆けていった。

 

◇◇◇

 

 そして先に「流刑地」で彼のことを待っていた桜花の下へ送り届けられたアベンチュリン。花火は彼が待ち切れなかったのか、一足先に「黄金の刻」に遊びに行ってしまっている。肉体的疲労か、あるいは精神的疲労か、彼はアルジェンティに抱えられているうちにすっかり意識を失っていた。夢の中だから睡眠ではなく気絶のようなものだった。

 

「お疲れ様でした、アルジェンティさん。この後はどうするつもりですか?」

「せっかくピノコニーに訪れたのです、この美しい夢を少し見て回ろうかと。……それでは、失礼します。友よ、貴女方に「純美」の加護があらんことを」

 

 そう言ってアルジェンティは彼女にアベンチュリンの後を託し、ドリームリーフの隠れ家を去っていく。桜花は彼をベッドに寝かせると、少し息を吐き、そして彼の様体を観察し始めた。基石のおかげで虚無の影響は除去可能な程度に食い止められ、彼の傷は彼女の今の「持ち合わせ」でも十分に治療できる範囲に収まっていた。

 

「……少し、失礼しますね」

 

 そう言って桜花は彼の血を抜き、事前に回収しておいた「虚無」のサンプルを利用して同定し始める。そして数多の逆算と継ぎ接ぎを繰り返し、行薬の要領で彼女は一本の「血清」を作り上げた。

 

「それでは……お目覚めの時間です」

 

 そうして、彼女はその「血清」を都合よく空いた胸の穴から突き立てた。

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